8章
協働と継承
1節 ボランティア・NPO等
東日本大震災では、発災直後から、ボランティア、NPO、大学、民間企業等の多様な主体が被災地内外で様々な活動を行ってきた。その活動内容については、発災直後は、がれき撤去・片付け・泥出し・炊き出しなどの活動や避難所運営支援が中心であったが、仮設住宅や災害公営住宅などへの入居が進んでいく中で、被災者の生活支援や見守り・訪問活動等へと、被災者からのニーズに応じて時間の経過とともに変化している。
東日本大震災のボランティア活動へは、被災地内外で延べ700万人以上が参加してきたと考えられている1。具体的には、平成23年3月から同31年1月末時点までの3県における社会福祉協議会が設置した災害ボランティアセンターに登録して活動した累計のボランティア総数が約156万人(岩手県約56万人、宮城県約77万人、福島県約23万人)であり、その他、資金提供団体からの資金提供を受けて活動したボランティアや、個人・企業で個別に活動しているボランティア等、被災地内外で550万人以上が活動したと考えられる。
また、被災3県のNPO認証数は、1,503団体(平成23年3月末時点)から2,219団体(令和4年3月末時点)に増加しており、現在も重要な役割を担っている。
なお、ボランティア・NPO等の取組に関する評価や課題等については、本振り返り有識者会議において、多様な主体がボランティア活動に参画したことに関して、「ボランティアの主体が個人から団体・企業レベルに広がり、企業が継続的かつ目的意識を持って被災地域に入ってきたことは大きな動きであった」との評価があった2。また、NPOの活動について、「NPOの立場から見ると予算の仕組みが単年度ごととなっているため、事業を数年先まで見据えられないといった課題があった」との指摘があった 3。企業の活動について、「被災地では社会貢献に資する様々な活動を企業が行っていたが、復興庁との連携が十分ではなく、現場での活動が有機的につながっていなかったことが課題」との意見があった 4。その他、被災自治体から「ボランティアセンターの設置に公的支援がないので、支援のあり方を考えてほしい」といった意見があった5。
復興の進捗状況により地域・個人の課題が多様化し、きめ細かなニーズ把握や取組が求められており、依然としてNPOやボランティア団体等の活動への期待や果たすべき役割は大きく、その活動が円滑かつ効果的に進められるよう、政府としても必要な協力体制の構築等を行ってきた。
本節では、ボランティアやNPO等の多様な主体の活動を促進するために行った取組について記述する。
- 1阪神・淡路大震災では、兵庫県の推計によると、一般ボランティアの累計人数は発災1年間までに約138万人が参加した。(参考文献:『阪神・淡路大震災 : 兵庫県の1年の記録』兵庫県知事公室消防防災課(1997/7))
- 2東日本大震災の復興政策10年間の振り返りに関する有識者会議(第1回)今村委員
- 3日本大震災の復興政策10年間の振り返りに関する有識者会議(第1回)藤沢委員、(第3回)遠藤川内村長
- 4東日本大震災の復興政策10年間の振り返りに関する有識者会議(第4回)藤沢委員
- 5東日本大震災の復興政策10年間の振り返りに関する有識者会議(第3回)佐藤南三陸町長


「ボランティア、NPOとの協働について」
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat7/sub-cat7-2/20190930_11_volunteernpo.pdf
(令和5年7月25日閲覧)
1.NPO等との連携
平成23年3月16日、内閣官房のもとに震災ボランティア連携室が設置(平成23年3月15日内閣総理大臣決定)され、ボランティア活動の促進やボランティア活動に関する情報発信、側面支援が行われた。
【取組の例】
- ・官房長官記者会見(平成23年5月27日、同年7月29日)等により、ボランティア活動参加の呼びかけを実施。
