4章
被災者支援
1節 被災者支援
- 1.被災者支援の重要課題への対応(被災者支援総合事業)
- 2.被災者の日常的な見守り・相談
- 3.仮設住宅での総合相談・介護等のサポート拠点の運営
- 4.被災地における健康支援
- 5.被災者の心のケア
- 6.子どもに対する支援
- 7.その他の被災者支援に関する取組
東日本大震災では、地震、津波及び東京電力福島第一原子力発電所の事故により、避難生活が長期化した。恒久住宅への移転が進む一方、長期にわたる避難生活を余儀なくされる被災者もおり、被災者一人ひとりが直面する課題は多様である。
そうした被災者が、希望を持って自立した生活を営むための環境を取り戻すためには、被災者に寄り添い、復興のステージに応じた様々な課題にきめ細かく対応することが重要であり、特に、被災者の見守り、心身のケア、コミュニティの形成、子どもに対する支援等が重要である。
「集中復興期間」(平成27年度まで)において住宅再建・復興まちづくりが進捗し、恒久住宅への移転が進む一方で、長期にわたる仮設住宅での生活など、これまでの災害では例を見ないような長期的な避難生活を余儀なくされる被災者もおり、復興のステージに応じて、被災者一人ひとりが直面する課題は、個人の置かれた環境等により多様化するものであることが明らかになった。
「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針(平成28年3月)においては、「避難生活の長期化や恒久住宅への移転に伴う被災者の心身の健康の維持やコミュニティの形成、生きがいづくり等の「心の復興」など、復興の新たなステージに応じた切れ目ない支援を行う」とされ、平成28年度からの第1期復興・創生期間において、避難生活の長期化や仮設住宅から恒久住宅への移行等の状況に応じた切れ目のない支援が実施された。
「第2期復興・創生期間」以降における東日本大震災からの復興の基本方針」(令和3年3月)では、地震・津波被災地域については、「第1期復興・創生期間の終盤に再建された地区のコミュニティ形成、東日本大震災の影響によりケアが必要な高齢者をはじめとする被災者の心身のケア、生きがいづくりのための「心の復興」、見守り・生活相談、東日本大震災により親を亡くした子どもへの支援等の取組について引き続き対応が必要なことから、過去の大規模災害における取組事例等を踏まえ、被災者支援総合交付金等により、事業の進捗に応じた支援を継続する。また、心のケアセンターについては、センターにおける相談・支援対応の実情、地方公共団体の精神保健福祉施策の状況等を踏まえ、適切な支援のあり方を検討する。なお、個別の事情を丁寧に把握し、第2期復興・創生期間内に終了しないものについては、事業の進捗に応じた支援のあり方を検討し、適切に対応する」とされている。一方、原子力災害被災地域については、「心のケア等の被災者支援については、避難生活の長期化等に伴い個別化・複雑化した課題を抱える被災者に対して、引き続き、事業の進捗に応じたきめ細かい支援を行う。また、全国に居住している避難者に対して、生活再建に必要な情報提供、相談等を含め、避難元及び避難先の地方公共団体等による丁寧な支援を継続する」とされている。
こうした被災者支援の取組は、住民に身近な行政主体である被災自治体が担うことが多く、復興庁では被災者支援総合交付金により支援を実施している。
被災者支援の取組に関する評価や課題等については、東日本大震災からの復興政策10年間の振り返りに関する有識者会議において、様々な評価、指摘等があった。
第一に、「人のつながりまで施策対象としたことは画期的であり、以後の災害対応にもつながっている」1との評価があった。東日本大震災からの復興のための被災者支援においては、被災者支援総合交付金等の枠組みを作り、コミュニティの形成支援を行うなど、人のつながりを施策対象としている。
第二に、「心や生活のケアについて、現地の対応やそれを支える国の仕組みがどうあるべきかが引き続き課題」2との指摘があったほか、被災自治体からも「心のケアは専門スタッフを配した長期の取組が必要」、「複雑化・多様化する心のケアに係る長期的・継続的な支援に苦慮している」3との意見があった。今後も、ニーズを踏まえた支援内容等の見直しや予算の確保に引き続き取り組んでいく必要がある。
第三に、「被災者支援は超長期的であり、期間内でどこまでできたかといった目標だけでは不足する。例えば自治会数といった結果目標にしても、長い目で見ると減る。被災した人のつながりが維持されているかなどといった状態目標が重要」4、「生活の復興度合いを測る指標など、各災害に共通の評価指標があるべき」5 、「被災者の主観を客観的に計測する指標を含め、根拠に基づき議論することが必要」6、「目標と実際のギャップが課題として議論されるべき。生活再建のために被災者が選択肢を求めたタイミングと行政が施策を提供できたタイミングにギャップがあった」7といった、目標や評価指標についての指摘が複数あった。
阪神・淡路大震災では、被災者が生活再建度合いをどう感じているかという主観をできる限り客観的に分析するため、「生活復興調査」が実施された。その結果、「自分はもはや被災者ではない」と思える程度は、①すまい、②つながり、③まち、④そなえ、⑤こころとからだ、⑥くらしむき、⑦行政とのかかわりという生活再建課題の7要素の充足度との関連性で分析可能とされ、7要素がバランスよく向上することで復興感が高くなるとの結果が明らかになった。
東日本大震災においても、発災6年目の平成28年に、被害が甚大だった36市町村から無作為抽出で生活復興感に関する調査を実施している。こうした取組を定期的に行っていく必要があるものと考えられる。
第四に、原子力災害からの復興に関連して、「特に原子力災害では、「人の復興」にも着目することが重要」8、「原子力災害について、人の復興の観点から全国どこに暮らしても支援を受けられる仕組みをつくるべき」9との指摘があった。被災者支援総合交付金では、「心の復興」事業により生きがいづくりを施策対象としているほか、県外避難者支援事業により、全国26か所に生活再建支援拠点を設置するなどの取組を実施してきている。
その他、避難所運営の段階から、心のケアが課題になっているとの指摘10もあった。
本節では、被災者支援総合交付金の枠組に基づき、メニューごとの詳細について記述した後、7.で被災者支援総合交付金以外の被災者支援の取組について記述する。
なお、被災者支援総合交付金の創設(平成28年度)に至る経緯及び制度の概要については、3章3節に詳述している。
- 1 第1回東日本大震災からの復興政策10年間の振り返りに関する有識者会議(以下「有識者会議」という。)(令和4年10月24日) 藤沢委員発言
- 2 第2回有識者会議(令和4年12月5日) 大西委員発言
- 3 第2回有識者会議(令和4年12月5日) 岩手県及び宮城県発言
- 4 第1回有識者会議(令和4年10月24日)及び第2回有識者会議(令和4年12月5日) 藤沢委員発言
- 5 第1回有識者会議(令和4年10月24日) 田村委員発言
- 6 第1回有識者会議(令和4年10月24日) 田村委員発言
- 7 第1回有識者会議(令和4年10月24日) 田村委員発言
- 8 第1回有識者会議(令和4年10月24日) 大西委員発言
- 9 第2回有識者会議(令和4年12月5日) 大西委員発言
- 10 第1回有識者会議(令和4年10月24日) 大西委員発言

