復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

7)

応急仮設住宅等におけるコミュニティの形成

復旧期復興前期

課題
① 建設型応急住宅入居者の交流(孤立防止)をどのように促進するか
② 賃貸型応急住宅入居者の孤立をどのように防止するか
③ 応急仮設住宅における住民自治をどのように推進するか

東日本大震災における状況と課題

 建設型応急住宅では、入居が長引くにつれ、集会所の使用やごみの出し方など生活上のルールを住民同士で決める話し合いの場や住民が交流する仕組みを作る必要が生じた。また、元の居住地から離れた地区に建設型応急住宅が建設された場合は、入居者と地域の住民との関係づくりも必要となった。一方、賃貸型応急住宅の入居者は、各地の賃貸住宅に分散して生活することになったため、元のコミュニティや新しく入居した住宅、地域からの孤立防止が重要な課題となった。

東日本大震災における取組

「住宅マップ」等を通した住民交流の促進(課題①③)

 建設型応急住宅への入居者は抽選で決まった地域も多く、個人情報保護の観点から入居者の情報が提供されなかったため、知人がどの建設型応急住宅に住んでいるのかわからないという事案も多かった。宮城県南三陸町では、2011年10月、建設型応急住宅入居者や町民有志による「復興みなさん会」が設立され、会員が入居者を戸別訪問し、了解が得られた世帯について、世帯主の名前と元の集落・地区名を記載した「住宅マップ」を作成して配布した。さらに、建設型応急住宅に自治会が設立されるようになると、自治会と連携してお茶会や花の植栽、復興の最新情報を学ぶ「復興てらこ屋」等の活動を行い、住民同士の交流やコミュニティの形成を支援した(事例7-1)。

自治会同士の連携による住民自治の推進(課題①③)

 宮城県石巻市の建設型応急住宅団地の自治会では、自治会役員が阪神・淡路大震災当時の応急仮設住宅自治会長との会談を行い、そこで得られた知見を踏まえて、2011年12月に5団地の自治会による石巻仮設住宅自治連合会が設立された。連合会では、「孤独死をなくそう」を合い言葉として、毎月定例会議で各団地の問題点を共有しながら、安全・安心な生活環境の構築に向けて活動を行った。2012年2月には、連合会、石巻市、石巻市社会福祉協議会及び支援団体で石巻仮設住宅自治連合推進会を発足させ、建設型応急住宅団地同士の交流を図るイベントの開催や情報紙の発行等を通してコミュニティ形成に取り組んだ。2016年1月には一般社団法人石巻じちれんを発足させ、災害公営住宅での朝のラジオ体操の実施や、万が一倒れた場合に備え緊急連絡先を書き込み携帯する「つながりカード」の普及等を通じ、災害公営住宅のコミュニティ形成にも取り組んだ(1)(2)

元のコミュニティの住民が集う集会所の設置(課題①③)

 住民が市内各地の応急仮設住宅に分散して入居した岩手県釜石市根浜地区では、元々住民が住んでいた地区に町内会が集会所を設置し、月に1度は顔を合わせ、地区での住宅再建について意見を交換し、地区としての考えをまとめる機会を設けることで住民同士のつながりを維持した。その結果、根浜地区では、地区に戻って住みたいという当初希望者のうち、約9割に当たる38世帯が根浜地区内の高台に造成された移転団地に住まいを戻した(3)

賃貸型応急住宅入居者の交流支援(課題②③)

 福島県富岡町では、県内外の賃貸型応急住宅で生活する町民同士のコミュニティの再生を推進するため、コミュニティやネットワークづくり、イベントの企画・実施、住民と行政機関の連絡調整を行う団体を「富岡町コミュニティづくり推進団体」として登録し、情報提供や財政的支援を行った。
 登録団体の一つである「福島市及び県北地区在住富岡町民自治会」は、避難者同士の情報交換の場として福島市内に交流サロンの設置を町に要望し「富岡町さくらサロン」を開設するなど、避難者の孤立防止とコミュニティ活動の再生に取り組んでいる(事例7-2)。

教訓・ノウハウ
① 建設型応急住宅入居者が顔を合わせ、協働する機会をつくる

住宅マップづくり等を通してどの住戸に誰が住んでいるのか入居者同士が分かるようにする。

お茶会や植栽活動など入居者が交流できる機会を創出する。

同じ地区の住民が異なる仮設住宅に分散して入居した場合は、元のコミュニティの住民が集まる機会を確保し、住宅再建の相談など住民同士の交流を促進する。

② 賃貸型応急住宅の入居者同士のつながりの創出を支援する

賃貸型応急住宅の入居者が集まるサロンのような場所を確保し、住民同士の交流を維持するとともに、財政的支援や広報協力により住民活動の継続を支援する。

③ 応急仮設住宅の自治会、行政機関、支援関係機関の連携体制を構築する

各自治会・行政機関・支援関係機関の間で入居者の孤立防止等の課題を共有し、連携して課題解決に取り組む体制を構築することで、自治会活動を活性化する。

※石巻仮設住宅自治連合推進会は、建設型応急住宅の減少に伴い2018年3月に解散したが、実務は一般社団法人じちれんが引き継ぎ、継続してコミュニティ形成に取り組んでいる。
<出典>
(1) 一般社団法人石巻じちれん
(2) 東北関東大震災・共同支援ネットワーク地域支え合い情報編集委員会 編集「月刊 地域支え合い情報 47」2016年7月,NPO法人全国コミュニティライフサポートセンター発行
https://clc-japan.com/sasaeai_j/

(3) 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構「事例に学ぶ生活復興」東日本大震災被災者の生活復興プロジェクト報告書(復興庁2017年度委託事業)2018年3月,p73
https://www.reconstruction.go.jp/topics/m18/04/20180409160607.html

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