2章
総論(復興庁設置以降)
2節 組織体制
1. 東日本大震災に係る政府の体制
東日本大震災への対応に当たっては、政府の体制は、大きく分けて、地震・津波災害への初動・応急対策等に当たる緊急災害対策本部、東京電力福島第一原子力発電所の事故に対応する原子力災害対策本部、そして、復興政策を担う東日本大震災復興対策本部(以下「復興対策本部」という。)等の3つの系統の体制が組まれた。これら3系統の体制は、相互に連携し、必要に応じて会議を合同開催する等したほか、時間の経過とともに変化する課題や対応にあわせて、体制を超えた業務引継ぎも行われた。
本章は「復興庁設置以降」と銘打っているが、本節では、分かりやすさの観点から、こうした政府の体制について、復興庁設置以前から復興庁設置以降の変遷をまとめて記述することとする。

(1) 復興庁設置以前の概要
1) 復興対策本部設置以前(平成23年3月11日~6月23日)
平成23年3月11日の東日本大震災の発生を受け、政府は同日直ちに、緊急災害対策本部及び原子力災害対策本部を設置した。以降、それぞれの本部を軸に、被害状況や初動・応急対策の状況を定期的に取りまとめつつ、政府としての対応を指揮した。また、被災者・避難所支援、原子力発電所事故の収束といったひとまとまりの業務量が増大するに従い、これら本部の下部組織として各「対策本部」等を設置し、担当の大臣等を決めて対応に当たった。
緊急災害対策本部の系統では、3月17日に防災大臣をトップとする「被災者生活支援特別対策本部」(5月9日に「被災者生活支援チーム」に改称)が、3月16日には内閣官房に内閣府参与をトップとする「震災ボランティア連携室」が設置された。原子力災害対策本部の系統では、3月15日に内閣総理大臣をトップとする政府・東京電力の合同組織である「福島原子力発電所事故対策統合本部」、3月29日には経済産業大臣をトップとする「原子力被災者生活支援チーム」、4月11日には原子力経済被害担当の国務大臣(経済産業大臣が担当)をトップとする「原子力発電所事故による経済被害対応本部」(5月9日「原発事故経済被害対応チーム」に改組)が設置された。
復興については、発災1か月後の4月11日に五百籏頭防衛大学校長を議長とする「復興構想会議」とその下部組織である「検討部会」が設置され、4月5日に内閣官房に置かれた「被災地復興に関する法案等準備室」がこれら会議の事務局としての業務を行うとともに、阪神・淡路大震災を参考とした組織等に関する法案を検討した。
さらに、東日本の電力需給の逼迫等についても、専門の組織が発足した。
このように、多数の組織が発足したことに関し、「組織乱立」との批判や、「対策本部」との名称が「本部」との関係を分かりづらくした面があり、「組織が複雑で、指揮命令系統が適切に機能してないではないか」といった危惧を抱かせる状況になった。こうした状況を改善するため、政府として、緊急災害対策本部・原子力災害対策本部・復興に係る組織という3系統の体制であること、また、それぞれの「本部」の下に各個別対策の組織があることを明確にするため、5月9日付でこうした各「対策本部」を「チーム」や「検討会」に再編した1。具体的な再編内容は3)で記載のとおりだが、組織の統廃合は行わなかった。なお、緊急災害対策本部及び原子力災害対策本部は、3月21日からは合同開催されるなど、相互に連携しながら対応にあたった。
- 1 平成23年5月6日官房長官記者発表「2つの本部を基本として、避難者の生活支援や原発事故に伴う補償など、個別の重要課題に関わる対策の実施組織を必要に応じて設けてまいりました。一方、これら実施組織においても「本部」という名称を用いたり、あるいは相互の関係が不明確である等との指摘を受けたことから、「組織が複雑で、指揮命令系統が適切に機能してないではないか」といった危惧をいただくに至りました。こうした危惧を払しょくをすることと、それから震災から2か月近くが経過をし、復興に向けた取り組みも必要となるなど、状況も変化をしていることから、こうした組織を改めて整理をしたところでございます。今後は従来からの2つの本部、「緊急災害対策本部」と「原子力災害対策本部」、そしてこれに「復興対応のための組織対策本部」を設けまして、この3つの対策本部を基本に、それぞれの下に各組織が存在をし、総理の下で明確な指揮命令系統の下で動いているということを、分かりやすくお伝えをしたいというふうに思っております。(略)今回名称変更を変更・整理をするチーム等においては、会議体が目的ではなくて、それぞれの事務局の体制をそれぞれ付記をいたしておりますが、各省横断的に各省から選りすぐりのメンバー集まっていただいて、チームとして作業を進めると、それぞれの責任者たる大臣、あるいは副大臣等の位置付けを明確にすると、こういったことで従来もやってまいりましたが、改めてこうした図にすること、そして名称を整理することにおいて、十分なご理解をいただければというふうに思っております。」


※ 官房長官記者発表資料・第16回緊急災害対策本部会合資料(平成23年5月6日)と同様
2) 復興対策本部設置以後(平成23年6月24日~平成24年2月10日)
平成23年6月24日、東日本大震災復興基本法(平成23年法律第76号。以下「基本法」という。)が施行され、復興対策本部が発足し、復興に向けた制度整備等が本格的に進められることとなった。緊急対策本部及び原子力災害対策本部は、基本的には従来のまま継続していた。しかし、緊急災害対策本部の業務の一部は、時間の経過に伴って、避難所等を中心とした初動・応急対策の一環として行うよりも、むしろ被災者の生活再建など復旧・復興対応の一環として行う方が良いものも出てきたため、復興対策本部に引き継がれた。例えば、「被災者生活支援チーム」の業務は、7月25日をもって、「震災ボランティア連携室」の業務は9月16日をもって、復興対策本部事務局に移管された。また、従来、被災者生活支援チームが実質的に担っていた、復旧・復興に向けた課題への対応のとりまとめや被災地のニーズの把握等の業務に関しても、復興対策本部が担うことになった。
ただし、基本法において、復興庁を設置すること及びその際には復興対策本部を廃止することが定められていたため、こうした体制は時限的なものだった。

3) 各組織の概要
a. 緊急災害対策本部関係
ア) 緊急災害対策本部
(平成23年3月11日15:14設置。第19回(9月11日)まで開催し、令和5年3月現在も存続)
災害対策基本法(昭和36年法律第223号)では、著しく異常かつ激甚な非常災害が発生した場合において、当該災害に係る災害応急対策を推進するため特別の必要があると認める場合に、全閣僚を構成員とする会議体である「緊急災害対策本部」を設置することとしているが、同規定に基づき緊急災害対策本部が設置されたのは、東日本大震災が初めて、かつ、唯一の例である(令和5年3月現在)。
政府は、同本部において、被害状況や初動・応急対策の状況を定期的に取りまとめ2つつ、「災害応急対策に関する基本方針」(3月11日)や「東日本大震災に係る被災地における生活の平常化に向けた当面の取組方針」(5月20日)等を決定し、政府としての初動・応急対策を指揮した。同本部の開催実績や、同本部の下で行われた政府の取組・詳細は、1章1節に記載のとおりである。
<設置根拠>
災害対策基本法第28条の2第1項
閣議決定:平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震緊急災害対策本部の設置について(平成23年3月11日)
「災害対策基本法(昭和36年法律第223号)第28条の2第1項の規定に基づき、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震災害の応急対策を強力に推進するため、下記により、臨時に、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震緊急災害対策本部を設置する。」
<構成>
・緊急災害対策本部(平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震緊急災害対策本部)
本部長 :内閣総理大臣
副本部長:内閣府特命担当大臣(防災)、内閣官房長官、総務大臣、防衛大臣
本部員 :本部長及び副本部長以外のすべての国務大臣
内閣危機管理監
副大臣又は国務大臣以外の指定行政機関の長のうちから、内閣総理大臣が指定した者
・事務局:事務局長、事務局次長及び事務局幹事のほか、各府省庁の職員が従事
・緊急災害現地対策本部
本部長:内閣府副大臣
本部員その他の職員:各府省庁の職員
※ 宮城県に「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震緊急災害現地対策本部」(設置期間は平成23年3月12日~平成28年3月29日)
- 2 令和5年3月までに、第178報まで、とりまとめ・公表がなされている。
イ) 被災者生活支援チーム
(平成23年3月17日「被災者生活支援特別対策本部」として設置、5月9日に「被災者生活支援チーム」に改称。7月25日以降は復興対策本部事務局(現復興庁)・内閣府防災担当に引継ぎ。)
緊急災害対策本部及びその事務局が担っていた被災者生活支援業務(特に支援物資の供給等)が大量かつ長期にわたると見込まれたため、これを引き継ぐ形で、緊急災害対策本部の下部組織として、「被災者生活支援特別対策本部」が3月17日に発足した。
業務としては、「孤立した避難所等の解消、被災地への物資の輸送・補給、ライフラインの復旧、仮設住宅の建設、被災廃棄物の処理、遺体収容・埋葬対策、被災者・避難者の受入対策」などの被災者生活支援について、関係行政機関等との調整を行うことが担務とされた。
当初は、避難所や避難者の生活支援として、被災地への物資の輸送・補給に係る調整・調達業務を直接実施することが主要業務であったが、これらの業務は、本来は県が主体であること、流通や小売の回復等により、4月10日頃には国からの配送量が大幅に減少していたことから、4月20日をもって県に移行することとし、国としての業務は終了した3。また、当初、地元自治体でさえも避難所の実態を把握しきれていなかった状況に鑑み、同チームにおいて、9項目・3~5段階から選ぶだけの簡易なアンケート調査票を作成する等して3県の全避難所の状況把握や課題吸い上げ等のとりまとめを行い、第1回(4月6~10日)から第4回(5月9日~13日)に実施したが、その後は、各県が独自に把握可能になったことから、第4回で終了している4。(同チーム及び業務を引き継ぐ以前の緊急災害対策本部の行った、物資支援・避難所支援等に係る業務の全容については、1章1節2.(1)3)参照。)
さらに、こうした業務をチーム自ら実施するとともに、二次避難場所や応急仮設住宅と言った住まい確保の課題、就労支援・雇用創出の課題、がれき処理をはじめとする、被災者支援、復旧・復興における課題への対応について、関係省庁と連携し、政府全体のとりまとめ役・推進役を担った。同チームは、状況の変化に応じ、当初の避難所を中心とした支援から、生活再建や応急仮設住宅等に移った後の課題、避難者の把握等、その時々の必要な課題に対応していった5。
同本部では、政務メンバー4人と課長級以上全員と内閣広報官が参加する「運営会議」(6月28日以降は「被災地支援連絡会議」)を当初は土日を含む毎日11時頃に開催し、課題の共有、対処方策の決定、進捗状況の共有等を効率的に行った。なお、4月9日以降は平日毎日、5月23日以降は週3回など、徐々に開催頻度は減少させた(合計63回開催)。また、オブザーバーとして災害ボランティア担当の政務、途中からは、復興、原子力、男女共同参画の担当政務も参加した。また、がれき処理や応急仮設住宅の供給といった個別課題については、同チームの傘下に、各省庁の副大臣や大臣政務官をトップとする検討会議等が合計5つ設置された(図表2-2-5参照)。このほか、同チームの活動を円滑かつ迅速に進めるため、3月22日から5月13日までの間、「被災者生活支援各府省連絡会議」(防災大臣、総務大臣、官房副長官2人、経済産業副大臣、各府省庁の事務次官・長官等)も設置され、15回開催された6。
6月24日に復興施策の実施の推進を担う復興対策本部が発足したことや、同チームで担当していた被災者の生活支援の中心が、応急的な生活支援から、暮らしと仕事の再生に比重が移ってきていたことを踏まえ、被災者生活支援について復興本部において担当する生活再建支援の一環として担うことが適当であることから、7月25日以降は、同本部等に業務を引き継ぐこととした7。
なお、執務室を撤収し、専任職員を原則として元の省庁に返したが、厳密には、同チームの組織は残され、復興対策本部事務局と同チームの併任職員が移行業務を担当するという形式が採られた8。
<設置根拠>
緊急災害対策本部長決定(平成23年3月17日)
「東北地方太平洋沖地震による被災者の生活支援が喫緊の課題であることに鑑み、政府における体制の一層の強化を図るため、平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震緊急災害対策本部の下に、被災者生活支援特別対策本部を置く。」
<構成>
・当初
本部長 :防災担当大臣 本部長代理:総務大臣、内閣官房副長官
副本部長:内閣府副大臣(事務局長兼務)
・名称変更後
チーム長:防災担当大臣 チーム長代理:総務大臣、内閣官房副長官
事務局長:内閣府副大臣
・事務局の体制・人数
事務局長、次長2人、審議官2人、参事官13人ほか
設置根拠の本部決定において「内閣府に各省から構成する担当事務局を新設」することとされたことから、70人規模で事務局が3月20日に発足。人員は、基本的には、緊急災害対策本部事務局の物資支援業務等に従事していた各省庁や内閣府(防災担当)の職員である。ピーク時の3月末には11班・116人体制に至り9、その後、4月20日に物資輸送業務を県に移行したことを受けて体制を縮小し、5月27日時点では計約60人程度となるなど、状況に合わせ順次、人員を各省庁に返還する等し、徐々に規模は縮小された。
同事務局の幹部は、事務局次長2人に国土交通省及び総務省から、審議官に財務省、国土交通省からの職員等が充てられ、参事官級以下にはこれらの省庁の他、内閣府、厚生労働省、経済産業省、農林水産省、外務省、防衛省などの様々な省庁の職員が充てられた。
特に被災地からの物資要請や輸送の連絡調整は、発災当日から休日・昼夜を問わない対応が発生しており、同チームにおいても、当初は24時間体制の交代制勤務がとられた。このため、席数よりも実際に勤務した職員数の方が多かったとの証言もある10。
執務室は、内閣府本府庁舎地下1階講堂と、内閣府B棟執務室の2か所に分かれて設置された。
- 3 なお、初期を除けば、物資そのものが不足していたというよりも、ニーズにあった物資を必要なタイミングで届けるというマッチングや輸送が主な課題であった。
- 4 山下哲夫「政府の被災者生活支援チームの活動経過と組織運営の経験」(『季刊行政管理研究』No.136 平成23年12月)
- 5 同上
- 6 平成24年2月3日公文書管理委員会(第12回)資料
- 7 被災者生活支援チームのHPは、下記のとおり保存・引継ぎがされている。
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11125722/www.cao.go.jp/shien/index.html (令和5年7月26日閲覧) / https://www.cao.go.jp/shien/ (令和5年7月26日閲覧) - 8 脚注4
- 9 同上
- 10 岡本全勝(元内閣府被災者生活支援本部事務局長・元復興庁事務次官)編著『東日本大震災 復興が日本を変える』ぎょうせい(平成28年2月)


ウ) 震災ボランティア連携室
(平成23年3月16日設置。9月16日以降は復興対策本部(現復興庁)に引継ぎ)
被災地支援に大きな役割を果たす震災ボランティア活動について、政府としてその活動と連携・協働することが重要であることから、3月16日に内閣官房に「震災ボランティア連携室」が設置された。
具体的な業務としては、ボランティア活動の参加の呼びかけ、官邸や民間ウェブサイトを通じた情報発信(ニーズ、受入先情報、注意事項等)、活用可能な国の支援制度のとりまとめ、関係省庁と連携したボランティアの交通費負担の軽減やボランティアツアー設定の呼びかけ等を実施した。また、東日本大震災支援全国ネットワーク(600超のNPO等が参加)との連絡会やヒアリングを通じた情報収集・政府内への共有等も行った11。
6月24日に復興対策本部が発足したことや、今後は、仮設住宅におけるコミュニティ確保や心のケア、復興まちづくりへの参加など、復興に向けた活動が重要になると見込まれたことから、9月16日付で約半年間の活動を終え、同本部事務局に業務を引き継ぐこととした12(同室及び業務を引き継いだ復興庁の行った、NPO等との連携や機能強化に係る業務の詳細については、8章1節1.や3.参照)。
<設置根拠>
「震災ボランティア連携室の設置に関する規則」(平成23年3月15日内閣総理大臣決定)
「内閣官房に、(略)政府、地方自治体、ボランティア団体等の緊密な連携を図り、地方自治体、ボランティア団体等に対し必要な情報提供等を行うため、震災ボランティア連携室を置く。」
<構成>
担当政務:内閣総理大臣補佐官
室長:内閣府参与、次長:内閣審議官、ほか 計15人程度
※ 室員は、総務省、厚生労働省、国土交通省など各省庁の職員と、ボランティア活動やWeb・広報に精通した民間出身者(室長13含む)から構成。
- 11 「震災ボランティア活動の果たしてきた役割と、今後の政府の取組」(平成23年9月30日 東日本大震災復興対策本部事務局震災ボランティア班)
- 12 「震災ボランティアに関する事務移管のお知らせ」(平成23年9月22日 東日本大震災復興対策本部事務局震災ボランティア班)。なお、震災ボランティア連携室の活動記録は下記復興庁HP参照。
https://www.reconstruction.go.jp/topics/volunteer_keii.pdf (令和5年7月26日閲覧) - 13 反貧困ネットワークの事務局長で、震災前から内閣府参与を務めていた湯浅誠氏。
b. 原子力災害対策本部関係
※ 福島復興や原子力発電所の事故対応に係る現在の体制については、本節4.も参照。
ア) 原子力災害対策本部
(平成23年3月11日19:03設置。令和4年7月までに58回開催し、令和5年3月現在も存続)
原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)では、原子力緊急事態が発生したと認めるときは「原子力緊急事態宣言」がされ、この宣言をしたときは、当該原子力緊急事態に係る緊急事態応急対策及び原子力災害事後対策を推進するため、全閣僚を構成員とする会議体である「原子力災害対策本部」を設置することとしているが、同規定に基づき原子力災害対策本部が設置されたのは、東日本大震災が初めて、かつ、唯一の例である(令和5年3月現在)。
政府は、同本部において、被害状況等を定期的に取りまとめつつ、政府としての対応を指揮しており、事故収束や原子力被災者への対応に関するロードマップ、避難指示区域等の考え方、除染や汚染水に関する方針など、福島原子力発電所事故への対応に係る重要な方針や工程を決定してきたほか、国際原子力機関(IAEA)に対する報告書等を決定した。
なお、原子力緊急事態解除宣言は令和5年3月現在も行われておらず、同本部は引き続き開催されており、令和4年7月までに58回の会議が開催されている。
(同本部の開催実績や、同本部の下で行われた政府の取組は、1章1節・7章1~3節を参照。)
<設置根拠>
原子力災害対策特別措置法第16条第1項
閣議決定:平成23年(2011年)福島第一原子力発電所事故に係る原子力災害対策本部の設置について)(平成23年3月11日)
「原子力災害対策特別措置法(平成11年法律第156号)第16条第1項の規定に基づき、下記により、臨時に、原子力災害対策本部(以下、「本部」という。)を設置する。
1.本部の名称並びに設置の場所及び期間は、次のとおりとする。
(1)名称 平成23年(2011年)福島第一原子力発電所事故に係る原子力災害対策本部
(2)設置場所 東京都(総理大臣官邸)
(3)設置期間 平成23年3月11日から原子力緊急事態解除宣言があるまでの間(以下略)」
※ 3月12日の閣議決定で、本部名称が、「平成23年(2011年)福島第一及び第二原子力発電所事故に係る原子力災害対策本部」に変更。同年12月26日の閣議決定で「及び第二」を削除し、元の名称に戻る。
<構成>
・原子力災害対策本部(平成23年(2011年)福島第一原子力発電所事故に係る原子力災害対策本部)
本部長:内閣総理大臣
副本部長:経済産業大臣
※ 原子力規制委員会設置法(平成24年法律第47号)により改正された原子力災害対策特別措置法に基づき、平成24年11月2日からは、内閣官房長官、環境大臣及び原子力規制委員長が追加。
本部員等:国務大臣(総務大臣、外務大臣、財務大臣、文部科学大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、国土交通大臣、環境大臣、内閣官房長官、国家公安委員会委員長、防衛大臣、防災担当大臣)、内閣危機管理監
※ 必要があると認めるときには構成員を追加できるとされ、実際には、原発事故の収束及び再発防止担当、内閣府特命担当大臣(原子力損害賠償支援機構)などを含む、全国務大臣が構成員となっていた。
※ 平成24年11月2日閣議決定により設置根拠が改正され、環境大臣が副本部長とされたほか、全国務大臣が本部員として位置付けられるとともに、経済産業副大臣を追記(原子力安全委員会委員長が出席する旨の規定を削除。)。
・事務局:事務局長、事務局次長のほか、各省庁の職員が従事1415。
※ 平成24年11月2日以降、事務局長は原子力安全・保安院長から原子力規制庁長官となった16後、令和5年3月現在は内閣府政策統括官(原子力防災担当)17となっている。
・福島第一原子力発電所事故に係る原子力災害現地対策本部
本部長:経済産業副大臣
事務局員:経済産業省、原子力規制庁、厚生労働省、福島県庁、東京電力等からの職員
※ 福島県に「福島第一原子力発電所事故に係る原子力災害現地対策本部」(設置期間は、3月12日~)を設置。当初は大熊町の福島県原子力災害対策センター(いわゆるオフサイトセンター)内、3月15日に福島県庁内に、平成24年8月に自治会館内に移動。
なお、同本部の住民支援班(執務室は福島復興局内)の職員(経済産業省出身)が、自治体担当リエゾンとして12市町村に常駐している。
- 14 本部の運営に関し、発災当時の「防災基本計画」(中央防災会議)(平成20年2月)では、「…安全規制担当省庁は、大臣が原子力災害対策副本部長、担当局長が事務局長を務めるなどにより、原子力災害対策本部を運営するものとする」とし、「原子力災害対策マニュアル」(原子力災害危機管理関係省庁会議)(平成22年9月14日一部改訂)では、事務局長を原子力安全・保安院長、次長を原子力安全・保安院次長、内閣官房危機管理審議官、内閣府大臣官房審議官(防災担当)及び消防庁審議官が担い、その他の事務局員は、原子力安全・保安院の職員を中心とする関係省庁の職員が従事することとされていた。なお、現在では、「防災基本計画」(令和4年6月)において、「原子力災害対策本部の設置に係る事務は内閣府が行い(中略)内閣府政策統括官(原子力防災担当)が事務局長を務めるものとする」とし、「原子力災害対策マニュアル」(原子力防災会議幹事会)(令和4年9月2日一部改訂)において、事務局長を内閣府政策統括官(原子力防災担当)、事務局長代理を原子力規制庁長官及び内閣府大臣官房審議官(原子力防災担当)、次長を内閣官房危機管理審議官及び内閣府大臣官房審議官(防災担当)が担い、その他の構成員は内閣府職員、原子力規制庁職員及び関係省庁の職員が従事することとされている。
なお、平成23年(2011年)福島第一原子力発電所事故に係る原子力災害対策本部の運営に関しては、内閣府(原子力防災担当)とともに、内閣府原子力被災者生活支援チームの職員が、内閣府(原子力防災担当)訓令室である「原子力被災者生活支援担当室」の職員として実施している(廃炉・汚染水・処理水対策担当室の所掌に属する案件を除く。)。 - 15 発災当時の「防災基本計画」及び「原子力災害対策マニュアル」によれば、本部設置の物理的な場所は官邸であるが、事務局の物理的場所は経済産業省緊急時対応センター(当時の原子力安全・保安院のERC)とされていた。なお、現在では、「防災基本計画」(令和4年6月)及び「原子力災害対策マニュアル」(原子力防災会議幹事会)(令和4年9月2日一部改訂)において、原子力災害対策本部の設置場所は原則として官邸とし,事務局の設置場所は原則として官邸・内閣府本府庁舎及び緊急時対応センター(原子力規制庁のERC)とされている。
- 16 原発事故の経験と教訓を踏まえた新たな原子力災害対策の構築の一環で,平成24年9月19日の原子力規制委員会の設置に合わせ,「原子力基本法」「原子力災害対策特別措置法」等の関連法令が改正され,政府の新たな原子力災害対策の枠組みが構築されたことに伴うもの。(平成25年版防災白書)
- 17 平成26年10月14日、政府全体の原子力防災体制の充実・強化のため、地域の原子力防災の充実・強化に係る業務等を原子力規制委員会職員が内閣府職員(内閣府原子力災害対策担当室(訓令室))を併任し実施していた従前の体制が見直され、専任の内閣府政策統括官(原子力防災担当)組織が発足したことに伴うもの。(平成27年版防災白書)

