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応援職員の確保等(受入地方公共団体の取組)
事例名 | 友好都市による職員派遣(多賀城市) |
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場所 | 宮城県多賀城市 |
取組時期 | 応急期復旧期復興前期復興後期 |
取組主体 | 受援側:宮城県多賀城市 応援側:福岡県太宰府市、山形県天童市、奈良県奈良市 |
取組概要
宮城県多賀城市では、友好都市協定により平時から培った「顔の見える関係」による復旧復興支援が行われ、特に不足していた技術職員の確保に効果的であった。近隣だけでなく遠方の地方公共団体からも多様な支援が行われ、これにより応援側である地方公共団体の防災対応力も向上した。
具体的内容
被害状況
多賀城市では156名(関連死含む)の市民が亡くなった。住宅への被害としては、1,746世帯の住宅が全壊、1,634世帯が大規模半壊、2,096世帯が半壊し、合計で11,859世帯の住宅が被害を受けた。学校や庁舎、農水商工業施設など市内の施設も被害を受けたが、最も大きい被害を受けたのが下水道関係の施設だった。特に宮城県が管理している仙塩浄化センターは、津波によって施設が水没したことですべての機能が停止した。約64億円の市内被害額のうち、約58%にあたる37.6億円が下水道関係の被害である。したがって、住宅と下水道設備の被害の大きさから、被害査定と上下水道の整備にノウハウを持つ職員の需要が高まっていた。
多賀城市に対する各友好都市の支援
宮城県多賀城市は、福岡県太宰府市(2005年11月~)、山形県天童市(2006年4月~)、奈良県奈良市(2010年2月~)の3市と友好都市提携を結んでおり、震災前から交流が行われていた。被災時にも平時からの交流が活用された。
太宰府市では、総務部(災害援護資金や弔慰金の受付など)や、上下水道部、建設部などへの技術職員の派遣が行われた。短期・中長期あわせて、現在までに37名の職員を派遣した。うち19名は中長期派遣で、内訳は下水道等公共施設の災害復興業務8名、土地区画整理に関する技術職員6名、事務職員5名となっている。太宰府市の特色としては、短期の派遣で5名の文化財担当職員を派遣したことである。もともと多賀城市と太宰府市の友好都市提携が、国の特別史跡を持つという共通点から発していることもあり、太宰府市の史跡や文化財を保全に関するノウハウが活用された。
天童市は上下水道部、建設部などの技術職員を中心に延べ131名の職員派遣を行った。災害発生直後の時期には、1班3名の組み合わせで5班が交代で派遣され、応急給水作業を行った。その後も下水道調査の派遣を行うなど、災害復旧に必要な技術職員の人手不足を補う役割を果たした。天童市と多賀城市とは、人口規模がおよそ6万人で規模が近いこともあり、業務の進め方や体制が類似していたことから、応援側の天童市は支援を通じて災害対応のノウハウを得ることができた。
奈良市は延べ155名の職員を派遣し、建設部での応急仮設住宅の建設・下水道建設支援や避難所運営支援を担当した。奈良県は発災翌日、多賀城市からの「助けてください」というメールを受け取り、送られてきた必要な物資のリストを基に物資供給と職員派遣を決定した。同日現地入りし、多賀城市から「奈良市の救援物資が一番先に届いた」と言われるほど迅速な物資供給を行った。迅速な物資供給が可能になったのは、奈良県警からの出向職員が奈良市役所に在籍しており、警察官同士の情報ネットワークを活用できたことが一因である。具体的には被災物資を送る車両に同乗してもらい、通行情報を被災地で警邏している警察官と共有することで、目的地までのルート確保に役立った。

(写真:多賀城市と太宰府市の交流イベント、多賀城市子ども親善使節団の様子 出典:太宰府市HP)
・多賀城市「多賀城市における東日本大震災の被害状況概要」(2018年8月)
http://www.city.tagajo.miyagi.jp/bosai/kurashi/daishinsai/documents/h3008higaigaiyou.pdf
・多賀城市HP「友好都市 福岡県太宰府市」(2020年2月)
・多賀城市HP「友好都市 山形県天童市」(2020年2月)
・多賀城市HP「友好都市 奈良県奈良市」(2020年1月)
・宮城県広報誌「NOW IS. 多賀城市への応援職員(山形県天童市から)」
・史都・多賀城 防災・減災アーカイブズ たがじょう見聞憶「防災・減災への指針 一人一話」
http://tagajo.irides.tohoku.ac.jp/index
「応援自治体職員の声――太宰府市①――」(2013年10月)
「応援自治体職員の声――太宰府市②――」(2013年10月)
「応援自治体職員の声――天童市――」(2014年1月)
「応援自治体職員の声――奈良市――」(2013年11月)
・太宰府市ウェブサイト「東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)に係る支援」(2020年3月)
・奈良市ウェブサイト「東日本大震災支援状況について」(2018年4月)
https://www.city.nara.lg.jp/soshiki/2/5871.html