復興政策10年間の振り返り

復興政策10年間の振り返り

7章
原子力災害固有の対応

2節 帰還・移住等の促進、生活再建等

1.避難指示に係る経緯

(1) 避難指示区域の指定・区域の見直し・避難指示解除の経緯

1) 概要

 平成23年3月11日、震災直後、原子炉の冷却機能が失われたことにより放射性物質が周辺に漏出する可能性が高まったため、発電所から半径3km圏内に避難指示(翌12日に20㎞圏内に引き上げ)、半径10km圏内に屋内退避指示(同月15日に半径20~30km圏内に引上げ)が発出され、地域住民の避難が開始された。同年4月には、原災法第20条第3項1に基づき、計画的避難区域、緊急時避難準備区域、警戒区域が設定された。
 平成23年12月には「ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」(原子力災害対策本部)に基づき、避難指示区域の見直しが開始され、平成24年4月以降、順次警戒区域が解除されるとともに、平成25年8月に避難指示解除準備区域、居住制限区域及び帰還困難区域の3つの区域への見直しが完了した。
 平成26年4月1日の田村市の避難指示解除準備区域の解除に始まり、各自治体において避難指示解除がなされ、令和2年3月の双葉町の避難指示解除準備区域の解除を最後に、帰還困難区域を除く全ての地域の避難指示が解除された。
 なお、避難指示区域からの避難対象者数は、8.1万人(平成25年8月時点)から約2.1万人(令和4年3月末時点)へと推移している。
 帰還困難区域については、2(2)において言及する特定復興再生拠点区域の避難指示解除に向けた環境整備が進められ、令和2年3月のJR常磐線の全線開通に合わせて、双葉町、大熊町、富岡町の特定復興再生拠点区域の一部区域の避難指示の解除が初めて行われた。令和4年6月には葛尾村、大熊町、同年8月には双葉町の特定復興再生拠点区域全域の避難指示が解除され、長期間、帰還が困難であるとされた帰還困難区域において、初めて住民の帰還が可能となった。
 特定復興再生拠点区域外については、地元自治体の強い意向がある場合に適用される、拠点区域外の土地活用に向けた避難指示解除の仕組みについて、令和2年12月25日に「特定復興再生拠点区域外の土地活用に向けた避難指示解除について」(原子力災害対策本部)を決定した。また、令和3年8月31日に決定した「特定復興再生拠点区域外への帰還・居住に向けた避難指示解除に関する考え方」(原子力災害対策本部・復興推進会議)に基づき、2020年代をかけて、帰還意向のある住民が帰還できるよう、帰還に関する意向を個別に丁寧に把握した上で、帰還に必要な箇所を除染し、避難指示解除の取組を進めていく。残された土地・家屋等の扱いについては、地元自治体と協議を重ねつつ、引き続き検討を進めていくこととしている。

  • 1 平成23年4月当時の原災法第20条第3項。原子力規制委員会設置法(平成24年法律第47号)附則第54条による一部改正後は、原災法第20条第2項。以下同じ。
2) 避難指示区域の指定

 平成23年3月11日19時3分、原災法第15条2項に基づき、原子力緊急事態宣言が発出され、翌日18時25分、発電所から20km圏内に避難指示が出された。
 平成23年4月11日に、緊急時被ばく状況の放射線防護の基準値を考慮して、発電所から20km圏内の区域の周辺で事故発生から年間積算線量が20mSvに達するおそれのある区域を計画的避難区域とした。また、計画的避難区域以外の半径20kmから30km圏内を緊急時避難準備区域とした。また、同月21日に事故による今後の危険性を考慮し、東電福島第一原発から半径20km圏内を警戒区域に設定して、原則として立入りを禁止した。
 また平成23年6月16日に決定した「事故発生後1年間の積算線量が20mSvを超えると推定される特定の地点への対応について」(原子力災害対策本部)に基づき、国と福島県の環境モニタリングの結果を踏まえ、除染が容易でない年間積算線量が20mSvを超えると推定される地点について、特定避難勧奨地点を設定した。
 その後、平成23年12月16日、原子炉の冷温停止状態が達成し、放射性物質の放出が管理されていることが確認されたことから、同月26日、「ステップ2の完了を受けた警戒区域及び避難指示区域の見直しに関する基本的考え方及び今後の検討課題について」(原子力災害対策本部)が決定された。同決定においては、警戒区域を解除し、避難指示区域を帰還困難区域、居住制限区域、避難指示解除準備区域へ見直すとの考え方が示された。また、避難指示区域の見直しに当たり、①住民の安全・安心の確保、②除染と子どもへの放射線に対する配慮、③インフラ復旧・雇用、④賠償問題という全ての避難指示区域に共通する課題に取り組むこととした。
 避難指示解除の要件については、①空間線量率で推定された年間積算線量が20mSv以下になることが確実であること、②電気、ガス、上下水道、主要交通網、通信など日常生活に必須なインフラや医療・介護・郵便などの生活関連サービスがおおむね復旧すること、子どもの生活環境を中心とする除染作業が十分に進捗すること、③県、市町村、住民との十分な協議とされた。
 平成24年4月以降、順次警戒区域及び特定避難勧奨地点が解除されるとともに、線量水準に応じ、避難指示解除準備区域、居住制限区域及び帰還困難区域の3つの区域への見直しが行われた。この見直しは、平成25年8月、川俣町の避難指示区域の見直しの実施をもって、11市町村全てについて完了した。

図表 7-2-1 避難指示区域の変遷
  区域名 対象範囲 概要
平成23年4月
区域設定
警戒区域 東電福島第一原発から半径20km圏内 原則立入禁止、
宿泊禁止
計画的避難区域 年間積算線量が20ミリシーベルトを超える区域 立入可、
宿泊原則禁止
緊急時避難準備区域 東電福島第一原発から半径30km圏内 避難の準備、
立入可、宿泊可
平成25年8月
区域見直し
完了
帰還困難区域 年間積算線量が50ミリシーベルトを超える区域 原則立入禁止、
宿泊禁止
居住制限区域 年間積算線量20~50ミリシーベルトの区域 立入可、
一部事業活動可、
宿泊原則禁止
避難指示解除
準備区域
年間積算線量が20ミリシーベルト以下となることが確実な区域 立入可、
事業活動可、
宿泊原則禁止
出所)平成23年4月21日及び22日、同年12月26日の原子力災害対策本部決定を基に復興庁作成
図表 7-2-2 避難指示区域の設定について
図表 7-2-2 避難指示区域の設定について
出所)環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和2年度版)避難指示区域の設定について」
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/r2kisoshiryo/r2kiso-09-04-01.html(令和4年11月15日閲覧)
3) 避難指示の解除