イ) 原子力被災者生活支援チーム
(平成23年3月29日設置。令和5年3月現在も存続)
原子力災害被災者の生活支援に関する諸課題について、関係機関と調整を行い、総合的かつ迅速に取り組むため、政府の体制強化を図り、原子力被災者生活支援チームを設置することとなった18。
業務としては、当初、「被災者の避難・受入れの確保(除染体制の確保を含む)、被災地周辺地域・避難所への物資の輸送・補給、被災者の被ばくに係る医療等の確保、環境モニタリングと情報提供」を担うこととされた。
他方で、既に、被災者支援体制としては、前述のa.イ)「被災者生活支援チーム」が業務を開始していたが、原子力被災者生活支援チームは、当時立ち入りが制限されていた原子力発電所から30㎞圏内の被災者支援や原子力発電所事故特有の課題への対応を担うべく、新たに創設されることとなった。本チームの設置当初より、両者は緊密に連携することとされた。
実務上の役割分担としては、物資輸送や医薬品提供等については、30㎞圏内であっても既に被災者生活支援チームと現地レベル(自衛隊等)で対応していたため、移管は不合理であることから引き続き当該体制で担うこととし、30㎞圏外の避難所支援も、各被災者が自然災害の被災者なのか原子力災害の被災者なのかを区別することは合理的でないため、被災者生活支援チームが一括して担当することとされた。一方、避難区域の設定及び避難者の支援、特に30㎞圏内等の区域からの避難者の搬送や一時立ち入り、放射線スクリーニング、放射性被ばく・放射性物質を含む土壌等の対策等は、原子力被災者生活支援チームが調整や調達を担うこととなっていった19。また、内閣府(原子力防災担当)とともに、本チームの職員が、内閣府(原子力防災担当)の訓令室である「原子力被災者生活支援担当室」の職員として、「平成23年(2011年)福島第一原子力発電所事故に係る原子力災害対策本部」の運営を担当している。
なお、両チームは、重複する支援先・業務が多いこと、指示・依頼先の関係機関も重複していることから、両者の統合を検討する動きもあったが、結果的には、両者は引き続き連携することとし、統合されなかった。
このほか、同チームの活動を円滑かつ迅速に進めるため、「原子力被災者生活支援関係省庁連絡会」(内閣官房副長官、内閣府副大臣、経済産業副大臣、経済産業省総括審議官、関係省庁の局長級等)も設置された。
原子力災害については、いまだ避難指示が解除されていない区域があり、引き続き、避難指示区域の見直し、健康管理調査、環境モニタリングの総合的推進等の業務の必要性があるため、令和5年3月現在も本組織は存続している。
<設置根拠>
原子力災害対策本部決定(平成23年3月29日)
「福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所の事故による原子力災害被災者の生活支援が喫緊の課題であることに鑑み、「平成23年(2011年)福島第一及び第二原子力発電所事故に係る原子力災害対策本部」の下に、「原子力被災者生活支援チーム」を設置する。」
<構成>
・原子力被災者生活支援チーム
(当初)
チーム長:経済産業大臣 チーム長代理:官房副長官、内閣府副大臣
副チーム長:関係省庁副大臣等 事務局長:経済産業副大臣
(平成23年7月6日~)
チーム長:経済産業大臣、原発事故の収束および再発防止担当大臣
チーム長代理:官房副長官、内閣府副大臣
副チーム長:関係省庁副大臣等 事務局長:経済産業副大臣
(平成23年9月12日~)
チーム長:経済産業大臣、原発事故の収束および再発防止担当大臣
チーム長代理:官房副長官 副チーム長:関係省庁副大臣等 事務局長:経済産業副大臣
(平成24年9月19日~)
チーム長:環境大臣、経済産業大臣
チーム長代理:官房副長官 副チーム長:関係省庁副大臣等 事務局長:経済産業副大臣
・事務局:事務局長、事務局長補佐、事務局員(計30人程度)
同事務局の職員には経済産業省、環境省、厚生労働省、文部科学省などの様々な省庁の職員が充てられた。
事務局長補佐ほか151人(本部事務局との兼務含む人数。5月9日時点)。物理的な場所としては、執務室は、経済産業省別館の2階のほか、同館3階に同チームの緊急時対応センターが置かれた。平成25年4月には、復興庁と同じ建物に移動し、平成28年5月には復興庁とともに現在の庁舎へ移動した。
令和5年3月現在、経済産業省福島復興推進グループの職員が兼任しており、福島復興推進グループ長(経済産業省局長級)以下、約80人程度の体制となっている。同チームのウェブサイトも、経済産業省HP上に設けられている。
- 18 現在の「原子力災害対策マニュアル」(原子力防災会議幹事会)(令和4年9月2日一部改訂)では、原子力災害対策本部の下に、本部事務局だけでなく「原子力被災者生活支援チーム」も設置することが予定されている。
- 19 第2回原子力被災者生活支援チーム会議資料4-3 参照
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/6086248/www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/data/g110405bj.html (令和5年7月26日閲覧)

ウ) 政府・東京電力統合対策室
(平成23年3月15日「福島原子力発電所事故対策統合本部」として設置。平成23年5月6日改組・名称変更20。平成23年12月16日廃止)
内閣総理大臣を含む政府が、事業者と同じ場所(東京電力内)で、事故発電所現場の一次情報を共有しながら、機動的な判断・指示を行えるよう、事実上の組織「福島原子力発電所事故対策統合本部」として設置された。その後、政府における位置付けを明確化するため、原子力災害対策本部の下の組織「政府・東京電力統合対策室」に改組し、政府側のトップも総理大臣から経済産業大臣となった。
発電所との情報共有を主目的とする全体会議(3月18日~12月15日))は通算約400回開催された。また、大気中への放射性物質放出の低減、建屋内の排水・回収、長期冷却、燃料の取り出し・運搬の手順といった中長期的な個別のテーマの課題整理・検討を主目的とする特別プロジェクト(3月27日~12月15日)は113回開催された2122。
<設置根拠>
当初は、事実上の組織として「福島原子力発電所事故対策統合本部」を設置。5月6日の改組後は、政府における位置付けを明確化するため、「政府・東京電力統合対策室」として、原子力災害対策本部の下に位置付け。
<構成>
・当初(福島原子力発電所事故対策統合本部)
本部長 :内閣総理大臣
副本部長:経済産業大臣、東京電力会長(4月1日までは同社長)
・改組後(政府・東京電力統合対策室)
連絡担当責任者:(政府)経済産業大臣、(東電)取締役会長
連絡担当者:(政府)原発事故担当大臣、(東電)取締役社長
・事務局
同会議は東京電力内で開催されており、会議の運営はおおむね東京電力が担ったが、東京電力内に原子力安全・保安院の職員が常駐し、連絡調整機能を担った。
- 20 平成24年2月3日 公文書管理委員会(第12回)資料
- 21 平成24年2月29日 公文書管理委員会(第14 回) 議事録
- 22 旧原子力安全・保安院HP
https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9498833/www.nsr.go.jp/archive/nisa/gensai/index.html (令和5年7月26日閲覧)
エ) 原子力発電所事故経済被害対応チーム
(平成23年4月11日「原子力発電所事故による経済被害対応本部」として設置。平成23年5月9日改組・名称変更。)
原子力損害賠償については、原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)に基づく「原子力損害賠償紛争審査会」が、紛争の当事者による自主的な解決に資する一般的な指針の策定等を担うこととなっていたが、東京電力福島第一原子力発電所事故によって生じた損害が、同法が想定する規模をはるかに超えると見込まれたこと等に鑑み、当該事故によって生じた経済被害についての対応の枠組みを検討するため、平成23年4月11日に原子力経済被害担当の国務大臣(経済産業大臣が担当)をトップとする「原子力発電所事故による経済被害対応本部」を設置した。4月15日、5月11日、5月12日に閣僚級の会合が開催された23。
4月15日の会合では、「原子力災害被害者に対する緊急支援措置について」を決定した。
5月12日の会合では、「原子力損害賠償に係る国の支援のお願い」(5月10日東京電力)及びこれに係る原子力経済被害担当大臣と東京電力との間の「確認事項」を踏まえ、「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて」を決定(※民主党との文言調整のため、翌日5月13日付けで決定)するとともに、「原子力災害被害者に対する緊急支援措置(仮払金)について」を了承した。なお、前者は平成23年6月14日に閣議決定された(同閣議決定を踏まえて制度が整備された原子力損害賠償支援機構を中心とするスキームについては、2章3節23.及び7章1節を参照のこと。)。
また、「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて」において、政府支援の前提として、東京電力について「厳正な資産評価、徹底した経費の見直し等を行うため、政府が設ける第三者委員会の経営財務の実態の調査に応じること」を確認することとされたため、5月24日閣議決定により、有識者からなる「東京電力に関する経営・財務調査委員会」が設置・開催された。
<設置根拠>
内閣総理大臣決裁
「東京電力株式会社福島第一原子力発電所及び福島第二原子力発電所の事故による経済被害についての対応の枠組みの検討等を行うため、原発事故経済被害対応チームを開催する。」
<構成>
・当初
本部長:原子力経済被害担当大臣
副本部長:内閣官房長官、財務大臣、文部科学大臣、経済産業大臣
本部員:総務大臣、法務大臣、外務大臣、厚生労働大臣、農林水産大臣、国土交通大臣、環境大臣、防衛大臣、国家公安委員会委員長、内閣府特命担当大臣(防災)、内閣府特命担当大臣(消費者及び食品安全)、内閣府特命担当大臣(経済財政政策)、内閣府特命担当大臣(金融)、国家戦略担当大臣、本部長が指名する内閣官房副長官
事務局長:本部長が指名する副大臣(文部科学副大臣)
事務局長代理:本部長が指名する内閣官房副長官及び内閣総理大臣補佐官
・改組後
チーム長:原子力経済被害担当大臣
副チーム長:内閣官房長官、財務大臣、文部科学大臣、経済産業大臣
事務局長:チーム長が指名する副大臣(文部科学副大臣)
事務局長代理:チーム長が指名する内閣官房副長官及び内閣総理大臣補佐官
・事務局:内閣官房原子力発電所事故による経済被害対応室
設置根拠である内閣総理大臣決裁において、「チームの庶務は、経済産業省その他の関係行政機関の協力を得て、内閣官房において処理する」とされた。
主として内閣府、経済産業省、文部科学省等の職員が充てられ、室長ほか48人程度(平成23年5月9日時点)。
- 23 原子力発電所事故経済被害対応チームのHP
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/genshiryoku/index.html (令和5年7月26日閲覧)
c. 復興に関する組織
ア) 被災地復興に関する法案等準備室
(平成23年4月5日設置、6月24日廃止、復興対策本部に業務引継ぎ)
復興については、平成23年4月5日に内閣官房に「被災地復興に関する法案等準備室」が設置され、発災1か月後の4月11日には「復興構想会議」(後述)及び同「検討部会」が置かれた。同室はこれら会議の事務局としての業務を行うとともに、阪神・淡路大震災を参考とした組織等に関する法案の検討を進めた。その後、復興対策本部設置を見据えた基本方針の原案作成や、各省庁の震災関連法案の進捗管理、政務の現地入りや現地対策本部設置に係る業務や被災自治体との連絡調整等も担った。なお、執務場所は当初、中央合同庁舎第4号館5階に置かれたが、人員増強に伴い三会堂ビルに移った。
また、法律に基づく復興組織が設置された後は、統合が予定されていた。実際に6月24日に復興対策本部が発足した際は、本準備室の職員の一部がそのまま同本部の初期構成員となった。
<設置根拠>
被災地復興に関する法案等準備室の設置に関する規則(平成23年4月5日内閣総理大臣決定)
※「東日本大震災復興対策事務体制に関する規則」(平成23年6月21日内閣総理大臣決定)の附則において、上記規則は廃止されている。
<構成>
準備室長:内閣官房副長官補
室員:審議官2人、参事官7人、ほか合計50人超程度(東京に7班、現地駐在が3班)
準備室員は、発足当初は9人しかいなかったが、復興構想会議座長が総理大臣に要請したこともあり、各省庁から職員が集められ、5月9日時点では30人規模、5月半ばには50人規模、6月には100人近い規模となった24。
- 24 飯尾潤「3.1復興対策本部と復興基本法、復興庁の発足」及び五百旗頭真「10.3政府の対処 1東日本大震災復興構想会議」『「国難」となる巨大災害に備える~東日本大震災から得た教訓と知見~ 災害対策全書別冊』ぎょうせい(平成27年9月)
イ) 東日本大震災復興構想会議
(平成23年4月11日設置。平成24年2月10日復興庁設置法施行に伴い廃止。)
我が国の叡智を結集し、幅広い見地から復興に向けた指針策定のための復興構想について議論を進め、未来に向けた骨太の青写真を描くとともに、会議の議論の結果を復興に関する指針等に反映させるため、発災1か月後の平成23年4月11日、有識者から構成される「東日本大震災復興構想会議」が設置され、内閣総理大臣が開催することとされた25。また、その下部組織として、震災からの復興に関し専門的知識を有する者により構成する検討部会も設置された。
「復興構想会議」は、同年6月25日に「復興への提言」を取りまとめるまでに計12回、また、同年11月の最終回と、全13回開催された。「検討部会」は、6月14日までに全8回開催された。
詳細は、1章2節のとおりである。
<設置根拠>
・当初:東日本大震災復興構想会議の開催について(平成23年4月11日閣議決定)
「未曾有の被害をもたらした東日本大震災からの復興に当たっては、被災者、被災地の住民のみならず、今を生きる国民全体が相互扶助と連帯の下でそれぞれの役割を担っていくことが必要不可欠であるとともに、復旧の段階から、単なる復旧ではなく、未来に向けた創造的復興を目指していくことが重要である。このため、被災地の住民に未来への明るい希望と勇気を与えるとともに、国民全体が共有でき、豊かで活力ある日本の再生につながる復興構想を早期に取りまとめることが求められている
このため、有識者からなる東日本大震災復興構想会議(以下「会議」という。)を開催し、復興に向けた指針策定のための復興構想について幅広く議論を行うこととし、会議の議論の結果を、復興に関する指針等に反映させるものとする。(中略)
会議は、震災からの復興に関し識見を有する者により構成し、内閣総理大臣が開催する。」
・平成23年6月24日から:基本法第18条
<構成>
・復興構想会議(16人)
議長:五百旗頭真(防衛大学校長、神戸大学名誉教授)、
議長代理:安藤忠雄(建築家、東京大学名誉教授)、御厨貴(東京大学教授)、
特別顧問(名誉議長):梅原猛(哲学者)
ほか
・検討部会(19人)
部会長:飯尾潤(政策研究大学院大学教授)、部会長代理:森民夫(全国市長会会長、長岡市長)、
ほか
※ 復興対策本部令第6条により「専門委員会」と位置付けられたが、実際の開催は無かった。
なお、会議の規模については、当初、阪神・淡路大震災の復興委員会(7人)を参考に10人程度で考えられていたが、与党議員の意向により30人程度となったため、各界を代表する者による本体会議と比較的若手の専門家による検討部会の二部構成とされた。「提言」の取りまとめに当たっては、本体会議の構成員から多く示された被災地への思いについては詩的な表現となって記述がなされ、現実的な施策については検討部会長を中心とした関係省庁との調整や各省横断的な論点等に係るワークショップ26等で検討されたものが盛り込まれることとなった。
また、被災自治体からは、復興構想会議に構成員として知事が参画し、そこで提案した制度等が事業化・制度化されたこと、また、同会議が単なる復旧ではない「創造的復興」を掲げ、具体的な施策につながっていったことが評価されている。
- 25 https://www.cas.go.jp/jp/fukkou/index.html (令和5年7月26日閲覧)
- 26 5月18日から6月7日で計16回
ウ) 東日本大震災復興対策本部
(平成23年6月24日設置、平成24年2月10日から復興庁へ業務引継ぎ)
基本法の施行に伴い、平成23年6月24日、内閣に復興対策本部及び同事務局が設置された。同本部は内閣総理大臣を本部長とする閣僚級からなる合議制機関として、東日本大震災復興基本方針に関する企画・立案・総合調整、関係行政機関が講ずる復興施策の実施の推進及び総合調整等の事務を担当した。
ただし、基本法において、基本法施行後1年以内の復興庁の設置が予定されていたことから、復興対策本部は、それまでの間の暫定的な組織として、主に、被災者支援をはじめとする復興施策の推進と、復興庁設置をはじめとする必要な制度整備、基本方針と第3次補正予算等の整合性を図っていく等の業務を担った。
復興対策本部時代の復興組織については、1章2節、2章1節、2章3節1.もあわせて参照のこと。
<設置根拠>
基本法第11条~第22条
<構成>
本部長:内閣総理大臣
副本部長:内閣官房長官、東日本大震災復興対策担当大臣
本部員:① 本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣
② 内閣官房副長官、関係府省の副大臣もしくは大臣政務官又は国務大臣以外の関係行政機関の長のうちから、内閣総理大臣が指名する者(実際には、図表2-2-10のとおり)
幹事:内閣総理大臣が任命(実際には、関係省庁の事務次官・長官・次長)
現地対策本部:
東日本大震災復興対策本部令(平成23年政令第182号)により、岩手県現地対策本部(盛岡市)、宮城県現地対策本部(仙台市)及び福島県現地対策本部(福島市)が設置された。それぞれ、本部長には他省庁の副大臣・大臣政務官が充てられたほか、設置当初はそれぞれ事務局長含めた25人程度ずつの体制であった27。
なお、物理的な場所としては、それぞれ、盛岡市の岩手県庁内(平成23年8月から朝日生命盛岡中央通ビル)、仙台市の宮城県庁内(平成23年9月から仙台第二合同庁舎に移転)、福島市の自治会館内に所在した。
- 27 第1回復興対策本部会議(平成23年6月28日) 資料2

・事務局:
設置根拠である基本法の第21条により、本部に事務局を置き、事務局長を置くこととされた。また、復興対策本部令により、事務局に次長3人以内、参事官25人以内を置くとされた。なお、事務局設置に当たっては、東日本大震災復興対策事務体制に関する規則(平成23年6月21日内閣総理大臣決定)が6月24日から施行され、「内閣官房に、内閣官房副長官補の統括の下に東日本大震災復興対策事務体制を設けることとし、東日本大震災復興対策室とする」とされた。
主として、前述の「被災者生活支援チーム」及び後述の「被災地復興に関する法案等準備室」の職員が事務局の設立当初のメンバーとして移行28しつつ、各省庁から人員を確保し、執務場所は、「被災地復興に関する法案等準備室」等が置かれていた三会堂ビルに置いた。6月27日に活動を開始した。
事務局長(元国土交通省事務次官。内閣官房参与)ほか、約130人体制(現地対策本部や非常駐職員含む)で発足し、9月時点では約185人体制に、10月時点では約200人体制となっていた。
- 28 被災者生活支援チームの事務局次長、審議官を含め5人の職員は、被災者生活支援チームと復興対策本部事務局の併任という形で移動した。