1.被災者支援の重要課題への対応(被災者支援総合事業)
(1) 被災者の生活再建支援(住宅・生活再建支援事業)
復興の進展に伴い、仮設住宅から災害公営住宅等への移転が進捗しつつある自治体において、ひとり暮らし高齢者等、住宅・生活再建の問題を抱える方々への相談支援が、住宅移転を円滑に進めていく上で、自治体が直面する課題となっていた。
本事業は、恒久住宅の確保や生活再建の見通しを立てることが困難な人等に対して、住宅及び生活の再建計画の策定などの相談支援を行うものである。
生活再建相談員の配置、応急仮設住宅等での訪問による相談支援・出張相談会の実施、生活再建相談員等の資質向上のための研修会等を行っている。

・ 住宅・生活再建支援事業の活用事例
岩手県は「いわて内陸避難者支援センター」、宮城県は「宮城県被災者転居支援センター」、福島県は「ふくしま生活・就職応援センター」を設置・運営し、各自治体は、生活再建相談員の配置を進めてきた。
なお、「宮城県被災者転居支援センター」は令和元年度末で閉鎖となった。また、「いわて内陸避難者支援センター」は令和2年度末で閉鎖され、令和3年度からは「いわて被災者支援センター」が被災者の相談窓口として設置されている(後述の被災者生活支援事業により支援)。

https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat7/sub-cat7-2-1/latest/202112_pamphlet_fukko-jokyo-torikumi_02.pdf (令和5年7月25日閲覧)
(2) コミュニティ形成支援
災害公営住宅は、震災前には異なった地域に居住していた方々が協働で生活する場となることから、入居者の孤立化を防ぐためにコミュニティの果たす役割が大きい。また、コミュニティ形成には大変な時間と労力を要するといった自治体からの声もある11。
被災者支援総合交付金以前には、地域コミュニティ復興支援事業として、高齢者、障害者や離職を余儀なくされた若年層等が地域とのつながりを持ち続けることができるよう、市町村、社会福祉協議会、NPO等と連携、ボランティア等による孤立防止のための見守り活動等を実施した。予算措置は、平成23年度第三次補正予算40億円、平成24年度予備費30億円、平成25年度補正予算30億円であった。
被災者支援総合交付金のコミュニティ形成支援事業は、災害公営住宅等への移転や、応急仮設住宅の集約化が進展していることに対応し、住民同士のコミュニティ形成や、住民と住宅周辺の既存の地域コミュニティとの融合など、住宅移転後の円滑なコミュニティ形成を図るものであり、コミュニティ支援員の配置、自治会等の立上げ・活動等を支援している。
災害公営住宅等で設立された自治会数は、令和元年度548団体、令和2年度567団体、令和3年度572団体となっている。
- 11 第3回有識者会議(令和5年2月27日)における自治体意見。

・ コミュニティ形成事業の活用事例
- ■岩手県盛岡市では、内陸災害公営住宅入居者による交流会や、地元町内会との顔合わせやイベント開催による交流支援を実施した。
- ■岩手県釜石市では、住民同士が顔を合わせる機会を創出するための住民懇談会等を開催した。
- ■宮城県仙台市では、入居者によるワークショップや町内会との顔合わせイベントを開催した。
- ■宮城県石巻市では、住民自治組織の設立や課題解決等に関する支援を行う地域づくりアドバイザーによる地域住民への助言・提言を実施した。
- ■福島県いわき市では、双葉郡からの長期避難者向けの復興公営住宅入居者と地域住民とのつながりを深める場づくり等を支援した。
- ■福島県浪江町では、町民同士の絆の形成を目的とした交流館を利用したサロン等を開催した。
- ■福島県川内村では、地域住民が主体となって見守りや健康づくり活動が実施できるよう、住民に運動や交流のコツを学ぶ機会を提供した。

https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat7/sub-cat7-2-1/latest/202112_pamphlet_fukko-jokyo-torikumi_02.pdf (令和5年7月25日閲覧)

(3) 生きがいづくり(「心の復興」事業)
「心の復興」事業は、閉じこもりがちな高齢者等の被災者が他者とのつながりや生きがいをもって前向きに生活することを支援するほか、コミュニティ形成と一体となった被災者の心身のケア等の取組の促進を図るものであり、平成27年度に事業が開始され、平成28年度からは被災者支援総合交付金に統合された。
本事業は、被災者の主体的な参画を得ながらNPO等の民間団体が活動の中心となって実施されており、例えば「被災者が地域住民とともに農作業」、「専門家によるアートワークショップ」といった創意工夫による取組が行われている。

・ 「心の復興」事業の活用事例
- ■岩手県陸前高田市では、被災者等地域住民による自主的な生涯学習活動支援事業を行い被災者が自ら講座などの企画運営を行うことにより、地域とのつながりを深め、生きがいをもって活動できる機会を提供した。
- ■岩手県大槌町では、ものづくりを通して県内外の方々へ大槌の情報を発信し震災風化防止につなげた。
- ■宮城県東松島市では、被災者が花を植える作業を地域住民と協働で行うことで、一体感・充実感を共有し、孤立化の防止や友人づくりにつなげた。
- ■福島県では、「チャレンジ!子どもがふみだす体験活動応援事業」を実施し、復興公営住宅等への訪問や避難者との交流、福島の復興をアピールする取組等、子どもたちが主体的に復興に寄与する社会体験活動を実施した。
- ■福島県大熊町では、町名産のキウイ栽培を通じて、町民同士の交流の機会づくりを行った。
- ■東京都等では、首都圏・広域避難者の自主的な『活力増進と風化防止』プロジェクトを行った。
- ■福島県富岡町では、ふれあい農園を開設し、帰町した町民が野菜づくりや収穫物を利用した交流会を行い、参加者間の交流につなげた。