 「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」(平成25年12月20日閣議決定)において、避難指示解除の要件がおおむね充足された地域において、個人線量の把握や専門家による健康相談等の体制を整え、帰還準備のための宿泊を実施し、地元との協議の上で避難指示を解除するという避難指示解除の具体的な手順が示された。
 避難指示解除については、平成26年4月1日の田村市の避難指示解除準備区域の解除に始まり、令和2年3月4日の双葉町の避難指示解除準備区域の解除を最後に、帰還困難区域を除く全ての避難指示解除準備区域と居住制限区域の避難指示の解除を実現した。
 帰還困難区域については、令和2年3月のJR常磐線の全線開通にあわせ、双葉町、大熊町、富岡町の帰還困難区域に設定されている特定復興再生拠点区域の一部区域の避難指示解除が初めて行われた。令和4年6月には葛尾村、大熊町、同年8月には双葉町の特定復興再生拠点区域全域の避難指示が解除され、長期間、帰還が困難であるとされた帰還困難区域において、初めて住民の帰還が可能となった。
 特定復興再生拠点区域外については、地元自治体の強い意向がある場合に適用される、拠点区域外の土地活用に向けた避難指示解除の仕組みについて、令和2年12月25日に「特定復興再生拠点区域外の土地活用に向けた避難指示解除について」(原子力災害対策本部)を決定した。また、令和3年8月31日に決定した「特定復興再生拠点区域外への帰還・居住に向けた避難指示解除に関する考え方」(原子力災害対策本部・復興推進会議)に基づき、2020年代をかけて、帰還意向のある住民が帰還できるよう、帰還に関する意向を個別に丁寧に把握した上で、帰還に必要な箇所を除染し、避難指示解除の取組を進めていくこととしており、令和5年2月には、特定復興再生拠点区域外において、避難指示解除による住民の帰還及び当該住民の帰還後の生活の再建を目指す「特定帰還居住区域」を設定できる制度の創設に係る福島復興再生特別措置法の改正法案が国会に提出された。
 なお、このほかに、川内村と広野町では町村の判断によって国による避難指示区域以外の地域でも避難が促されていたが、川内村では平成24年1月31日、広野町では同年3月31日に解除された。

図表 7-2-3 避難指示解除の経緯
(居住制限区域、避難指示解除準備区域の解除の経緯)
解除日 市町村名
平成26年4月1日 田村市
平成26年10月1日 川内村(一部)
平成27年9月5日 楢葉町
平成28年6月12日 葛尾村
平成28年6月14日 川内村
平成28年7月12日 南相馬市
平成29年3月31日 飯舘村、川俣町、浪江町
平成29年4月1日 富岡町
平成31年4月10日 大熊町
令和2年3月4日 双葉町
出所)環境省「放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料(令和2年度版)避難指示の解除について」より復興庁作成
https://www.env.go.jp/chemi/rhm/r2kisoshiryo/r2kiso-09-04-03.html(令和4年11月15日閲覧)
図表 7-2-4 避難指示解除の経緯
(特定復興再生拠点区域の解除の経緯)
解除日 市町村名
令和2年3月4日 双葉町(JR常磐線双葉駅周辺)
令和2年3月5日 大熊町(JR常磐線大野駅周辺)
令和2年3月10日 富岡町(JR常磐線夜ノ森駅周辺)
令和4年6月12日 葛尾村
令和4年6月30日 大熊町
令和4年8月30日 双葉町
出所)復興庁作成
図表 7-2-5 避難指示区域の概念図(2022年8月30日時点)
図表 7-2-5 避難指示区域の概念図(2022年8月30日時点)
出所)経済産業省「避難指示区域の概念図」
https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/kinkyu.html(令和4年11月29日閲覧)
図表 7-2-6 避難指示区域からの避難対者数の推移
図表 7-2-6 避難指示区域からの避難対者数※の推移
出所)市町村から聞き取った情報(それぞれの時点の住民登録数)を基に、内閣府原子力被災者生活支援チームが集計

(2) 避難指示区域への住民一時立入り

 平成23年4月22日に原災法に基づく内閣総理大臣の指示により警戒区域が設定されたことで、当該区域内への立入りが制限されることとなった。
 一方で、事故発生に伴い避難を余儀なくされた住民の多くは、警戒区域内の自宅等から必要な物品を持ち出すことができず、自宅等への一時立入りに対する希望が寄せられていた。
 そのため、原子力災害対策本部は、警戒区域の設定に併せて、原則として、①立入りができなければ著しく公益を損なうことが見込まれる者、②警戒区域内に居住する者であって、当面の生活上の理由により一時立入りを希望する者を対象として、一時立入りを認める方針を決定した。
 この方針に従い、安全確保に十分留意しながら、原子力災害現地対策本部と関係市町村(田村市、南相馬市、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町及び葛尾村)、福島県、及びその他関係機関との調整により一時立入りの管理体制が検討され、平成23年5月10日から住民一時立入りが実施された。
 対象自治体における一巡目の一時立入り(平成23年5月~9月)においては、自治体毎に開催日が設定され、安全管理上の観点から集団で行動することを原則とした。具体的な流れは、以下のとおり。

(1) 警戒区域外の集合場所に集まる
(2) 集合場所にて注意事項の説明を受ける
(3) バスに分乗して自宅に向かう
(4) 住民は各々の自宅で数時間の作業を行い、持ち出しが必要な物品をビニール袋に入れる
(5) 再びバスに乗り込み元の集合場所に戻る
(6) 汚染検査(スクリーニング)を受ける

 集合場所は中継基地と呼称され、南相馬市馬事公苑、川内村村民体育センター、広野町中央体育館、田村市古道体育館の4か所が一巡目の中継基地として整備された。1日最大3か所の中継基地を使用できる体制をとり、立入り住民に対して身体の露出を最小限にするための防護服や靴カバーなどの装着、飲食の制限、持ち出し物品の制限(食品、家畜等は持ち出し禁止)等の対応が講じられた。
 また、一時立入りを終えた住民の身体及び持ち出した物品の汚染検査(スクリーニング)を行い、放射線量が100,000cpm(その後、13,000cpmに変更)を超える場合には除染することとした。
 一巡目の一時立入りでは合計19,926世帯、33,598人の立入りが行われ、二巡目の一時立入り(平成23年9月~12月)からは、自家用車による立入り(マイカー立入り)が可能となった。
 三巡目の一時立入り(平成24年1~4月)では、自家用車で中継基地に来場し、乗車したまま手続のできる「ドライブスルー方式」が採用され、四巡目の一時立入り(平成24年5月~7月)からは、予約や住民への通知を一括して行うコールセンターの設置、看護師の常駐など、立入り住民の利便性向上のための措置が講じられた。
 その後、スクリーニング場の増設や中間基地の環境整備等が進められたことによって、平成25年4月からは、おおむね1か月に一度程度の住民一時立入りが可能となった。立入り方法も、住民の状況を踏まえ、マイカーによる立入り、従来型バス立入り、駅送迎バス立入りの3種類が導入されており、令和3年度までに延べ約58万人が御自宅等への立入りを行っている。

図表 7-2-7 中継基地(スクリーニング場)一覧(令和4年度)
  中継基地名 自治体名
毛萱・波倉 富岡町・楢葉町
高津戸 富岡町
中屋敷 大熊町
大野 大熊町
長塚越田 双葉町
加倉 浪江町
津島 浪江町
出所)復興庁作成

 また、平成26年9月から、被災地の復旧・復興の推進を図ること及び住民一時立入りの利便性向上のため、帰還困難区域における主要幹線道路を対象に、一定の要件のもと、通行証の所持、確認を要せずに自動車等の通行を認める特別通過交通(自由通行)制度を実施している。平成26年9月に国道6号、県道36号における四輪車の自由通行化を皮切りに、平成27年3月には常磐自動車道常磐富岡IC~浪江IC間の開通に伴う同区間、平成29年9月には国道114号をそれぞれ四輪車のみ自由通行とするなど、復興の加速化を図るための措置を講じてきた。令和4年9月現在では、以下の道路で四輪車の自由通行が認められている。