- ・官邸ウェブサイトや民間ウェブサイトにより、受入れ先、ニーズ、交通情報、ボランティアツアー、注意事項等についての最新情報を発信。
- ・NPO等の長期的な活動を確保するため、国の助成制度及び民間団体の助成制度についてまとめて周知するとともに、活用の働きかけを実施。
- ・関係省庁と調整の上、旅行業界へのボランティアツアーの設定の呼びかけ(平成23年5月27日)、ボランティア車両の高速道路無料通行手続の簡素化(平成23年8月4日)等を実施。
- ・被災地に向けた各種政府広報資料の発行に当たって、現地の状況を熟知しているNPO等にあらかじめその内容等を照会し、意見を適宜反映。また、当該政府広報資料が被災者に直接届くよう社会福祉協議会やNPO等と調整。
- ・600超のNPO等が参加している東日本大震災支援全国ネットワーク(JCN)の連絡会に出席。また、自治体、災害ボランティアセンター、NPO等との意見交換を実施。
- ・復興対策本部の被災地支援連絡会議等でNPO等から得た情報を適宜政府施策に反映(現地NPO等から得た、どの避難所にどんな物資が不足しているか等の情報や居住環境の劣悪な避難所の情報を、担当者へ提供することで、避難所における生活環境を改善する等)。
平成23年9月16日には、震災ボランティアに関する事務が内閣官房(震災ボランティア連携室)から東日本大震災復興対策本部(震災ボランティア班。平成24年2月10日、復興庁設置とともにボランティア・公益的民間連携班)に移され、「東日本大震災からの復興の基本方針」(平成23年7月29日東日本大震災復興対策本部決定、同年8月11日改定)において「公的主体が全力で取り組むことはもとより、復興の担い手、資金等の観点から、「新しい公共」等の民間の力が最大限に発揮されるよう支援を行う。」旨が定められたこと等を踏まえた、ボランティア、NPO、大学、民間企業等の多様な主体の連携によるきめ細かい支援が実施された。
(1)復興支援活動を行うNPO等が活用可能な政府の財政支援のとりまとめ
平成23年度以降、NPOやボランティア団体等がよりきめ細かい支援を行い、活動を円滑に進められるよう、復興支援活動を行うNPO等が活用可能な政府の財政支援策等を取りまとめ、ウェブサイトで公表するとともに、適宜現地で情報提供等を実施した。
(2)NPO等による被災者支援の好事例等のとりまとめ
復興庁ウェブサイトや「東日本大震災 復興の教訓・ノウハウ集」において、NPO等による被災者支援の好事例や、ボランティア・行政等との連携事例を掲載するとともに、その時々のニーズに応じて周知した。
【例】
- ・行政と支援者(社会福祉協議会、NPO等)の情報共有について、自治体職員が仮設住宅の住民を訪問した際に「個人情報を社会福祉協議会の生活支援相談員及びこの仮設住宅団地の支援を担当するNPO法人と共有したい旨」を説明し住民の同意を得た例と、自治体が支援者と委託契約を締結することによって委託先へ適正に個人情報を提供した例を復興庁ウェブサイトに掲載(平成24年2月)。
- ・ボランティア・NPO・公益法人等の活動事例について、復興庁ウェブサイトに掲載(平成24年12月13日以降)。
- ・復興に当たっての多様な担い手による連携事例について、復興庁ウェブサイトに掲載(平成25年3月12日)。
- ・第3回国連防災世界会議において、被災地の現場で活躍する方々による先進的な取組事例や被災地のメッセージを発信(平成27年3月14日~同月18日)。
- ・コロナ禍におけるNPO等によるウェブ会議の活用事例を復興庁ウェブサイトに掲載(令和3年9月)。


https://www.reconstruction.go.jp/topics/20130312_renkeijirei.pdf (令和5年7月25日閲覧)
(3)復興支援に向けた多様な担い手のロードマップ