(4) 日常生活における困り事等への支援(被災者生活支援事業)
被災者生活支援事業は、被災者の安定的な日常生活の維持が懸念される場合に、地域コミュニティ等による自立的な支援体制が構築されるまでの間、特に支援が必要な生活課題への対応に関する支援を行うものである。
被災者支援総合交付金以前の対応として、多くの自治体において、仮設住宅等における生活課題に対応するため、緊急雇用(震災等対応雇用支援事業)の枠組みを活用した支援を実施してきたところであったが、同事業は平成27年度限りで終了となった。
平成28年度以降は、被災者支援総合交付金により、被災者生活支援員の配置や、災害公営住宅等の入居者の生活・住宅環境に関する相談への支援、日用品の買い物や通院・通学等、安定的な日常生活の確保に必要な支援を行っている。

・ 被災者生活支援事業の活用事例
- ■岩手県大船渡市では、災害公営住宅において、被災者の健康維持・増進のため、健康相談、運動教室、食生活改善交流会等を実施した。
- ■福島県相馬市では、被災高齢者等が居住する地域で週2回程度、移動販売車を巡回させ、買い物の支援を実施した。
- ■福島県飯舘村では、避難先から村内の学校教育施設に通う子どもたちの通学手段としてスクールバスを運行した。
(5) 支援者に対する支援(被災者支援コーディネート事業)
平成26年度から、各地域へのコーディネーターの配置による被災者支援に関する新たな活動主体の参画の促進や、復興支援員、NPO、ボランティア等との連携強化、被災者支援調整会議の開催による支援ネットワークの構築等を行っている(8章1節にも記載)。
平成28年度以降の被災者支援コーディネート事業の被災者支援調整会議の開催は、支援者間での密接な連携の確保を図るため、地方自治体、社会福祉協議会、NPO等の団体、地域コミュニティ組織等により構成し、おおむね年3回程度実施している。会議の内容は、支援者間での課題の共有、必要な支援内容や各支援者の役割分担、支援活動の実施状況の検証等である。
また、活動コーディネート及び人材確保として、新たな活動主体の参画や、支援者間の連携強化等を図る取組を実施している。

(6) 県外避難者に対する支援(県外避難者支援事業)
避難生活が長期化する中で、県外避難者の帰還・生活再建を促進するための相談支援・情報提供は重要な課題となっている。
福島県からは、現在でも多くの方々が県外で避難生活を送られている。このため、本事業において、帰還・生活再建に係る支援策の情報提供、相談会・交流会の開催等を行う「生活再建支援拠点」の設置、県外避難者への相談、見守り等を行う支援団体に対する活動支援等を行っている。
生活再建支援拠点における令和3年度の相談受付件数は1,347件(福島県からの避難者からの相談に限る)であり、相談内容は「生活」が35%、「健康」が14%、「住宅」が9%、「支援策」が8%、「その他」が14%であった。

・ 県外避難者支援事業の活用事例
避難先で県外避難者が帰還や生活再建について相談できる「生活再建支援拠点」を、平成28年度より設置・運営しており、平成29年度から26拠点で運営している。
- ■県外避難者の見守りや交流会を行う支援団体への補助を平成24年度に開始し、令和3年度は47団体を支援した。
- ■避難者同士や帰還者との交流会を福島県及び避難先の都道府県で実施した。
- ■子どもの教育問題、配偶者からの暴力などを含む家族の問題、生活困窮など複雑化・深刻化する課題に対応するため、生活再建支援拠点と、精神保健福祉士、司法書士、臨床心理士、医療機関といった専門家・組織とで連携した。
- ■都道府県内自治体と連携し、在宅保健師会等の協力を得て、戸別訪問を実施した。要見守り者への対応を話し合うための支援調整会議を開催した。
- ■県外避難者に対し、福島の復興に向けた動きや避難者支援に関する情報誌を提供した。

https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/sub-cat2-7/20170707_hinansha-sien-sesakku.pdf (令和5年7月25日閲覧)

https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat2/sub-cat2-7/20170707_hinansha-sien-sesakku.pdf (令和5年7月25日閲覧)
2.被災者の日常的な見守り・相談
被災者見守り・相談支援事業(厚労省事業)は、相談員による応急仮設住宅や災害公営住宅の巡回などを通じた被災者の見守り・相談支援、被災者に対する支援技法に関する研修やメンタルケア等被災者支援に従事する方のバックアップ等を行っている。
生活支援相談員は、ピーク時(平成29年3月)で790人、令和4年3月時点で304人となっている。なお、平成27年度から、生活支援相談員としての職歴が、社会福祉士国家試験の受験資格を得るために必要な実務経験として、算入が認められることとなった。
見守り等支援の対象になっていた約60,000世帯について、相談員等の見守り等により具体的な支援が必要なくなった世帯数が、令和元年度で28,000世帯を超え、平成26年度に掲げた数値目標を達成した。

・ 東日本大震災以降の災害での取組等
熊本地震及び平成30年7月豪雨(西日本豪雨)については、発災後に事業化・予算化を行っていたが、令和元年度からは発災後速やかに対応できるよう、「生活困窮者就労準備支援事業費等補助金」の支援メニューのひとつとして「被災者見守り・相談支援等事業」を設置した。
また、被災者見守り・相談支援事業のうち、公募した法人が実施する事業は、全国域の取組に発展し、全国域の事業は「寄り添い型相談支援事業」(生活困窮者就労準備支援事業費等補助金(民間団体実施分))として実施している。
3.仮設住宅での総合相談・介護等のサポート拠点の運営
仮設住宅サポート拠点運営事業(厚労省事業)では、東日本大震災の被災者(高齢者等)の生活支援や被災地の復興支援のため、仮設住宅に併設される「サポート拠点」(総合相談、生活支援、地域交流等の総合的な機能を有する拠点)の運営費用等について財政支援を行っている。
本事業は、平成23年度第一次補正予算から平成27年度までは厚生労働省所管「介護基盤緊急整備等臨時特例基金」における地域支え合い体制づくり事業(震災対応分)として実施されていたところ、平成28年度の「被災者支援総合交付金」創設に伴い、同交付金のメニューとして実施している。
サポート拠点は、これまでに岩手県、宮城県及び福島県において設置されてきたが、仮設住宅から恒久住宅への移行が進んだことから、岩手県及び宮城県では令和元年度で本事業は終了し、令和4年4月時点で福島県にて3か所のサポート拠点が設置されている。