図表 7-2-8 特別通過交通対象道路(四輪車のみ)
  自動二輪、原動機付き自転車の通行を制限している道路 自治体名
国道114号(旧室原ゲートから西側) 浪江町内
上記①に接続する県道49号 浪江町内
上記①に接続する県道50号 浪江町内
上記①に接続する県道399号 浪江町内
上記①に接続する県道459号 浪江町内
上記①に接続する浪江町道215号 浪江町内
双葉町道101号(浪江町境―避難指示解除区域境の間) 双葉町内
双葉町道109号(国道6号―双葉町道101号の間) 双葉町内
出所)復興庁作成

(3) 原子力災害被災自治体における住民意向調査

1) 概要

 原子力災害により避難している住民の帰還に向けた意向等を把握するため、平成24年度から住民意向調査を実施している。原子力災害被災11市町村のうち、本調査の実施を希望する市町村において、国・福島県・市町村が共同で実施している。避難指示解除が遅れた自治体における帰還意向については、「戻っている」「戻りたい」が1~3割、「まだ判断がつかない」が1~2割、「戻らない」が5~6割となっている。

2) 実績

 平成24年度:8自治体
  (葛尾村、大熊町、田村市、楢葉町、飯舘村、富岡町、双葉町、浪江町)
 平成25年度:9自治体
  (富岡町、浪江町、南相馬市、葛尾村、大熊町、双葉町、飯舘村、楢葉町、川俣町)
 平成26年度:9自治体
  (富岡町、浪江町、大熊町、双葉町、田村市、楢葉町、川俣町、川内村、飯舘村)
 平成27年度:9自治体
  (富岡町、大熊町、浪江町、田村市、川俣町、川内村、飯舘村、双葉町、楢葉町)
 平成28年度:9自治体
  (富岡町、双葉町、浪江町、川俣町、川内村、南相馬市、葛尾村、楢葉町、飯舘村)
 平成29年度:7自治体
  (富岡町、葛尾村、楢葉町、双葉町、浪江町、大熊町、川俣町)
 平成30年度:5自治体
  (富岡町、葛尾村、浪江町、双葉町、川俣町)
 令和元年度:7自治体
  (富岡町、双葉町、南相馬市、葛尾村、浪江町、大熊町、川俣町)
 令和2年度:5自治体
  (双葉町、富岡町、浪江町、大熊町、川俣町)
 令和3年度:6自治体
  (双葉町、富岡町、浪江町、葛尾村、大熊町、南相馬市)

図表 7-2-9 原子力災害により避難している住民の帰還意向調査
図表 7-2-9 原子力災害により避難している住民の帰還意向調査
出所)復興庁「福島の復興・再生に向けた取組」(令和4年11月)P.11
https://www.reconstruction.go.jp/topics/20221101_hukushima-hukko-torikumi.pdf(令和4年11月17日閲覧)

(4) 原子力損害賠償

1) これまでの経緯

 原子力損害の賠償に関する法律(昭和36年法律第147号)に基づいて設置した原子力損害賠償紛争審査会において、被害者の迅速な救済を図るため、原子力損害に該当する蓋然性の高いものから順次、指針として提示することとしており、平成23年8月5日、原子力損害の範囲の全体像を示す中間指針を策定した。
 その後、審査会では、平成23年12月6日に自主的避難等に係る損害についての中間指針第一次追補、平成24年3月16日に政府による避難区域等の見直し等に係る損害についての中間指針第二次追補、平成25年1月30日に農林漁業・食品産業の風評被害に係る損害についての中間指針第三次追補、同年12月26日に避難指示の長期化等に係る損害についての中間指針第四次追補、令和4年12月20日に集団訴訟の確定判決等を踏まえた指針の見直しについての中間指針第五次追補を策定した。
 上記の指針等を踏まえ、避難した住民や事業者等に対しては、令和4年4月時点で、総額約10兆4,191億円の賠償金が支払われている。
 また、原子力損害賠償紛争解決センター(ADRセンター)では、原子力損害賠償に関する紛争について和解の仲介を行っており、令和4年12月末時点で、和解仲介手続を終えた27,814件の約80%に当たる22,133件の和解が成立している。

図表 7-2-10 東京電力による原子力損害賠償の支払い額の推移
図表 7-2-10 東京電力による原子力損害賠償の支払い額の推移
出所)復興庁「復興の取組と関連諸制度」について一部編集を加えたもの
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-1/20220606_torikumitokanrenshoseido.pdf(令和5年7月26日閲覧)
2) 賠償の枠組み

 東電福島第一原発事故を受け、平成23年6月14日に「東京電力福島原子力発電所事故に係る原子力損害の賠償に関する政府の支援の枠組みについて」が閣議決定され、政府として、これまで原子力政策を推進してきたことに伴う社会的な責任を負っていることに鑑み、①迅速かつ適切な損害賠償のための万全の措置、②東京電力福島原子力発電所の状態の安定化・事故処理に関係する事業者等への悪影響の回避、③電力の安定供給の3つを確保するため、「国民負担の極小化」を図ることを基本として、損害賠償に関する支援を行うための万全の措置を講ずることとされた。
 平成23年8月10日に、将来にわたって原子力損害賠償の支払等に対応できる支援組織を中心とした仕組みを構築するため、原子力損害賠償支援機構法(平成23年法律第94号)が公布・施行され、同年9月12日に原子力損害賠償支援機構2が設立された。原子力損害賠償支援機構は、政府から、交付国債の交付や政府保証の付与等の必要な援助を受けた上で、原子力事業者が損害賠償を実施する上で必要な資金の援助を行うこととされた。
 平成25年12月20日に閣議決定された「原子力災害からの福島復興の加速に向けて」(原子力災害対策本部)においては、福島復興に国が前面に立つとの方針を掲げ、国と東電の役割分担を明確化することとした。本決定において、放射性物質汚染対処特措法に基づき計画されている除染については、東電への求償とした上で、原子力損害賠償支援機構が保有する東電株式の売却益により回収を図ることとした。中間貯蔵施設については、東電への求償とした上で、エネルギー対策特別会計から原子力損害賠償支援機構に対し資金交付を行うことを決定した。
 平成28年12月20日に取りまとめられた「東電改革提言」(東京電力改革・1F問題委員会)では、東電福島第一原発事故に関連して、東電が確保すべき資金の全体像として、廃炉8兆円程度、賠償8兆円程度、除染・中間貯蔵6兆円程度の計22兆円程度との試算が示された。また、国の事故対応制度と事故事業者の抜本的改革で対処するとの原則が確立され、国の事故対応制度は、①一時的支援と改革実現のモニタリング、②福島復興加速化や賠償等の必要な事業の実施、③事故炉廃炉のための制度の整備の3点とされた。この事故対応制度の中で、事故事業者である東電が主たる対応を果たす原則は変わらず、総額約22兆円のうち、東電が捻出する資金は約16兆円と試算された。同日閣議決定された「原子力災害からの福島復興の加速のための基本指針について」(原子力災害対策本部)においては、賠償の備えについては必要な託送料金の見直し等の制度整備を行うこととした。また、廃炉に必要な資金の捻出及び適切な管理を行うため送配電事業における合理化分を確実に廃炉に要する資金に充てることを可能とする制度整備を行うとともに、廃炉に係る資金を管理する積立金制度を創設することを決定した。

  • 2 平成26年5月には、原子力損害賠償支援機構法が改正されて原子力損害賠償支援機構の業務に「廃炉関係業務」が追加され、同年8月には、原子力損害賠償支援機構が原子力損害賠償・廃炉等支援機構(以下「支援機構」という。)に改組された。