エ) 復興庁設置準備室
(平成23年8月25日設置29、平成24年2月10日廃止)
復興の基本方針(平成23年7月29日東日本大震災復興対策本部決定)において、「復興庁(仮称)についての検討を集中的に行うための体制として、復興庁準備室(仮称)を速やかに立ち上げる。」こととされたことを受け、内閣官房に「復興庁設置準備室」が設置された。
復興庁設置法の制定に向けた法的準備のほか、機構・定員要求、各省庁からの人員の確保、次年度予算要求の検討など、復興庁の設置に向けて必要な様々な準備業務を担当した。
なお、復興庁の設置とともに、多くの職員はそのまま復興庁の職員に移行した。
<設置根拠>
復興庁設置準備室の設置に関する規則(平成23年8月24日内閣総理大臣決定)
<構成>
室長:内閣官房副長官
室長代理:内閣官房副長官補、東日本大震災復興対策本部事務局長
次長1人、審議官2人、参事官11人、ほか17人(計34人。発足時)
※ 室員には、主として復興対策本部の職員が充てられるとともに、内閣官房副長官補付の職員も充てられた。
- 29 https://www.reconstruction.go.jp/topics/000089.html (令和5年7月26日閲覧)
d. その他の会議体等
ア) 各党・政府震災対策合同会議
国会・政党においては、政府の対応状況を把握し、必要な法律や予算など中長期的な課題に対する意思決定と今後の方向性の提示という重要な役割がある一方で、発災直後の繁忙を極める政府側に対し、各政党がそれぞれ資料要求や会合出席要求を依頼してしまうと、政府側の人命救助や避難所支援等の緊急対応業務に支障を来しかねない30(なお、発災当日は、政府側からFAXにて同旨の被害状況を各政党に共有するにとどめ会合出席要求は謝絶したが、翌日以降、野党からの出席要求に対応せざるを得ない状況となった31)。このため、3月15日、与野党の幹事長等が会談し、与野党を超えて各党が連携し、「各党・政府震災対策合同会議」を設置することとされ、これにより、各政党への対応が一括化され、政府側の負担軽減等が図られた32。なお、与党民主党との連絡・調整に関しては、別途、「地震対策に関する政府・民主党連絡会議」(3月17日開催。総理以下出席)もあった。
- 30 「東日本大震災発災時の政府の初動に関する報告書」(平成28年3月18日自由民主党 東日本大震災発災時の政府の初動に関する検証チーム)
- 31 小滝晃『東日本大震災 緊急災害対策本部の90日』ぎょうせい(平成25年8月)
- 32 同上 及び 民主党HP http://archive.dpj.or.jp/news/?num=19879 (令和5年7月26日閲覧)

イ) 政府の広報体制
政府からは被災者に向けた情報や、誤った情報の是正、風評の防止等のため、様々な広報が必要となり、政府による広報は、内閣官房を中心とする国内広報チームと、外務省などの関係省庁を中心とする国際広報チームがそれぞれ対応に当たった。また、3月末頃より、広告代理店からもスタッフを登用した。なお、東日本大震災における災害応急対策に関する検討会中間とりまとめ(平成23年11月28日内閣府(防災担当))では、「国等が実施している災害応急活動等の広報、帰宅困難者の混乱を防止する目的の広報や海外への広報が不足していた。」との反省が示されている。

ウ) 電力需給に関する検討会合(旧電力需給緊急対策本部)
東日本大震災の影響により原子力発電所の稼働が停止したこと等により、東日本を中心に電力供給不足に陥ったことから、政府としての対応を総合的かつ強力に推進するため、3月13日、「電力需給緊急対策本部」が設置された。なお、平成23年5月6日の各種対策本部の見直し(脚注1参照)に伴い、5月16日以降は「電力需給に関する検討会合」に改組された。同検討会合は、東日本大震災の影響による需給逼迫に対して、計画停電や節電啓発を含む「夏期の電力需給対策の骨格」「冬の電力需給対策」等を取りまとめた。本会合は、その後も存続し、現在は、東日本大震災とは直接関係のない電力需給逼迫等の対応にも当たっている。

エ) エネルギー・環境会議
東日本大震災の影響により原子力発電所の稼働が停止したこと等により、当面の電力需給対策のみならず、原子力発電の存在を前提とした従来のエネルギーミックスや温暖化対策について、大幅に見直す必要性が生じた。このため、新成長戦略実現会議決定(平成23年6月7日)及び国家戦略会議決定(平成23年10月28日)に基づき、エネルギーシステムの歪み・脆弱性を是正し、安全・安定供給・効率・環境の要請に応える短期・中期・長期からなる革新的エネルギー・環境戦略及び平成25年以降の地球温暖化対策の国内対策を政府一丸となって策定するため、国家戦略担当大臣を議長とする「エネルギー・環境会議」が開催された。平成24年11月27日まで全17回開催し、「エネルギー・環境に関する選択肢」(平成24年6月29日)、「革新的エネルギー・環境戦略」(平成24年9月14日)等を決定した。
オ) 電力改革及び東京電力に関する閣僚会合
東京電力福島原子力発電所の事故の収束、原子力発電所の事故の再発防止のための原子力安全対策の見直し、核燃料サイクルを含む原子力システム改革、東京電力による原子力損害の賠償への支援、及び電気事業制度改革等を政府として一体的に推進するため、内閣官房長官を座長とする「電力改革及び東京電力に関する閣僚会合」が平成23年11月4日に設置された。平成24年5月9日まで全3回開催し、東京電力の特別総合事業計画や、電力システム改革の検討の方向性、エネルギー・環境戦略の方向性等を確認・共有した。
カ) 事故調査・検証委員会など
東京電力福島原子力発電所の事故については、政府・国会・民間・東京電力などがそれぞれ事故調査委員会を設置、調査報告書を取りまとめた。
政府としては、平成23年5月24日の閣議決定に基づき、「東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会」(畑村洋太郎(東京大学名誉教授・工学院大学教授)はじめ10人の学識経験者により構成。いわゆる「政府事故調」) を設置、平成23年12月26日に中間報告、平成24年7月23日に最終報告書を取りまとめ(全13回開催)、同年9月28日に廃止した。
詳細は、7章1節のとおりである(国会の事故調については、2章3節29.30.を参照)。
キ) 除染及び特定廃棄物処理に関する関係閣僚会合
「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年法律第110号)に基づく除染及び特定廃棄物処理を、政府が一体となって取り組むための体制を確立するため、平成23年11月18日に、内閣官房長官を議長とする関係閣僚会合が設置された。平成24年11月6日までに全4回開催され、人的体制含む各省庁連携の呼びかけ、除染ロードマップを作成すること等の対応方針の確認等がなされた。
ク) 経済情勢に関する検討会合
原油価格の変動リスクや急激な円高といった当時の状況を踏まえ、世界経済の状況認識や日本経済への影響などについて、中期的・大局的な観点から、関係閣僚の間で認識を共有するとともに、その展開に応じて必要な対応について検討するため、内閣総理大臣ほかをメンバーとする「経済情勢に関する検討会合」が、東日本大震災発生の前日平成23年3月10日に初会合を開催していた。その後、東日本大震災発生及び東京電力福島原子力発電所の事故の発生を受け、それらの経済に対する影響や、阪神・淡路大震災の際の経済への影響等について共有したほか、「政策推進のための全体指針」(平成23年5月10日。その後、「政策推進指針」(平成23年5月17日閣議決定)へ。)や「円高への総合的対応策」(その後、平成23年10月21日閣議決定)を議論・取りまとめた。

(2) 復興庁設置以降の政府の体制の概要
地震・津波災害に関しては、復興庁が復興政策全体の方針や復興状況を取りまとめ、これに基づき、関係省庁がそれぞれの施策を実施するとともに、復興交付金をはじめとする東日本大震災に特化した復興庁独自施策を実施している(詳細は本節2.も参照)。なお、緊急災害対策本部は第19回(9月11日)を最後に、その後は開催等していないが、被害状況等の更新は行っている。
他方で、原子力災害に関しては、事故収束はしたものの、引き続き「原子力緊急事態宣言」が発令されており、原子力災害対策本部を中心とした廃炉・汚染水・処理水・除染・原子力賠償の対応と、復興庁を中心とする福島の復興・再生・被災者支援の対応を、相互に連携しつつ進めている(詳細は本節4.(1))。

2. 復興庁の設置
(1) 復興庁設置法の制定の経緯
1) 基本法
基本法第24条において、復興庁の設置に関する基本方針として、復興庁について、①内閣に、別に法律で定めるところにより、期間を限って設置すること、②主体的かつ一体的に行うべき東日本大震災からの復興に関する国の施策に関し、企画、立案、総合調整事務(内閣補助事務)及び実施に係る事務(分担管理事務)を司ること、③復興対策本部は、復興庁設置の際に廃止し、その機能は復興庁に引き継ぐこと、④できるだけ早期に設置することとし、政府は、可能な限り早い時期に法制上の措置を講ずること等が規定された。(詳細は、2章3節1.参照)
2) 東日本大震災からの復興の基本方針
「東日本大震災からの復興の基本方針」(以下「復興基本方針」という。)には、復興庁について、①東日本大震災からの復興に関する国の施策に関し、既存省庁の枠組みを超えて地方公共団体のニーズにワンストップで対応できるようにすること、②その全体像について年内に成案を得るとともに、その後速やかに、設置法案を国会に提出すること、③復興対策本部は、復興庁の発足時に廃止し、同本部の機能は、復興庁に引き継ぐこと、④復興庁についての検討を集中的に行うための体制として、復興庁準備室(仮称)を速やかに立ち上げること等が盛り込まれ、基本法で定められた事項を確認するとともに、復興庁が地方自治体のニーズにワンストップで対応することが明記された。
平成23年8月25日には、復興基本方針に基づき、復興庁の設置について集中的に準備を行うための体制として、内閣官房に「復興庁設置準備室」(室長:内閣官房副長官)を設置し、復興の円滑かつ迅速な推進を確保する観点から、復興庁の所掌事務や組織について検討を行ってきた。(あわせて本節1.(1)3)c.参照)
3) 復興庁設置法の国会審議
平成23年11月1日、政府は、復興庁設置法案を閣議決定し、国会へ提出した。同月24日に(衆)本会議において趣旨説明・質疑、12月2日に(衆)東日本大震災復興特別委員会において提案理由説明・質疑がされ、同月5日にも質疑後、翌6日に国会審議と並行して準備が進められてきた民主党、自民党、公明党の3党による修正協議を踏まえ、民主党・無所属クラブ、自由民主党・無所属の会、公明党、国民新党・新党日本及びたちあがれ日本の5党派共同提案により修正案(修正点は後述)が提出され33、同修正案及び修正部分を除く原案がともに賛成多数で可決し、附帯決議34が全会一致で付され、同日の(衆)本会議で賛成多数で可決された。なお、同委員会では、みんなの党からも修正案35が提出されたが、否決された。同月7日に(参)本会議で趣旨説明・質疑、同日(参)東日本大震災復興特別委員会で提案理由説明がされ、翌8日に同委員会で賛成多数で可決し、附帯決議36が付され、翌9日に(参)本会議で賛成多数で可決・成立した。
同法(平成23年法律第125号)は、平成23年12月16日に公布、平成24年2月10日に施行され、同日付で復興庁が設置された。
国会審議における主な議論は以下のとおり。
- 33 修正案の提案理由について、(自民)谷公一議員より「本修正案は、東日本大震災からの復興をより円滑かつ迅速に進めるため、復興庁が被災地のニーズにワンストップで対応できるよう権限強化を図る必要があるとの共通認識に立って、本会議及び本委員会などでの与野党の質疑及び御指摘を踏まえるとともに、与野党の真摯な修正協議に基づき、復興庁設置法案について次のような修正を行おうとするものであります。」
- 34 (衆)附帯決議の内容は、議員修正の趣旨の念押しのほか、被災自治体の支援に必要な体制構築や人材確保、現地において国、地方公共団体、民間事業者等の多様な復興推進主体が意見交換できる場の柔軟な構成、遅くとも平成24年3月11日までには復興庁を発足させること等。
- 35 修正案の内容は、復興庁を仙台市に置く、行政改革の推進、3か月に1回の国会報告、設置期限を平成27年3月31日に前倒し、復興庁が廃止されるまでの間に被災地域の地方公共団体への権限移譲に向けた検討を行うこと等。
- 36 (参)附帯決議では、上記のほか、勧告権を背景とした強力な総合調整等や、原発事故の賠償や健康診断等の被害者施策の迅速な推進等。
a. 復興庁の意義と役割
復興基本法において、復興庁は東日本大震災からの復興に関する施策の企画・立案・総合調整に加え、実施に関する事務も執り行うとされているのに対し、政府案では実施事務が復興特区制度、復興交付金に関する事務等に限定されていたことに対して、現行の復興対策本部と変わりがないのではないか37、基本法の考え方とずれがあるのではないか38、復興庁が目指すワンストップの対応が実施できるのか39、復興庁に予算権限を設けるべきではないか40等の指摘があった。これに対して、平野東日本大震災復興対策担当大臣(以降、復興対策担当大臣)、藤村官房長官それぞれから、国会審議と並行して進められている民主党、自民党、公明党3党による復興庁の事務のあり方に対する協議の結果を真摯に受け止めたい旨発言があった。
同協議を踏まえた議員修正で、所掌事務に新たに、①復興に関する行政各部の事業の統括及び監理、②復興事業に関する関係地方公共団体からの要望の一元的な受理、当該要望への対応方針の策定、当該対応方針に基づく事業の改善又は推進等、③復興事業に必要な予算の一括要求、事業の実施に関する計画の策定、予算の関係行政機関への配分等が加えられた(あわせて(2)2)参照)。また、附帯決議にも、議員修正で権限強化を図った趣旨に鑑み、予算要求・配分等を一元的に行うこと等が盛り込まれた。
- 37 第179回国会 衆議院 本会議 第11号(平成23年11月24日)加藤勝信議員(自)発言「政府案の復興庁では、現行の復興対策本部とほとんど変わりがありません。これでは、復興基本法の議論の際に政府が提出した法案の方向と何ら変わりがないではありませんか。何のための与野党協議であり、復興基本法であったのでしょうか。」
- 38 第179回国会 衆議院 東日本大震災復興特別委員会 第11号(平成23年12月2日)森本和義議員(民)発言「本法律案では、復興庁の所掌事務というのは、主として、企画立案及び総合調整並びに復興施策の実施の推進、地方公共団体の窓口という中で、復興施策の実施の推進あるいは復興特区にかかわる事務とされておりまして、基本的にはこれまでどおり各省が復興事業実施の主体であり、復興庁による施策の実施は限定的なものになっているように思います。」
- 39 第179回国会 衆議院 東日本大震災復興特別委員会 第12号(平成23年12月5日)加藤勝信議員(自)発言「復興交付金等々がワンストップという、非常に限られた範囲でお使いになられたのか。もう少し、私は、もっと広範な意味でそのときお互い使っていたと思うんですが、大臣のおっしゃるワンストップで対応する、それはどういうことを意味しておられたのか(略)」
- 40 第179回国会 衆議院 東日本大震災復興特別委員会 第11号(平成23年12月2日)斎藤やすのり議員(民)発言「ワンストップでの被災地での復興ということが必要だというふうに思いますので、ぜひ予算要求、各省配分というものの権限を私は復興庁に置くべきだというふうに考えておりますが、平野大臣、この考えについてどう思われますでしょうか。」
b. 復興庁の組織体制
政府案において、復興庁の長たる内閣総理大臣に加え、復興大臣、副大臣1人、大臣政務官3人、事務次官1人を置くとしていたことに対して、ポストが過大であり、特に事務次官は不要ではないかとの質問があり41、平野復興対策担当大臣からは各省調整のために事務次官はぜひ設置したいとの答弁があった。その後の3党修正協議において、復興庁事務が政府案より拡充されたことを受けて、副大臣を2人とし、代わりに大臣政務官は他の府省の大臣政務官をもって充てることで人数を必要最小限としつつ復興事業に真摯に取り組む姿勢を被災地に示すこととされた。
また、復興庁の人材をどのように確保するのか質問があり42、平野復興対策担当大臣からは、被災自治体への支援や、そのニーズに対するワンストップでの対応を実現するため、各府省の制度や復興施策に詳しく、何よりも熱意ある人材を確保することが必要であり、各府省からの出向者に加え、自治体からの出向や現地雇用等も活用し、現在の復興対策本部事務局の規模を大幅に超えた十分な体制を確保したい旨答弁があった。
こうした議論も踏まえ、附帯決議には、復興庁及び復興局の職員には、各府省の制度や復興施策に詳しく情熱ある人材を確保することや、自治体職員、定年退職者や民間からの人材も活用すること、また、縦割りを排除するため、必要に応じて国の関係地方行政機関の職員等を復興局の職員に併任させることを検討することが盛り込まれた。
- 41 第179回国会 衆議院 東日本大震災復興特別委員会 第12号(平成23年12月5日)柿澤未途議員(み)発言「復興のために増税しようというときに、なぜこういうポストの増員をするのかというふうに思いますけれども、事務次官級のポストが必要だ、こういう理由についてお伺いをしたいと思います。」
- 42 第179回国会 参議院 本会議 第11号(平成23年12月7日)岡田広議員(自)発言「復興庁の職員は、国の職員の異動、自治体からの出向、被災地からの新規雇用で、それぞれどの程度の割合を雇用することになるのか、お聞かせください。また、時限的に設置される復興庁は、公務員の定数管理とは関係なく、任期付きで柔軟に人員を増やせる体制にすべきと考えますが、平野大臣、お答えください。」
c. 復興大臣の勧告権
政府案において、復興大臣の権限として、関係行政機関に対する勧告権が設けられたことに対して、どのような運用を想定しているのか質問があり43、平野復興対策担当大臣から、多用することは想定されないが、勧告権を背景とした強力な総合調整等が期待できる旨答弁があった。また、政府案第8条において定められている、各省大臣に対する勧告権その他の権限は、復興大臣が従来の縦割りを排して復興に関するリーダーシップを発揮するのに十分であるかとの質問があり44、野田総理大臣からは、3党修正協議を経た修正案において、各省に勧告の尊重義務が更に明記されたことで、この勧告権は、より伝家の宝刀になり得ると認識している旨答弁があった。
こうした議論も踏まえ、(参)附帯決議では、勧告権を背景とした強力な総合調整を行い、縦割りの弊害を打破し、迅速かつ円滑に復興を推進することが盛り込まれた。
- 43 第179回国会 衆議院 東日本大震災復興特別委員会 第12号(平成23年12月5日)石田祝稔議員(公)発言「これから復興担当大臣、お一人任命されるから、まあ多分平野復興担当大臣がなられるんじゃないかなと私は思っておりますけれども、そういうときに、勧告権をどういうふうにお考えになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。」
- 44 第179回国会 衆議院 東日本大震災復興特別委員会 第13号(平成23年12月6日)井上信治(自)議員発言「復興大臣の権限について、閣法の第八条におきまして、各省大臣に対する勧告権あるいは報告を求める権利、また総理に対する意見具申の権利などを定めております。これらの権限によって、復興大臣が、従来の縦割りを排して、そして復興に関するリーダーシップを発揮するのに十分であると総理はお考えですか。」
d. 組織の設置場所について
復興庁(本庁)の設置場所について、東京ではなく被災地に設置すべきではないかとの質問があり45、これに対しては平野復興対策担当大臣から、各省庁の総合調整機能、立法府への対応、予算要求の調整等を迅速に行う観点から復興庁は東京に設置し、その上で復興局、支所での体制充実で被災地域の要望に応えたい旨答弁があった。
また、政府案において、復興局を盛岡、仙台、福島の各市に設置と記載されていることについて、これを補完する支所の設置場所46、復興局の設置場所を3県のみとした理由47等について質問があり、平野復興対策担当大臣からは、支所の設置場所については被災地域の自治体等々の意見を踏まえ検討したい、また、復興局については被害の甚大さや国や専門家の支援の必要性を考えて設置を3県としたが、3県以外の支援体制等については被災自治体の意見を聴きながら検討したい旨発言があった。また、復興局が置かれない県での支援体制について後日にも質問があり48、平野復興対策担当大臣から、復興局が置かれる3県以外の被災地域については、復興庁の本庁が直接担当としており、まずその窓口を明らかにすると同時に、例えば、支所を置くことや、復興庁が中心となって関係機関による合同支援チームを派遣することなど、必要な支援を行っていきたい旨答弁があった。
こうした議論も踏まえ、議員修正で、復興局の内部組織の編成に当たって被災地の地理的状況に配慮する旨が追加されたほか、附帯決議に、本庁の所在地は立法府への対応等を考慮する一方で被災自治体に向き合う現場機能が求められていることを十分に踏まえた対応をすること、復興局から距離が遠いなどの事情を有する沿岸部地域については支所を設置すること、被災3県以外の被災地域についても十分な体制を構築すること等が盛り込まれた。
- 45 第179回国会 衆議院 東日本大震災復興特別委員会 第11号(平成23年12月2日)斎藤やすのり議員(民)発言「恐らく今まで何度も質問があったかもしれませんけれども、なぜ復興庁を仙台に設置できないのか。それから、費用対効果は被災地に復興庁を置いた方が断然高いと思いますし、このままだと、被災地から陳情を受け、それを各省庁に回す陳情現地窓口官庁にすぎなくなるという危機を私は感じているわけなんですけれども(略)」
- 46 第179回国会 衆議院 東日本大震災復興特別委員会 第11号(平成23年12月2日)森本和義議員(民)発言「被災地のきめ細かいニーズを受け入れることが大切である点、そしてまた、設置場所への遠近、距離で不公平が出ることを避ける必要のある点などから、ある程度多くの支所の設置が必要と考えられますが、現在どれくらいの規模を想定されていますでしょうか。」
- 47 第179回国会 衆議院 東日本大震災復興特別委員会 第11号(平成23年12月2日)石津政雄議員(民)発言「こういう状況の中でありながら、復興局を東北三県のみに設置して、茨城県あるいはまた千葉等々も被災をされているわけでありますけれども、この三県に限ったという理由がおありでしたら、ひとつお聞かせ願いたいと思います。」
- 48 第179回国会 参議院 本会議 第11号(平成23年12月7日)岡田広議員(自)発言「法案では、岩手、宮城、福島の県庁所在地に復興局を置くことになっております。この復興局はどこまでの権限を持つものになるのでしょうか。被災地のニーズに素早く対応するためには、単なる窓口ではなく、自ら対応を決めることができる権限が必要です。復興局の権限と各省の出先機関との関係について、平野大臣から御説明願います。また、復興局が置かれない県での体制についても伺います。」
e. 復興局の権限と被災地の支援体制
復興局の持つ権限等について質問があり49、平野復興対策担当大臣から、復興局には本庁と同様な強力な総合調整を付与することによって、国の出先機関の復興事業の進行調整や各出先機関による合同支援チームの編成、派遣等を行うとともに、被災自治体からの要望についても、決してたらい回しにせず、現地においてワンストップでしっかり対応したい旨答弁があった。
こうした議論も踏まえ、議員修正で、復興局の事務として、関係機関が協議・調整する組織体に関する事務が追加されたほか、附帯決議には、復興局には被災市町村からの要望等に責任をもってワンストップで対応させることや、縦割りを排除するため必要に応じて国の関係地方行政機関の職員等を復興局の職員に併任を検討すること等が盛り込まれた。
- 49 第179回国会 参議院 本会議 第11号(平成23年12月7日)岡田広議員(自)発言「法案では、岩手、宮城、福島の県庁所在地に復興局を置くことになっております。この復興局はどこまでの権限を持つものになるのでしょうか。被災地のニーズに素早く対応するためには、単なる窓口ではなく、自ら対応を決めることができる権限が必要です。復興局の権限と各省の出先機関との関係について、平野大臣から御説明願います。また、復興局が置かれない県での体制についても伺います。」
(2) 復興庁設置法の概要
1) 概要・目的
本法律は、基本法第24 条において定められた復興庁の設置に関する基本方針(2.(1)1)参照)に則り、「復興庁の設置並びに任務及びこれを達成するため必要となる明確な範囲の所掌事務を定めるとともに、その所掌する行政事務を能率的に遂行するため必要な組織に関する事項を定めること」を目的としている(第1条)。
第2条では、内閣総理大臣の強力なリーダーシップの下で復興を円滑かつ迅速に推進するため、復興庁を内閣に置くこととした。復興庁を内閣に設置することは、前述のとおり、基本法の復興庁の設置に関する基本方針の中で示されており、国会審議では、平野復興対策担当大臣から、復興庁を、内閣総理大臣を長とする内閣直属の機関とすること、各省の事業実施や予算要求の調整権、復興大臣が各省に対する勧告権を持つことで、(他省庁に対し)一段高く位置付けられる機関としていることが説明されている50。なお、復興庁は、内閣に置かれる内閣府と同様、国家行政組織法の適用を受けないため、他省庁とは異なり、本法で組織基準等を定める必要があった。
第3条では、復興庁の任務として、基本法第2条の基本理念に則り、①東日本大震災(福島第一原子力発電所事故を含む)からの復興に関する内閣の事務を内閣官房とともに助けること(内閣補助事務)、②主体的かつ一体的に行うべき東日本大震災からの復興に関する行政事務の円滑かつ迅速な遂行を図ること(分担管理事務)の2つを規定している。
なお、①について、政府案では「内閣を助ける」としていたが、復興庁は内閣官房とは独立して総理直属となる内閣官房と対等の組織であるとして、議員修正で「内閣の事務を内閣官房とともに助ける」となった。また、②について、政府案では「内閣総理大臣が政府全体の見地から管理することがふさわしい東日本大震災からの復興に関する行政事務」との文言であったが、既存省庁の枠組みを超えて実質的な決定機能を発揮し、地方公共団体のニーズにワンストップで対応できるようにするとの復興庁の趣旨に鑑み、議員修正で「主体的かつ一体的に行うべき東日本大震災からの復興に関する行政事務」となった。
- 50 第179回国会 衆議院 東日本大震災復興特別委員会 第11号(平成23年12月2日)平野復興対策担当大臣発言「具体的には、復興庁は、内閣総理大臣を長とする内閣直属の機関といたしまして、その下にさらに復興大臣を置くことにより、また、各省の事業実施や予算要求の調整権を担い、必要な場合には復興大臣が各省に対して勧告を行い、さらに、内閣総理大臣が内閣法に基づく各省の指揮監督を強力に行うことを可能な組織としている、こういったことから、一段高く位置づけられる機関としているというところでございます。」

