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根本復興大臣の会見[平成25年5月7日]

根本復興大臣記者会見録(平成25年5月7日(火)10:45~11:13 於)復興庁記者会見室

1.発言要旨
 おはようございます。私のほうから3件お話をいたします。
 1件目は、平成24年度住民意向調査概要の公表についてです。
平成24年度に実施した原子力被災自治体における住民意向調査の結果を取りまとめたので、公表いたします。
 調査結果について主な部分を紹介しますと、帰還のご意向については、高齢者ほど帰還のご意向が高く、子供がいる世帯の帰還のご意向が低い傾向にあります。また、判断できない住民の方々が全市町村で一定割合存在いたします。
 避難生活を希望する市町村について、いわき市が最も多く約4,500世帯、次いで福島市、南相馬市が約1,200世帯、郡山市が約900世帯という結果になっております。
 町外コミュニティへの居住の意向については、高齢者ほど居住のご意向が高い状況であり、生活を送る上で重視するものとして「医療」が最も多く挙げられております。また、判断できない住民の方々も5割程度存在しております。
 これらの結果を踏まえ、「地域の希望復活応援事業」や「コミュニティ復活交付金」を活用して、原子力被災自治体における復興に向けた課題の解決に向けて、取り組んでまいりたいと思います。
 2件目は、復興特区法に基づく課税の特例の活用状況及びその効果についてです。
 本年3月末現在の指定事業者数は1,352社、指定件数は1,636件であり、順調に増加しております。
 また、今回は、復興特区法に基づく課税の特例の効果についても併せてお話をさせていたただきます。
平成24年2月から25年3月末までに青森県、岩手県、宮城県、福島県及び茨城県において指定を受けた事業者等による投資見込額は約9,700億円で、ほぼ1兆円近くの投資見込額になっております。被災者の雇用予定数は約6万4千人であり、被災地の投資促進及び雇用機会の確保に一定の効果があったものと考えます。
引き続き多くの事業者が、この特例措置を活用することにより、被災地における復興が加速化することを期待しております。
 3件目は、ウクライナ出張についてお話をさせていただきます。
 東電福島第一原子力発電所の事故から2年が経過し、本日、双葉町の区域見直しが決定されました。これから福島の再生・復興は、いよいよ「住民の帰還実現」という次のステップに入ります。こうしたタイミングでチェルノブイリ原発事故の教訓を福島の再生・復興に活かすため、今回、事故が発生したウクライナを訪問いたしました。
 ウクライナでは、環境・天然資源省のプロスクリャヤコフ大臣、事故以来、現場責任者として従事された立入禁止区域管理庁のホローシャ長官、また大統領直轄国立戦略研究所の所長以下、チェルノブイリ事故対応の専門家の方々等とお会いしてお話をいたしました。その中で、チェルノブイリの事故の実態と事故からの再生の取組の大枠について意見交換いたしました。
 意見交換を通じて安倍内閣として取り組んできた福島ふるさと復活プロジェクト―新たな補正予算、新年度予算で講じている「地域の希望復活応援事業」「コミュニティ復活交付金」「子ども元気復活交付金」―や営農再開支援などの取組について説明をしましたところ、ウクライナの政府関係者からは、そうした取組の方向性は重要だとの認識が示されました。我が国においては、これから事故からの再生・復興が本格化いたします。今回の出張を契機として、ウクライナでの厳しい経験を更に深く学び、一日も早く帰還を望む住民の皆様が帰還できる環境の整備に全力を上げていきたいと思います。
 私からは以上です。