2.帰還・移住等の促進、生活再建等に向けた取組

(1) 帰還・移住等の促進に向けた生活環境整備等の状況

1) 福島再生加速化交付金の概要・取組
a. 概要

 復興の動きを加速化するために、長期避難者への支援から早期帰還への対応及び新たな住民の移住・定住の促進の施策等を一括して支援する「福島再生加速化交付金」が活用されている。対象区域は、避難指示を受けた12市町村等(各事業に応じて対象地域を設定)で、交付金の交付を行っている対象項目は、①帰還・移住等環境整備、②長期避難者生活拠点形成、③福島定住等緊急支援、④既存ストック活用まちづくり支援、⑤浜通り地域等産業発展環境整備事業、⑥水産業共同利用施設復興促進整備事業となっている(令和4年12月時点)。

b. 経緯

 平成25年度当初予算において、長期避難者を受け入れている市町村において、災害公営住宅の整備を中心に、受入れ自治体の基盤整備等の推進、避難者支援のためのソフト対策を一体的に実施し、長期避難者の生活拠点形成を支援することを目的とする「長期避難者の生活拠点形成交付金」(コミュニティ復活交付金)及び子育て世帯が安心して定住できる環境の整備を推進することを目的に子どもの運動機会の確保のための施設整備(屋内運動施設の整備等)等の早急な実施を支援する「福島定住等緊急支援交付金」(子ども元気復活交付金)がそれぞれ創設された。
 平成25年8月に避難指示区域の見直しが完了し、今後は避難住民の早期帰還の実現等が課題となり、同年12月に閣議決定された「好循環実現のための経済対策」において、「『長期避難者への支援から早期帰還への対応』までを一括する、より使い勝手のよい新たな交付金としての福島再生加速化交付金の新設等」が盛り込まれた。
 このため、それまで個別に実施してきた「長期避難者生活拠点形成交付金」や「福島定住等緊急支援交付金」といった既存の事業に新たな施策等を追加し、「長期避難者への支援から早期帰還への対応まで」を一括する新しい交付金「福島再生加速化交付金」が平成25年度補正予算において創設された。
 福島再生加速化交付金については、創設当初は、上記の「長期避難者生活拠点形成」「福島定住等緊急支援」のほか、避難住民の早期帰還を促進し、地域の再生を加速化させることを目的とした「再生加速化」の3つを交付対象項目としていたが、復興のステージが進むにつれて生じる新たな課題や多様なニーズにきめ細かく対応する中で、見直しを図っている。
 「再生加速化」については、平成27年4月に、名称を「帰還環境整備」に変更し、同年5月の福島復興再生特別措置法(平成24年法律第25号)の改正により、一団地の復興再生拠点整備制度を創設の上、一団地の復興再生拠点市街地形成施設整備事業等を支援対象事業として追加するとともに、帰還環境整備交付金として法定化された。
 平成28年度予算の執行段階において、除染対象以外の道路等側溝の維持管理活動を再開し、原子力災害からの復興・再生の加速を促進するため、「道路等側溝堆積物撤去・処理支援事業」が創設された。
 さらに、平成29年度予算において、福島イノベーション・コースト構想の推進の加速化に向けて、福島県が行う原子力災害に係る経験と教訓を後世に伝えるための情報発信拠点(アーカイブ拠点)の整備への支援を行うことを目的に、「原子力災害情報発信等拠点施設整備等事業」が創設された。また、子どもをはじめとする住民が安心して暮らすことのできる生活環境の実現のための事業として、福島県が行う県民の健康不安の解消に資する事業を支援するため、「福島健康不安対策事業」が創設された。平成30年度には、「原子力災害情報発信等拠点施設整備等事業」として、拠点周辺の生活環境整備等への支援が追加された。
 また、令和元年度に、避難指示解除区域や特定復興再生拠点区域等の復興・再生まちづくりを加速化させるため、原子力災害による避難指示等に伴って発生した空き地・空き家などの既存ストックの状況の把握及び有効かつ適切に活用する場合に必要な取組の支援策として、「既存ストック活用まちづくり支援」が創設された。
 令和3年度からは、福島復興再生特別措置法の改正により、帰還環境整備交付金は「帰還・移住等環境整備交付金」(交付対象項目としての名称は「帰還・移住等環境整備」)に改められ、当該交付金の対象に新たな住民の移住等の促進や交流・関係人口の拡大に資する施策が追加された。また、福島イノベーション・コースト構想の更なる推進に向けて、構想の取組の国内外への情報発信や交流・関係人口の拡大、浜通り地域等におけるイノベーション創出のためのシーズ発掘、産業化に向けた伴走支援等の取組に対する支援として、「浜通り地域等産業発展環境整備事業」が創設された。さらに、福島県内の自治体が自らの創意工夫によって行う地域の魅力や食品の安全性等の情報発信の取組を支援することを目的とした「地域魅力向上・発信支援事業」、本格的な水産業の復興に向け、被災した市町村等が所有する水産業共同利用施設等の整備に対する支援を目的とした「水産業共同利用施設復興促進整備事業」が創設された。

c. 予算規模

 制度創設からの毎年の予算規模は、平成25年度補正512億円、平成26年度1,088億円、平成27年度1,056億円、平成28年度1,012億円、平成29年度807億円、平成30年度828億円、令和元年度890億円、令和2年度791億円、令和3年度721億円、令和4年度701億円である。

図表 7-2-11 福島再生加速化交付金の概要
図表 7-2-11 福島再生加速化交付金の概要
出所)復興庁
d. 福島再生加速化交付金(帰還・移住等環境整備)

 避難指示等に伴い住民が避難したこと等により復興・再生に遅れが生じている地域に対して、それぞれの地域の復興・再生のための事業をそれぞれの地域が自主的・主体的に実施することを支援することにより、避難住民の早期帰還を促進するとともに、新たな住民の移住の促進や交流・関係人口の拡大など、新たな活力を呼び込むことで、地域の再生を加速化させることを目的として、生活拠点の整備、放射線への健康不安・健康管理対策、農林水産業・商工業再開に向けた環境整備、新たな住民の移住等の促進に資する施策等の支援を実施している。平成25年度の制度創設から令和4年12月12日までに交付可能額通知を41回行っており、配分額は4,379億円(事業費:5,644億円)となっている。

図表 7-2-12 帰還・移住等環境整備の概要
図表 7-2-12 帰還・移住等環境整備の概要
出所)復興庁
図表 7-2-13 福島再生加速化交付金(帰還・移住等環境整備)事業一覧表
図表 7-2-13 福島再生加速化交付金(帰還・移住等環境整備)事業一覧表
出所)復興庁「「福島再生加速化交付金(帰還・移住等環境整備)」の事業一覧」
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-17/sub-cat1-17-1/20140314171345.html(令和4年11月15日閲覧)

具体的な対象事業は、以下のとおりである。

  • 1. 生活拠点整備
    原子力災害からの復興の拠点となる市街地の整備や、公的賃貸住宅、道路、下水道、公立学校施設の整備等を支援している。
  • 2. 生活環境向上対策
    生活環境の快適性と放射線防護や不安払拭が同時に期待できる、水道施設の整備や井戸掘削等の生活環境向上対策を支援している。
  • 3. 健康管理・健康不安対策
    放射線に関する住民の不安の解消等のため、モニタリングポストの整備や個人線量計の貸与・測定等の取組、放射線不安等に関する住民からの相談に応じる「相談員」の配置等を支援している。
  • 4. 社会福祉施設整備
    高齢者にとって安心して居住できる環境を整備するための介護・福祉施設の整備や、若年層の帰還を円滑化するための保育所や認定こども園等の整備を支援している。
  • 5. 農林水産業再開のための環境整備
    農林水産業の再開に向け、農地・農業用施設等の生産基盤等の整備や、地域の資源を活用する木質バイオマス施設等の整備を支援している。
  • 6. 商工業再開のための環境整備
    商工業の再開に向け、産業団地や貸事業所等の整備を支援している。
  • 7. 移住等の促進
    移住等の促進に向けて、福島県若しくは原子力災害被災12市町村が創意工夫し、地域の魅力を最大限に引き出しながら講じる取組や、福島県が原子力災害被災12市町村に移住して就業・起業する者を支援する取組を支援している。
e. 福島再生加速化交付金(長期避難者生活拠点形成(コミュニティ復活交付金))