2) 所掌事務
第4条において、所掌事務を規定している。復興庁は、基本法に基づき、従来は復興対策本部が所掌していた①東日本大震災からの復興に関する施策の企画及び立案並びに総合調整(内閣補助事務)を所掌することとされるとともに、基本法第24条において「施策の実施に係る事務」を司ることとされたことから、新たに、分担管理事務を所掌することとされた。
前述のように、国会審議では政府案において事業の実施に関する権限が十分ではないとの議論があり、3党修正協議を踏まえ、所掌事務に新たに、復興に関する行政各部の事業の統括及び監理などの項目が追加されている。議員修正の詳細は、下記のとおりである。
なお、主な所掌事務の内容は、下記のとおりである。
<内閣補助事務>(第4条第1項)
従来は、基本法に基づき復興対策本部が所掌していた、基本方針に関する企画・立案・総合調整や、復興施策の実施の推進・総合調整といった所掌事務を引き継ぐこととした。
<分担管理事務>(第4条第2項)
①行政各部の事業の統括及び監理(第一号)
議員修正で追加された事務である。「統括し監理する」との意味合いについては、復興庁が、各省より一段高い立場から、各府省の復興に関する事務を総合的に締めくくり、これを指導統制する、復興の全プロセスを総合管理するという趣旨である51。
②要望の一元的な受理・当該要望への対応方針の策定、当該対応方針に基づく事業の改善又は推進等(第二号)
議員修正で追加された事務である。これは、被災地方公共団体との関係で、ワンストップサービスを実現する趣旨である。
③予算の一括要求、事業の実施に関する計画の策定、予算の執行・配分等(第三号)
議員修正で追加された事務である。復興庁は、権限と予算を一元的に担う強力な行政官庁とすべきという、基本法や本法に係る国会の議論を踏まえたものである。なお、議員修正で追加された第4条第3項により、本事務は、「他の府省の所掌事務としないものとする」旨が明記された。
・予算の一括要求(イ)
復興に関する事業のうち被災地の復興に関連性が大きい事業について、復興庁の主体的かつ一体的な関与の下で強力に推進することにより、復興が円滑かつ迅速に遂行されることを担保するため、必要な予算を復興庁が一括して要求・確保することとされている。国会の議論を踏まえ、全国防災事業等の被災地の復興に関連性の低い事業を除いたものを、対象事業として、政令・告示で列挙している※。
※ 復興庁設置法第四条第二項第三号イ及びロの事業を定める政令(平成24年政令第25号。復興庁組織令(平成24年政令第22号)とは別の政令)及び告示(平成24年復興庁告示第1号)
・実施に関する計画の策定(ロ)
復興に関する公共事業等の実施について、復興庁の実質的な関与を確保するため、復興庁が実施に関する計画を策定することとされている。上記の通り、復興庁は、必要な予算を一括計上してはいるが、公共事業など、要求時点では細部が確定できない等のために、具体的な事業箇所、内容、規模等を執行段階において確定する必要のあるものがあるため、本事務が置かれている。
・予算の執行・配分等(ハ)
復興庁は、復興に関する事業について、自ら執行し、又は関係行政機関に、一定の事業に係る予算を配分するとともに、要望への対応方針や実施に関する計画等を通知すること等により執行させることとされている。
- 51 平成23年12月6日(衆)東日本大震災復興特別委員会 加藤勝信議員発言

⑤地方公共団体に対する情報提供・助言等(第四号)
復興庁は、復興に関する関係地方公共団体からの照会や要請に対しワンストップで対応できるよう、⑥などの事務に関することに限らず、また各省が実施する施策に関することも含め、広く情報提供・助言等を行うこととしているものである。
⑥復興特区法施行事務(第五号)
復興特区法の施行に関し、復興推進計画の認定、復興特区利子補給金の支給、復興整備計画、復興交付金事業計画、復興交付金の配分計画等に関することや、復興推進事業、復興整備事業、復興交付金事業等に関する関係行政機関の事務の調整に関することを行うこととされている。
⑦CREB法の施行事務(第六号)
議員修正により追加された事務である。平成24年2月23日に施行することとされていた株式会社東日本大震災事業者再生支援機構法(CREB法)の施行に関し、取締役等の認可、定款変更や合併・分割等の認可、同機構に関する関係行政機関の事務の調整に関することを行うこととされている。これは、二重ローン問題に関する自由民主党・民主党・公明党の3党合意(平成23年10月20日)において、復興庁設立以降は復興庁を所管省庁とするとの合意がされていたことに基づくものである52。
- 52 平成23年12月6日(衆)東日本大震災復興特別委員会 谷公一議員発言
3) 組織・その他
復興庁は、内閣総理大臣を長とし、内閣総理大臣の下で復興庁の事務を統轄する復興大臣を置くこととしている。復興庁を対外的に代表し最高の意思決定権を有する者が内閣総理大臣であるとともに、復興庁の実際の業務は復興大臣が行うこととしている。これは、国政の最高責任者である内閣総理大臣を長とすることにより、そのリーダーシップの下、復興庁が強力な調整機能を発揮し、政府が一体となって復興に取り組む体制を実現することと、復興大臣という専任の国務大臣の下で迅速に意思決定・実行することにより、スピーディーな対応を可能とすることの両立を図っているものである。
復興大臣は、内閣総理大臣を助け復興庁の事務を統括することとされている。復興を円滑かつ迅速に推進するためには、行政各部の施策の統一を図るため、復興庁の総合調整機能が重要である。このため、関係行政機関の長に対する勧告権を有しており、関係行政機関の長は復興大臣の勧告を十分に尊重しなければならないこととされている。これにより、各省より一段高い立場から総合調整機能を発揮することとなっている。
このほか、副大臣2人を復興庁に置くとともに、他の府省の副大臣及び大臣政務官を兼任として復興庁に置くことができることとしている(議員修正による修正後)。
また、復興局とその支所を岩手県、宮城県及び福島県に、事務所を青森県及び茨城県に置いている。復興局(地方機関)は、復興庁の内閣補助事務及び分担管理事務の全部又は一部を分掌しているため、各省の出先機関に対する総合調整を行うことが可能となっている。また、これらを副大臣又は大臣政務官に担当させることにより、県知事や県議会議長等の地方の高いレベルと適切に応対することや、各省の出先機関の事務について高いレベルから総合調整を行う等を可能とし、現地で被災自治体のニーズにワンストップで対応することとされている。なお、議員修正により、関係行政機関、地方公共団体、民間等が参加して必要な協議、調整等を行う組織体に関する復興局の事務が追加された。
このほか、内閣総理大臣を議長、復興大臣を副議長とし、全ての国務大臣等で構成される復興推進会議(特別の機関)を置くとともに、関係地方公共団体の長及び優れた識見を有する者からなる復興推進委員会(諮問機関)を置くこととされている。
復興庁の設置期間は、復興基本方針に定める復興期間と合わせて、震災発生年から10年間(平成23年度から32年度までの間)とし、自動的に廃止されるのではなく、同期限までに別に法律で定めるところにより廃止するものとされた。
また、議員修正で、附則(基本法改正)が追加され、基本法に復興の状況を国会に報告する規定が新設された。
(3) 設置
復興庁設置法の附帯決議において、「遅くとも平成24年3月11日までには復興庁を発足させること」とされたが、さらに復興大臣のリーダーシップもあって設置準備が急がれ、発災から1年を経過する前の、平成24年2月10日、復興庁は発足し、業務を開始した。
1) 本庁
復興庁本庁は、基本的には、復興対策本部・復興庁設置準備室の業務内容・人員・場所等をそのまま引き継ぎつつ、各省庁から追加人員を確保する等の形で発足した。加えて、復興庁設置法に盛り込まれた、復興対策本部にはなかった実施事務が新たに追加され、例えば、自治体の復興計画の策定・実行への支援業務や国と地方の協議会運営などの復興特別区域法や復興交付金、復興予算の一括計上に係る業務、さらに原子力災害からの復興に係る業務の増大が想定されていた。
当初の本庁全体の陣容は、約15班(総括班、国会班、調査1班、調査2班、本部会合班、法制班、被災者支援班、地域班、広報班、震災ボランティア班、男女共同参画班、復興特区班、交付金班、予算会計班、インフラ構築班、原子力災害復興班53。このほか秘書室や国会内控室等あり。)、約160人体制54であった55。
本庁の物理的な場所、復興対策本部事務局に引き続き、三会堂ビル(東京都港区赤坂)内の同じ場所であった。
設置当初の幹部職員としては、復興庁事務次官には、復興対策本部の事務局長が、復興庁統括官・審議官には、復興対策本部の事務局次長等が、そのままスライドして就任した。また、復興対策本部の参事官級職員等26人が、そのまま復興庁の参事官にスライドして就任した56。
なお、新しい行政機関を設置することとなったため、組織法令や人員確保等のほか、決裁・文書管理・情報システム、人事・服務、会計等に係る各種の訓令等の整備が必要になった。
- 53 バーチャルでなく物理的に存在する班。発足時配席図より。
- 54 平成23年12月24日平野復興大臣記者会見「(問)復興庁の組織についてお伺いします。昨日の財務省のレクで、本庁160人と復興局、支所を含んでそれぞれ各2、30人ずつ、250人確保するというふうに、この体制でスタートすることになることについての受け止めと今後の体制整備についてどのように考えているか、教えてください。」「(答)2月上旬の設置ということを今目指して、関係自治体との協議、それから各省にお願いすることをお願いしておりまして、できるだけ早く250名の職員を、これは常駐だけでありますけれども、確保したいと思っております。各省も様々忙しい状況にあって、復興庁の設立と同時に、人員がどこまで確保できるかは、未知数でありますが、いずれにせよできるだけ早く確保するよう、これからも積極的に働きかけていきたいと思っています。あわせて、復興局及び支所の設置場所等についても、今関係自治体と調整中ですが、その調整を急がなくてはならないと思っています。」
- 55 本庁約170名・復興局90名で発足したとする記録もある(岡本全勝(元内閣府東日本大震災被災者生活支援本部事務局次長・元復興庁事務次官)編著『東日本大震災 復興が日本を変える』ぎょうせい(平成28年2月))。
- 56 「復興庁人事異動」平成24年2月10日付け発令より。
2) 現地
復興局は、復興対策本部の現地対策本部の業務内容・人員・場所等をそのまま引き継ぎつつ、各省庁から追加人員を確保する等の形で発足した。加えて、復興庁設置法に盛り込まれた、復興対策本部にはなかった実施事務が新たに追加され、例えば、自治体の復興計画の策定・実行への支援業務や国と地方の協議会運営などの復興特別区域法や復興交付金、復興予算の一括計上に係る業務、さらに原子力災害からの復興に係る業務の増大が想定されていた。
当初の現地の陣容は、各復興局20~30人程度ずつであった。このほか、復興局への移行に伴い、下記の通り、新たに支所・事務所が置かれた。
設置当初の幹部職員としては、各復興局長には、それぞれ各現地対策本部事務局長が、各復興局次長には、それぞれ各現地対策本部事務局次長がスライドして就任した57。支所長や事務所長には、各省庁から職員が出向した。
また、各復興局の物理的な場所は58、それぞれ、下記の通りであった。
- 57 「復興庁人事異動」平成24年2月10日付け発令より。
- 58 平成24年2月3日平野復興大臣記者会見「3つ目は、復興局の支所及び事業所の設置場所でございますけれども、2月10日に設置する予定で今準備を進めておりまして、岩手県復興局、宮城県復興局、福島県復興局、青森事務所、茨城事務所、それぞれ場所を書いたものを皆様方にお配りしてあると思いますので、御参照いただきたいと思います。」
物理的な立地 | |
岩手復興局 | (盛岡市)朝日生命盛岡中央通ビル |
宮古支所 | 岩手県宮古地区合同庁舎(県施設)内 ※平成26年3月、長谷川ビルに移転 |
釜石支所 | 岩手県釜石地区合同庁舎(県施設)内 ※平成25年5月、RIKOビル2階に移転 |
宮城復興局 | (仙台市)仙台第一生命タワービル内 |
気仙沼支所 | 気仙沼市シルバー人材センター(市施設)内 |
石巻支所 | セシカ117内 |
福島復興局 | (福島市)AXCビル内 |
南相馬支所 | サンライフ南相馬(市施設)内 ※令和元年5月7日、「浪江支所」に移転 |
いわき支所 | いわき地方合同庁舎(国施設)内 ※令和元年5月7日、「富岡支所」に移転 |
青森事務所 | 青森県八戸合同庁舎(県施設)内 ※平成28年3月廃止 |
茨城事務所 | 水戸地方合同庁舎(国施設)内 ※平成30年3月廃止 |
3. 復興庁の体制
(1) 復興庁の組織体制の概要
1) 柔軟な組織体制
復興庁は、局課制を取らず、統括官の下に参事官を置き、大臣の命によりその参事官を長とする等の班体制を柔軟に組織して活動する、統括官・参事官制ともいうべき体制を取り、事務の遂行に当たっているが、さらに、多くの職員が本来の所属の班だけでなく、複数の班に併任的に所属して業務を行っている(後述の兼務班、リエゾン等)。これは、復興庁の組織規模が他の府省に比べかなり小さいこと、時限の組織であり、かつ、事務量・内容が時の経過とともに変動することが予想されることから、内部機構を固定的なものとせずその時点のニーズに柔軟に対応できるようにすることが適当であると考えられたためである。ただし、統括官が複数置かれる場合等について、相互に明確な分掌関係が形成され、かつ、内閣総理大臣、復興大臣、事務次官、統括官等と上下に置かれるという関係が整えられ、系統的なヒエラルキー構造が構成されることは、内閣府や各省等と変わることはない(設置法第5条第1項)。
実際においても、復興の進捗等に伴ってその時々の課題に対応し、班編成や統括官等の担務が柔軟に見直されてきた。また、「新しい東北」、復興五輪、10周年事業等といった新たな政策課題への対応が急遽必要となった場合等は、必要に応じ、当該業務を担う班を設け、他の班に所属している職員に併任をかけて担当させた。
また、復興の推進に当たっては、関係省庁との密接な連携・適切な役割分担を図りながら業務を実施することが重要であるが、こうした関係省庁との連絡・調整については、復興庁職員が関係省庁からの出向者で構成されているという組織の特性を生かし、当該省庁出身者を連絡調整担当(リエゾン)に指名し、原則として、リエゾン経由で行うこととしている。当該省庁の業務内容や組織を熟知し、人的つながりも有するリエゾンが介在することで、連絡・調整の円滑化・効率化を図る趣旨である。
2) 主な組織の概要
復興庁の組織体制については、これまでに班編成・体制が一部変更はされているものの、10年間を通じ、主な班及びその担当業務については、おおむね下記のとおりである。
なお、復興庁の組織体制について、復興庁の前身である復興対策本部事務局、復興庁設置時、当初の設置期限の経過時点の組織体制を比較すると、下記のとおりである。10年間の組織体制の変遷は、(2)~(4)で詳述する。

a. 官房機能等
本庁の人事・庶務、文書審査、予算・会計、国会対応、政策評価、広報等の内部管理事務を担当するいわゆる官房業務は、それぞれ、総括班、法制班、国会班、企画班、予算会計班、広報班といった組織が担当している。また、庁内・政府内の政策的なとりまとめ機能については調査・調整班(復興基本方針班)、地元との窓口機能(政務の出張や、自治体からの要望書のとりまとめ等)については地域班が担当している。
b. 分野別施策等
復興庁は、各省庁の施策を取りまとめるだけでなく、復興特別区域制度、復興交付金といった、東日本大震災特有の制度を直接所管しており、これらの制度設計や執行を担当する復興特区班、復興交付金班が置かれた。
また、被災者支援、産業・生業の再生、インフラ整備といった重要な政策課題に対応するため、インフラ構築班、被災者支援班、産業復興班、医療・福祉班、雇用促進班、ボランティア・公益的民間連携班、支援機構班などが置かれ、被災者支援総合交付金や株式会社東日本大震災事業者支援機構といった復興庁で直接所管する施策に係る制度設計や執行を担当するほか、関係省庁と連携し、当該分野に係る復興状況等のとりまとめや、特定分野の戦略・関係省庁会議のとりまとめ等を担当している。
なお、復興の初期段階においては、がれき処理を担当する災害廃棄物処理・環境班、復興ビジョン・計画班が存在したが、いずれも兼務班であり、業務の実態に照らし、廃止又はリエゾン業務に吸収されている。
c. 原子力災害からの復興
原子力災害からの復興については、地震・津波被災地域とは異なる固有の対応業務が多く存在することから、原子力災害復興班として一つの大きなグループを設けつつ、当該班全体を統括する福島総括班を設け、a.b.記載の組織とは別に、福島復興関連に特化した予算班、インフラ構築班、福島関連法制班が置かれるとともに、原子力災害固有の課題である除染等を推進するために環境班が、住宅整備・町外コミュニティ・賠償等を担当するために制度班が置かれた。
また、こうした班のほか、福島県原子力被災12市町村等については、要望対応や個別の復興事業等について、それぞれの市町村との一元的な窓口機能を担う「まち担当」(参事官以下)がバーチャル班的に置かれている。これは、市町村ごとの状況に応じた対応を行うことで、円滑に復興を推進するという趣旨によるものである。
d. 兼務班・リエゾン
先述のとおり、多くの職員は、本来の所属の班(基本的には物理的に座席がある班)の業務のほか、いわゆる兼務班やリエゾン(物理的には座席がなく、本来の所属班とは別の参事官の指揮下に属することが多い。)を兼任し、当該業務も担当している。兼務班もリエゾンも、班の長としては参事官級職員が充てられている。
兼務班の中には、兼務班を本来業務(本来の所属班)とする専任の職員と、兼任の職員が両方混在するパターンもあれば、全員が本来業務を持ち、兼任として兼務班業務に当たっているパターンもある。兼務班の具体例としては、例えば、「新しい東北」チーム、企業連携班、復興五輪チーム、10周年事業担当などがある。
各省庁との連絡・調整窓口を担当するリエゾンも、兼務班と同様、本来の所属の班の業務とは別に、各省庁出身の職員に兼任的に割り当てられている業務である。
具体的には、内閣府(消費者庁等を含み、右記を除く)、内閣府(防災関係等)、警察庁、金融庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省(厚生関係、労働関係それぞれ)、経済産業省、農林水産省、国土交通省、観光庁、環境省、原子力規制庁、防衛省について、リエゾンが置かれている。
e. 復興局等
前述の国会での議論にもあった通り、被災地に近い現地において、被災公共団体からの要望や相談にワンストップで対応する一元的な窓口となる組織として、岩手県、宮城県及び福島県の被災3県(当初は県庁所在地)に復興局が置かれたほか、復興局から地理的に離れている、特に被害が甚大だった沿岸部には、支所が置かれるとともに、被災3県以外の地域に関しては事務所が置かれた。
復興局においては、現場主義を実践し、常時被災自治体に「御用聞き」に伺い、全ての事業箇所の現地確認を行うなど、迅速に復興事業のニーズや現地の実情を把握するよう努めていた。
例えば、通常の国の補助事業採択の手続きでは自治体が国に説明に行くことが多いが、復興交付金においては、本庁の地域担当が被災地に赴き、事業のヒアリングを現地で行い、復興予算を充てるべき事業であることを確認するとともに、他の地域の事業のコスト事例などを提供し、事業規模の絞り込みや精査を行うなど、適切な復興交付金事業計画となるように、計画策定支援を行った。
このように、復興局が現地のニーズの吸い上げや現地の状況の把握等を行い、本庁が県をまたがる類似事例の横展開を行うなど、本庁と復興局で連携して被災地に寄り添いつつ現場主義を実践した。
3) 人員体制の変遷
復興庁の職員の総数については、復興庁籍の定員のほか、他省庁籍の実員で構成されている。
各年4月1日時点の常駐職員数の推移でみると、下記のとおり、平成25年度から復興局の人員体制が本格的に整えられ、まちづくりやインフラ整備をはじめとする復興事業が本格化した平成26年度において全職員数及び復興局職員数がピークを迎え、平成29年度にはその人数が減少し、復興事業がおおむね完了し復興交付金が廃止された令和3年度には岩手・宮城の復興局職員が大幅に減少している。