2.質疑応答
(問)ウクライナの出張の件でお伺いします。大臣は出発前に、ウクライナの経験というものを日本の福島の復興に役立てたいということをおっしゃっていましたけれども、ウクライナでは基本的に除染はしていないですとか、住民の帰還を目的にしていないという意味で、復興政策の前提というのが日本と異なると思います。そういった中で、ウクライナの経験というのが具体的に日本の福島の復興にどのように役に立つとお感じになったか、その点お話しいただきたいのですが。
(答)今回ウクライナに行って、私もチェルノブイリと日本の共通点、あるいは復興政策についての考え方の相違点は感じました。
 一つは、ウクライナの方は27年間大変な苦労を重ねて事故からの再生に取り組んでこられた状況を詳しく伺うことができました。
 一つは、チェルノブイリ原発事故と福島第一原発事故は、事故の規模が異なることを改めて認識しました。例えば、チェルノブイリの原発事故は、放射性物質の放出の面で東電福島第一原発の6倍の事故の規模で、大変大きな規模であった。そして、プルトニウムなど半減期の長い各種の放射性物質、これも福島よりも―福島は、プルトニウムはほとんどありませんでしたが―大量かつ広範囲に放出されております。ですから、こういう状況の違いで、その後の対応の施策は変わってくるのだろうと思いました。
 そしてもう一つは、チェルノブイリの事故は―ウクライナは事故後5年で独立したわけですが―当時、ソ連という共産主義国家体制の下で発生しており、現地でもいろいろ聞きましたが、情報が必ずしも住民に行き渡っていないという話を聞きました。そしてコルホーズ、要は農業地帯ですから、実は、自家消費をする農家が多かったため、住民に食べ物を通しての内部被ばくが非常に大きかった、ここがチェルノブイリと日本の事故の相違点かと思います。
 一方で、現在でもウクライナ政府は長期にわたって住民の健康管理に努めておりまして、この点は我が国と同様に様々な知恵を絞りながら対応されている、この辺が共通点だったと思います。

(問)特に日本の政策に生かせそうなところといったら、どんなところですか。
(答)一つは、原発事故の対応というのは科学的な知見に基づいて、将来の見通しをしっかり持って判断していくことが重要であるということを改めて感じたのと、それから、ウクライナでは被災住民の心のケアなど様々な取組を行う支援センターを被災地に設置して、地域に根差した専門家が様々な面でのカウンセリングを行う、地域密着型で住民の不安に応える、対応する、こういう取組をしておりまして、これは福島の原発事故からの避難者ということだけではなくて、今、津波被災しても、長期間なかなか自分の地域に戻れないという方々もおられて、仮設住宅に長期間おられるわけですが、この支援センターのような取組が重要であると改めて認識をいたしました。こういうものを参考にしていきたいと思います。

(問)復興特区法に基づく課税特例の効果についてお伺いします。当初見込額でおよそ1兆円で、雇用者数が6万4,000人ということで、非常に大きな効果が得られていると思います。被災地復興の取組の中では、この雇用のうち新規雇用の面というのが非常に重要になってくると思うんですけれども、全体での新規雇用はどれぐらいあったのでしょうか。
(事務方)内訳はございません。被災者の雇用数ということで、新規、継続を含めての数字ということです。

(問)ウクライナの訪問に戻らせていただきます。ウクライナの原発事故の関係閣僚と意見交換されたということですけれども、その中でチェルノブイリ原発事故で汚染された地域の土地利用についての、いわゆるチェルノブイリ法については何かお話はありましたでしょうか。
(答)チェルノブイリ法の中身についてお話がありました。要は、チェルノブイリ法では、結局5年間共産主義政権、ソ連の下で情報が非常に不足していて、日本と違って、事故による汚染がチェルノブイリは非常に多かったのです。事故後5年目にしてウクライナ政府が樹立されて、そしてチェルノブイリ法というものを作った。そこでの取組は、違った取組で、日本のほうは帰還支援です。これは彼らからも、日本の取組については評価をいただきましたが、チェルノブイリのほうは、農業地帯なものだから、そこで農業を営み生活を営んでいる地域については、半減期が長い放射性物質も含まれているので、そこについては他の地域に移住させる。そして、とりわけ彼らが強調していたのは、やはり食べ物からの内部被ばく、チェルノブイリは、そこの地域に住んで、そこでできたものを食べている―牛乳とか、ジャガイモとか―から、その汚染度の高い地域は移住するという選択をしたのです。そこは我々の取組とは、その地域の、つまり農業地帯であって、そこで農業を生産していながら、そこの地で生産されたものを食べているというところが、前提が恐らく日本と違うのだろうと思います。だから、彼らの考える基準値というのは、実際の実効放射線量で、内部被ばくで受ける要素が非常に強いという印象を受けました。
 ちょうどソ連が崩壊する直前にチェルノブイリ法ができたんのです。だから、その辺の歴史的な制定経緯、その背景も十分に分析する必要があるだろうと思います。これについては、現地に行ってかなり解明された点があるので、この辺のことについてもう少し調査、分析して、我々の施策に生かしていきたいとは思いますが、同じ事故であっても、それぞれの背景、社会的な状況は随分違うのだなと感じました。ですから、いずれにしても、原因や具体的なチェルノブイリが抱えた問題点、課題と日本の抱えている問題点、課題は、共通するものもあるし、社会的に随分背景が違うものもありますから、その辺をきちんと整理して、これからの我々の復興施策に生かしていきたいと思います。
 いずれにしても、今回の調査だけで十分ということではなくて、かなりの知見は得られましたが、それを今後更に詰めて整理をしていきたいと思います。