4.被災地における健康支援
被災地健康支援事業(厚労省事業)では、仮設住宅での生活の長期化に伴う健康懸念を背景に、仮設住宅における保健活動等を支援している。福島県及び同県内市町村が、巡回健康相談の実施や、健康支援方策を検討する協議会を開催するなどの取組を支援している。
なお、仮設住宅から恒久住宅への移行が進んだことから、岩手県及び宮城県の自治体については、令和2年度までで事業を終了している。

5.被災者の心のケア
被災者の心のケア支援事業(厚労省事業)では、震災後に心のケアのニーズが増大した被災3県それぞれに「心のケアセンター」を設置し、被災者のPTSDなど様々な心身の不調、精神疾患に対応した相談、多職種のチームによるアウトリーチ等の支援や、長期的に被災者の心のケアに従事する保健師、精神保健福祉士等の専門職の育成などを行っている。
「心のケアセンター」とは、大規模な災害の発生時、地域の精神医療保健福祉システムが機能不全に陥ったり、増大するニーズや災害時特有の事象への対応に困難を抱えたりという状況において、地域の精神医療保健福祉活動を補う存在として設立される機関であり、これまで、阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、東日本大震災、熊本地震の際に設立されている。
東日本大震災において、岩手県では、岩手医科大学を実施主体として、平成24年2月に「岩手こころのケアセンター」を県内5か所に、宮城県では、宮城県精神保健福祉協会を実施主体として平成23年12月に「みやぎ心のケアセンター」を県内3か所に、福島県では、福島県精神保健福祉協会を実施主体として平成24年2月に「ふくしま心のケアセンター」を県内7か所に設置している。
平成30年度以降、自己点検を図る観点から「被災3県において被災者の精神保健の健康支援を実施し自殺者数(実数)を前年よりも減少させる」との指標を設定した。令和元年度は前年自殺者9人に対し、16人であって達成度は56.3%、令和2年度は前年自殺者16人に対し、5人であって達成度は100%(実績は前年以下で達成度100%) となっている。

・ 心のケアセンターにおける相談者数(3県別)
相談者数(実人数)については、漸減傾向にある。相談件数(延べ件数)についても平成26年度の24,206件をピークに減少傾向となっているが、令和3年度も17,302件と依然として高い水準で推移している。

- ※1 このほか、心のケア支援事業の一部を仙台市に委託して相談支援を実施(相談件数 令和3年度:2,351件)
- ※2 このほか、日本精神科看護協会等に委託して県外避難者に対する相談支援を実施
6.子どもに対する支援
(1) 被災した子どもの健康支援・心のケア
被災した子どもの健康・生活対策等総合支援事業(厚労省事業)は、原子力災害被災地域向けに、子どもの家庭を訪問し、心身の健康に関する相談などを行う「子ども健やか訪問事業」、児童館などへ大型遊具等を設置するなどの「遊具の設置や子育てイベントの開催」、児童福祉施設等が提供する給食の更なる安全・安心の確保のための取組を支援する「児童福祉施設等給食安心対策事業」を実施している。また、被災3県向けに、専門の職員による被災した子どもに対する心と体のケアに関する相談・援助を実施する「親を亡くした子ども等への相談・援助事業」を実施している。

(2) 自然体験・交流活動支援
福島県の子供たちを対象とする自然体験・交流活動支援事業(文科省事業)は、福島県内の子供を対象として、学校等や社会教育関係団体が実施する自然体験活動等の取組を支援している。平成26年度より実施し、令和4年度までに、小・中学校で3,239件、幼稚園・保育所で2,347件、社会教育関係団体で35件実施している(平成27年度以降は被災者支援総合交付金の取組の一つとして実施)。

(3) 子供の学びの支援
子供への学習支援によるコミュニティ復興支援事業(文科省事業)は、平成28年度から実施され、平成29年度に被災者支援総合交付金に追加されたメニューである。平成29年度は、「仮設住宅の再編等に係る子供の学習支援によるコミュニティ復興支援事業」であり、令和3年度に「子供への学習支援によるコミュニティ復興支援事業」に名称変更した。
本事業では、地域と学校の連携・協働による学習支援等の実施を通じ、地域住民の幅広い参画のもと子供の学習環境の向上を図るとともに、地域のつながりの形成を図り、被災地のコミュニティの復興を促進するほか、放課後や週末等の学習支援など、被災地のコミュニティ復興に資する活動を実施している。

7.その他の被災者支援に関する取組
(1) 義援金等
1) 義援金
日本赤十字社、中央共同募金会、日本放送協会(NHK)及びNHK厚生文化事業団の4団体(以下本項において「日本赤十字社等」という。)が実施した義援金については、その募集の終了時点(令和2年度末)において、総額3,845億円12が募金された。(過去最大の義援金総額となった阪神・淡路大震災でも約1,792億円13であった。)
義援金の配分については、日本赤十字社等により学識経験者・義援金受付団体の代表者・被災都道県の代表者を構成メンバーとする「義援金配分割合決定委員会」が平成23年4月8日に設置され、各被災都道県への義援金の配分方法(基準)が決定された。同委員会による第1回配分においては、「死亡、行方不明者、住宅全壊・全焼は35万円」、「住宅半壊・半焼は18万円」、「原発避難指示・屋内退避指示圏域の世帯は35万円」を基準として、これを対象世帯数・対象者数を乗じた額が各被災都道県に配分され、被災都道県がそれぞれ設置する「配分委員会」において配分方法等を決定し、市町村を通じて被災者の方に配付されることとなった。
令和4年9月末時点において、日本赤十字社等に寄せられた義援金は、その約99%を被災者に配付された。なお、日本赤十字社等から各都道県への送金は完了済みであり、未配付分については、県での留保を行っている場合や市町村から被災者への配分が完了していない場合、又は、配分端数分等となる。
- 12 平成23年3月14日から平成26年3月31日までの間に日本赤十字社等に寄せられた義援金と平成26年4月1日から令和3年3月31日にかけて日本赤十字社等に寄せられた義援金の合計。
- 13 総理府阪神・淡路復興対策本部事務局『阪神・淡路大震災復興誌』(平成12年2月) P.25