H24 | H25 | H26 | H27 | H28 | H29 | H30 | H31/R1 | R2 | R3 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
本庁 | 201 | 220 | 236 | 236 | 241 | 247 | 247 | 254 | 253 | 251 |
復興局 | 109 | 190 | 310 | 305 | 262 | 237 | 266 | 253 | 252 | 185 |
合計 | 310 | 410 | 546 | 541 | 503 | 484 | 513 | 507 | 505 | 436 |
※ 各年度4月1日時点の職員数
※ 各府省庁からの出向者である常勤職員のほか、政策調査官や行政実務研修員などの非常勤職員も含む。
復興庁の常勤職員は、その多くは各府省庁出身者であり、1、2年間程度の出向や併任という形で確保されている。復興庁の設置当初は、復興対策本部事務局の職員の多くがそのまま復興庁職員に移行するとともに(2.参照)、新たに各府省庁から追加の人員も集められた。
こうして各府省庁から集められた職員について、出身府省庁別に10年間の延べ人数を見ると、下記のようになっている。幹部については、これまで、事務次官は、国土交通省及び総務省出身の職員が就任し、統括官や審議官は、国土交通省、経済産業省、財務省、総務省出身の職員が就任してきた。
なお、各府省庁出身者のほか、全国の都道府県・市町村や(独)都市再生機構等の関係団体からも常勤職員や行政実務研修員として派遣されている。
(出身府省庁・役職別)

※ 復興庁の作成した在職者名簿から抽出
※ 対象期間:平成24年度(平成24年4月)~令和2年度(令和3年3月)に着任の人事発令があった者
※ 「本庁」に発令があった者であっても、実際の勤務地が他省庁や復興局等と推測される者は除外
※ 左から、原則、合計人数(青字)の多い省庁
※ 「幹部」:事務次官、統括官、審議官の合計 「参事官級」:参事官、企画官の合計
「その他」:企画調整官、企画調査官、補佐、主査等
こうした職員のほか、民間企業や経済団体の職員が、「政策調査官」として復興庁に派遣されてきた。こうした民間出身の職員には、行政職員にはない専門的知見や独自の人脈を生かした活躍が期待された。
(各年度4月1日現在)

H24 | H25 | H26 | H27 | H28 | H29 | H30 | H31/R1 | R2 | R3 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
本庁 | 11 | 15 | 19 | 18 | 18 | 16 | 16 | 17 | 19 | 15 |
復興局 | 10 | 12 | 22 | 21 | 15 | 11 | 10 | 7 | 4 | 2 |
合計 | 21 | 27 | 41 | 39 | 33 | 27 | 26 | 24 | 23 | 17 |
※ 民間企業や経済団体から、政策調査官として本庁又は復興局に派遣され、又は公募により、配属された者
※ 対象期間:平成24年度から令和3年度の各年度の4月1日時点において、在籍した者
株式会社アールシーコア | 株式会社JTB | 日本電気株式会社 | 名港海運株式会社 |
株式会社IHI | 城南信用金庫 | 日本航空株式会社 | 森永乳業株式会社 |
株式会社IHI インフラ建設 | 住友化学株式会社 | 日本商工会議所 | ヤフー株式会社 |
株式会社IHI インフラシステム | 積水化学工業株式会社 | 日本たばこ産業株式会社 | ヤマト運輸株式会社 |
IHI 運搬機械株式会社 | 仙台商工会議所 | 日本郵便株式会社 | 株式会社LIXIL |
あいおいニッセイ同和損害保険株式会社 | 株式会社仙台三越 | 株式会社博報堂 | 株式会社ローソン |
アイリスオーヤマ株式会社 | 損害保険ジャパン株式会社 | パナソニック株式会社 | |
アサヒグループホールディングス株式会社 | 株式会社 東急エージェンシー | 東日本電信電話株式会社 | |
アルプスアルパイン株式会社 | 東京海上日動火災保険株式会社 | 東日本旅客鉄道株式会社 | |
株式会社NTTドコモ | 東京急行電鉄株式会社 | 株式会社日立製作所 | |
京阪ホールディングス株式会社 | 株式会社東芝 | 富士通株式会社 | |
KDDI 株式会社 | 東北電力株式会社 | 三井住友海上火災保険株式会社 | |
株式会社KDDI エボルバ | 東レ株式会社 | 三井不動産株式会社 | |
コクヨ株式会社 | TOTO 株式会社 | 三越伊勢丹ホールディングス株式会社 | |
株式会社商工組合中央金庫 | 凸版印刷株式会社 | 三菱地所株式会社 |
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat4/sub-cat4-1/20210312131530.html (令和5年7月26日閲覧)
※ 上記事例集において掲載を辞退した1社は、本書でも掲載していない。
※ 政策調査官のほか、期間業務職員又は復興局復興推進参与として派遣された者も含む。
(2) 復興庁設置時の体制
復興庁は、平成24年2月10日、下記の組織体制により、250人体制(本庁160人、復興局90人)で発足した。


(3) 主な組織再編・体制強化等
1) 復興庁職員の定員化(平成24年4月)
復興庁職員は、平成24年2月10日の発足時(平成23年度)は、各府省庁に所属する職員としての身分のまま、復興庁職員としての「併任」「兼任」の辞令を受けて、事実上は復興庁に常勤職員として勤務していた。
国の行政機関の職員の定員の上限及び行政機関別の職員の定員の上限は行政機関の職員の定員に関する法律(昭和44年法律第33号)で定められているが、復興庁設置法制定時の附則第3条において、国の行政機関である復興庁もこの適用を受けることが明記された。
並行して、平成24年度の機構・定員において、今後の業務量の変動が見込まれる中、10年間にわたって必要となる中核・基幹的な職員については、復興庁の定員として、118人が認められた。
(参考)
平成24年度の定員:118人(うち指定職7人(事務次官、統括官2人、審議官、復興局長3人))
なお、10年間の定員の推移は、下記のとおりである。
H24 | H25 | H26 | H27 | H28 | H29 | H30 | H31 | R2 | R3 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
本庁 | 77 | 91 | 116 | 122 | 127 | 130 | 135 | 140 | 143 | 143 |
復興局 | 41 | 67 | 67 | 69 | 70 | 72 | 72 | 72 | 72 | 65 |
合計 | 118 | 158 | 183 | 191 | 197 | 202 | 207 | 212 | 215 | 208 |
2) 原子力災害復興推進チーム等(平成24年10月)
地震・津波災害からの復興については、復興庁が政府全体を統括し、必要に応じ、関係府省庁に指示を出すとの体制が確立されたが、原子力災害からの復興については全体を統括する部署がなく、しばしば復興に向けた自治体との議論等に支障を来したため、平成24年10月16日、官房長官と復興大臣をチーム長とする「原子力災害復興推進チーム」を新設することを復興推進会議で決定し59、復興の前提となる原子力事故・放射能対策をはじめとする福島の復興に関する施策の全体調整・新たな課題についての役割分担と対応方針等の調整を閣僚レベルで迅速に行うこととした。同年11月9日に第1回会合が開催された。
- 59 「原子力災害復興推進チームの設置について」(平成24年10月16日復興推進会議決定)
https://www.reconstruction.go.jp/topics/post_88.html (令和5年7月26日閲覧)