(問)ウクライナの関連で双葉町の区域再編が決定したというお話がございましたけれども、事故後すぐからの警戒区域がこれによって全て解除される、見直されるということになるのですけれども、それに2年もかかったということについての時間軸についての御見解ということと、もう一つ、早く終わったところはもう1年経っているんですけれども、なかなかインフラ復旧とか除染とかまだ進んでいないというような印象もあるのですけれども、その点についてどのように考えられているのでしょうか。
(答)区域見直しの方針というのは、たしか平成23年12月に区域見直しをしましょうという方針が出されたと承知しております。そのときから、それぞれの市町村と話をしながら区域見直しをしてきたわけですが、やはり今回双葉町で大体ほぼ終了ですけれど、それについては住民の皆さん、そして、それぞれの首長をはじめ行政の皆さんと十分に、丁寧に議論をしながら区域再編見直しをして、そして、ここでいよいよ次のステップになるという時期を迎えたということだと思います。
 それから、区域見直しをしたところでも、それぞれ地域の状況によって進度は違いますが、我々も今回、支援定住促進プランも作ったし、様々な具体的な工程表も示しておりますので、これから町とよく相談しながらインフラ復旧、あるいは長期避難者の生活拠点整備の復旧・復興を加速していきたいと思います。

(問)見直しについて、除染と賠償、再編に絡めたことで、現場で混乱したという状況もあるかと思うのですけれども、それについてはいかがでしょうか。
(答)それは、どういう趣旨ですか。

(問)要するに、区域の再編を3区分にするときに、それによって賠償の基準が違うとか、再編をしないと除染ができないとかいうので、いろいろ現場の市町村とか住民とかは混乱して、それで見直しの線引きが進まなかったという事実もあるのではないですか。
(答)それは、いろいろ経緯はあったと思います。その賠償の問題も、住民の合意形成については一つの課題であったと思います。だから、そういう状況はあったと思います。いずれにしても、我々は、新しい安倍政権になって区域見直しを行いました。これから大事なのは、いかに復興のスピードアップを図っていくのか、そのための予算の計画も用意しましたから、我々の使命は、これをいかに加速化していくかです。これが私の使命だと思います。