https://www.bousai.go.jp/2011daishinsai/pdf/gienkin_r40930.pdf (令和5年7月25日閲覧)
また、義援金については、みずほ銀行、三菱UFJ銀行、三井住友銀行及びゆうちょ銀行の義援金窓口(東日本大震災義援金政府窓口)への入金による、日本政府を通じた受付も行っている(平成23年4月5日(火)から令和6年3月31日(日)まで)。令和4年10月末現在において、約40億円の受付がされており、このうち、約99%が地方公共団体に送金されている。なお、配分に当たっては、日本赤十字社等が設置した義援金配分割合決定委員会が決定した基準(被災状況に応じて按分)によることとされている。
なお、二重債務問題を抱える被災者が、支給された義援金を債権者により差し押さえられ、その生活再建が妨げられることが懸念されたこと等から、「東日本大震災関連義援金に係る差押禁止等に関する法律」(平成23年法律第103号)により、東日本大震災関連義援金の交付を受けることとなった者の当該交付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができないこととされ、また、東日本大震災関連義援金として交付を受けた金銭は、差し押さえることができないこととされた。災害に関連する義援金については、東日本大震災をはじめ、平成28年熊本地震による災害、平成30年7月豪雨等による災害、令和元年房総半島台風、令和元年東日本台風等による災害及び令和2年7月豪雨による災害の際に、被害の甚大さに鑑み、これらの災害に関連する義援金に限り、差押えを禁止すること等を内容とする法律が制定されてきたが、令和3年には、自然災害一般における義援金について差押禁止財産とする「自然災害義援金に係る差押禁止等に関する法律」(令和3年法律第64号)が制定された。(2章3節40.参照)
2) 災害弔慰金・災害障害見舞金
災害弔慰金は、災害弔慰金の支給等に関する法律(昭和48年法律第82号。以下「災害弔慰金法」と言う。)の規定に基づき、自然災害により死亡した者(直接死以外も含む)の遺族に対して支給されることとされており、その支給額は、生計維持者が死亡した場合は500万円、その他の者が死亡した場合は250万円となっており、令和4年3月31日現在において、災害弔慰金は、20,583件支給されている。
この点、当時、災害弔慰金の支給遺族の範囲については、配偶者、子、父母、孫または祖父母とされていた。一方、平成23年当時における社会情勢と家族のあり方の変化等を踏まえ、その範囲に、他の遺族のいずれもが存しない場合に、死亡した者の死亡当時その者と同居し、または生計を同じくしていた兄弟姉妹を加える「災害弔慰金の支給等に関する法律の一部を改正する法律」(平成23年法律第86号)が制定され、東日本大震災にも遡及適用がされることとなった。(2章3節38.参照)
他方、災害障害見舞金は、災害弔慰金法の規定に基づき、自然災害により精神又は身体に著しい障害(両眼失明、要常時介護、両上肢ひじ関節以上切断等)を受けた者に対して支給することとされており、その支給額は、生計維持者の場合は250万円、その他の者の場合は125万円となっており、令和4年3月31日現在において、災害障害見舞金は、107件支給されている。
これら災害弔慰金及び災害障害見舞金の原資費用負担については、国1/2、都道府県1/4、市町村1/4とされている。
なお、義援金と同様に、二重債務問題を抱える被災者が、支給された災害弔慰金等を債権者により差し押さえられ、その生活再建が妨げられることが懸念されたこと等から、「災害弔慰金の支給等に関する法律及び被災者生活再建支援法の一部を改正する法律」(平成23年法律第100号)により、東日本大震災に限らず、差押禁止措置等が講じられた。(2章3節39.参照)

https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-1/20220606_torikumitokanrenshoseido.pdf (令和5年7月25日閲覧)
3) 被災者生活再建支援金
被災者生活再建支援制度は、被災者生活再建支援法(平成10年法律第66号)の規定に基づき、自然災害により、居住する住宅が全壊するなどその生活基盤に著しい被害を受けた者に対し、都道府県が相互扶助の観点から拠出した基金を活用して被災者生活再建支援金を支給することにより、その生活の再建を支援し、もって住民の生活の安定と被災地の速やかな復興に資することを目的とするものである。
被災者生活再建支援金は、住宅の損害割合等に応じて区分される①住宅が「全壊」した世帯(全壊世帯)、②住宅が半壊、又は住宅の敷地に被害が生じ、その住宅をやむを得ず解体した世帯(半壊解体・敷地被害解体世帯)、③災害による危険な状況が継続し、住宅に居住不能な状態が長期間継続することが見込まれる世帯(長期避難世帯)、④住宅が半壊し、大規模な補修を行わなければ居住することが困難な世帯(大規模半壊世帯)、⑤住宅が半壊し、相当規模の補修を行わなければ居住することが困難な世帯(中規模半壊世帯:東日本大震災は対象外14)の世帯主に対し、住宅の被害程度に応じた基礎支援金及び住宅の再建方法に応じた加算支援金が支給されるものである。具体的には、基礎支援金は①~③の世帯100万円、④の世帯50万円であり、いずれも加算支援金は建設・購入の場合200万円、補修の場合100万円、賃借の場合(公営住宅を除く)50万円となっている(そのため、最大300万円の支給がなされる。)。
令和4年3月31日時点において、基礎支援金は205,634世帯、加算支援金は156,867世帯に支給されている。
- 14 「被災者生活再建支援法の一部を改正する法律」(令和2年法律第69号)により追加された被災世帯の区分で、同法の施行後の規定は令和2年7月3日以後に発生した自然災害に適用されることとなった。

https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-1/20220606_torikumitokanrenshoseido.pdf (令和5年7月25日閲覧)