 長期避難者向けの災害公営住宅の整備を中心に、避難者を受け入れている自治体の基盤整備等を推進するとともに、コミュニティ維持などの避難者支援のためのソフト施策を一体的に実施している。長期避難者向けの災害公営住宅整備は、4,890戸が計画され、建築着工保留分を除いて令和4年4月までに4,767戸が完成済みで、供用されている。
 平成25年度の制度創設から令和4年4月1日までに交付可能額通知を32回行っており、配分額は約2,144億円(事業費:2,466億円)となっている。

図表 7-2-14 長期避難者向け災害公営住宅整備状況
図表 7-2-14 長期避難者向け災害公営住宅整備状況
出所)「復興の取組と関連諸制度(令和4年6月6日) 2-6-1 福島復興に向けた取組③」
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-1/20220607172842.html(令和5年7月26日閲覧)

具体的な対象事業としては、以下のとおりである。

  • 1. 基幹事業
    災害公営住宅の整備等の「生活拠点事業」を中心に、災害公営住宅の整備等に伴って必要となる道路や水道、学校施設、公園などの生活基盤の整備や、避難者の一定のニーズに対応して生活支援を行うために必要な高齢者等に対する相談・生活支援等を選択的に行える「関連基盤整備事業」を支援している。
  • 2. 避難者支援事業等事業
    地域住民と避難者の交流事業やスクールバスの運行、避難者の生活環境改善やコミュニティ維持のためのソフト事業など、基幹事業と一体となって効果を増大させる事業等を支援している。
f. 福島再生加速化交付金(福島定住等緊急支援(子ども元気復活交付金))

 子育て世代が早期に帰還し、安心して定住できる環境を整えるため、子どもの運動機会の確保のための施設の整備、公的な賃貸住宅の整備、さらには施設と一体となって整備の効果を増大させるプレイリーダーの養成などのソフト施策を支援している。
 平成25年度の制度創設から令和3年9月29日までに交付可能額通知を28回行っており、配分額は約228億円(事業費:452億円)で、運動施設61か所、遊具の更新643か所を整備した。

図表 7-2-15 福島定住等緊急支援(子ども元気復活交付金)の概要
図表  7-2-15 福島定住等緊急支援(子ども元気復活交付金)の概要
出所)復興庁「子ども元気復活交付金(福島再生加速化交付金(福島定住等緊急支援))の概要」

設備事例は以下のとおりである。

1. 運動施設の整備
須賀川市では、子どもたちがフットサルをはじめとする多様な運動をすることができる全天候型の運動施設いわせ悠友スタジアムが整備された。(平成27年1月オープン)
本宮市のスマイルキッズパークは、屋内運動施設リニューアル(平成25年7月オープン)や屋外遊び場の「記念樹の杜」(平成26年12月オープン)の整備を行うとともに、子どもたちが生き生きと遊び、運動する力をより一層引き出すプレイリーダーの養成を行っている先進的事例である。

図表 7-2-16 運動施設の整備
図表  7-2-16 運動施設の整備
図表  7-2-16 運動施設の整備
出所)復興庁「子ども元気復活交付金(福島再生加速化交付金(福島定住等緊急支援))の概要」
https://www.reconstruction.go.jp/topics/20151023140241.html(令和4年11月15日閲覧)

2. 遊具の更新
帰町を促進する広野町では、二ツ沼総合公園の遊具を更新し、子どもたちの遊びまわる様子が確認できる。(平成26年11月オープン)
国見町では、国見小学校における遊具を更新し、「ぶら下がる」「のぼる」など、幼少期に体験しておきたい各種の動きを自然と行う、創意工夫を凝らした遊具が、外遊びの機会の増加に貢献している。(平成26年3月整備)

図表 7-2-17 遊具の更新
図表  7-2-17 遊具の更新

図表  7-2-17 遊具の更新
出所)復興庁「子ども元気復活交付金(福島再生加速化交付金(福島定住等緊急支援))の概要」
https://www.reconstruction.go.jp/topics/20151023140241.html(令和4年11月15日閲覧)

3. 公的な賃貸住宅
福島市では子育て定住支援賃貸住宅として、福島市西部地区の複数箇所に分散し、低層の集合住宅20戸分を整備している。(平成27年3月入居開始)

図表 7-2-18 公的な賃貸住宅
図表  7-2-18 公的な賃貸住宅
出所)復興庁「子ども元気復活交付金(福島再生加速化交付金(福島定住等緊急支援))の概要」
https://www.reconstruction.go.jp/topics/20151023140241.html(令和4年11月15日閲覧)

4. ソフト事業・プレイリーダーの養成
子どもたちが生き生きと遊び、運動する力をより一層引き出すプレイリーダーの養成についても、基礎知識に関する講演や、更新した遊具を活用する実践的な形など様々な手法により取り組んでいる。

図表 7-2-19 プレイリーダーの養成
図表  7-2-19 プレイリーダーの養成
出所)復興庁「子ども元気復活交付金(福島再生加速化交付金(福島定住等緊急支援))の概要」
https://www.reconstruction.go.jp/topics/20151023140241.html(令和4年11月15日閲覧)
g. 福島再生加速化交付金(福島定住等緊急支援(地域魅力向上・発信支援))

 ALPS処理水の処分方針を受け、風評対策として、福島県内の自治体が自らの創意工夫によって行う地域の魅力や食品の安全性等の情報発信の取組を支援している。
 令和3年度の制度創設から令和4年9月29日までに交付可能額通知を6回行っており、配分額は約9億円(事業費:約18億円)となっている。

図表 7-2-20 福島定住等緊急支援(地域魅力向上・発信支援)の概要
図表  7-2-20 福島定住等緊急支援(地域魅力向上・発信支援)の概要
出所)地域情報発信交付金(福島再生加速化交付金(福島定住等緊急支援(地域魅力向上・発信支援事業)))の概要
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-17/20210527172652.html(令和4年11月15日閲覧)

地域の魅力向上・発信事業の具体事例としては、以下のとおりである。

  • 1. 風評動向調査
    川内村では、村の産品、観光資源等に対する認識・意向等の風評動向についてインターネット調査を実施する。調査・分析結果を次年度以降の取組に反映する。
  • 2. 体験等企画実施
    富岡町では、遊漁体験など、富岡の海を知るモニターツアーを実施し、海の環境等の現状をツアー参加者の生の声としてSNSに投稿してもらうことで、町の魅力について情報を発信する。
  • 3. 情報発信コンテンツ作成
    会津美里町では、国指定史跡向羽黒山城をテーマに歴史ファン・歴史ゲームファンに特化した情報発信と観光ガイドアプリによる誘客を図る。
  • 4. ポータルサイト構築
    国見町では、町内の文化財・観光施設を紹介する「観光用音声ガイド」が組み込まれたポータルサイトを開設。また、WEB広告や観光ガイドの配布により町の魅力を発信する。
  • 5. 地域の語り部の育成
    福島県では、震災の事実や教訓を継承・発信するため、高校生を対象に語り部としての研修を行うとともに、県外の学校との交流等を通じて、福島の今を発信する。
h. 福島再生加速化交付金(福島定住等緊急支援(福島健康不安対策事業))