NPO等からの要望を踏まえ、復興に向けての各フェーズにどのような被災者支援を行えばいいのかの参考となるよう、平成24年4月13日、「復興支援に向けた多様な担い手のロードマップ」を作成し、公表した。当該ロードマップは、「被災者生活支援」「遠隔避難者支援」「復興まちづくり」「産業再生・就労支援」「多様性への配慮」の5つの分野について、過去の大規模災害などを参照しながら、平成24年度から平成26年度までの状態目標を取りまとめたものである。
概要は以下のとおり。
「連携復興」の5つの分野と3年後の「目標とする状態」
|
(4)県外自主避難者支援体制強化事業
「被災者生活支援等施策の推進に関する基本的な方針(平成27年8月25日改定)」において「福島県外への避難者に対し、避難元・避難先に関する情報提供、避難者からの相談対応等を行う事業を民間団体を活用し新たに実施。」と記載されたことを踏まえ、平成25年度に、「県外自主避難者等への情報支援事業」を開始した。
本事業は、福島県からの県外自主避難者を対象に、情報提供(避難元・避難先の情報提供、説明会の開催等)及び相談支援(相談対応、生活状況・ニーズ等の把握等)を行い、県外自主避難者が「避難生活」から「自立した生活」に移行できるよう、支援を行うものであり、NPO等民間団体へ委託し、県外避難者を多く抱える近隣県2か所(山形県・新潟県)及び一定数の県外避難者が存在する遠隔地の大都市圏2か所(北海道・大阪府)の4道府県にてモデル的に実施した。具体的には、ニュースレターの発行(避難元・避難先の都道府県、市町村等が発信する避難者支援情報を定期的に取りまとめ、郵送等により希望者へ提供)、避難元・避難先の避難者支援情報についての説明会及び避難者相互の交流会の開催、並びに、各受託事業者にて専用の相談窓口を設け、困り事等に関する相談対応、行政機関、専門機関等への連絡調整等を実施した。
平成26年度は、福島県からの県外避難者数が多い都道府県の中から公募を行い、引き続き、全国8か所(北海道、山形県、東京都、新潟県、京都府、大阪府、岡山県、福岡県)で事業を実施した。
平成27年度は、大阪府を除く継続7か所と、新たに沖縄県を加えた計8か所で事業を継続し、それまで3か年の事業を総括した「県外自主避難者等への情報支援事業」総括報告書を取りまとめた。
平成28年度には、これまでの「県外自主避難者等への情報支援事業」(平成27年度で廃止)を発展・継承する形で創設された福島県の「福島県外避難者への相談・交流・説明会事業」(被災者総合交付金を活用。以下、「福島県事業」という。)と連携した「県外自主避難者支援体制強化事業」を開始した。
本事業は、避難先での定住や福島県への帰還等について、避難者それぞれの事情に応じてその判断をする必要があることから、避難者がいずれの地域においても自ら居を定め安心した生活ができるよう、福島県と連携しながら、自治体における支援施策やNPO等支援団体が実施している支援活動の情報等を収集し、その情報を全国のNPO等支援団体及び自主避難者に提供する体制を作ることによって、自主避難者の定住に向けた支援を実施するものである。
具体的には、福島県事業を受託し福島県外の避難者への相談対応等を行っている生活再建支援拠点(以下、「拠点団体」という。当初24団体)に対し、自治体における支援施策やNPO等支援団体が実施している支援活動の情報等を、専用ウェブサイト等を通じて提供した。平成29年度には、専用ウェブサイトを拡充し、26の拠点団体以外も閲覧できる一般公開ウェブサイト「東日本大震災・避難者支援情報提供サイト 私たちは今ここに」を開設した。当該ウェブサイトでは、避難者支援情報のワンストップ窓口化を目指し、平成30年度以降も多言語化など掲載内容の拡充を図りつつ、全国の相談窓口情報、避難者を対象とした相談会・交流会情報、支援活動の事例紹介、避難先・避難元の支援施策情報、福島県の現状に関する情報等を提供している。令和2年度には、東日本大震災の発災からこれまで避難者を取り巻く課題がどのようなものであったか、またその課題解決に向けてどのような取組を行ってきたかについて、今後の大規模災害に備え、全国の自治体や支援団体等の参考となるよう、事例集として取りまとめ公表した。
