3)
広域避難者と被災地のつながりの維持(避難元地方公共団体の取組)
応急期復旧期復興前期復興後期
② 広域避難者に対する帰郷支援をどのように行うか
東日本大震災における状況と課題
東日本大震災では、住所地を離れ、全国各地に避難する広域避難者が長期の避難生活を余儀なくされ、避難先での生活や住宅の再建をどうするかなど様々な課題を抱えることとなった。避難元の地方公共団体やNPO等民間の支援関係者は、広域避難者に対して、ふるさとの復旧・復興状況に関する情報提供や生活再建意向の把握を行い、広域避難者の生活や帰郷の支援、被災地での復興まちづくりに反映させていくことが求められた。
東日本大震災における取組
広報紙発行による広域避難者の生活状況やふるさとの復興への想いの共有(課題①)
福島県浪江町では、町と一般社団法人東北圏地域づくりコンソーシアムの協働プロジェクトとして、2011年7月から『浪江のこころ通信』を発行している。この通信は、各地で避難生活を送る町民に、「どこに避難しているのか」、「どのような生活を送っているのか」、「町の復興にどのような想いを持っているのか」等を取材することにより作成され、ふるさとの復興への想いの共有や生活再建支援、町の復興事業の推進に活用されている(事例3-1)。
情報通信技術(ICT)の活用による広域避難者との情報共有(課題①)
福島県双葉町では、「ICTきずな支援システム」を運用している。この事業は、全国各地に避難を余儀なくされている世帯に対し、町からのお知らせなど行政情報の閲覧や利用者間の交流機能、電話相談機能などが組み込まれたタブレット型情報端末を配布するものである(1)。
内陸避難者の相談窓口の設置(課題②)
岩手県は、2016年5月に盛岡市に「いわて内陸避難者支援センター」を開所し、専門的知識を有するNPO法人への業務委託により、沿岸の被災市町村から内陸及び県外へ避難している住民の住宅再建に係る意向把握や住まいの確保についての相談支援を市町村に代わって行っている(2)。
全国の避難先で直接相談できる「生活再建支援拠点」の設置(課題②)
福島県では、NPO等への業務委託により、全国26箇所に「生活再建支援拠点」を設置し、広域避難者への情報提供や相談支援を行っている。例えば、山梨県の「東日本大震災・山梨県内避難者と支援者を結ぶ会」では、県内避難者を個別的かつ継続的に支援するパーソナルサポーターを養成し、多数の支援団体と連携しながら避難者の生活相談や就労支援を行っている。また、ふくしま連携復興センターでは、福島市内に県内外の避難者の相談拠点として「ふくしまの今とつながる相談室toiro」を設置し、依頼者の要望に応じて住宅・就職・地域づくり・学校・健康・帰還支援等様々な分野の人材派遣や県外避難者の会合等での情報提供などの事業を実施している(事例3-2)。
広域避難者への取材により生活状況や復興への想いを把握し、広報紙等に掲載して共有する。
情報通信技術を情報提供や被災者間のコミュニケーションツールとして活用する。
きめ細かい相談対応等により生活再建等に関する意向を継続的に把握し、長期的にサポートする。
(1) 双葉町「ICTきずな支援システム(タブレット)」
https://www.town.fukushima-futaba.lg.jp/4656.htm
(2) 岩手県「いわて内陸避難者支援センター」
https://www.pref.iwate.jp/shinsaifukkou/saiken/sumai/1002507.html