これに合わせ、平成25年度機構・定員においては、復興庁・復興局の人員体制の強化も図られた。具体的には、まず、復興庁の業務を①官房機能、②地震・津波からの復興、③原子力災害からの復興の3統括官体制とすることとし、新たに福島・原子力災害からの復興を担当する統括官が置かれることとなり、平成25年度の定員として40人が認められた。
また、福島県各市町村の復興計画策定の推進のため、復興庁本庁において各自治体担当の参事官を決め、復興庁・各省庁・福島復興局の職員でチームを編成し、支援を行うこととした。
3) 福島対応体制の強化等(平成25年1月~)
第2次安倍内閣が発足し、第5回復興推進会議(平成25年1月10日)における総理指示に基づき、本節4.(2)記載の経緯により、福島の復興に係る体制の強化として、福島復興再生総局の設置等がなされた。また、こうした経緯ともあいまって、福島復興局をはじめとする復興庁の人員体制の強化が図られた。特に福島復興局では、避難指示区域の被災市町村に対応する地域班の強化、帰還・再生班の新設、原子力被災自治体以外の福島自治体の復興や風評被害等に対応する中通り・会津班の新設等の体制強化が図られた。
平成25年4月時点常駐職員数:324人(うち本庁:197人)
4) 産業復興支援グループの創設(平成25年4月)
産業復興を加速させるため、平成25年4月、産業復興支援グループを新たに創設した。産業復興支援グループには、全体を統括する産業復興総括班のほか、復興特区班、企業連携班、支援機構班、産業復興班、雇用促進班、科学技術班が所属した。
5) 「新しい東北」担当組織の創設(平成24年12月~)
平成24年12月26日に閣議決定された第2次安倍内閣の基本方針を受けて、復興推進委員会が取りまとめた「「新しい東北」の創造に向けて(中間とりまとめ)」(平成25年6月5日)に基づく各種施策の立案・実施に係る業務が新たに必要となったことから、平成24年12月以降、専任の総合政策班を置くほか、兼務職員で対応する体制をとった。平成27年4月以降は、「新しい東北」チームを新たに創設し、総合政策班が中核となり、産業総括班等の関係班と連携してチームとして対応に当たっている。
6) 帰還環境整備センターの創設(平成25年12月)
田村市、楢葉町、川内村、葛尾村をはじめとした地域において、避難指示の解除に向けて、今後1、2年以内に住民が帰還するための環境を整える必要が生じた。例えば、これらの地域では、市町村の枠を超えた調整や現地での現況確認が必要な案件が増加していた60。このため、福島県双葉郡地域を中心として、原子力災害に係る避難住民の帰還を支援するための関係市町村との調整業務を行うため、平成25年12月3日、福島県川内村に「帰還環境整備センター」を設置した。
なお、平成29年5月30日に富岡町に移転し、令和3年4月1日に、移住等(原子力災害の被災者以外の者の移住及び定住)を業務に追加するとともに、それまでの「帰還環境整備センター」から「帰還・移住等環境整備センター」へと名称変更がされている。
- 60 平成25年11月26日 根本復興大臣記者会見にて発表
7) 原子力災害復興班等の体制強化(平成26年4月)
現場主義を徹底し、地域の実情に応じたニーズにきめ細かく対応するため、被災自治体との連絡調整が必要となる業務に係る人員体制の強化を図った。
8) 青森事務所の廃止(平成28年3月)
青森県内における復興事業に相当程度の進展が見られることから、平成28年3月末を以て、復興庁青森事務所(所在地:青森県八戸合同庁舎2階、職員数:3人)が閉鎖された61。
なお、事務所閉鎖後の青森県及び青森県被災市町(八戸市、三沢市、おいらせ町、階上町)に係る窓口業務等については、平成28年度以降、引き続き万全の対応体制を継続するため、岩手復興局(一部本庁)に引き継ぐこととされた。
- 61 平成28年3月15日 髙木復興大臣記者会見にて発表
9) 業務体制の変更等(平成28年4月~)
当初5年間の集中復興期間の終了に伴い、復興庁の業務体制についても見直しがなされた。復興庁設置当時から兼務班として存在していた、がれき処理を担当する「災害廃棄物処理・環境班」、自治体の復興計画の策定を支援してきた「復興ビジョン・計画班」等について、業務の実態に照らし、廃止又はリエゾン業務に吸収された。
10) 復興庁本庁庁舎移転(平成28年5月)
財政制度等審議会(平成25年6月開催)により、中央合同庁舎第8号館の建設に伴う庁舎等使用調整の一環として、復興庁等を中央合同庁舎4号館に移転することが決定されたことから、復興庁本庁の執務場所が、集中復興期間終了後の平成28年5月2日、従来の三会堂ビルから現在の中央合同庁舎第4号館に移転した。
11) 復興五輪推進チームの設置(平成29年11月)
復興庁において、オリンピック・パラリンピックに関する被災地からの要望を伝える等により復興五輪を推進するため、平成29年11月21日、本庁に「復興五輪推進官」を設置し、8人規模の「復興五輪推進チーム」を創設した(土井副大臣の担務に、復興五輪の推進を追加。)62。
- 62 平成29年11月21日 吉野復興大臣記者会見にて発表
12) 茨城事務所の廃止(平成30年3月)
茨城県内における復興事業の進展に鑑み、平成30年3月31日を以て、復興庁茨城事務所(所在地:水戸地方合同庁舎4階、職員数:3人)が閉鎖された。
なお、事務所閉鎖後の茨城に関する業務については、平成30年4月以降、本庁に「茨城復興推進官」を設置するなどの体制を継続することとされた63。
- 63 「復興庁・茨城事務所の閉鎖について」平成30年3月13日、復興庁。 同日の吉野復興大臣記者会見にて発表
13) 福島復興局の支所の移転(令和元年5月)
特定復興再生拠点区域や双葉町中野地区の産業拠点の整備が進み、大熊町でも、大川原地区、中屋敷地区の避難指示が解除されるなど、帰還に向けたまちづくりが加速していることに鑑み、今後、これらの地域により近い所で、支援に取り組んでいけるよう、福島復興局の2支所について、令和元年5月7日、「いわき支所」を「富岡町」に、「南相馬支所」を「浪江町」にそれぞれ移転した64。
- 64 平成31年4月16日 渡辺復興大臣記者会見
(4) 復興庁の設置期限の延長
1) 設置期限に係る検討経緯
<平成31年3月の基本方針変更>
復興庁設置法における当初の設置期限は、令和3年3月31日であった。復興・創生期間の終了(令和2年度末)まで2年強となる中で、同期間内に復興事業を加速化するための課題の整理や、同期間後も必要な取組等について検討するため、被災5県(青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県)に対して、復興事業の進捗状況、同期間後も継続要望がある復興事業の調査を実施した。この調査結果を踏まえ、平成30年12月18日、「復興・創生期間後も対応が必要な課題の整理」(以下、「課題の整理」という。)を公表した 。
平成30年度中に平成28年基本方針を見直すこととし、その中で、「復興・創生期間後の復興の進め方について、後継組織のあり方も含め、一定の方向性を示す」こととされた。
平成31年2月26日の復興推進委員会において基本方針変更の案文が議題となった際、復興庁の後継組織についての原案は、下記の通りであった。
平成31年2月26日復興推進委員会時点の基本方針変更案
(4)後継組織について
(略)
今後、復興施策の進捗状況や効果検証、被災地方公共団体の要望等を踏まえ、復興・創生期間後も対応が必要な事業を確実に実施できるよう、後継組織のあり方について検討する。
この点について、岩手、宮城、福島県より、それぞれ下記の指摘があった。
(岩手県副知事(代理))
後継組織につきましては、日本全体で東日本大震災の復興に取り組むという基本的な考え方を、引き続き国民的に共有していただくことが必要だと考えております。被災市町村からは、現行法の時限措置であるということは承知した上でございますが、復興庁の存続についての要望もいただいております。また、特に担当大臣を設置してほしいという意見も出されております。
被災地の意見等を十分お聞きとりいただきまして、現在の復興庁と同様に、存在感のある形での組織、この表現につきましては、達増知事が年末年始のインタビューの中で、この点についてお尋ねがあった場合にこういう表現をさせていただいておりますので、改めてこの表現で書かせていただいていますが、存在感のある形での組織ということでお願い申し上げます。
(宮城県東京事務所長(代理))
復興庁及び復興局の後継組織のあり方につきましては、これまで復興庁が担ってきた一元的な窓口や省庁横断的な企画調整の機能は、復興の進捗に大きく貢献しており、復興・創生期間後も自立までの道筋がつくまでの間、こうした機能が維持されることが非常に重要であると考えております。特に、被災地の復興のために今後とも政治のリーダーシップが発揮されるよう、引き続き、担当大臣を置いた形での組織を望む声が多数寄せられているところでございます。
(福島県知事)
復興・創生期間後において国が責任を持って復興を進めるためには、総理大臣をはじめ、関係大臣と率直に意見交換ができる担当大臣の存在が重要であります。大臣の設置と、大臣がリーダーシップを発揮することができる体制の確保をお願いいたします。
こうした指摘がある中、翌2月27日、渡辺復興大臣から安倍総理に復興の基本方針の見直しについて説明した際、総理より、「特に後継組織については、現復興庁と同じような司令塔として、各省庁の縦割りを廃し、政治の責任とリーダーシップの下で、東日本大震災から復興を成し遂げるための組織とするよう検討を進めてほしい」との指示があり、案文を修正の上で、同年3月上旬の閣議決定を目指すこととなった65。
上記の総理指示を踏まえて検討した結果、下記(下線部)の一文が追記された。
- 65 渡辺復興大臣より、総理説明後のぶら下がり会見においてこの旨発言
(4)後継組織について
(略)
後継組織として、復興庁と同じような司令塔として各省庁の縦割りを排し、政治の責任とリーダーシップの下で東日本大震災からの復興を成し遂げるための組織を置く。
今後、復興施策の進捗状況や効果検証、被災地方公共団体の要望等を踏まえ、復興・創生期間後も対応が必要な事業を確実に実施できるよう、後継組織のあり方について検討する。
<「「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針」>
この頃、復興庁の「後継組織」については、様々な議論が巻き起こった。
特に、復興と防災の両方を担う「復興・防災庁」「防災省」といった組織を期待する提言等が活発になされた66。しかし、最終的には、復興庁は防災組織と統合するのではなく、引き続き単独で延長されることとなった67。その一方で、下記の通り、防災と復興が連携していく旨が基本方針に盛り込まれた。また、与党幹部から、後継組織を内閣府に置くとの案が示されたこともあった68。
その後、令和元年8月5日、自由民主党・公明党「東日本大震災 復興加速化のための第8次提言」では、復興庁の後継組織について、ハード事業において復興期間を超える事業が残されているほか、心のケアなどの支援がこれからも必要とされている点、原子力事故災害被災地域でも帰還困難区域の避難指示解除の目途がたっていないところもある点、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉処理にも30年間から40年間もかかると言われている点、復興を必ず成し遂げていかなければならない責任があり、住民の期待と信頼を裏切るようなことがあってはならない点などを挙げ、「復興庁の後継組織は、現行のまま総理直轄の組織とし、専任の大臣を置くこと。また、復興施策の企画・立案や復興事業予算の一括要求、地域の要望や課題にワンストップで対応できる機能など、これまでの総合調整機能を維持すること。」また「近年多発する大規模災害に機動的に対する防災力の向上に資するため、東日本大震災からの復興で得た教訓や蓄積されたノウハウを政府防災部局や地方公共団体と共有するなど、防災と復興の有機的連携を図る措置を講ずること。」が盛り込まれた。
その後、「復興・創生期間」後の基本方針について検討がされる中、東日本大震災の復興施策の総括に関するワーキンググループ((6)で後述)による復興施策の総括を踏まえ69、令和元年11月7日復興推進委員会において示された基本方針の「骨子案」及び同年12月20日に閣議決定された「「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針」(以下「令和元年基本方針」という。)において、復興庁の設置期間の10年延長等が明記された。
具体的な記述は次のとおりである。
- 66 例えば、「『復興・創生期間』後も必要となる復興及び防災・減災体制の確立を求める提言」(令和元年7月23日全国知事会)では「これまでも全国知事会として『防災省(仮称)』の創設を提言してきた」としつつ「国民の生命・財産を守る防災・減災対策及び国土強靱化を強力に推進するため、東日本大震災の『復興・創生期間』の終了後も被災地が復興を成し遂げられる事業や支援を実施するとともに、大規模災害を想定し事前復興から復旧・復興までの一連の対策を担う専任の省庁の創設及びそれを指揮する専任の大臣を置くこと」を提言。
- 67 令和元年11月27日(参)東日本大震災復興特別委員会において、田中復興大臣は「防災も担当することとなると、一人の大臣が、東日本大震災の復興のみならず、全国で多発する災害への対応まで担当するということが想定をされることになります。そのような体制では、まだ道半ばである東日本大震災からの復興に対し十分な役割を果たすことは困難である」旨の答弁している。
- 68 令和元年3月5日公明党の山口代表記者会見において、復興庁の後継組織については福島の復興に重きを置き、内閣府に置くべき等の発言があったとして、同月8日の渡辺復興大臣記者会見の場で話題になっている。
- 69 ただし、東日本大震災の復興施策の総括に関するワーキンググループは、政府の「復興施策」を対象としており、政府の「組織」に関する事項は、対象外であった。
(4)後継組織について
(略)
・ 復興の司令塔として各省庁の縦割りを排し、政治の責任とリーダーシップの下で東日本大震災からの復興を成し遂げるため、復興庁の設置期間を復興・創生期間後10年間延長する。被災地方公共団体からの強い要望等も踏まえ、復興庁は引き続き内閣直属の組織とし、内閣総理大臣を主任の大臣とするとともに、これを助け、復興庁の事務を統括する等のために復興大臣を置き、また、復興事業予算の一括要求や地方公共団体からの要望等へのワンストップ対応など、現行の総合調整機能を維持する。
・ 近年多発する大規模災害に対する防災力の向上等に資するため、これまで蓄積した復興に係るノウハウを関係行政機関等と共有し、活用する機能を追加する。これを通じて、防災と復興の有機的連携を図る。
・ 岩手県、宮城県及び福島県の復興局を維持して、「現場主義」の徹底により、復興の更なる加速化を図る。岩手復興局及び宮城復興局の位置については、復興の課題が集中する地域に組織の軸足を移すため、それぞれ沿岸域に変更し、盛岡市と仙台市には支所を設置する。具体の位置については、復興の進捗状況及び被災地方公共団体の意見等を踏まえ、決定する。福島は本格的な復興・再生の途上にあることから、福島復興局を引き続き福島市に置き、富岡町と浪江町の支所を維持する。
・ 復興・創生期間後の復興事業の更なる進捗状況を踏まえ、5年目に当たる令和7年度に組織のあり方について検討を行い、必要な措置を講じる。
また、令和元年基本方針においては、地震・津波被災地域については、復興・創生期間後5年間で復興事業がその役割を全うすることを目指すこと、原子力災害被災地域については、中長期的な対応が必要であり、当面10年間、本格的な復興及び再生に向けた取組を行うことが示された。
なお、復興庁存続の要否を判断するためには、同庁の設置期間の満了(令和2年度末)以降に政府として実施すべき復興施策を整理しなければならず、その結果、設置期間を延長することになれば、令和2年の通常国会で復興庁設置法の改正が必要になるものと想定された。このため、復興・創生期間終了(令和2年度末)の1年以上前に同期間後の復興の基本方針が策定され、復興庁の設置期間を10年間延長することが示された。また、令和元年基本方針については、復興庁設置法の改正等を踏まえて、令和2年度末に改定されることが当初から想定されていた。
これらを踏まえ、令和2年3月3日、復興庁の設置期間の10年間延長等を内容とする「復興庁設置法等の一部を改正する法律案」が閣議決定され、国会に提出された。また、同月10日の復興推進会議(第25回)・原子力災害対策本部会議(第51回)合同会合において報告された。
なお、本法案は、復興庁設置法のみならず、5つの復興関連法の改正を束ねる法律案であった。その概要は下記のとおりである(他の4法の改正内容は、2章3節3.4.及び4節2.参照)。
・復興庁設置法:復興庁設置期間を10年間延長、復興局の位置等の政令委任(岩手復興局及び宮城復興局の沿岸域への移設を想定)
・東日本大震災復興特別区域法:規制の特例等の対象地域を重点化、復興交付金の廃止
・福島復興再生特別措置法:帰還環境整備交付金の対象に移住等の促進追加、農地集積や6次産業化を促進する特例創設、福島イノベーション・コースト構想の推進及び風評被害が事業者の経営に及ぼす影響への対処に係る課税特例創設
・復興財源確保法・特別会計法:復興債の発行期間の延長 等
2) 国会審議の経緯
本法律案は、令和2年5月14日、(衆)本会議において趣旨説明・質疑がされ、同日、同月19日及び21日の(衆)東日本大震災復興特別委員会で質疑され、21日に賛成多数で可決し、附帯決議70が付され、翌22日の(衆)本会議で賛成多数で可決された。5月27日(参)本会議でも趣旨説明・質疑がされ、同日、同月29日及び6月3日の(参)東日本大震災復興特別委員会で質疑され、6月3日に賛成多数で可決され、附帯決議71が付され、5日の(参)本会議で賛成多数で可決・成立した。
同改正法(令和2年法律第46号)は、令和2年6月12日に公布・一部施行された。
法案審議における主な審議事項は以下のとおり。
- 70 (衆)附帯決議の内容は、設置法関係では、被災者支援施策のノウハウの新型コロナウイルスで苦境にある事業者支援策への活用、更なる権限強化、復興に係るノウハウの共有・活用、復興局の位置等。
- 71 (参)附帯決議の内容は、これまでに実施された復興施策の総括を行い、復興・創生期間後の各分野における取組、復興を支える仕組み及び組織の構築、体制強化、ノウハウ共有及び復興の記録の収集・整理・保存、等。
a. 復興庁の後継組織のあり方と復興知見の活用
改正案で示された復興庁の10年延長に関して、将来的に復興庁を復興構想会議の五百旗頭議長が主張するような防災復興庁としてはどうかという議論についての所感を求められ72、田中復興大臣からは、東日本大震災からの復興はまだ道半ばであり、被災自治体からもこれまで復興庁が担ってきた総合調整機能を継続するよう強い要望がある中、復興庁については引き続き東日本大震災からの復興に対する司令塔機能を維持するため現行の体制を継続することとした、蓄積した東日本大震災からの復興に係るノウハウについて関係行政機関等との共有、活用を進め、近年多発する大規模災害に対する防災力の向上に寄与していきたいとの答弁があった。
これに対して、改正案附則第3条にある復興の知見の活用が東日本大震災からの復興目的に限るものではないことの確認があり、田中復興大臣からは、この規定を通じて、関係行政機関等とのノウハウの共有、活用を一層進めて、復興の更なる推進を図るとともに、近年多発する大規模災害に対する防災力の向上にも寄与することと考えている旨答弁があった。
こうした議論も踏まえ、附帯決議には、これまで蓄積した復興に係るノウハウを関係行政機関と共有するとともに、復興の記録の収集・整理・保存等の取組を通じ、今後起こり得る大規模災害に活用していくことや、オンライン等の活用を含めた防災教育の拡充等が盛り込まれた。
- 72 第201回国会 衆議院 東日本大震災復興特別委員会 第6号(令和2年5月21日)玄葉光一郎(立国社会派)発言「復興構想会議で議長をお務めになられた五百旗頭真先生が、お手元にお配りさせていただいたような提言をされておられます。これは去年の三月八日の段階でありますけれども、要は、台風、地震含めて、どうも気候変動型に大きく変わった、私はもう大きな転換点を防災は迎えたというふうに申し上げて間違いないというふうに思っていますけれども、その防災のことも含めて、いずれ防災復興庁というものを創設した方がよいのではないかというような提言をされたんですね。(中略)こういった議論を田中大臣はどういうふうにお考えになられたのか。」
b. 復興局の位置の政令への委任
改正案で政令に委任するとされた復興局の位置について、岩手、宮城復興局の沿岸移設の検討状況や、盛岡市、仙台市の事務所の移設後の扱いについての質問があり73、政府参考人より両復興局の具体的な位置は被災自治体の意見などを踏まえながら、今後決定予定であること、盛岡市、仙台市についてはこれまで行ってきた業務の継続性の確保の観点から、それぞれ復興局の支所を設置する予定である旨答弁があった。
こうした議論を踏まえ、附帯決議において、復興局の位置を政令で定めるに当たって被災地方公共団体の意見を十分に踏まえて決定すること等が盛り込まれた。
- 73 第201回国会 衆議院 東日本大震災復興特別委員会 第6号(令和2年5月21日)阿久津幸彦(立)発言「岩手復興局、宮城復興局は沿岸部に移設とのことですけれども、移設先は決まったのか、その見通しは、おわかりになれば教えていただきたいと思います。また、岩手県及び宮城県の県庁所在地である盛岡市と仙台市の事務所は支所としてそれぞれ残すという理解でよろしいのかどうか、お答えいただきたいと思います。」
3) 期限延長時の組織法令の改正点
同改正法による復興庁設置法の改正点(一部、政令事項含む。)は、下記のとおりである。
・復興庁の廃止期限の延長(第21条関係)
復興・創生期間後も各省庁の縦割りを排し、政治の責任とリーダーシップの下で東日本大震災からの復興を成し遂げるため、復興庁の廃止期限を「平成33年3月31日」から「令和13年3月31日」に改正し、10年間延長した。
・関係地方公共団体に対する情報提供等(第4条関係)
復興を集中的かつ重点的に推進していくため、復興庁が関係地方公共団体に対して行う情報提供・助言等を、従前は「関係地方公共団体からの求めに応じて」行うこととしていたが、「求めに応じ」との記載を削除し、プッシュ型に見直した。
・復興局の位置等の政令委任(第17条関係)
令和元年基本方針において、「岩手復興局及び宮城復興局の位置については、復興の課題が集中する地域に組織の軸足を移すため、それぞれ沿岸域に変更し、盛岡市と仙台市には支所を設置する。具体的な位置については、復興の進捗状況及び被災地方公共団体の意見等を踏まえ、決定する」こととされていた。同年9月、行政需要の変化に機動的かつ柔軟に対応し、東日本大震災からの復興の加速化を図るため、復興局の名称、位置及び管轄区域を政令で定めることとした。なお、政令において、岩手県、宮城県及び福島県の復興局を維持しつつ、復興の進捗状況に応じて、復興局をより効果的に機能させる観点から、岩手復興局及び宮城復興局の位置については、復興の課題が集中する地域に組織の軸足を移すため、それぞれ釜石市及び石巻市に変更した。
・東日本大震災からの復興に関する知見の活用(改正法附則第3条関係)
政府全体として、東日本大震災からの復興の一層の推進に当たり、これまでに蓄積された復興に関する知見を活用することを改正法の附則に明記した(復興庁設置法の附則ではない)。
・国務大臣の増員の維持(改正法附則第20条関係)
内閣法(昭和22年法律第5号)附則における国務大臣の増員に係る必要な規定順の整備を行い、復興庁が廃止されるまでの間の国務大臣1人の増員を維持することとした。
4) 復興庁の組織体制の変更
復興庁設置法の改正内容も踏まえ、復興庁の延長に当たっては、第2期復興・創生期間後の復興庁の業務体制の検討がなされ、令和3年度は、全ての機構・定員について10年間の時限延長(5年後に見直し)がされるとともに、以下の組織再編が行われた。
a. 復興知見に係る体制の創設
「「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針」(令和元年12月20日閣議決定)では、「近年多発する大規模災害に対する防災力の向上等に資するため、これまで蓄積した復興に係るノウハウを関係行政機関等と共有し、活用する機能を追加する。これを通じて、防災と復興の有機的連携を図る」こととされた。前述の第8次与党提言においても、「近年多発する大規模災害に機動的に対する防災力の向上に資するため、東日本大震災からの復興で得た教訓や蓄積されたノウハウを政府防災部局や地方公共団体と共有するなど、防災と復興の有機的連携を図る措置を講ずる」旨提言されていた。前述の通り、こうした趣旨は、改正法附則第3条に盛り込まれたところである。以上を踏まえ、復興庁に、復興に係るノウハウの共有等を専門に担当する「復興知見班」を設けるとともに、内閣府(防災担当)との兼任の担当審議官を置くこととした74。他方、後述の通り、統括官1人を廃止した。
また、復興交付金や「新しい東北」に関する業務など、業務量の減少が見込まれる業務を担当する班から、新たに業務量が増加する班への組織再編が行われた。
- 74 令和3年3月30日平沢復興大臣記者会見にて「近年多発する大規模災害に対する防災力の向上等に資するため、これまで蓄積した復興にかかる知見の活用を進める観点から、新たに審議官を設置しまして、これを内閣府防災担当と兼任させることにしております。これに合わせまして、本庁では近年多発する大規模災害に対しまして、これに備えるため、これまで復興庁に蓄積した知見の活用を推進する担当班、復興知見班と呼んでいますけど、これを早期設置する予定でございます。」
b. 国際教育研究拠点の整備等に係る体制増強等
国際教育研究拠点の整備に関する事務が増加するとともに、改正福島特措法に基づき、移住等の促進に向けた福島再生加速化交付金のメニューの追加等により福島の復興・再生に係る事務が増加する見込みであった。一方で、業務量の減少が見込まれる業務として、復興交付金の廃止に伴い当該交付金の執行等に係る事務、復興特区制度の重点化等に伴い特区法の運用に係る業務、「新しい東北」に関する業務があったことから、こうした班から業務量が増加する班への組織再編が行われた。
c. 地震・津波被災地域に係る体制の縮小
地震・津波被災地域においてはハード事業が進捗し、多くの事業が完了したこと等を踏まえ、インフラ整備等を担当する統括官を廃止することとした。また、同様に復興の進展に鑑み、復興交付金の廃止等に伴う市町村支援業務など業務量が減少することとなったことから、岩手復興局の定員を4人、宮城復興局の定員を3人、それぞれ減らすこととした。