また、拠点団体が集まり情報共有や意見交換を行う会議を、毎年、本事業で1回、福島県事業で2回開催した。


https://jyoho-shien.reconstruction.go.jp/ (令和5年7月25日閲覧)

https://www.reconstruction.go.jp/s/2019/11/20191113140753.html (令和5年7月25日閲覧)
(5)福島県浜通り等地域における行政とNPO等多様な主体との協働
平成30年1月~12月、福島県浜通り等地域における行政とNPO等多様な主体の連携・協働を促し、復興を加速させていくため、福島県浜通り等地域の自治体、社会福祉協議会、NPO、商工会議所、商工会、地縁組織及び任意団体等の職員並びに一般市民を対象に、双方のつながりづくりを目的とした交流会を開催した(主催:復興庁、(一社)ふくしま連携復興センター、特定非営利活動法人ジャパン・プラットフォーム及び東日本大震災支援全国ネットワーク、後援:福島県及び開催地自治体)。交流会では、ソフト面を中心とした、よりきめ細かい、創意工夫による対応が求められることと多様な主体との連携・協働によるまちづくりが重要であることが確認された。
なお、第1回「多様な主体と協働していくためには NPOとは?」は、平成30年1月12日に南相馬市、同月19日にいわき市において、NPOの活動の理解促進を目的に開催された。
第2回「行政とNPO等多様な主体との協働の実際について」は、平成30年3月8日に南相馬市、同月20日に広野町において、行政とNPO等との協働に焦点を当て、開催された。
第3回「行政とNPO等多様な主体との協働によるコミュニティ形成について」は、平成30年7月5日に飯舘村、同月6日に楢葉町において、行政とNPO等との協働によるコミュニティ形成に焦点を当て、開催された。
第4回「行政とNPO等多様な主体との協働によるまちづくりについて」は平成30年12月20日に浪江町において、行政とNPO等との協働によるまちづくりに焦点を当て、開催された。
第1部 宮城県の認定NPO法人杜の伝言板ゆるるによる基調講演
第2部 各地で活動するNPO等による事例発表
第3部 グループに分かれての発表者との意見交換

https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat4/sub-cat4-2/20171211092019.html (令和5年7月25日閲覧)
(6)その他
社会福祉協議会や災害ボランティアセンター等と連携したニーズ把握や震災後に被災3県に設立された中間支援組織との定期的な情報共有・意見交換等を実施している。また、平成28年度の熊本地震の際は、東日本大震災における活動等を共有するため、熊本地震の被災自治体との意見交換等を実施した。
2.ボランティア等の活動促進
震災直後は、主として、海外での災害救援活動に従事しているNGOを中心にボランティア活動が開始され、被災者の救援や、被災地の情報把握に大きな役割を果たした。その後、交通事情の改善、燃料不足の解消等に伴い、国内のNPOや一般の方々のボランティア活動も拡大した。
その活動内容については、発災直後は、がれき撤去・片付け・泥出し・炊き出しなどの活動や避難所運営支援が中心であったが、仮設住宅や災害公営住宅などへの入居が進んでいく中で、被災者の生活支援や見守り・訪問活動等へと、被災者からのニーズに応じて時間の経過とともに変化している。(再掲)
ボランティア活動に対する被災地のニーズや、活動を行う主体は変化してきているが、その果たしている役割は大きく、被災地でのボランティア活動が円滑に行われるよう、ボランティア活動参加の呼びかけや関係省庁との調整等、継続的に施策を実施してきた。
【取組の例】
- ・官房長官記者会見(平成23年5月27日、同年7月29日)等により、ボランティア活動参加の呼びかけを実施。(再掲)
- ・関係省庁と調整の上、旅行業界へのボランティアツアーの設定の呼びかけ(平成23年5月27日)、ボランティア車両の高速道路無料通行手続の簡素化(平成23年8月4日)等を実施。(再掲)