https://www.bousai.go.jp/taisaku/seikatsusaiken/pdf/sienkin.pdf (令和5年7月25日閲覧)
被災者生活再建支援金については、同法に定める被災者生活再建支援法人が、都道府県拠出による基金からその支給を行うこととされている。支給した支援金に対する国の被災者生活再建支援金補助金の補助率は1/2であるところ、「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律の一部を改正する法律」(平成23年法律第87号)により、同補助金について、東日本大震災に限り、既に支給した支援金を含め国の補助率を1/2から4/5に引き上げる措置が、「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」(平成23年法律第40号)に加えられることとなった。(2章3節16.参照)
また、災害弔慰金等と同様に、二重債務問題を抱える被災者が、支給された被災者生活再建支援金を債権者により差し押さえられ、その生活再建が妨げられることが懸念されたこと等から、「災害弔慰金の支給等に関する法律及び被災者生活再建支援法の一部を改正する法律」により、東日本大震災に限らず、差押禁止措置等が講じられた。(2章3節39.参照)
加えて、被災者生活再建支援金の支給手続の迅速化のための措置等が講じられた。さらに、液状化による住家被害について実態に即した適切な被害認定が実施できるよう、その運用の見直しを行った。詳細は次のとおり。
a. 被災者生活再建支援金等に係る手続の迅速化
り災証明書は、被災者生活再建支援金をはじめとする各種被災者支援制度において、適用の判断材料となるものであり、その発行手続を迅速化するために、その前提となる住宅の被害認定に関して、
① 津波により流出した住宅については、航空写真や衛星写真を活用し全壊と判定できること。
② 津波浸水区域について、一定の調査により、おおむね1階天井まで浸水したことが明らかな区域については、当該区域内の住宅全てを全壊と判定できること。
③ 外形を目視してイメージ図等を活用した判定方法を採ることができること。
等の簡便な方法を被災地方公共団体等に示した。
また、被災者生活再建支援金を速やかに支給するために、支給手続について、
① 住宅の倒壊が写真で確認できる場合には、り災証明書がなくとも写真の添付で申請が可能であること。
② 津波により地域全体が壊滅的被害を受けたような場合で、長期避難世帯に該当する場合には、り災証明書がなくても支援金を支給できること。
等の迅速化のための措置を、被災地方公共団体等に示した。
加えて、支援金の支給事務処理体制の強化のため、支援金の支給に当たる法人職員の増員及び被災市町村への各県の積極的な協力を要請した。
b. 液状化被害に対する取組
東日本大震災では、千葉県、茨城県等において、液状化による住宅被害が広範囲に発生した。住家被害認定の調査・判定方法について、今回の地震による地盤の液状化による住宅被害の実態にそぐわないとの指摘を踏まえ、現地の実態を把握するとともに、学識経験者の意見も聞き、住家被害認定の運用が見直された。具体的には、基礎・床一体となった傾斜による判定及び住家の基礎等の潜り込みによる判定が追加された。
他方、被災者生活再建支援金の申請期間については、被災者生活再建支援法により、基礎支援金について災害発生日から13か月以内、加算支援金については37か月以内とされているところ、同法の規定に基づき都道府県知事は延長ができることとされており、り災証明書の発行状況や生活再建の進捗状況等を踏まえ、次の表のとおり延長等がなされてきた。
※下線市町村:申請期限内市町村

4) 災害援護資金
災害援護資金は、対象となる災害(都道府県内で災害救助法第2条第1項が適用された市町村が1以上ある自然災害)により、負傷又は住居、家財に被害を受けた者に対し、生活の立て直しに資するため、貸付けを行うことができるものである。当該貸付けの限度額については負傷、住居の損害等に応じて150万円から350万円とされている。
一般災害では、その利率が3%(平成30年の法改正で、平成31年4月1日以後に発生した災害に係る利率は、年3%以内で条例で定める率とされた。)とされ、また、償還期間は10年間(据置期間3年間又は5年間を含む。)であり、償還免除については、借受人の死亡または、重度障害により償還できなくなったと認められる場合に限られている(令和元年法改正で免除要件に、破産手続開始の決定及び民事再生手続開始の決定を受けたときが追加された。)が、東日本大震災では、「東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律」の規定により、以下の特例措置が講じられている。
① 償還期間を13年間に延長(据置期間も6年間又は8年間に延長)。
② 通常は3%の利率を保証人ありの場合は無利子、保証人なしの場合は1.5%に引下げ。
③ 償還免除要件に、無資力又はこれに近い状態にあるため償還金の支払の猶予を受けた者が、最終支払期日から10年経過後において、なお無資力又はこれに近い状態にあり、かつ、償還金を支払うことができる見込みがない場合を追加。
これらの特例の下、災害援護資金については、令和3年9月30日現在で、29,719件・525億2,029万円の貸付けが行われている。
一方、災害援護資金の貸付けは、所得が一定額に満たない世帯の世帯主を対象としている制度であることから、震災から期間が経過した現在においても依然として生活困窮の状況から抜け出せず約定による償還が困難な者が存在している状況である。そのため、令和6年度に平成23年に貸付けを行った者から市町村への償還期日が到来する予定である中、現時点において、被災者からの各市町村に対する災害援護資金の償還が滞納となるケースが多数生じており、各市町村はその回収に課題を抱えている。
なお、平成7年の阪神・淡路大震災当時は、被災者生活再建支援法による被災者生活再建支援金がなかったこともあり、災害援護資金の貸付金額は東日本大震災の約2.5倍15に上った。阪神・淡路大震災の災害援護資金の償還期間は10年となっており、また、自治体が被災者に償還金の支払いの猶予をした場合であっても、自治体は国から借りた貸付原資を国に償還する必要があった(なお、債権管理法に基づく履行延期の特約を行うことは可能であった)。しかし、10年経過時にも相当の未償還額が残っていたことから、平成18年1月に災害弔慰金法施行令を改正し、阪神・淡路大震災については、市町が償還金の支払いの猶予を行った場合には、債権管理法に基づく履行延期の特約ができる要件に該当することを制度上明確にした16。これらの間に、関係自治体においては債権回収に熱心に取り組み、未償還額の割合は平成30年12月時点で9.3%となった。債権回収の取組は進んだが、なお未償還となる123億円分の扱いが課題となっており、この状況の打開を図るべく、令和元年に議員立法で災害弔慰金法が改正され、所得が生活保護と同等の収入水準であること等一定の条件下における低所得者の償還免除等が措置された17。神戸市においては、当該法改正により償還免除が進んだが、償還免除対象外の少額償還者や、住居不明・国外転出等の接触困難者に対する未償還債権について、今後も償還が困難であるとして、令和3年9月、議会の承認を得て、約10億円の債権を放棄した。
今後、東日本大震災の被災自治体においても、平成23年に貸付けを行った者から市町村への償還期日が到来する令和6年度の到来に向け、一層の債権回収の取組強化が求められている。
- 15 災害援護資金の貸付金額・件数は、東日本大震災が約525億円、約3万件(令和3年9月末現在)に対し、阪神・淡路大震災では約1,326億円、約5.7万件となっている。
- 16 平成18年に5年間、平成23年・平成26年・平成29年・令和2年にそれぞれ3年間の履行延期。
- 17 阪神・淡路大震災における災害援護資金の債権状況(令和3年3月末現在)は、以下のとおり。
・総貸付金額:約1,326億円(うち国費約884億円)
・償還済額(国費):約751億円
・免除済額(国費):約51億円
・未償還額(国費):約82億円
うち免除予定額:約66億円(約16億円は償還継続)