なお、復興局の物理的な場所は、下記の通りとなった。
物理的な立地 | |
岩手復興局 | (釜石市) 小澤ビル内 |
宮古支所 | 長谷川ビル内 |
盛岡支所 | 朝日生命盛岡中央通ビル内 |
宮城復興局 | (石巻市) セシカ117内 ※令和3年5月より、シャロンビル内に移転 |
気仙沼支所 | 気仙沼市シルバー人材センター(市施設)内 |
仙台支所 | 仙台第一生命タワービル内 |
福島復興局 | (福島市) AXCビル内 |
浪江支所 | FFK会館内 |
富岡支所 | 勢和ビル内 |
帰還・移住等環境整備センター | 富岡町役場内 |
(5) 復興推進会議
1) 趣旨
「復興推進会議」は、復興庁設置法第13条に基づき、復興庁設立と同時に、復興庁に設置された。復興庁については、復興の迅速な実施を図る体制に移行する観点から、従前の閣僚級の合議制機関である復興対策本部を廃止し、独任制機関である復興庁を設置するものであるが、一方で、復興の総合調整・推進等を効果的かつ効率的に行う観点から、閣僚級の会議を設置するものである。
その所掌事務として、「復興のための施策の実施を推進すること」及び「復興のための施策について必要な関係機関相互の調整をすること」を司る。
2) 構成
同会議は、復興庁設置法第14条第1項から第4項に基づき、下記の者により組織される。
・議長:内閣総理大臣をもって充てる
・副議長:復興大臣をもって充てる
・議員:議長及び副議長以外の全ての国務大臣
内閣官房副長官、復興副大臣若しくは関係府省の副大臣、復興大臣政務官若しくは関係府省の大臣政務官又は国務大臣以外の関係行政機関の長のうちから、内閣総理大臣が任命する者
上記の議員のうち、内閣総理大臣が任命する者について、第1回から第4回会合にかけては、内閣官房副長官、復興副大臣及び復興大臣政務官の他、経済産業副大臣及び外務大臣政務官が任命されており、第5回会合以降は、前3者の他、経済産業副大臣及び環境副大臣が任命されている。
また、同条第5項から第7項により、会議に幹事を置き、関係行政機関の職員のうちから内閣総理大臣が任命することとし、会議の所掌事務について、議長、副議長及び議員を助けることとされている。
3) 運営及び実績
復興庁設置法第14条第8項に基づき、会議の組織及び運営に関し必要な事項については、復興推進会議令により定められている。同令により、議長による会務の総理、副議長による職務代理、復興庁統括官による庶務の処理の他、議事の手続その他復興推進会議の運営に関し必要な事項について、議長が会議に諮って定める旨が規定されている。
同令第4条に基づき、第1回復興推進会議に諮った上で、「復興推進会議運営要領」(平成24年2月14日復興推進会議議長決定)が定められている。同要領により、議長による招集、関係者の出席、審議内容等の公表、議事要旨及び議事録の公表等について定められている。
平成24年2月10日の設置以降、令和5年3月22日までに、同会議の会合を計37回開催し、同会議として下記の案件について決定している。
・原子力災害復興推進チームの設置について(平成24年10月16日)
・今後の復興関連予算に関する基本的な考え方(平成24年11月27日)
・今後の復旧・復興事業の規模と財源について(平成25年1月29日)
・平成28年度以降の復旧・復興事業について(平成27年6月24日)
・帰還困難区域の取扱いに関する考え方(平成28年8月31日 ※原子力災害対策本部との連名)
・令和3年度以降の復興の取組について(令和2年7月17日)
・国際教育研究拠点の整備について(令和2年12月18日)
・特定復興再生拠点区域外への帰還・居住に向けた避難指示解除に関する考え方(令和3年8月31日※原子力災害対策本部との連名)
・国際教育研究拠点の法人形態等について(令和3年11月26日)
・福島国際研究教育機構基本構想について(令和4年3月29日)
・福島国際研究教育機構の立地について(令和4年9月16日)
・福島国際研究教育機構に関する関係閣僚会議の開催について(令和4年12月27日)
また、上記の幹事による復興推進会議幹事会について、平成24年2月17日に第1回会合が開催された。冒頭に平野達男復興大臣より挨拶があり、復興事務次官より、幹事会の構成及び根拠の説明、第1回復興推進会議の報告、予算一括計上に関する運営への協力について発言された。現時点で、当該会合以降の開催実績はない。
(6) 復興推進委員会
1) 趣旨
基本法第24条に基づき、復興対策本部に置かれる組織の機能は、復興庁及びこれに置かれる組織に引き継がれるものとされたことを受けて、東日本大震災復興構想会議を引き継ぐものとして、復興庁設置法第15条に基づき、復興庁に有識者で構成される「復興推進委員会」が設置された。
その所掌事務として、「復興のための施策の実施状況を調査審議」すること及び「(内閣総理大臣の諮問に応じて、)復興に関する重要事項を調査審議」することを司る。この点について、東日本大震災復興構想会議においては、「復興に関する重要事項」から「施策の実施状況」の順で所掌事務が規定されていたところ、平成23年6月25日に同会議から内閣総理大臣に対して、「復興への提言」が建議されており、以後は「施策の実施状況」に比重が置かれると考えられたため、規定順が入れ替わっている。
2) 構成
同委員会は、復興庁設置法第16条第1項及び第2項により、委員長及び委員14人(計15人)以内をもって組織し、関係地方公共団体の長及び優れた識見を有する者のうちから内閣総理大臣が任命することとされている。
同委員会設置当初の平成24年2月10日時点では、上記構想会議から継続となる五百旗頭真委員長(同構想会議議長)、御厨貴委員長代理(同構想会議議長代理)、飯尾潤委員(同構想会議検討部会長)、岩手県知事、宮城県知事及び福島県知事の他、9人の委員が任命されている。
その後、平成25年3月6日に伊藤元重委員長以下15人が新たに任命され、委員の交代を経ながら、令和5年3月6日現在で今村文彦委員長以下15人の委員が任命されている。
3) 運営及び実績
復興庁設置法第16条第3項に基づき、委員会の組織及び運営に関し必要な事項について、復興推進委員会令により定められている。同令により、委員長及び委員の任期(2年、再任可、非常勤)、委員長代理の職務代理、専門委員の設置(内閣総理大臣による任命)、部会(委員会の定めにより設置、部会に属する委員及び専門委員は委員長が指名)、議事(定足数:委員の過半数が出席)、復興庁統括官による庶務の処理の他、議事の手続その他委員会の運営に関し必要な事項は、委員長が委員会に諮って定める旨が規定されている。
同令第8条に基づき、第1回復興推進委員会に諮った上で、委員長による招集、関係者の出席、審議内容等の公表(委員会は原則非公表)、議事録の公表等について規定した「復興推進委員会運営要領」(平成24年3月19日復興推進委員会委員長決定)が定められた。
平成30年6月8日に同要領を改正し、議事要旨の公表に係る規定を追加、更に令和3年6月11日に再度改正し、委員会は原則公表となった。
平成24年2月10日の設置以降、令和5年2月27日現在で、同委員会の会合を計41回開催している。
年月日 | 回 | 主な議題 | 委員 |
---|---|---|---|
平成24年 | |||
3月19日 | 第1回※ | 今後の審議の進め方について復興の課題について (政府、各県から報告) |
第1期 |
6月5日 | 第2回※ | 復旧・復興の現状と課題について | 第1期 |
8月1日 | 第3回※ | 中間報告に向けた討議 | 第1期 |
9月14日 | 第4回※ | 中間報告案について討議 | 第1期 |
11月9日 | 第5回 | 各県・各省庁からの復興の取組状況の報告 | 第1期 |
12月14日 | 第6回 | 外部専門家からの報告 原子力災害からの復興に関する取組状況について報告 |
第1期 |
平成25年 | |||
2月6日 | 第7回 | 平成24年度審議報告案について | 第1期 |
3月26日 | 第8回※ | 「新しい東北」の創造に向けた取組について | 第2期 |
4月25日 | 第9回 | 「元気で健やかな子どもの成長を見守る社会」について 「新しい東北」の創造に向けた共通課題について |
第2期 |
5月16日 | 第10回 | 3県ヒアリング 「「高齢者標準」による活力ある超高齢化社会」について 「地域資源を活用する社会」について |
第2期 |
5月28日 | 第11回 | 「持続可能なエネルギー社会について」 「回復力を持った社会基盤で先進する社会」について |
第2期 |
6月5日 | 第12回※ | 中間とりまとめについて | 第2期 |
9月25日 | 第13回 | 「新しい東北」の今後の進め方について/国会報告(案) | 第2期 |
平成26年 | |||
1月27日 | 第14回 | 復興の現状と取組について/「新しい東北」について | 第2期 |
4月18日 | 第15回 | 「新しい東北」の創造に向けて(提言) | 第2期 |
6月26日 | 第16回 | 「新しい東北」の創造に向けた取組について 産業復興に向けた取組について(報告) |
第2期 |
11月13日 | 第17回 | 「新しい東北」の創造に向けた取組について 産業復興に向けた取組について/国会報告(案) |
第2期 |
平成27年 | |||
5月26日 | 第18回 | 平成28年度以降の復興事業のあり方について 「新しい東北」の創造に向けた取組について |
第3期 |
11月11日 | 第19回 | 復興の加速化に向けて/国会報告(案) | 第3期 |
平成28年 | |||
1月19日 | 第20回 | 「復興・創生期間」における復興の基本方針(仮称)骨子案 東北の観光復興・震災5周年情報発信について |
第3期 |
3月4日 | 第21回 | 「復興・創生期間」における復興の基本方針案について 震災5周年を契機とした情報発信の強化について |
第3期 |
5月27日 | 第22回 | 「新しい東北」の取組状況等について 東北の観光復興・震災5周年情報発信について 3県からの報告(観光・情報発信) |
第3期 |
11月9日 | 第23回 | 国会報告(案)/3県からの報告(復興の取組) 復興推進委員会現地調査について(委員からの報告) |
第3期 |
平成29年 | |||
6月2日 | 第24回 | 復興の現状と課題/産業復興の現状と取組 「新しい東北」の創造に向けた課題と対応方針/3県からの報告 |
第4期 |
11月6日 | 第25回 | 復興の現状と課題/国会報告(案) 復興推進委員会現地調査について(委員からの報告) 3県からの報告 国立国会図書館東日本大震災アーカイブについて |
第4期 |
平成30年 | |||
6月8日 | 第26回 | 運営要領について(改正) 復興の現状と課題について/3県からの報告 |
第4期 |
11月9日 | 第27回 | 東日本大震災からの復興の状況に関する報告について 復興推進委員会現地調査(委員からの報告)/3県からの報告 |
第4期 |
平成31年/令和元年 | |||
1月21日 | 第28回 | 「『復興・創生期間』における東日本大震災からの復興の基本方針」の見直しについて(骨子案)/3県からの報告 有識者からのヒアリング |
第4期 |
2月26日 | 第29回 | 有識者からのヒアリング 「『復興・創生期間』における東日本大震災からの復興の基本方針」の見直し案について/3県からの報告 |
第4期 |
7月3日 | 第30回 | 有識者からのヒアリング 東日本大震災の復興施策の総括について 「『復興・創生期間』における東日本大震災からの復興の基本方針」の見直しについて/3県からの報告 |
第5期 |
10月23日 | 第31回 | 東日本大震災からの復興の状況に関する報告について 東日本大震災からの復興のための施策の総括に関するワーキンググループ報告について/3県からの報告 |
第5期 |
11月7日 | 第32回 | 「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針【骨子案】について 有識者からのヒアリング/3県からの報告 |
第5期 |
12月9日 | 第33回 | 「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針(案)について 有識者からのヒアリング/3県からの報告 |
第5期 |
令和2年 | |||
6月11日 | 第34回 | 今後の復興の取組について ・福島浜通り地域の国際教育研究拠点に関する有識者会議最終とりまとめ ・令和3年度以降の復興の取組について 新型コロナウイルス感染症の影響及び対応について/3県からの報告 |
第5期 |
11月30日 | 第35回 | 東日本大震災からの復興の状況に関する報告について 福島浜通り地域の国際教育研究拠点について 3県からの報告 復興推進委員会現地調査(委員からの報告) |
第5期 |
令和3年 | |||
3月1日 | 第36回 | 「「復興・創生期間」後における東日本大震災からの復興の基本方針」の改定案について 3県からの報告 |
第5期 |
6月11日 | 第37回 | 復興推進委員会運営要領の改正について 復興の現状と課題について 3県からの報告 |
第6期 |
令和4年 | |||
11月18日 | 第38回 | 福島浜通り地域の国際教育研究拠点について 東日本大震災からの復興の状況に関する報告について 復興推進委員会現地調査(委員からの報告) 3県からの報告 |
第6期 |
6月6日 | 第39回 | 福島国際研究教育機構について 3県からの報告 |
第6期 |
11月21日 | 第40回 | 東日本大震災からの復興の状況に関する報告について 復興推進委員会現地調査(委員からの報告) 3県からの報告 福島国際研究教育機構の中期目標に対する意見の検討体制について |
第6期 |
令和5年 | |||
2月27日 | 第41回 | 福島国際研究教育機構の中期目標(案)について 3県からの報告 |
第6期 |
年 | 施策日・施策地 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
平成24年 | 4月27日 | 福島県 | 5月15日 | 宮城県 | 5月16日 | 岩手県 |
10月27~28日 | 宮城県 | 11月13~15日 | 福島県 | 11月27~29日 | 岩手県 | |
12月4~6日 | 岩手県 宮城県 |
|||||
平成25年 | 4月13日 | 福島県 | 5月25日 | 宮城県 | 6月1~2日 | 岩手県 |
平成26年 | 9月3日 | 宮城県 | 9月30日~ 10月1日 |
岩手県 | 10月28日 | 福島県 |
平成27年 | 8月19日 | 福島県 | 8月24~25日 | 岩手県 | 10月14日 | 宮城県 |
平成28年 | 9月7日 | 福島県 | 10月5日 | 宮城県 | 10月19日 | 岩手県 |
平成29年 | 9月28日 | 宮城県 | 10月4日 | 福島県 | 10月11日 | 岩手県 |
平成30年 | 9月11日 | 宮城県 | 9月19~20日 | 岩手県 | 10月1日 | 福島県 |
令和元年 | 10月4日 | 福島県 | ※この他、東日本大震災の復興施策の総括に関するワーキンググループ(総括WG)による視察を以下で実施 8月2日福島県、8月9日岩手県、8月29日宮城県 |
|||
令和2年 | 9月9日 | 福島県 | 10月2日 | 岩手県 | 10月14日 | 宮城県 |
令和3年 | 10月8日 | 岩手県 | 10月15日 | 宮城県 | 10月25日 | 福島県 |
令和4年 | 9月12日 | 福島県 | 10月12日 | 岩手県 | 10月24日 | 宮城県 |
<東日本大震災の復興施策の総括に関するワーキンググループ(総括WG)>
東日本大震災から8年半余が経過し、当初の復興期間10年(令和2年度末の「復興・創生期間」の満了)まで、残すところわずかとなった中、平成31年3月、「「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針」が改定され、「復興・創生期間後も対応が必要な課題」について、「復興期間中に実施された復興施策の総括を適切に行った上で、今後の対応を検討する必要がある」旨示された。
これを受けて、令和元年7月3日の復興推進委員会において、同委員会の下に「東日本大震災の復興施策の総括に関するワーキンググループ」の設置を決定した。復興推進委員会委員長代理の秋池玲子氏(ボストンコンサルティンググループ、シニア・パートナー&マネージング・ディレクター)を座長、外部から増田寛也氏(東京大学公共政策大学院客員教授)を座長代理、構成員として、復興推進委員会委員から3人(白波瀬佐和子氏、田村圭子氏、松本順氏)、外部から2人(姥浦道生氏、藤沢烈氏)、計7人の有識者により構成された。なお、総括WGの運営に関する事項は、座長が定めることとされており、令和元年7月19日の第1回会合において、運営要領が決定された75。
同WGにおいて、これまでの復興施策の進捗状況の把握、効果検証等の復興施策の総括を実施した。同月22日から同年10月16日までの約3か月間で、計5回の会合を開催し、同月23日に報告書を取りまとめ、同委員会に報告された(本WGの開催経緯の詳細は、1章2節4.(4)も参照)。
また、WGにおける審議に資するため、構成員による現地視察を実施した。
(令和元年8月2日福島県、8月9日岩手県、8月29日宮城県)
なお、総括WGは、政府の「復興施策」を対象としており、政府の「組織」に関する事項は、対象外である。さらに、原子力災害については、今後、原子力発電所事故を発生させないことが前提であるため、今後の原子力災害に向けた教訓ではなく、東電福島第一原発事故に係る今後の取組に向けた教訓又は大規模災害一般に向けた教訓を対象とすることとされた。
- 75 「東日本大震災の復興施策の総括に関するワーキンググループ運営要領」令和元年7月19日、東日本大震災の復興施策の総括に関するワーキンググループ座長決定
4. 福島対応体制の強化
(1) 福島復興に係る政府の体制
原子力発電所事故に係る対応は、本節1.で記述したとおり、原子力災害対策本部を中心とした体制が当初から構築されているが、現在も、廃炉や処理水といった課題が存在するほか、引き続き多数の住民が避難を余儀なくされるなど、事故の中長期的な影響が続いており、このような状況に対処するため、政府一丸となって福島の復興・再生の取組を進める体制を構築している。
福島復興に係る現在の政府の体制の全体像は、下図のとおりである。

<オンサイト>
具体的には、原子力発電所敷地内の課題に係るいわゆる「オンサイト」の分野の課題に対しては、内閣官房長官を議長とする「廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議76」(平成25年9月3日原子力災害対策本部決定)の下、原子力災害対策本部の下に設置された「廃炉・汚染水対策チーム77」が中心となって、東電福島第一原発の廃炉や汚染水・処理水への対応を行っている7879。
「廃炉・汚染水対策チーム」は、「東京電力㈱福島第一原子力発電所の廃炉・汚染水対策の体制強化について」(平成25年9月10日原子力災害対策本部長決定)に基づき、経済産業大臣をチーム長として関係省庁の副大臣等をメンバーとしており、事務局は物理的には経済産業省庁舎内に置かれている80。
<オフサイト>
原子力発電所敷地外に係るいわゆる「オフサイト」の分野の課題には、大きく分けて避難指示区域、除染、復旧・復興等の3系統が存在する。
避難指示区域関係については、引き続き、原子力災害対策本部の下に設置された「原子力被災者生活支援チーム」(前述の1.(1)3)b.イ)参照)や経済産業省が中心となって、帰還困難区域の避難指示解除に向けた取組を進めている。
放射性物質で汚染された土壌等の除染や廃棄物処理、除染に伴って発生した土壌や廃棄物を安全に集中的に管理・保管する中間貯蔵施設の整備・管理運営等については、環境省が中心となって取り組んでいる。
早期帰還の支援、避難指示区域等における公共インフラの復旧、長期避難者への対策等の対応については、福島復興再生特別措置法の枠組みも活用しながら、復旧・復興の取組の一環として、復興庁及び関係省庁で連携して中心となって取り組んでいる。
なお、後述のとおり、現地では、原子力災害対策本部の現地対策本部、廃炉・汚染水・処理水対策現地事務所、復興庁の福島復興局、環境省の福島地方環境事務所が連携して対応に当たっている。
- 76 令和3年4月13日、「廃炉・汚染水・処理水対策関係閣僚等会議」に名称変更。
- 77 令和3年4月13日、「廃炉・汚染水・処理水対策チーム」に名称変更。
- 78 令和2年度「原子力白書」第1章
http://www.aec.go.jp/jicst/NC/about/hakusho/hakusho2021/1-1.htm (令和5年7月26日閲覧) - 79 経済産業省HP「廃止措置に向けた取組
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/decommissioning.html (令和5年7月26日閲覧) - 80 第1回廃炉・汚染水対策関係閣僚等会議(平成25年9月10日) 資料2
(2) 福島復興再生総局
1) 経緯及び趣旨
平成25年1月10日に開催された第5回復興推進会議において、安倍内閣総理大臣から、「復興庁が司令塔としての真価を発揮できるよう、体制や取り組みを厳しく検証し、現場主義に徹した見直しを行うこと。特に、復興や除染等が縦割りで動いている福島の現状を打破するため、福島原発事故再生総括担当である復興大臣81の陣頭指揮下のもと、関係省庁の力を結集する体制を整備すること。」「福島復興の総括的な企画推進について、現地で復興庁幹部を含めた意思決定ができるよう、2本社制、つまり、東京本社、福島社ではなくて、東京本社かつ福島本社という2本社体制を整えること。」という指示がなされた。
この指示を受けて、同年1月29日に開催された第6回復興推進会議においては、根本復興大臣から、「福島・東京2本社体制」の概要について報告が行われた。まず、福島本社については、福島に「福島復興再生総局」(以下「総局」という。)を設置し、除染をはじめ、福島の復興再生について、復興大臣をトップとする現地関係政務の体制を整備し、その下に、復興庁の事務方トップクラスを在勤させるとともに、現地組織を一体運用し、縦割りの弊害を排し、現地で即断即決できる体制をとることとした。次に、東京本社については、復興大臣が直轄する「福島復興再生総括本部」を設け、福島復興に係る政府中枢機能を強化した。また、事務方の対応体制強化として、同年2月1日付で本庁に福島担当統括官を新設するとともに、内閣府「原子力被災者生活支援チーム」を経済産業省庁舎から復興庁庁舎に移すこととされた。これにより、現地の総局で解決できない課題は東京の総括本部で迅速かつ確実に処理し、現場に直ちにフィードバックする体制をとることとした82。
以上を受け、同年2月1日に、「福島復興再生総局の設置について」(平成25年2月1日内閣総理大臣決裁)に基づき、総局が設置され、翌2日には復興大臣が現地で総局の立ち上げと看板かけを行った。この総局の設置により、省庁横断的な課題に対する現地における連携を可能とするとともに、福島復興再生総局事務局長などの事務方トップクラスが総局に在勤し、現地会議や現地訪問等を通じて、現場主義を徹底することとなった83。
また、同日、「福島復興再生総括本部の設置について」(平成25年2月1日復興大臣決定)に基づき、同本部が設置され、関係省庁の局長クラスが本部員として定められた。
なお、本節3.で記載のとおり、復興庁・福島復興局の人員体制強化も図られた。
- 81 第2次安倍内閣以降、復興大臣が「福島原発事故再生総括担当」の命もあわせて受けることとなった。
- 82 第6回復興推進会議 根本復興大臣発言及び説明資料より。
- 83 こうした体制がとられたことの意義・効果については、第183回国会 参議院 東日本大震災復興特別委員会 第5号 平成25年5月10日 根本復興大臣答弁において、複数の主管省庁にわたる横断的なテーマについて、復興庁が陣頭指揮を執って施策を束ねる、現場でできる判断は現場で即決するといったことがなされたとされている。
2) 福島復興再生総局の構成
総局は、復興大臣(福島原発事故再生総括担当大臣)を総局の長とし、復興副大臣、原子力災害現地対策本部長(経済産業副大臣)及び環境副大臣を構成員とする組織である。
また、総局の下の事務局として、福島復興再生総局事務局長(これまでは、復興庁事務次官経験者が就任)のほか、復興庁事務次官、復興庁統括官、福島復興局長、原子力災害現地対策本部副本部長、福島地方環境事務所長等を配置している。
なお、特定復興再生拠点区域の避難指示解除が目前となる中で、被災地での営農再開に向けた取組等の重要性が更に高まっていることなどを踏まえ、令和4年3月から、構成員に農林水産副大臣、事務局に東北農政局地方参事官(震災復興担当)が追加されている。