(問)今の大臣の次のステップに入るというお話で、今日の住民意向調査で少し伺いたいのですけれども、帰還意向を示した8市町村のうちの住民を見てみますと、田村市を除いては「まだ判断できない」とか「戻らない」というふうに回答している人のほうが、「戻る」ですとか「戻る意向がある」人を上回っている現状があると思います。なかなか帰還という流れには必ずしもなっていないというふうに思うのですけれども、このアンケートの結果、この点について大臣はどう御覧になるのか、御見解をお聞かせいただければと思います。
(答)今お話がありましたように、戻りたいと考えている方々、戻らないと考えている方々、あるいは判断に迷っている方々、様々な方々がいらっしゃいます。それから、ある程度それぞれの方々が求める支援についても把握することができたので、そういう結果を踏まえてこれからどうするか、そこは各市町村とよく相談しながらいきたいと思います。大事なのは、帰還の加速化、これは「地域の希望復活応援事業」を活用してやりたいと思うし、長期避難に当たっての生活拠点の整備、これは「コミュニティ復活交付金」を活用してやりたいと思っております。
 調査により明らかになったのは、それは三つの類型がありましたけど、確かに現時点で判断できない方が一定の割合でいらっしゃいます。それから、総体で見てみると、高齢者の方ほど帰還のご意向が高い傾向にある状況が出ていますから、一番必要なのは、帰還の判断のための情報提供が必要なのだろうと思います。やはり情報だと思います。
 これはウクライナに行ったときも、いかに情報をきちんと提供するかが大事だということを改めて感じましたが、迷っておられる方には、これからの帰還の判断のための具体的な情報を提供して適切に判断してもらうようにしたいと思いますし、帰還後のまちづくりについても、やはり高齢者の皆さんで意向があるのは、介護の問題とかありますから、高齢者のための介護、あるいは生活支援などのソフト施策、こういうものの対応策をきちんとよく市町村の皆さんと相談しながら、対応をしていきたい。そういうことを通じて、判断を迷っておられる方々への判断材料を提供していきたいと思います。

(問)ウクライナの関係なのですけれども、制度も事故の規模も時代も違うということが前提なのですけれども、ウクライナで会談された要人の方から、日本の「除染をして帰還をする」という政策については、どういう評価がありましたか。なるべく彼らの言葉、もし否定的なものもあれば、良い悪いという問題ではなくて、どういうふうに評価されたのかお願いします。
(答)彼らも様々な体験をして、恐らくあのとき、ああすればよかったという判断もあると思いますが、彼らは、先ほども言いましたけれど、農地に、つまり農業地帯なので、非常に農地の土壌に対する注意があって、特に食べ物から内部被ばくがあったから、どこかへ移住という判断をしたのだけれど、移住したことに伴って、先ほど言いましたけれど、やはりふるさとに戻りたいとか、様々な心理的ストレスとかが確かにあると、それに対してのケアが必要ですという話はありました。それから、我々は程度が違うから、我々はむしろ除染して帰還支援で、これについては、彼らは、やはり日本のそういう選択、そういう方向性、彼らは、そういう対応が大事だという話はしていました。やはり状況がそれぞれ違うので、きちんとそれぞれの状況の違いに応じた取組というのが必要かなと改めて思いました。

(問)おおむね肯定的だったのでしょうか。
(答)ある程度、つまり我々は事故後2年で区域再編をしている。そして、避難指示をしたところでも、帰還できるところは帰還させるための除染、あるいはインフラ復旧、こういうことでやりますと。それから、日本の場合は内部被ばくについてはきちんと検査体制を講じているし、そこのところは、日本は対応しているので、その意味では我々の取組の方向性、そして私の今やっている対策はお話をしましたから、その方向性については非常に重要であるという認識は示されました。あとは原発事故の対応というのは科学的な知見に基づいて将来の見通し、例えば放射線も減衰していくわけですから、そういう将来の見通しをしっかりと持って判断していくということが必要だという話もありました。きちんと将来を見通しながらやっていく、それも必要ですという話はありました。

(問)どなたからそういう話があったのですか。
(答)私が会ったのは環境・天然資源省のプロスクリャコフ大臣と立入禁止区域管理庁のホローシャ長官、それから国立戦略研究所の所長を含めた研究員の方々です。国立戦略研究所というのは大統領直轄の府ですから、その有力なトップの方々からそういうお話がありました。
 今回よかったのは、それぞれ対応してきた中心的な人物、トップクラスと議論させていただいたので、非常に広範な議論ができました。私が疑問に思っていることとか、かなりの部分が解消されましたから、これはこれからの復興施策に生かせると思います。
 それともう一つ、ウクライナの皆さんは、あの原発事故の起こった後、日本に対して支援してくれました。例えば、日本大使館にもウクライナの人から、「是非、福島頑張ってくれ」という激励のお声が非常に多かったそうです。だから、ウクライナの方々は福島に対しては、同じ体験をしたということで、日本に対しては非常に関心も高いし、日本の復興を非常に応援してくれているという印象を持ちました。

(以    上)

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