https://www.reconstruction.go.jp/topics/post_133.html (令和5年7月25日閲覧)
- ・平成24年度から同30年度まで、毎年度、キャッチコピーを公募してポスターを作成したほか、様々なキャンペーンイベントやボランティア交流会を実施。
- ・復興庁ウェブサイトに現地のボランティア団体・スタディーツアー・シェアハウス等の情報を掲載(平成29年度以降)。
- ・東日本大震災から10年 ボランティア、被災地との「絆」発信事業にて、ボランティア参加者や被災者の声をビデオレター形式で募集し、復興庁のYouTubeサイトで公開。

https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat4/sub-cat4-2/20180618110957.html (令和5年7月25日閲覧)
3.中間支援組織との連携・協働
(1) 中間支援組織の機能
中間支援組織は、団体設立支援、組織運営の改善・強化支援、事業実施の支援、資金提供、ネットワーク構築、情報収集・発信等を行い、調整機能、窓口機能、アドボカシー、人材育成等の機能を有している。
【具体的な活動例】
- ・市民等に対し直接的に支援活動を行うNPO等を支援
- ・資金、人材、情報等の資源提供者とNPO等を仲介し、NPO等の育成に関わる一方、行政、企業、個人等、資源提供者に向けたサービスも実施
- ・NPO等が抱える課題等を、NPO等同士が様々なレベルでネットワークを組み解決を図る取組を促進
- ・NPO等に対するニーズを発掘し、社会的課題について共有化し、新たな問題解決手法を創出
(2) 3県の中間支援組織
復興に特化した中間支援組織として、岩手県では平成23年4月28日に「特定非営利法人 いわて連携復興センター」が、宮城県では同年3月25日に「(一社)みやぎ連携復興センター」が、福島県では同年7月20日に「(一社)ふくしま連携復興センター」が設立された。発災直後より、これら中間支援組織等と定期的な情報共有、意見交換を実施してきた。
平成27年1月に、被災者支援コーディネート事業を開始した。
具体的には、民間団体等に委託して、被災者の見守りやコミュニティづくりの支援を充実するため「被災者支援コーディネーター」を配置し、
- ①新たな活動主体の参画や支援者間の連携強化を通じた支援体制の充実
- ②企業CSR活動(企業の社会貢献活動)と自治体ニーズのマッチング
- ③生きがいづくり支援事業を実施する各種主体(NPO等)と地域をつなぐ等、関係者間の調整
等を平成27年度まで実施した。
参考:「被災者支援コーディネート事業」の成果(平成26年度)
- ①支援体制の整備:25件(例:福島県川内村で復興支援員の導入によるコミュニティづくり支援等のための体制整備を支援。)
- ②企業CSR活動と自治体ニーズのマッチング:11件(例:ソフトバンクモバイル(株)が「フォトビジョンTV」を無償貸与。現地では、写真展や展示会等の実施、町歩き用のコンテンツ作成、小学校等の地域学習資料としての活用を進める。)
- ③「心の復興」事業(生きがいづくり支援)の実施に向けた調整:18件(例:福島県大熊町でふるさとスタディーツアーの実施による町民の帰還支援の取組を支援。)
平成28年度以降は、被災者支援総合交付金被災者支援総合事業の被災者支援コーディネート事業として実施した。
具体的には、公募により、被災者支援コーディネーターを配置し、以下①~④の取組等を実施した。
参考:令和5年度の公募内容
- ①地方自治体及びNPO等の活動主体への訪問等によって、被災者支援に係る現状・課題、個別の支援ニーズ等を把握し、整理する。
- ②NPO等の活動主体が持つ個別の支援ニーズに対するコーディネート(ニーズとリソースのマッチング)や資金調達ノウハウ、人材育成等の組織運営基盤の強化に対する支援を総合的に行う。また、個別支援に資する被災地内外の新たなリソースの掘り起こしを行う。