 福島県における健康不安の解消、健康面の安全・安心の確保に寄与するため、福島県立医科大学が実施するアスタチンによる放射性治療薬の研究開発を支援している。
 平成29年度の制度創設から令和4年4月1日までに交付可能額通知を3回行っており、配分額は約19億円(事業費:約19億円)となっている。

図表 7-2-21 福島定住等緊急支援(福島健康不安対策事業)の概要
図表  7-2-21 福島定住等緊急支援(福島健康不安対策事業)の概要
出所)福島再生加速化交付金(福島定住等緊急支援(福島健康不安対策事業))の概要
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-17/20210402104245.html(令和4年11月15日閲覧)

 がん等の悪性腫瘍に対する新たな治療薬として期待される、アスタチン(α線核種)を用いた放射性治療薬の研究開発を進める。具体的には、令和4年度において、当該放射性治療薬の臨床試験(医師主導治験)の実施を支援する。
 これにより、浜通り等医療機関での画期的先端治療実現による医療基盤、地域経済への寄与や、県民の健康不安の解消、放射線のプラス面の情報発信による風評被害の払拭、福島復興の国内外発信に貢献、今後の福島国際研究教育機構における放射線科学・創薬医療分野の研究への寄与、浜通り地域への研究者等呼込みによる定住・交流人口拡大などが期待される。

i. 福島再生加速化交付金(既存ストック活用まちづくり支援)

 原子力災害による避難指示等に伴って発生した空き地・空き家などの既存ストックの状況の把握及び有効かつ適切に活用する場合に必要な取組の支援を行っている。令和元年度の制度創設から令和4年4月1日までに、交付可能額通知を6回行っており、配分額は約2.4億円(事業費:約3億円)となっている。

図表 7-2-22 既存ストック活用まちづくり支援の概要
図表  7-2-22 既存ストック活用まちづくり支援の概要
出所)福島再生加速化交付金(既存ストック活用まちづくり支援)の概要
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-17/20190403092007.html(令和4年11月15日閲覧)

 被災12市町村に対して、建物状況調査(インスペクション)に要する費用や、既存ストックの有効活用による公的施設の整備に要する費用を補助することとしている。
 さらに、復興拠点6町村に対しては、官民連携プラットフォームの構築・運営及び官民連携プラットフォームにおける既存ストック活用方策の検討に要する費用や、プラットフォームの検討に基づく社会実験に要する費用を補助することとしている。

図表 7-2-23 既存ストック活用まちづくり支援の具体例

<空き地・空き家活用事例>

図表 7-2-23 既存ストック活用まちづくり支援の具体例 図表 7-2-23 既存ストック活用まちづくり支援の具体例

【 旧幼稚園舎を改修し文化交流施設を整備(広野町) 】

出所)復興庁
j. 福島再生加速化交付金(浜通り地域等産業発展環境整備事業)

 福島イノベーション・コースト構想の推進の加速化及び地元の復興・再生に寄与することを目的とし、浜通り地域等における取組等の情報発信、交流人口拡大、地域で新産業創出を目指す者への支援体制の構築等について支援を行っている。
 令和3年度の制度創設から令和4年4月1日までに、交付可能額通知を2回行っており、配分額は約6億円(事業費:約12億円)となっている。

図表 7-2-24 浜通り地域等産業発展環境整備事業の概要
図表  7-2-24 浜通り地域等産業発展環境整備事業の概要
出所)福島再生加速化交付金(浜通り地域等産業発展環境整備事業)の概要
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-17/20210401222635.html(令和4年11月15日閲覧)

福島イノベーション・コースト構想を推進するため、以下の事業を実施する。

  • 1. 浜通り地域等における交流人口、関係人口拡大推進事業
    福島イノベーション・コースト構想の取組に基づき新たな産業集積の取組が進められている浜通り地域等において、イノベ構想の取組を地域や全国に発信するとともに、地域における取組を訪問する機会を設けること等により、同構想の取組への関心や理解を深め、交流人口や関係人口の増加を促し、浜通り地域等の産業集積に貢献する。
  • 2. 地域イノベーション創出事業
    浜通り地域等において、新たに起業・創業を目指すアイデアや技術シーズを有する個人や企業に対し、専門機関によるハンズオン支援、試作品製作費等の助成、サポーターとなる自治体や支援機関による支援を行い、事業化や実用化支援対象となるよう具体化支援を実施し、あらゆるチャレンジが可能な地域を目指す。これにより、浜通り地域等において、構想の認知度が高まるとともに、交流人口・関係人口の拡大や、新たな事業展開や企業・創業を支援することを整備することにより、構想の具体化に繋げることなどが期待される。
k. 福島再生加速化交付金(水産業共同利用施設復興促進整備事業)

 福島県の漁業は、原子力災害の影響により出荷制限が続き、震災前の状況より大きく低迷していることから、本格的な水産業の復興に向け、水産業共同利用施設等の整備に対する支援を行っている。
 令和3年度の制度創設から令和4年9月29日までに、交付可能額通知を3回行っており、配分額は約2.4億円(事業費:約3.4億円)となっている。

図表 7-2-25 水産業共同利用施設復興促進整備事業の概要
図表  7-2-25 水産業共同利用施設復興促進整備事業の概要
出所)福島再生加速化交付金(水産業共同利用施設復興促進整備事業)の概要
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-17/20210422170414.html(令和4年11月15日閲覧)

 福島県の原子力災害被災12市町村及び沿海市町村に対する水産加工流通施設の衛生機能の高度化を図る施設や、種苗生産機能の効率化・高度化等を図る施設の整備を行う。
 福島県の漁業・水産業を支援するため、荷捌き施設、水産加工処理施設の整備を行うことにより、事業対象地域に漁業・水産業の体制整備が進み、漁業者等の再建が加速することが期待される。

図表 7-2-26 水産業共同利用施設復興促進整備事業例
図表  7-2-26 水産業共同利用施設復興促進整備事業例
出所)福島再生加速化交付金(水産業共同利用施設復興促進整備事業)の概要
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-17/20210422170414.html(令和4年11月15日閲覧)
l. 福島再生加速化交付金(道路等側溝堆積物撤去・処理支援)

 除染対象以外の道路等側溝堆積物撤去・処理を支援することにより、通常の維持管理活動の再開支援を行った。平成28年度の制度創設から令和2年6月26日までに交付可能額通知を14回行っており、配分額は約104億円(事業費:約208億円)となっている。

図表 7-2-27 道路等側溝堆積物撤去・処理支援の概要
図表  7-2-27 道路等側溝堆積物撤去・処理支援の概要
出所)復興庁

 福島県の除染対象以外の道路等側溝堆積物の撤去・処理については、東電福島第一原発事故後、住民による清掃活動が中止され、仮置場や最終処分場確保も困難であったこと、また、空間占領空間線量0.23μSv/hを下回る地域は除染事業の対象外であるため、豪雨時の路面の冠水、悪臭、害虫発生などの実害が発生した。
 平成28年9月30日、国が以下のような対応方針を定めて対応した。

