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商店街・商業施設等の復旧・復興
応急期復旧期復興前期
② 商店街等の復興をどのように進めるか
東日本大震災における状況と課題
東日本大震災により、地域の商業施設や個店商店は店舗の被災や商品の損失などが生じたことにより、その被害額は3,044億円となった(1)。
地域の商業施設や個店商店は、地域の雇用の場であり、かつ地域住民が生活を営む上で必須のものである。また住民帰還を進める上でも不可欠な要素である。このため、震災で店舗を失った商業者が早期に営業再開できるよう店舗や商店街の早期復旧、さらには仮設から本設商店街への移行など商店街等の復興をどのように進めるかが課題となった。
東日本大震災における取組
仮設店舗・商店街の整備による商業機能の早期復旧(課題①)
東日本大震災では、中小機構が仮設店舗や仮設工場等を整備し、市町村を通じて中小企業等に原則無料で貸し出された。このうち、仮設商店街は延べ70か所が整備された(2)。
岩手県宮古市田老地区では、2011年5月、リゾート施設の敷地内に県から無償貸与されたテント2張りで共同店舗をオープンさせていたが、不足する仮設店舗を追加するため、同年9月に同一敷地内に仮設商店街・たろちゃんハウスが整備され、テントの事業主ら22事業者が協同組合を組織し入居した。407戸の仮設住宅に隣接した仮設商店街は被災者のコミュニティの場となり、生活を支える重要な役割を果たした(3)。
陸前高田市の高田町大隅地区では、2012年6月に13事業者が入居する仮設商店街「高田大隅つどいの丘商店街」をオープンしたが、2018年9月に退去期限を迎えたため、市から仮設施設の払い下げを受け、別の仮設商店街から事業者や非営利団体を受け入れ、カフェやコワーキングスペースなど業種を超えた連携により新しい交流の場として「たまご村」を再スタートした(4)(5)。
地域の中心的な商業施設の整備による地域コミュニティ機能強化(課題①②)
地域コミュニティにとって不可欠な地域の中心的な商店街等を支援するため、グループ補助金が措置された。
岩手県大槌町のショッピングセンター「シーサイドタウンマスト」は、36店舗が入居する地元で唯一の大規模商業施設であったが、津波で2階まで浸水、火災にも遭い、復旧には12億円が必要であった。施設運営会社の大槌商業開発株式会社は30店舗でグループを形成しグループ補助金に採択された。また、岩手産業復興機構による債権買取、日本政策投資銀行と岩手銀行が組成したファンドからの劣後ローン融資を受け、事業再開に向けた資金を確保した。
その結果、2011年12月、震災前より12店舗多い48店舗が入居し再開された。再開に当たっては、地元商店と連携した店舗づくり、バス停の設置、クリニック、銀行、まちの情報提供スペースのほか、住民会議の場としてパブリックスペースを設け、「地域の核」としての街のコミュニティ機能が強化された(6)。
商店街間連携による地域商業の復興(課題①②)
宮城県南三陸町では、震災により発生した大津波によって平地の建物の大部分が流失、複数あった商店街も壊滅し、町の商業機能は完全に停止した。店舗を失った志津川地区の事業者が集まり、店舗も商品もない中、自ら立ち上がるため、「南三陸商店街」を組織した。南三陸商店街は、「ぼうさい朝市ネットワーク」(全国各地の商店街をネットワーク化し、お互い被災した際は助け合う目的で作られた商店街の組織)の支援を受けて「福興市」を開催した。その実績を基に2012年に仮設として再開された南三陸さんさん商店街では、独特の周遊を意識した店舗配置や盛大なイベントの開催など、地元住民から観光客まで皆が楽しめる取組が行われた(6)。
岩手県宮古市の末広町商店街は、津波の浸水被害を受けたが、自力でヘドロやがれきを撤去して店舗を再開し、被災者を支えた。震災後の売上回復のため、2011年6月には隣接商店街と合同で「宮古あきんど復興市」を開催した。さらに、商店街振興組合を中心とする7商業団体、賛同108事業所による「いわて宮古街なか商人グループ」を立ち上げ、規模をより拡大して地域全体の活性化につながる事業を開始した。年2回開催し毎回1万5千人を集客する「復興市」の実施や、地域通貨「リアス通貨」の発行、震災遺児への支援など、商店街間連携による取組によって地域商業の復興を推進した(6)(7)。
仮設住宅に隣接して仮設店舗・商店街を整備することにより、被災者のコミュニティや生活を支える。
地域の実情に応じて、店舗や駐車場の配置などを工夫する。
地域の中心的な商店街等の事業再開のために金融支援を実施する。
地域の中心的な商店街等の再開に当たっては、核店舗の設置や多様な店舗構成に加え、公共施設を確保するなど地域コミュニティ機能を備える。
商店街間連携した復興イベントが大規模な集客力につながり、地域商業の復興を推進する。
商店街間連携が地域商業の復興を推進する新たなモデルを形成する。
(1) 中小企業庁「平成23年度中小企業白書」
(2) 東北経済産業局「東北地域における産業復興の現状と今後の取組」2016年2月
https://www.tohoku.meti.go.jp/somu/topics/pdf/160224_2.pdf
(3) 中小企業基盤整備機構「仮設施設整備事業・仮設施設有効活用等支援事業」
https://www.smrj.go.jp/reconstruction/eastjapan2011/support/temp/index.html
(4) Web東海新報「払い下げ受け”新生”へ、高田町大隅の仮設商店街」2018年2月
https://tohkaishimpo.com/2018/02/18/194636/
(5) たまご村
https://www.tamagomura.jp/
(6) 復興庁「被災地での55の挑戦―企業による復興事業事例集―」2013年3月
https://www.reconstruction.go.jp/topics/20130502_casebook_1-9.pdf
(7) 中小企業庁「がんばる商店街30選」2014