43)
にぎわいの創出・再生
復興前期復興後期
② 地域商業の再生やにぎわいの創出をどのように進めるか
東日本大震災における状況と課題
津波により市街地が壊滅的な被害を受けた市町村では、市街地全般の復興が進むとともに、住まいに加え、地域の中核的諸施設の復興が必要となり、なかでも市街地中心部の商業集積・商店街の再生が重要な課題となった。このため、国は2014年1月に「被災地まちなか商業集積・商店街再生加速化指針」を策定し、市街地における商業集積・商店街再生の標準的な手順を提示した。この指針に沿って行政と民間が知恵を出し合い、商業集積・商店街を整備するためのまちなか再生計画や商業施設等の整備計画を練り上げて事業を進めた。また、まちなか再生計画に位置づけられた商業施設等が国の「津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金(民設商業施設整備型)」(津波立地補助金)の対象となり、仮設商店街の本設化につながった。
東日本大震災における取組
商業施設等の継続性の確保(課題①)
宮城県女川町は、まちなか再生計画(第1号認定)を2014年12月に策定し、JR女川駅を中心とした7.4haの区域を嵩上げ造成して中心市街地を再生することとした。まちづくり会社の女川みらい創造株式会社(2015年6月設立)は、町有地を無償で借り受け、津波立地補助金を活用してテナント型商業施設の「シーパルピア女川」(2015年12月開業)と「地元市場ハマテラス」(2016年12月開業)を整備した。
このうち、商業施設は女川みらい創造株式会社が所有しており、建物の所有と店舗の利用を分離することでテナントの流動性を確保し、域内被災事業者の再建とともに魅力的な域外店舗を誘致することで、持続可能な商店街を実現している(事例43-1)。
まちづくり会社等が商業施設を整備するにあたっては、「ローコスト化を図りつつ、集客力のある魅力的なデザイン」にするとともに、前述の「建物の所有と店舗の利用の分離」等を行い、商業施設運営の継続性を確保する必要がある。そのため、まちづくり会社は商業施設の整備や経営について専門家のアドバイスを受けつつ事業を進めた。また商業施設に入居する被災事業者についても店舗経営の継続性を確保するため専門家による経営指導を受けた。
公共施設と商業施設の効果的な配置による中心市街地への投資の誘発(課題①②)
岩手県釜石市東部地区では、市が津波復興拠点整備事業を活用して新たな市街地を整備し、その一環として、復興公営住宅や市民ホール、大型商業施設を核とした新たな商業機能の整備が進められた。新市街地には、釜石まちづくり株式会社がグループ補助金を活用して2014年12月、被災商業者9店舗が入居する共同店舗が整備された。また、市は復興推進計画で、このエリアに隣接した土地に税制特例措置が受けられる商業特区を設定し、大型商業施設の誘致を進めた。2014年3月には、スーパーマーケットと専門店51店舗が入居するイオンタウン釜石がオープンし、さらに2017年には、大和リース株式会社と釜石市の公民連携により飲食店街が再建されるなど計画的な地域開発による商業の活性化が進められている(1)。
エリアマネジメントによる集客・にぎわいづくり(課題②)
エリアマネジメントとは、「地域における良好な環境や地域の価値を維持向上させるための、住民・事業主・地権者等による主体的な取り組み」のことである。商業施設等を整備した地域では、商業エリアの良好な環境を維持しつつ、魅力・価値を高め地域商業の再生やにぎわいを創出するために、地域の関係者によって設立されたまちづくり会社が主体となって、中心市街地の規模に応じ有効な範囲で、商業エリアのエリアマネジメントを実施している地域がある。
岩手県大船渡市では、まちづくり会社の株式会社キャッセン大船渡(2015年12月設立)が津波立地補助金を活用して8街区のうち2街区でテナント型商店街を整備し、2017年4月にオープンさせた。株式会社キャッセン大船渡は、商業エリアの借地人から分担金を徴収して、販促イベントやまちづくりプロジェクト、景観保全など、地区の魅力を創造するエリアマネジメント事業も実施しており、集客・にぎわいづくりを進めている(事例24-1)。
商業機能と公共機能を集約したにぎわいの創出(課題②)
岩手県陸前高田市の「アバッセたかた」は、2017年4月に、大規模な土地嵩上げ工事が行われた新市街地の一角に津波立地補助金を活用して専門店街やスーパーマーケットからなる大型複合商業施設としてオープンした。この専門店街には、市立図書館が併設されており、商業施設と公共施設を集約することで人々の交流を活発化させており、まちの活性化に貢献している(3)。
また、まちづくり会社の陸前高田ほんまる株式会社が中心市街地の商業施設や商店街等と連携し、広報やイベントの開催などにより土地の魅力向上を図りつつ、未利用地の活用が図られるよう、土地の売買・賃貸マッチングに取り組むなどエリアマネジメントの取組を進めている(2)。
また、陸前高田市の高田町大隅地区で再スタートした「たまご村」は、まちづくり会社の一般社団法人トナリノと連携し、商店街活性化・観光消費創出事業を活用して、インキュベーションプログラムの開発や子育て世代向けのシェアリングサービスの提供、観光客向けのメニュー開発、「健康」をテーマにしたプレイルームの整備等コミュニティ機能を充実し、地域内外からの新たな需要獲得の取組を進めている。
商業施設の所有と店舗の利用の分離によりテナントの流動性を確保する。
ローコスト化を図りつつ、集客力のある魅力的なデザインを行う。
専門家のアドバイスにより商業施設や被災事業者の店舗の継続性を確保する。
公共施設と商業施設の効果的な配置により中心市街地への投資を誘発する。
地域の個性を生かした魅力ある事業やイベントを企画・開催し地域の魅力を創造する。
土地の魅力の向上に取組みつつ、未利用地の売買・賃貸マッチングを実施する。
(1) 釜石市「釜石東部地区津波復興拠点整備事業フロントプロジェクト1基本計画」2014年3月
https://www.city.kamaishi.iwate.jp/docs/2017030900031/
(2) Web東海新報「にぎわいの“本丸”に まちづくり会社が発足 陸前高田」2019年6月29日
https://tohkaishimpo.com/2019/06/29/255605/
(3) アバッセたかた
http://abassetakata.jp/about