  • ・ 市町村が最終処分場や仮置場を確保
  • ・ 国は、通常の維持管理活動の再開のため、一地区、1回に限り財政支援を行う。
  • ・ 8,000Bq/kg超の側溝堆積物は、必要な整理をした上で、特定廃棄物埋立処分施設又は中間貯蔵施設に搬入

 平成28年度から令和2年度までに事業実施された自治体を以下に示す。

図表 7-2-28 事業実施自治体の地図
図表  7-2-28 事業実施自治体の地図
出所)復興庁「福島再生加速化交付金(43回)《道路等側溝堆積物撤去・処理支援第14回》の交付可能額通知について」P.2
https://www.reconstruction.go.jp/topics/m20/06/20200626_fukushimasaiseikasoku_dorosokko_press_No3-1.pdf(令和4年11月15日閲覧)
m. 福島再生加速化交付金(原子力災害情報発信等拠点施設等整備)

 福島イノベーション・コースト構想の推進の加速化に向けて、福島県が行う原子力災害に係る経験と教訓を後世に伝えるための情報発信拠点(東日本大震災・原子力災害伝承館)の整備及び拠点周辺の生活環境整備等への支援を行った。平成29年度の制度創設から令和3年4月1日までに、交付可能通知を6回行っており、配分額は約42億円(事業費:約67億円)となっている。

図表 7-2-29 原子力災害情報発信等拠点施設整備等事業の概要
図表  7-2-29 原子力災害情報発信等拠点施設整備等事業の概要
出所)復興庁「福島再生加速化交付金(原子力災害情報発信等拠点施設整備等)の概要」
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-17/20170330175143.html(令和4年11月15日閲覧)

 福島県が双葉町に整備し、令和2年9月に開館した原子力災害情報発信拠点施設(東日本大震災・原子力災害伝承館)の整備費及び立上げに要する広報費用等の初期費用を支援した。

2) 福島生活環境整備・帰還再生加速事業の概要・取組

 福島復興再生特別措置法に基づき、住民の日常生活及び社会生活を円滑に営むために必要な環境整備を図る「福島避難解除等区域生活環境整備事業」と、住民の帰還の促進を図るとともに直ちに帰還できない区域の荒廃抑制・保全対策や住民の一時帰宅を支援し将来の住民の帰還の円滑化を図る「福島原子力災害避難区域等帰還・再生加速事業」が平成24年度に創設された。
 さらに、平成27年度、同事業を統合する形で「福島生活環境整備・帰還再生加速事業」が創設された。福島復興再生特別措置法等に基づき住民の生活環境の改善に資するため、避難指示に起因して機能低下した公共施設・公益的施設について、市町村等からの要請に基づき国の費用負担により機能回復を実施している。また、東電福島第一原発事故からの復興・再生を加速するため、福島県の被災12市町村における避難解除区域の住民の帰還を促進するための取組や、直ちに帰還できない区域への将来の帰還に向けた荒廃抑制・保全対策を実施している。
 平成24年度予算における制度創設から令和3年度までに実施した事業費は約658億円(全額国費)となっている。
 具体的には、①生活環境の改善のための取組として、公共施設・公益的施設の機能回復(施設の清掃・修繕等)、②避難解除区域への帰還加速のための取組として、喪失した生活基盤施設の代替、補完(医療・介護サービス提供支援、交通支援等)や地域コミュニティ機能の維持、確保(住民への情報提供、被災者の交流事業等)を実施している。また、③直ちに帰還できない区域等の荒廃抑制等として、荒廃抑制、保全対策(火災防止のための除草、防犯パトロール、鳥獣被害対策等)、住民の一時帰宅支援(バス等の運行、仮設トイレの設置等)を実施している。

図表 7-2-30 福島生活環境整備・帰還再生加速事業
図表  7-2-30 福島生活環境整備・帰還再生加速事業
出所)復興庁

(2) 特定復興再生拠点区域の整備状況

1) 特定復興再生拠点区域制度の概要
a. 概要

 平成29年5月の福島復興再生特別措置法改正により、帰還困難区域のうち、5年を目途に、避難指示の解除により住民の帰還を目指す区域として、特定復興再生拠点区域を市町村が設定することが可能となった。各市町村が作成した「特定復興再生拠点区域復興再生計画」に基づき、除染などが集中的に行われ、帰還環境が整備されている。

b. 特定復興再生拠点区域制度創設の経緯等

 帰還困難区域については、「たとえ長い年月を要するとしても、将来的に帰還困難区域の全てを避難指示解除し、復興・再生に責任を持って取り組む」との方針を踏まえ、東電福島第一原発の事故から時が経過し、当該区域においても一部では放射線量が低下するとともに、福島県及び帰還困難区域をその区域に含む市町村(以下「特定避難指示区域市町村」という。)からの帰還困難区域の取扱いに関する意向等も踏まえて、同区域の復興及び再生に関する制度を平成29年5月の改正福島復興再生特別措置法に創設した。
 具体的には、帰還困難区域のうち、5年を目途に、避難指示の解除により住民の帰還を目指す区域として「特定復興再生拠点区域」を各市町村が設定し、当該区域の復興及び再生を推進するため、避難指示解除後の土地利用を想定した「特定復興再生拠点区域復興再生計画」に基づき、各事業主体が連携して、産業の復興及び再生、公共施設の整備、生活環境の整備、土壌等の除染等の措置、除去土壌の処理並びに廃棄物の処理を一体的かつ効率的に行い、集中的に整備に取り組むことによって、円滑かつ確実な帰還環境の整備を実現することとした。
 また、特定避難指示区域市町村において、特定復興再生拠点区域外も含めた帰還困難区域全体の将来像等を内容とし、町民等の意見を踏まえた中長期的な構想が策定されているときは、当該構想を勘案して、特定避難指示区域市町村が、地域住民の交流の拠点となる施設の機能の回復及び保全その他の取組を行う場合は、国はそれらを支援するため必要な措置を講ずるものとした。
 なお、特定復興再生拠点区域外の帰還困難区域については、地元自治体の強い意向がある場合に適用される、拠点区域外の土地活用に向けた避難指示解除の仕組みについて、令和2年12月25日に「特定復興再生拠点区域外の土地活用に向けた避難指示解除について」(原子力災害対策本部)を決定した。また、令和3年8月31日に決定した「特定復興再生拠点区域外への帰還・居住に向けた避難指示解除に関する考え方」(原子力災害対策本部・復興推進会議)に基づき、2020年代をかけて、帰還意向のある住民が帰還できるよう、帰還に関する意向を個別に丁寧に把握した上で、帰還に必要な箇所を除染し、避難指示解除の取組を進めていく。残された土地・家屋等の扱いについては、地元自治体と協議を重ねつつ、引き続き検討を進めていくこととしている。

図表 7-2-31 特定復興再生拠点区域復興再生計画
図表  7-2-31 特定復興再生拠点区域復興再生計画
出所)復興庁「特定復興再生拠点区域復興再生計画の制度概要」
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/saiseikyoten/20170913162153.html(令和4年11月15日閲覧)
2) 各自治体の特定復興再生拠点区域復興再生計画の概要・取組

