復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

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応急仮設住宅等におけるコミュニティの形成

事例名 住民が主体となって取り組むコミュニティの再生「復興みなさん会」
場所 宮城県南三陸町
取組時期 応急期復旧期復興前期復興後期
取組主体 一般社団法人復興みなさん会
一般社団法人東北圏地域づくりコンソーシアム

取組概要

 宮城県南三陸町では、2011年10月、町民有志による「復興みなさん会」が設立され、地域の暮らしを支えてきたコミュニティの再構築が町の復興を進める礎になるという信念のもと、応急仮設住宅や災害公営住宅でのコミュニティの再生に向けた活動を行っている。

具体的内容

復興みなさん会の設立

 宮城県南三陸町では、多数の住民が複数回の避難行動や長期にわたる応急仮設住宅での生活を余儀なくされ、これまで地域の暮らしを支えてきた人と人とのつながりが大きく損なわれた。このような現状を受け、住民同士の絆の再生やコミュニティの再構築が町の復興に向けた大きな礎になるという信念のもと、2011年10月に町民有志による「復興みなさん会」が設立された。2014年5月には一般社団法人化し、コミュニティの活性化に向け活動を継続している。
 一般社団法人東北圏地域づくりコンソーシアムは、地域での研修や交流会の開催、OJT的支援、情報発信、各種コーディネート等を通して、「復興みなさん会」の活動を後方支援している。

応急仮設住宅等でのコミュニティづくり

 応急仮設住宅では、どの住戸に誰が住んでいるのかわからず、自治会の設立が難航した。「復興みなさん会」では、会員が入居者の戸別訪問を行い、そこで得られた世帯主名や元の居住集落・地区名の情報提供について承諾を得られた世帯を掲載した「住宅マップ」を作成し、配布した。また、応急仮設住宅に自治会が設立されるようになると、自治会と連携してお茶会や植栽活動、復興の最新情報を学ぶ「復興てらこ屋」等の活動を行い、住民間の交流やコミュニティの形成を支援した。
 2012年度から始まった「椿はな咲くまちづくりお茶会」は、“復興の話し合い”だと参加しにくいと感じている女性や高齢者でも自由に話ができ、気軽に参加できるお茶会として始められた。時には、住民の声を聞くためにワークショップ形式をとることや復興まちづくりの情報提供が行われることもあり、幅広い立場・世代の住民が復興まちづくりに関わる機会にもなった。
 また、同年度に、津波からの避難路沿いに椿を植えて避難の際の目印とする「椿の避難路づくり」も始まった。椿の苗の植樹・育樹はもとより、種から採れる椿油を使った料理を楽しむ交流会、遠方に避難している町民に町の復興の様子を見てもらう「椿お花見バスツアー」など様々な活動につながっていった。

応急仮設住宅等でのコミュニティづくり

2012年3月1日「復興てらこ屋」神戸の復興から学ぶ
(提供:一般社団法人復興みなさん会)

災害公営住宅でのコミュニティづくり

 2014年に入ると、災害公営住宅の入居予定者が決まり始めた。そこで、町役場や社会福祉協議会、復興に関わるコンサルタント等と連携しながら、入居予定者の事前交流会「くらしの懇談会」(入居1年半前、1年前、半年前)の開催や、災害公営住宅の自治会の設立や地域コミュニティの形成支援が行われた。
 例えば、災害公営住宅である入谷復興住宅では、入居者に地元出身者が少なく、土地勘がない住民が多いことがわかったため、住宅周辺の店舗や施設等の地域情報をまとめた「入谷お役立ちマップ」を作成した。マップ作成には、復興住宅周辺の住民も参加し、入居者同士の交流の機会だけでなく入居者と周辺地区の住民が交流する機会にもなった。
 また、災害公営住宅への入居を前にして、これまで引越の経験がない住民から不安の声が出たことをきっかけに、すでに災害公営住宅に入居した人の体験談を聞き、引越の極意を学ぶ交流会を企画したり、災害公営住宅入居後も住民の交流が途切れないよう交流会や外出支援活動(移動交流会)を開催したりするなど、さまざまな活動に取り組んでいる。

町民参加による南三陸町震災復興祈念公園の管理・運営に向けて

 2019年には、南三陸町震災復興祈念公園を住民参加型で管理・運営していく方法を検討するため、まちづくり協議会等ほかの住民団体と連携し、復興祈念公園をフィールドとして町民ができること・実践してみたいことを共有するワークショップを開催した。
 2020年10月に復興祈念公園が本格開園することを受け、「椿の避難路づくり」の一環として、公園の一部に町民参加で椿の植樹を行うイベントを開催、多様な町民が公園に関わることができるよう、きっかけづくりが進められている。

<出典>(他の事例集等への掲載)
・一般社団法人復興みなさん会「復興みなさん会 コミュニティ支援のあゆみ」(2018年3月)
http://tohokuconso.org/common/minasan/about.html

・2020.06復興みなさん会 活動レポート
・一般社団法人復興みなさん会「これまでの活動実績」
http://tohokuconso.org/common/minasan/flow.html
<活用された制度>
・宮城県震災復興担い手NPO等支援事業補助事業(宮城県)
・みやぎ地域復興支援助成金(宮城県)
・おらほのまちづくり支援事業補助金(南三陸町)
・トヨタ財団 国内助成プログラム(東日本大震災特定課題)助成金
・公益財団法人大阪コミュニティ財団 助成金
・ジャパン・プラットフォーム「共に生きる」ファンド助成金     ほか

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