https://www.bousai.go.jp/2011daishinsai/pdf/shokan04.pdf (令和5年7月25日閲覧)
(2) 法テラス震災特例法に基づく取組
1) 概要
平成24年4月に施行された「東日本大震災の被災者に対する援助のための日本司法支援センターの業務の特例に関する法律」(以下「法テラス震災特例法」という。)により、災害救助法が適用された区域に発災時居住していた人等を対象として、その者の資力に関わらず、弁護士等による無料の法律相談、代理援助費用の立替え、書類作成費用の立替え等を行った。同法は2度の延長(平成27年4月及び同30年4月)を経て、令和3年3月をもって失効した。
現地では、岩手2か所、宮城3か所、福島2か所に被災地出張所を設置し、9年間で震災法律相談援助を40万件以上実施した。
2) 震災直後の動き
震災発生翌日の平成23年3月12日、法テラス本部内に「東日本大震災対策本部」を設置し、東北地方をはじめとした各地方事務所の人的・物的被害状況の把握や国選弁護等各業務体制を確認の上、その後の被災者支援に関する検討を始めた。被害状況が深刻、甚大かつ広範囲であり、第一に被災者支援に係る法的な各種情報の提供が必要と考えられたことから、震災発生から約2週間後の3月23日から、法テラスと各関係機関との共催で、被災者を対象とした電話での情報提供を順次開始した。また、同年3月末には、避難所等での民事法律扶助業務による巡回・出張法律相談等も開始した。
平成23年5月には、被災したコールセンター(仙台市)における法テラス・サポートダイヤルの通常業務を再開、同年11月には「震災 法テラスダイヤル」(現:法テラス災害ダイヤル)を開設して、被災者への情報提供を充実させた。
なお、日本弁護士連合会、日本司法書士会連合会、各地の弁護士会等も、被災直後から阪神・淡路大震災など過去の大災害の経験を踏まえ、全国各地で相談会等を開始し、法テラスなどとの連携を強化して、被災者が直面する問題点やその改善要望などを、国に積極的に提言する活動を始めた。

3) 被災地出張所の設立
法的支援制度の整備として、法テラスは、被災地出張所開設の実現に向け「被災者支援特命室」を設置し、被災地出張所の候補地の選定、法務省や日弁連、被災地の弁護士会、自治体等との調整・交渉などを進めた。そして震災から約半年後の平成23年10月には、1か所目の被災地出張所として宮城県に「法テラス南三陸」を開設した。続いて、同年度中には、「法テラス山元」(同年12月)、「法テラス東松島」(平成24年2月)、また、岩手県に「法テラス大槌」(同年3月)が開設され、被災地出張所の活動が各地で徐々に始まっていった。その後平成25年3月までに、岩手県、宮城県、福島県の3県に、合計7か所の被災地出張所を設置した。被災地出張所はいずれも、津波の被害が甚大であった太平洋沿岸部や福島原発事故の被災者が多く住む地域に置かれた。
なお、法テラスは、司法制度改革審議会の意見書を受けて制定された総合法律支援法(平成16年法律第74号)に基づき、平成18年4月10日に設立された。当時、日本の社会は、いわゆる「事前規制型社会」(主として行政による規制や指導を通じて個人や企業の活動や利害を調整する社会)からいわゆる「事後救済型社会」(国民一人ひとりが自らの責任で自由に行動することを基本とし、その結果、紛争や利害対立が生じた場合については、社会のルールである法律を主体的に利用することで解決を図る社会)へと変わりつつあり、法テラスは、そうした社会の変化に対応して「法による紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられる社会」を実現することを目指し設立されたものである。平成18年10月2日から全国各地の事務所とコールセンター(通称「法テラス・サポートダイヤル」)で業務を開始した。

4) 震災法律援助業務の導入経緯
被災者支援を進める上で大きな壁になったのが「資力要件」であった。当初、避難所等で実施していた無料法律相談は、民事法律扶助業務の下に行われており、家族の状況に応じて収入や資産が一定の基準以下であること等が利用の要件であった。そのため、法律相談の受付時には、過酷な状況下にある被災者に対し収入や家族状況等を聴取する必要があった。これは聴取される被災者にとっても被災地出張所職員にとっても重い負担となり、法的支援の提供において大きな障害となっていた。
こうした問題点を解消し、被災者が法的支援をより円滑に受けられるようにしたのが、平成24年3月23日に制定、同年4月1日に施行された法テラス震災特例法である。これにより、法テラスは新たに「震災法律援助業務」を開始し、法律相談については、震災当時、被災地に住居等があった人であれば、資力を問わず無料で受けられるようになった。
5) 法テラス号
当時、被災地での被災者支援を検討するに当たり、もともと交通インフラが整っていない、又は震災により交通インフラが崩壊し、交通手段が乏しい地域の被災者に対して、どのように法的支援を届けるかという問題があった。そこで、車内で相談できる移動相談車両を全被災地出張所に配備することとした。車内はいすやテーブルが置かれ、対面で相談できる構造とした。
この車両は「法テラス号」と名付けられ、被災地出張所の移動相談場所として、また、被災者や関係機関に法テラスを周知する際の広報車として活用された。特に、被災地出張所までの交通手段がない方や、高齢・身体的な事情などで相談に来られない方に対するアウトリーチの手段として活躍することとなった。