3) 福島復興再生総局の運営及び実績
こうした経緯・趣旨により設置された総局においては、避難指示解除に向けた除染の取組や、避難指示解除後の生活環境の整備等、福島の復興・再生に向けた各種課題への対応を進めるため、現地関係事務所間の連携が図られることとなった。
具体的には、総局事務局において、毎週火曜日、現地3事務所の長等が出席する福島復興再生総局事務局会議を開催し、情報交換や課題の整理等が行われている。
また、総局構成員及び事務局幹部が現地で情報共有を行う福島復興再生総局幹部会合についても、下記のとおり定期的に開催している。
第1回 | 平成25年2月2日 |
第2回 | 平成25年3月14日 |
第3回 | 平成26年9月18日 |
第4回 | 平成27年2月1日 |
第5回 | 平成27年12月3日 |
第6回 | 平成28年9月1日 |
第7回 | 平成29年6月3日 |
第8回 | 平成30年10月26日 |
第9回 | 令和元年10月30日 |
第10回 | 令和2年10月21日 ※オンライン開催 |
第11回 | 令和3年12月2日 ※オンライン開催 |
第12回 | 令和5年3月6日 ※オンライン開催 |
4) 福島復興再生総括本部について
東京本社として設置された「福島復興再生総括本部」は、復興大臣(福島原発事故再生総括担当大臣)を本部長とし、本部員には、復興庁事務次官ほか、復興庁、内閣府原子力被災者生活支援チーム、警察庁、消費者庁、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、原子力規制庁の局長クラス等が定められた。
平成25年2月15日に会合が開催されて、今後の対応について議論がなされた84。
- 84 https://www.reconstruction.go.jp/topics/post_156.html (令和5年7月26日閲覧)
5. 復興政策において復興庁が果たした役割等
(1) 復興政策における復興庁の役割・具体的な業務
東日本大震災からの復興に当たって、復興庁は組織法令上、内閣補助事務として、復興の基本方針の策定をはじめとした政府の復興に関する施策の企画・立案及び総合調整機能を有した。一方、分担管理事務としては、各府省の復興に関する事務を指導統制して復興の全プロセスを総合管理すること、被災地からの要望の一元的な受付や被災地への相談対応・助言(ワンストップ窓口)、復興予算の一括計上及び予算配分や復興特区法施行事務といった司令塔機能や個別施策の実施権限を有した。
復興庁が総合調整機能を発揮する政策分野は、被災者支援から、住まいとまちの復興、産業・生業の再生、原子力災害からの復興及び協働・継承まで、およそ復興に係る全てに及んだ。また、施策の実施権限については、被災者の生活再建やコミュニティの形成などの復興に係る主要な課題であっても、従来、各府省のいずれもが明確に所管していなかった政策分野において特に発揮されてきた。
集中復興期間から第1期創生期間までの間に復興庁・復興局が果たした具体的な役割は、概ね下記のようなものであった。
① 政府全体の復興の基本方針の作成、進捗状況のとりまとめ
政府全体の復興施策の中長期的な方向性を定める復興の基本方針を立案するとともに、各省庁との調整を行いながら、復興推進会議や復興推進委員会等の場で復興の枠組み等について議論し、オーソライズを図ってきた。これにより、政府の復興政策の司令塔・推進役として、各省庁の復興施策を牽引するとともに、全体の整合性を図り、必要な財源を中長期的に確保すること等を可能とした。また、各県や市町村の復興計画等の作成の際の指針ともなった。
さらに、復興に係る各種指標や施策の実施状況について、各省庁からの情報を集約し、国会報告等として政府全体のとりまとめを行ってきた。これにより、復興事業等の工程管理や遅れている分野や事業の可視化を通じて、施策の重点化等とともに、被災地の状況や復興に関する情報発信・広報を可能とした。
② ワンストップ窓口としての要望の一元的な受付・相談対応等
被災自治体にとっての政府における一元的な窓口として、各県に置かれた復興局や復興大臣等との意見交換などを通じ、各種要望や日常的な相談から被災地のニーズや課題をきめ細かく吸い上げた。その上で、必要に応じて所管省庁との調整等も行い、政府としての方針を取りまとめることで、被災地のニーズを円滑に政府内で共有し、迅速な対応を進めてきた。
また、復興庁からの働きかけによって、所管省庁において必要な措置が講じられる、あるいは、被災自治体が活用できる各省庁の制度や関係機関への仲介等がなされるといったことが可能となった。とりわけ、原子力災害からの福島の復興については、復興局に加えて、福島復興再生総局が置かれ、現場レベルで関係省庁が縦割りに陥らず、情報共有を密にして、統一的に意思決定・対応する体制が構築された。
③ 復興予算の一括計上
復興庁が直接執行する予算及び各省庁に移し替えて執行する予算について、自治体からの要望額等を把握し、要求額を取りまとめ、一括して復興特別会計に計上してきた。これにより、被災地のニーズや政策的な重要性に応じ、復興庁が政府全体の復興施策の予算配分をコントロールするとともに、被災自治体ごとのバランスや公平性を担保することが可能となった。
④ 復興特区制度
復興庁が復興特区法を一元的に所管し、法令、基本方針及びマニュアルの立案・作成、内閣法制局や税制当局への説明等の改正作業を担うとともに、規制や税制・金融上の特例を受けるために被災自治体が作成する復興推進計画について、一元的に認定等の業務を実施した。
また、復興特区支援利子補給金については、年間最大112件の交付決定や額の確定まで含めた補助金の執行事務を復興庁が直接実施している。
復興交付金については、復興庁が予算計上し、まとめて事業計画申請を受け付けた。復興局においては現場主義を実践し、常時、被災自治体に「御用聞き」に伺い、迅速に復興事業のニーズを把握するよう努めた。また、通常の補助事業の採択に当たっては地方自治体が国に説明に行くことが多いが、復興交付金においては、本庁の地域担当が被災地に赴き、事業のヒアリングを現地で行い、復興予算を充てるべき事業であることを確認するとともに、他地域の事業におけるコストの事例などを提供し、事業規模の絞り込みや精査を行うなど、適切な復興交付金事業計画となるように計画策定支援を行った。
このように、復興局が現地のニーズを吸い上げ、本庁が他地域の類似事例の横展開を行うなど、本庁と復興局で連携して被災地に寄り添いつつ現場主義を実践した。また、交付可能額通知、いわゆる「箇所付け」は復興庁の実施事務として行い、その上で、予算を各事業の所管省庁に移し替えて執行している。
⑤ 分野ごとの課題への対応
〇 被災者支援
被災者の日常的な見守り・相談、心のケア、子どものケア等については、当初、各省庁がそれぞれ補助事業等を所管しており、復興庁は避難者数、被災者のニーズや各省庁の施策の実施状況を把握する役割を担ってきた。しかし、平成25年に復興大臣の下、タスクフォースを設置し、各省庁の支援制度を再整理し、施策パッケージを策定した。
さらに、平成28年度からは、各省庁の補助事業等と、被災者の生きがいづくり等の取組を支援するために新たに創設した「心の復興」事業等をまとめて、復興庁が所管する被災者支援総合交付金を創設した。各省庁の補助事業等については予算を各省庁に移し替えて執行することとされたが、「心の復興」事業等については復興庁が直接執行することとなった。また、復興局が窓口となって、被災自治体による交付金申請のために必要な計画の策定を支援した。これによって、被災自治体が各省庁に個別に申請手続を行う負担が軽減されたほか、コミュニティ形成や被災者の生きがいづくり等の各省庁が明確に所管していなかった分野の取組に対しては、復興庁による支援が実施されるようになった。
〇 住まいとまちづくり
住まいの再建や復興まちづくりについては、市町村が主体となって、計画の策定や住宅再建用地の整備を進めた。各省庁においては、被災自治体の負担軽減のために、必要な事業制度の改善等を行ったほか、災害復旧事業等への財政支援や代行制度に基づく事業を実施した。
復興庁においても、復興交付金等による支援を行ったほか、被災者が自らの生活再建に見通しを持てるよう、住宅や宅地の進捗や完成予定等について適時適切に情報提供を行うため、被災市町村をはじめとした関係機関の協力を得ながら、定期的に「住まいの復興工程表」の作成、公表を行った。また、復興事業の様々な隘路を打開するため、復興大臣の下に関係省庁からなるタスクフォースを設けて、関係省庁からの提案等を踏まえ、5回にわたる加速化措置を取りまとめた。
さらに、復興庁職員を中心に関係省庁職員がこれらの加速化措置を十分に活用し切れていない市町村を訪問し、復興特区法に基づく都市計画決定と都市計画事業認可の並列的な実施など個別具体の事案の解決を支援した。
復興の進展に伴う造成地の空き区画や未利用地の発生に対しては、復興庁において、官民連携による取組・ノウハウを取りまとめた土地活用モデル調査、復興庁職員がきめ細かく対話やサポートを行うハンズオン型ワンストップ土地活用推進事業等により被災自治体を支援している。
〇 産業・生業の再生
産業・生業の再生については、グループ補助金や立地補助金、農林水産業への各種補助金等の事業者に交付される財政支援制度などが存在し、基本的には、各省庁が制度を所管して執行等を行ってきた。
復興庁は、各省庁施策の実施状況を統括・監理する役割を担うとともに、復興大臣の下に関係省庁からなるタスクフォースを立ち上げ、被災地域の現状と課題を把握するとともに、被災地における産業復興の推進についての検討を行い、「東日本大震災被災地域の産業復興創造戦略」を示した。
また、復興庁は、東日本大震災事業者再生支援機構を所管し、いわゆる二重債務問題を抱える事業者の債権買取等を通じて、その再生を支援した。また、被災地における企業の人材確保、経営上の課題解決や新たなプロジェクトの創出を支援するインターンシップや調査事業等を実施した。さらに、ソフト面での支援として、復興局と連携し、被災地域企業と大企業等の支援企業とのマッチング「結の場」や、民間企業からの出向者を中心とする復興庁職員が専門家や商工会議所等と連携しながら課題解決に向けた支援を行うハンズオン支援などを行っている。
〇 原子力災害からの復興
原子力災害からの福島の復興・再生については、いわゆる「オフサイト」の分野の課題として、避難指示区域関係、除染関係及び被災地の復旧・復興関係の3系統の業務がある。このうち、復興庁では、被災地の復旧・復興関係について、福島原発事故再生総括担当大臣を兼任する復興大臣を司令塔として、各省庁の復興施策の総合調整を担っている。例えば、12市町村の将来像のあり方に関する有識者検討会により、目指すべき30年から40年後の地域の姿を示す提言を取りまとめたほか、復興大臣の下に、風評対策に係るタスクフォースを設置するなど、政府全体の対応方針や各省庁で取り組む施策を取りまとめて、その推進役を担っている。
なお、廃炉・汚染水・処理水といった「オンサイト」については、原子力災害対策本部の下、経済産業省が中心となって対応している。また、オフサイトのうち、避難指示区域関係については原子力災害対策本部の下に設置された「原子力被災者生活支援チーム」や経済産業省が、除染等については環境省が中心となって対応している。
復興庁が直接所管している制度や補助事業としては、福島特措法に基づく計画認定や福島再生加速化交付金の交付可能額通知、いわゆる「箇所付け」を行っている。福島特措法の枠組みや福島再生加速化交付金により、早期帰還の促進や、避難指示区域等における公共インフラの復旧、移住・定住の促進を支援するとともに、福島の魅力発信や風評払拭に資する情報発信・広報を復興庁直轄事業として実施している。また、子ども・被災者支援法に基づく基本方針の策定や施策のとりまとめ、全国の生活復興拠点を通じた県外避難者の交流促進の取組等への支援等を行っている。
〇 NPO等や民間企業との連携、自治体の行政機能の補完
NPO等の活動については、復興庁として、ボランティア活動参加の呼びかけ等によるボランティア活動の促進や3県で設立された連携復興センターをはじめとする中間支援組織など関係者との情報共有等を通じた行政機関とNPO等の連携強化を図ってきた。また、「新しい東北」として、被災地における新規事業や新しい地域活動に取り組む民間企業やNPO等の取組について、多様な主体間の情報共有や連携強化を図る協議会の運営、復興庁職員及び専門家が被災地の地域づくり団体や民間企業と一緒になって事業計画や課題の解決方法を検討するハンズオン支援等を行った。
被災自治体の行政機能を補完するためには、総務省や全国知事会によって、他の自治体からの応援職員が派遣された。また、自治体間の協定等に基づく対口支援も行われた。これらに加えて、復興庁においては、復興庁職員として新規採用した者を被災地自治体に派遣した。
〇 震災の記憶と教訓の継承
震災の記憶と教訓を継承するために、国としては、震災記録のアーカイブ化、被災3県における国営追悼・復興祈念公園の整備、追悼式の政府主催等を行ってきた。
復興庁においては、国営追悼・復興祈念公園を被災3県に1か所ずつ設置する構想を復興推進会議において示したほか、復興交付金等により被災自治体による震災遺構等の伝承施設の整備や復興記録誌等の作成を支援した。また、東日本大震災からの復興における現場の取組事例や教訓を「教訓・ノウハウ集」等として取りまとめた。このほか、震災から5・10周年のタイミングや、東京五輪や国際会議の機会を通じて、復興の状況や被災地のPR等を実施した。
(2) 評価・課題
これまで復興庁は、内閣総理大臣を主任の大臣とし、復興庁の事務を統括する等のために復興大臣を置くことにより、政府が一体となって復興に取り組む体制を実現し、迅速に意思決定を行い、復興を推進する役割を果たしてきた。具体的には、復興施策に関する企画・立案・総合調整を担い、関係省庁の事業を統括・監理し、復興事業予算の一括要求・確保等を行うとともに、地方公共団体の窓口として岩手県、宮城県及び福島県に復興局を設置することで、復興事務のワンストップ対応を推進してきたところである。
東日本大震災の復興に当たって、当初政府としては、阪神・淡路大震災の対応も参考に閣僚級の会議体である復興対策本部とその事務局が政府内の総合調整を図り、それぞれの分野の専門機関である各省庁に実際の実施事務を担わせることを想定していた。しかし、国会においてはより強力な権限を有する組織が求められ、基本法には復興庁の設置に関する方針が規定された。さらに、復興庁設置法案の審議で予算の一括計上等の事務が修正案で追加され、東日本大震災からの復興に関する事務を主体的かつ一体的に行い、その円滑かつ迅速な遂行を図ること等を目的に、平成24年2月10日に内閣直属の組織として復興庁が設置された。
このような経緯で「内閣に直属」という異例の行政形態で設置された復興庁であったが、結果として、様々な面での総合調整を行ったこと、地方公共団体にとってワンストップ窓口ができたことはその後の復興において意義があった85。
また、当初は復興対策本部の方が機動的であり、手間をかけて復興庁を設置することを疑問視する見方もあったが、設置された利点としては、
・ 独立した組織として復興に当たる統一的な考え方の形成
・ 各省庁の所管から落ちる課題の発見や各省庁の横並びから離れた諸課題の優先順位付け
・ 兼務・臨時ではなく一定期間専任となった職員による腰を据えた業務の遂行
・ 被災地方公共団体等の外部にとっての連絡先や訪問先等の明確化
・ 復興庁という独立の組織ができたことによるノウハウや資料が散逸するリスクの低減
等が可能になったということも挙げられる。
さらに、事前想定を超える規模の災害によって、複数の県にわたり広域かつ甚大な被害が生じたことや、原子力発電所事故の併発、少子高齢化等の社会課題を抱えた地域が被災したこと等から、復興施策の対象や範囲が広がり、その調整を行う国の役割が欠かせなかった86、国が復興庁を設けて被災地全体に目を配ったことで被災地方公共団体が公平に支援された87、地方公共団体が国に対して現場で直面する課題や制度の不備等を指摘するための受け皿としても必要だった88、被災者の生活再建やコミュニティの再生等の既存の各省庁が明確に所管しない分野における予算確保や制度創設が可能になった89との評価もある。
被災地方公共団体からも、復興庁が担った一元的な窓口や省庁横断的な企画調整の機能が復興の進捗に大きく貢献した90、大量かつ多岐にわたる復興事業の円滑かつ迅速な遂行が図られた、復興庁の総合調整がなければもっと時間を要していただろう、支援メニューの最大限の活用には復興庁の下支えが不可欠であった、制度運用等において丁寧な助言がされたといった評価がある91。また、国職員が早期に現地入りしたことは心強かった92や、復興を支えるための専任大臣と司令塔・総合調整機能を有する復興庁という体制の構築が心強かった93と評価されている。また、復興局が常時、被災地方公共団体に「御用聞き」に伺い、事業箇所の現地確認等により迅速に復興事業のニーズや現地の実情を把握するよう努め、復興大臣等が直接被災地方公共団体の意見を聴く場を設けたことで、被災地の共通課題はもとより、市町村ごとの個別課題も幅広く丁寧に説明する時間を得て、その後の要望事項等の実現にも資した94との評価がある。
一方、復興庁については、発足前から国会等において、強力な権限や個別の補助事業等の執行機能を持たせて各府省の縦割りの弊害を廃すべき、復興に関する広範な権限や予算執行まで含めて全て復興庁が担うべきといった意見が示され、設置後にもそうした観点からの指摘95を受けることとなった。被災地方公共団体からも、復興庁や復興局は、権限を有する各府省との調整役としてきめ細かく対応したが、被災自治体からは、場面によっては、各省庁と直接の調整が必要になってワンストップ機能が十分でないことや、復興庁に個別の権限がなく、被災地側は関係省庁から求められる煩雑な協議に多くの時間や労力が費やされ、「地方の負担軽減、迅速な対応」という本来の考え方が生かされないこともあった96との指摘がある。また、被災した地方公共団体に余力がない中、調整機能だけではなく、国が直接執行すべきことがもっとあったとの指摘もある97。
しかし、個別の補助事業等の実施に必要なノウハウや民間事業者等とのネットワークを有しているのは所管省庁であり、全ての復興事業を復興庁が直接実施することは、現実にはむしろ非効率となる。このため、復興庁は地方公共団体から要望を集約して所管省庁につなぎ、その先は所管省庁が対応するという形を基本とした。予算執行においても、復興庁は「箇所付け」(どこで何の事業を行うのかといった予算配分)までは行うが、執行はあくまでも事業の所管省庁が実施することとした98。復興庁においては、各事業の方向性がバラバラにならないよう、全体最適の観点から整合性を取るようにした。
なお、事業の実施権限まで有した内閣直属の機関として関東大震災における帝都復興院が復興庁の引き合いに出されることがある。しかし、実際には、帝都復興院は設置から5か月弱で廃止され、復興事業は内務省復興局や東京市及び横濱市等が実施することとなった。広範な復興政策を一つの行政機関で遂行するのは不可能であり、まして、目的別の省庁が整備されている現代においては、理想化された帝都復興院のイメージに基づく強すぎる期待がかえって復興庁の活動を阻害した面があったのではないかという指摘もある99。
このほか、復興庁は市町村の支援・調整は行ったが、国として被災地の復興をどのように進めるかが不十分だった100、復興として何をすべきかという点が弱く、これほどの大規模災害では、復興庁など国が復興のビジョンを示す必要があった101との指摘もある。
また、復興大臣の関係行政機関の長に対する勧告権の行使が求められることもあった102。しかし、復興庁が各省庁より一段上の組織とされ、総合調整権限を有することもあり、勧告権を行使しなくても、各省庁は復興庁への人材提供(出向)、予算編成、税制や地方財政措置をはじめとする復興政策に協力的に対応してきた。また、施策間の整合性の確保や各種課題への適切な対応等についても、適宜必要な調整がなされたことから、これまで勧告権を発動する必要はなかった。
復興庁の設置時期については、新設の行政機関であったために設置法の整備、専任職員の定員や予算の確保といった設立準備に相応の時間を要し、結果として、発災から約1年後となった。これに対しては遅かったとの指摘103がなされており、そもそも復興庁の前身となる復興対策本部の設置時期についても、発災から約3か月後となったことに同様の指摘があった。また、復興庁の当初の設置期限の到来前に議論が巻き起こったように、防災に専門的な知識・経験ある者をプロパー職員として擁して災害対応の司令塔機能を支える防災庁ないしは防災省といった常設組織があるべき104、あるいは、平時から復興について検討・準備をするためにも、予防、初動・応急から復旧・復興までを担う常設機関が必要105、復興庁が存続しているうちにそうした機能を発展させることが必要106といった意見がある。
こうした指摘も踏まえ、将来の大規模災害に備えて制定された「大規模災害からの復興に関する法律」(平成25年法律第55号)では、復興基本方針の策定や復興施策の総合調整を担う復興対策本部について、新規立法を要さず閣議決定によって迅速に設置できることとされた。同法の国会審議においては復興庁の設置を制度化すべきとの意見もあったが、一般化できる枠組みとしては復興対策本部を法定しつつ、復興庁のような権限までを有する組織の必要性については発災後に具体的な被害の規模や態様等から判断せざるを得ないと答弁している107。
また、近年の大規模災害への対応については、政府の災害対策本部長である内閣総理大臣の指揮の下、関係省庁が一体となって、迅速な復旧と早期の復興に取り組んでおり、新たな組織を直ちに設置する必要性は低いと考えられるが108、防災体制の充実・強化は重要な課題であり、政府として不断の見直しを進めて万全の防災体制を確保することとしている。
- 85 第2回有識者会議 増田委員、大西委員、市町村アンケート(第3回有識者会議資料1、参考資料1)
- 86 第4回有識者会議 田村委員
- 87 第2回有識者会議 大西委員
- 88 第2回有識者会議 増田委員
- 89 第2回有識者会議 藤沢委員
- 90 平成31年2月26日復興推進委員会 宮城県
- 91 市町村アンケート(第3回有識者会議資料1、参考資料1)
- 92 市町村アンケート(第3回有識者会議資料1、参考資料1)
- 93 第2回有識者会議 福島県
- 94 岩手県「岩手からの提言」
- 95 平成25年4月16日衆・予算委 伊藤信太郎議員「実際のところ、例えば被災地の避難道路をつくるということになると、復興庁にまずお願いする、復興大臣にお願いする、それだけにとどまらないですね。これはやはり国土交通省の社会資本整備の復興枠だと。要するに、二回りするということになるんですね。ですから、私はやはり、復興の予算というのは、できれば各省庁に縦割りにならないで、復興庁が一括して計上できる。それぞれの施策については専門の省庁があるでしょうけれども、復興庁の判断でできるという形にすべきだと思っている(略)」
平成24年10月18日参・決算委員会 加藤修一議員「(他省庁含む復興予算について)やはり復興庁が全体的見地から査定し、精査し、調整することにならないと、なっていないと。(略)復興庁の権能というのは、統括とは言っていますけれども、何を統括しているかというと、本当、自分のところだけの統括ですよ、ほかの省庁に対してどうこうという話はない、チェックもできないような状態になっていると。」
平成26年3月18日(参)東日本大震災復興特別委員会 田城郁議員「復興庁は、一番目、ワンストップで震災の課題を解決できるようにすることが主要な役割と思うが、現実そうなっておりますかということ。二番目が、省庁間の調整機能が十分に発揮されておらず、縦割りの弊害が幾つかのところで現実化しているという問題の中で克服されているのかということ。三番目が、被災地と中央省庁の乖離を埋める、省庁間の乖離を埋めるのが復興庁の役割であると私は思いますが、それが十分にできていることで復旧復興にスピード感が生まれているのか、被災地において復旧復興の実感を感じられない原因となっているのではないか(略)」
令和2年5月14日衆・本会議 金子恵美議員「そもそも、これまでの復興期間で、復興庁は司令塔としての役割を果たしてきたのでしょうか。被災地のニーズにワンストップで対応してきたのでしょうか(略)」 - 96 岩手県「岩手からの提言」、市町村アンケート(第3回有識者会議資料1、参考資料1)
- 97 第2回有識者会議 藤沢委員
- 98 平成25年4月16日衆・予算委 根本復興大臣「復興庁は、被災地からの要望にワンストップで対応する、そして被災地の要望を一元的に受理して、これを踏まえて復興事業に必要な予算を一括して計上して、そして執行段階でも節目節目で各省庁に執行する、こういうやり方でやっております。基本的には、復興庁が一元的に受理して、一元的に計上して、一元的に執行するというやり方でやっておりますので、さらにこの機能を強化していきたいと思います。」、安倍総理「被災地向けの予算については、全て復興庁に一括計上して、そして要望を一元的に受理して、そして一括して要求をしているという中において、執行段階において、これも全部、執行そのものを復興庁にという話でございましたが、こうした予算については、復興庁が事業箇所等の事業の実質的内容も決定をして各府省へ予算の配分を行っておりますので、このような予算計上の仕組みは省庁縦割りの排除につながっていく、こう考えております。ですから、あとは、この根本大臣のリーダーシップにおいて、基本的に、各省庁に陳情を行わなくても、復興庁、根本大臣のもとで一元的にそうした要望を受け、そして予算の執行においてもそうした力を発揮していくことも十分に可能なのではないか、このように思います。」
- 99 飯尾潤『「国難」となる巨大災害に備える~東日本大震災から得た教訓と知見~ 災害対策全書別冊』「3.1復興対策本部と復興基本法、復興庁の発足」ぎょうせい(平成27年9月)
- 100 市町村アンケート(第3回有識者会議資料1、参考資料1)
- 101 第2回有識者会議 藤沢委員
- 102 平成24年10月18日参・決算委員会 主濱了議員「被災地で様々な要望がある、切実な要望があります。結局、その要望の基になっているものがあるがゆえになかなか予算を使えないと、あるいは予算そのものがないと、(略)以上、他省庁に関係する部分、他省庁の部分もありますので、復興大臣におかれましては、復興庁の設置法に基づいて関係大臣に勧告するなど的確、確実に対応していただきたい」
- 103 五百旗頭真、他監修 ひょうご震災記念21世紀研究機構編『総合検証 東日本大震災からの復興』「序章「復興思想の変容」」岩波書店(令和3年2月) 「発災後、1年を経てから「復興庁」を創設するようなことを繰り返してはならない。」
社説において、復興庁設置法の成立に時間を要した旨を指摘するもの多数(平成23年12月7日読売新聞、同月8・10日岩手日報、同月9日毎日新聞ほか) - 104 第3回有識者会議 川内村長
- 105 第2回有識者会議 田村委員ほか
- 106 第2回有識者会議 今村委員
- 107 平成25年5月10日災害対策特別委員会古屋防災大臣より、「阪神・淡路大震災や東日本大震災からの復興に当たっては、いずれも発災後の特別法の制定によって復興本部を設置していますね。東日本においては、復興対策本部の設置後、復興庁設置法を制定し、同庁が復興に関する業務を継承しました。こういった経験を踏まえて、国の復興基本方針の案の作成などを行う復興対策本部を閣議決定により設置するなど、一般化できる基本的な枠組みについては、今回の法律案の中であらかじめ制度化をさせていただいたところであります。さらに、復興を推進するに当たっては、東日本大震災における復興庁のように、より強力な権限を持った組織が実際必要なのか、そうではないのか、こういったことについては、具体的に災害が起きたときの、その災害の規模とか被害等を踏まえて判断せざるを得ないところもあるんですね。ですから、こういった不確定要素がある中で、あらかじめ全て法制化をしていくということはなかなか難しいのかな、そんな感じを持っております。」
- 108 平成27年3月に「政府の危機管理組織の在り方について(最終報告)」にて、「(いわゆる「日本版FEMA」のような政府における統一的な危機管理対応官庁の創設等中央省庁レベルでの抜本的な組織体制の見直しの検討については、後掲のとおり、現段階においては積極的な必要性は直ちには見出しがたいと考えられる。」。
なお、令和3年1月20日衆・本会議 菅義偉総理答弁あり。