 特定復興再生拠点区域については、平成30年5月までに、計画策定を進めていた全ての町村(双葉町、大熊町、浪江町、富岡町、飯舘村、葛尾村)の計画を内閣総理大臣が認定し、帰還環境の整備を推進している。令和2年3月にはJR常磐線の全線開通に合わせて、双葉町、大熊町、富岡町の特定復興再生拠点区域の一部区域の避難指示を解除し、令和4年6月には、葛尾村、大熊町、同年8月には双葉町の特定復興再生拠点区域の避難指示が解除され、長期間、帰還が困難であるとされた帰還困難区域において、初めて住民の帰還が可能となった。帰還困難区域を抱える自治体の状況は、それぞれ大きく異なることから、避難指示解除区域や特定復興再生拠点区域への帰還・移住等に向けた課題について、個別かつきめ細かに町村と議論し、取組を推進しているところである。

図表 7-2-32 特定復興再生拠点区域における主な事業の進捗状況
図表  7-2-32 特定復興再生拠点区域における主な事業の進捗状況
出所)復興庁「特定復興再生拠点区域の整備状況(2022年10月1日時点)」
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/saiseikyoten/221001_kyotenseibijoukyou.pdf(令和4年11月15日閲覧)
図表 7-2-33 認定済みの特定復興再生拠点区域復興再生計画概要
図表  7-2-33 認定済みの特定復興再生拠点区域復興再生計画概要
図表  7-2-33 認定済みの特定復興再生拠点区域復興再生計画概要
出所)復興庁「福島の復興・再生に向けた取組状況
https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-4/20220530_kikakuchosei3.pdf(令和5年7月26日閲覧)

(3) 移住等の促進に向けた取組

 発災から10年が経過する中で、原子力災害被災地域では、住民帰還は徐々に進んでいるものの、高齢者の割合が多く、若者や子育て世代などの帰還が進んでいない状況が見られた。また、避難指示解除に時間を要した地域では、5~6割の住民が「戻らない」との意向を示している。これらを踏まえれば、居住人口の増加や、まちの賑わいの再生を図るとともに、地方公共団体の行財政基盤の確保にも資するよう、福島の復興・再生を支える新たな活力を呼び込むための取組を進める必要があった。
 このため、令和2年の福島復興再生特別措置法の改正により、帰還環境整備交付金(福島再生加速化交付金(帰還環境整備))を帰還・移住等環境整備交付金に改め、交流人口・関係人口の拡大、魅力ある働く場づくりを含め、移住等の促進に資する事業を追加した。
 令和3年7月1日、被災12市町村に共通する広域的な取組を担う「ふくしま12市町村移住支援センター」を福島県が設置した。また、同センター、復興庁、福島県、被災12市町村、関係機関からなる「福島移住促進実行会議」を同年7月に設置し、被災12市町村の協調・連携を強化し、創意工夫が生み出される環境を整備した。
 なお、こうした取組のほかにも様々な要因が考えられるが、令和5年6月に福島県が調査・公表した結果によれば、福島県の原子力災害被災12市町村への移住世帯数・移住者数は、令和2年度の「155世帯、213人」、令和3年度「326世帯、436人」から、令和4年度には「427世帯、603人」と増加している。

図表 7-2-34 移住・定住の促進に向けた取組
図表 7-2-34 移住・定住の促進に向けた取組
出所)復興庁
図表 7-2-35 ふくしま12市町村移住支援センターによる情報発信キャンペーン
図表  7-2-35 ふくしま12市町村移住支援センターによる情報発信キャンペーン
出所)復興庁「福島の復興・再生に向けた取組」(令和5年7月)

 令和3年3月には、原子力災害被災地域内外の民間事業者や専門家等が参加する「福島県浜通り地域等の未来に向けた『プロジェクト創出の場』」を立ち上げ、交流人口拡大につながる民間主導のプロジェクトづくりを支援している。プロジェクト創出の場を通じて、原子力災害被災地域内/域外の多様な民間、専門家の繋がりが生まれ、「会津・浜通り教育旅行プロジェクト」など民間事業者等による新たなプロジェクトが生まれてきている。
 また、令和3年12月には行政の取組の具体化に向けた「交流人口拡大アクションプラン検討会」を立ち上げ、浜通り地域等15市町村や関係省庁等の協力の下、令和4年5月に「福島浜通り地域等15市町村の交流人口拡大に向けたアクションプラン」を経済産業省と福島県で策定した。市町村連携による広域な誘客促進に向けたコンテンツの具体化に向けて支援。行政と民間の両輪の取組を後押ししていくことに加え、民間による誘客コンテンツ開発の支援や来訪者向けの消費喚起支援策を実施する。具体的な取組は以下である。

1) 市町村間連携(ヨコ)のアクション

 来訪先候補を増やすとともに面的に広げるため、15市町村内の複数の市町村に共通する地域資源が存在することや、一市町村では人的・資金的資源に限りがあることを踏まえた上で、市町村間で連携(「ヨコ」)し、補完・相乗効果が生まれるような「市町村の枠を超えた広域のコンテンツ作り」に取り組む。経済産業省・福島県においては、各テーマの専門家や民間が参画する「15市町村広域マーケティング機関」(仮称)の立上げを支援し、広域コンテンツづくりを推進する。具体的には、以下の6つのアクションの具現化を行う。

  • ● 酒・グルメ:生産元の「人」と語らい、思いや生き様を体感する、酒・グルメ・人・自然を組み合わせた広域のツアーづくり等
  • ● スポーツ:復興により都度変わる「情景」を体感する15市町村サイクルルートの策定、地元サイクルガイドの養成等
  • ● 山・自然:里山・百名山、ダム、渓谷、キャンプ場だけでなく、隠れた魅力を専門家とともに掘り起こし・磨き上げ等
  • ● 海・自然:サーフィンやSUP、海水浴場や自然公園、アウトドア施設、現地グルメやアパレルとの連携等
  • ● 歴史・文化:馬、土倉との連携等
  • ● 芸術:市町村の持つ芸術・文化資源との連携等
2) 市町村独⾃の取組(タテ)を推進するアクション

 各市町村には、歴史や文化、地理的特性などを背景とした独自の地域資源が存在していることから、経済産業省が他地域にない尖った一点物を磨いていく取組を支援する。具体的には、以下の3つを中心に取り組む。

  • ● 各市町村の担い手を増やす場づくり・運営
  • ● 担い手をサポートする仕組みづくり・運営
  • ● 専門家とタッグを組んだ魅力の発掘・磨き上げ
3) 市町村共通の基盤(デジタル化)に関するアクション

 来訪先の選定に際して、特に若年層ほどデジタル技術の活用は前提となっていることから、15市町村に共通する「デジタル化」(中でも交流人口拡大に繋がるもの)に関するアクションを具体化する。具体的には、以下の3つを中心に取り組む。

  • ● 行政のデジタルトレーニング
  • ● 行政におけるデジタル化の実行とこれを支える伴走支援
  • ● 15市町村のデータ基盤の構築・運営

 また、交流人口・消費拡大を図ることを目的として、浜通り地域等15市町村への来訪者向けに、宿泊業・飲食業等の対象店舗においてQRコード決済等を利用した支払いにポイント還元等を行う「do!浜通りキャンペーン」を令和4年5月から令和5年1月にかけて実施した。
 令和4年10月には、将来的な起業・移住のきっかけを作ることを目的とし、価値創造型の復興まちづくりアイデアソン「福島★復興グランプリ」をJヴィレッジで開催した。「福島★復興グランプリ」では、年齢・学歴・職歴に関係なく「地方創生まちづくりにチャレンジしたい」という人を対象に、被災12市町村をフィールドとして「食・サービス」「観光・自然」「テクノロジー」をそれぞれテーマに掲げてアイデアソンを実施し、福島の復興まちづくりのキープレーヤーに対するアイデアの発表や表彰を行った。

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