復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

60)

応援職員の確保等(受入地方公共団体の取組)

応急期復旧期復興前期復興後期

課題
① 被災地方公共団体は応援職員をどのように確保するか
② 受援体制をどのように整備するか

東日本大震災における状況と課題

 東日本大震災では沿岸部の市町村が甚大な被害を受け、行政機能が不全となり、避難所の運営や応急仮設住宅の確保などの被災者支援、地域産業の早期復旧、復興まちづくりなどの業務を処理するため、他の地方公共団体からの応援職員の確保が急務となった。
 一方で、応援職員を受け入れた地方公共団体によっては、応援を必要とする業務と所管課が明確化されておらず、また、応援職員の受入窓口が一元化されていなかったことから、応援職員の受入れの混乱や所管部局間の連携不足、一貫した指揮系統が発揮されないことなどの問題も発生した。

東日本大震災における取組

災害時相互応援協定を通じた応援職員の確保(課題①)

 宮城県多賀城市は、震災前から県内全市町村、山形県天童市等と災害時相互応援協定を締結しており、福岡県太宰府市、奈良県奈良市の2市とは友好都市提携を結んでいた。発災時には、下水道施設、文化財の復旧支援などを中心に、天童市は技術職員を中心に延べ131名、奈良市も技術職員など延べ155名、太宰府市も文化財の復旧を行う職員を派遣した(事例60-1)。
 岩手県釜石市では、震災前から県内市町村及び愛知県東海市と災害時相互応援協定を結び、合同の防災訓練を行うなど交流を深めていた。東海市はこの協定に基づき、3月12日に先遣隊を派遣して被災状況を確認し、13日から1週間単位で物資の供給と避難所の運営を支援する応援職員を派遣した。10月からは保健師や土木職など技術職を3か月~1年単位で派遣し、2015年3月末で延べ43人となっている(事例60-2)。

全国的な制度の活用による応援職員の確保(課題①)

 被災地方公共団体間での協定だけでは十分なマンパワーが確保できないため、全国的な制度も活用して応援職員を確保した。
 総務省では、発災直後に全国市長会、全国町村会の協力を得て、全国の市町村からの人的支援の体制を構築しており、これらにより、2020年3月31日までの累計で約9万7千人の応援職員が被災市町村等に派遣されている。
 このほか、復興庁においても、一般公募により職員(非常勤国家公務員)を採用し、被災市町村に派遣、被災市町村の復興業務を支援する「復興庁スキーム」を設け(2013年~)、2020年4月現在82人が被災市町村の支援に当たっている。

災害受援計画の策定(課題②)

 岩手県では、応援職員の受入れの担当部署や応援職員が担当する業務を明確にしていなかったため、派遣団体と受入所属との調整などで混乱が生じた経験を踏まえ、2014年3月に「岩手県災害時受援応援計画」を策定した。この計画では、災害対策本部の組織として応援職員の派遣要請や受入れ、各部署との調整を行う受援班を整備するほか、応援職員が支援する業務と所管課を定めている。なお、県内外への職員派遣の手順を記した応援計画も定めている(事例60-3)。
 内閣府は2020年4月、市町村が災害時に応援職員を受入れる受援計画の策定を支援するため、「市町村のための人的応援の受入れに関する受援計画作成の手引き」を作成した(2)

広域ブロック内の応援主幹県による受援調整支援(課題②)

 宮城県では発災後、複数の地方公共団体から応援職員が派遣されたが、複数の応援県からの受入れ・調整のための体制づくりが十分ではなく、状況を見ながら対応せざるを得なかった。これに対し、北海道・東北8道県の相互応援協定(ブロック協定)の応援主幹県であった山形県の提案により、応援県との調整の場が設けられ、宮城県は多数の地方公共団体から支援を受け入れることができた(5)。その後、2014年10月に協定が改正され、広域応援本部を置く会長道県が被災県への応援職員の受援調整を行うこととされた(6)

教訓・ノウハウ
① 同時被災を避けるため、複数地方公共団体間で災害時応援協定を結び、協働の防災訓練を実施するなど、平時から連携関係を築いておく

友好都市協定の締結地方公共団体との間で災害時応援協定を締結する。

災害時の応援を確実なものとするため、遠方の地方公共団体も含め、複数の地方公共団体と協定を結んでおく。

② 応援職員の受け入れを円滑に実施するための受援計画を策定する

応援職員を受入れる受援組織を災害対策本部に整備し、派遣地方公共団体や受入所属との調整を円滑に行う。

業務を円滑に継続できるよう、業務の指示を行う指揮命令者と受援担当者を複数名配置する。

③ ブロック協定で被災県に代わって受援調整を行う都道府県をあらかじめ定めておく

都道府県の広域ブロック協定で、被災県に代わって応援職員の受入れ等の受援調整業務を行う都道府県をあらかじめ複数県定めておく。

<出典>
(1) 岩手県「岩手県災害時受援応援計画平成26年4月(平成27年3月最終改正)」2015年3月,p1
(2) 内閣府(防災)「市町村のための人的応援の受入れに関する受援計画作成の手引き」2020年4月
http://www.bousai.go.jp/taisaku/chihogyoumukeizoku/index.html

(3) 総務省「震災対策の推進に関する行政評価・監視-災害応急対策を中心として-<結果に基づく勧告>イ広域応援・受援体制」2014年6月27日
https://www.soumu.go.jp/main_content/000298454.pdf

(4) 山形県「2011.3.11に発生した東日本大震災の記録~その時、山形県はいかに対応したか~」2015年,p1~3
https://www.pref.yamagata.jp/documents/7996/all.pdf

(5) 宮城県「東日本大震災―宮城県の発災後1年間の災害対応の記録とその検証―概要版」2015年3月,p3
(6) 北海道「大規模災害時等の北海道・東北8道県広域応援ガイドライン」2015年3月

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