- ③行政、企業、民間団体等、多様な主体による連携・協働体制の構築、中間支援組織間の連携強化を行う。
- ④蓄積された優良事例や被災地の現状、課題(当該課題への先進的な取組等を含む。)を、シンポジウム、セミナー、広域的な連携会議などの場で報告・発表するなどして、被災地全体や更に全国に波及させる。
令和元年度及び令和2年度には、被災者支援コーディネート事業において、多様な活動主体と行政との協働による復興支援活動の検証が行われ、「東日本大震災の復興過程における中間支援の検証報告書」(令和2年3月。(株)三菱総合研究所作成)及び「民間支援団体の視点からの東日本大震災10年間の支援活動に関する検証報告書」(令和3年3月。(株)三菱総合研究所作成)が取りまとめられた。

4.その他企業との連携等
前述1.~3.を通じて、企業等を含む多様な主体との連携を実施した。
【例】
- ・NPOと企業等との連携事例を含む復興に当たっての多様な担い手による連携事例について、復興庁ウェブサイトに掲載(平成25年3月12日)。(再掲)
- ・平成24年度以降の学生ボランティア促進キャンペーンで、企業等からポスター掲示等の協力を受けた。平成30年度のポスターについては、全国(九州・沖縄を除く)の大学、社会福祉協議会、ボランティア団体等、計1,200以上の団体に送付したほか、東京メトロの全駅に平成30年7月4日から同月10日まで、東急電鉄の55駅に同月6日から12日まで掲示された。
- ・被災者支援コーディネート事業におけるコーディネート(ニーズとリソースのマッチング)において、ボランティアや企業CSR等のマッチング及び体制構築を実施。
5.評価・教訓・ノウハウ
【評価】
- ・復興の進捗状況や地域・個人の課題が多様化し、きめ細かなニーズ把握や取組が求められており、ソフト面を中心にNPOやボランティア等の活動への期待や果たすべき役割は大きい。このため、培ってきた多様な主体との結びつきやノウハウを最大限活用しつつ、地方創生の施策をはじめとする政府全体の施策を活用することにより、持続可能な地域社会を作り上げていくことが求められる。また、行政だけでなくNPO等の民間団体が極力自立的・持続的に活動を行うことができる環境整備が重要。この観点に立って「公助」「共助」「自助」の適切な組み合わせを目指すべきである。
- ・復旧・復興のフェーズに応じて、ボランティアやNPOの他、消防団や水防団等の地域の防災組織等も含めた多様な主体が活動を効果的に進められるよう、中間支援団体や防災組織等を育成・整備するとともに、被災地のボランティア受入れ体制の整備を検討し、平時から関係者間の協力体制を整えておくことで、地域の「共助」を推進する必要がある。
【今後の大規模災害に生かせる教訓・ノウハウ】
○NPO等間のネットワークや行政機関との連携体制を構築し、効果的な支援を行う。
- ・中間支援組織がコーディネーターとしてNPO等を結ぶネットワークの形成を支援する。
- ・NPO等と行政機関とのセクターを超えた情報共有や連携の仕組みをつくる。
- ・NPO等多様な主体が自立・連携して、地域の復興課題に継続して取り組む活動を支援する。
○NPO等の基盤強化を支援し持続可能性を高める。
- ・組織基盤が脆弱なNPO等に資金助成や人材育成、組織運営面でのノウハウの提供を行う。
○平時から官民連携体制を整備し、役割を踏まえた復旧支援を行う。
- ・平時から、NPO等の中間支援組織との連携体制を構築し、情報共有のあり方や連携について、具体的な取り決めを行う。
- ・発災時には、官民の情報交換会議を開催し、協働母体として継続して復興課題に取り組む体制を維持する。
○官民それぞれの強みを発揮して地域課題に取り組む。
- ・行政機関は効率的な課題解決のためにNPO等に委託を行う。
○国や地方公共団体、NPO等との協働・連携により企業支援を活性化する。
- ・NPO等による多様な取組に対する資金的な支援や協働事業を行う。