6) よろず相談・関係機関との連携
被災地では、法的な問題に関連して、登記、行政手続、社会福祉、税金など多様な相談ニーズが予想された。そこで、地元自治体や消費者庁、国民生活センター等と連携し、関係士業団体(司法書士、税理士、建築士、土地家屋調査士、社会保険労務士、行政書士、社会福祉士)の協力を得て、各種専門士業による「よろず相談」を各被災地出張所で開始することとなった。これにより被災地出張所は、関係士業団体の協力に基づいたワンストップサービスを提供することも可能となった。このよろず相談は、自身が抱える問題が「法的」なのかそうでないのか戸惑い、相談すること自体を躊躇する被災者にとって、法テラスに相談する契機にもなった。
その他、法テラス南三陸など複数の被災地出張所では、内閣府男女共同参画局との連携事業として女性の悩み事に関する相談や、法テラス大槌では、岩手医科大学が運営する岩手県こころのケアセンターの相談場所としても活用された。
7) 法テラス震災特例法の延長
東日本大震災法律援助の実施件数が年間約5万件前後のペースで推移していたこと、原子力損害に係る賠償請求権の消滅時効が法テラス震災特例法で延長され、損害賠償請求に係る紛争がその後も認められたこと、高台移転や仮設住宅からの退去等に伴う法的問題が顕在化するおそれがあったことから、法テラス震災特例法は、2度の期限延長となった。
8) 予算規模
平成24年度20.5億、平成25年度2.1億、平成26年度9.0億、平成27年度4.4億、平成28年度6.0億、平成29年度5.9億、平成30年度6.1億、令和元年度6.1億、令和2年度5.7億である。
9) 適用実績
震災法律相談援助は、平成24年度の業務開始以降、平成30年度の54,765件をピークに、令和2年度まで毎年度4万件を超え、令和2年度までで456,754件であった。また、震災代理援助は10,578件、震災書類作成援助は173件であった。


10) 大規模災害への備え
法テラス震災特例法の制定・施行には約1年間の期間を要した。このため、大規模災害の被災者に対し迅速に法律支援を行うために、平成28年6月3日に公布された総合法律支援法の一部を改正する法律では、新たな制度である、大規模災害の被災者に対する資力を問わない無料法律相談「被災者法律相談援助」が創設された。この制度は、平成28年の熊本地震をはじめ、平成30年7月豪雨(西日本豪雨)、令和元年台風第19号、令和2年7月豪雨で適用された。
11) 災害時に利用できる制度の比較

12) 10年間のあゆみ(その後の大規模災害への対応も含む)

(3) 原発事故による避難者に対する高速道路の無料措置
1) 原発事故による警戒区域等からの避難者に対する高速道路の無料措置
原発事故による警戒区域等からの避難者に対する高速道路の無料措置は、被災時に政府が避難を指示又は勧奨した区域等に居住していた避難者を対象に、生活再建に向けた一時帰宅等のための移動を支援する目的で、道路整備特別措置法第24条(昭和31年法律第7号)に基づき、国土交通大臣が料金を徴収しない車両を定めた上で、高速道路料金を財源として実施している。
本措置は平成24年4月1日から開始され、復興に向けた取組が進められる一方、引き続き避難されている方がいる状況等を踏まえ、およそ1年毎に期間を延長しながら実施されている。また、平成30年7月より、避難者の出口料金所の通行を迅速化するため、「ふるさと帰還通行カード」を提示して通行する方法に完全移行した。
しかしながら、一部の利用者において、業務、営業、レジャー目的と思われる利用など制度本来の趣旨・目的に沿わない利用が確認されていることなどから、制度の趣旨に合った適切な利用となるよう、令和4年4月1日から対象車種を中型車以下に限定するとともに、令和5年11月以降に更新する「ふるさと帰還通行カード」については、申請窓口で利用目的の確認等を行うこととしており、本措置の今後の取扱いについて、引き続き検討を行っているところである。

2) 原発事故による母子避難者等に対する高速道路の無料措置
前述した「1) 原発事故による警戒区域等からの避難者に対する高速道路の無料措置」の対象区域外においても、原発事故により避難し、二重生活を強いられている母子避難者が存在することから、家族との再会のための移動を支援する目的で高速道路の無料措置を実施している。原子力事故の発生時に福島県浜通り・中通り(警戒区域等を除く)及び宮城県丸森町に居住しており、当該地域外に避難して二重生活を強いられている母子避難者等が対象者とされ、避難元市町村が交付する証明書によって、避難元及び避難先それぞれの最寄りインターチェンジ間の走行が無料となった。当該証明書は令和2年度までに2,306件交付された。
本措置は平成25年4月26日から開始され、1年毎に期間を延長しながら実施されている。子ども被災者支援法(平成24年法律第48号)第9条に基づく「移動の支援」の施策として実施され、令和2年度までは社会資本整備総合交付金(復興枠)の効果促進事業(ソフト事業)を活用して実施されたが、復興・創生期間後における復興の基本方針において、地震・津波被災地域での同交付金のハード事業が令和2年度末をもって廃止されたことを受けて、令和3年度以降は、被災者支援総合交付金を財源として引き続き実施している。
また、制度の趣旨に合った適切な利用となるよう、年度毎に利用資格を確認の上、無料措置証明書の更新を行っている。

(4) 「復興支援員」制度
1) 概要
東日本大震災では、地震や津波等による甚大な被害により、被災地域の住民が、長期間にわたる仮設住宅での生活を強いられたり、高台への集団移転を余儀なくされたりするなど、被災地域におけるコミュニティの持続可能性について懸念がなされていた。
そのため、震災からの復興に当たっては、地域に根ざしたコミュニティ主体の復興を行うことが重要であり、コミュニティ再構築に向けた人材面での支援が不可欠であった。
また、「東日本大震災からの復興の基本方針」(平成23年7月29日東日本大震災復興対策本部決定)においても、被災地に居住しながら、被災者の見守りやケア、集落での地域おこし活動に幅広く従事する復興支援員の配置等を進めることとされた。
総務省では、被災地方自治体が、被災地域内外の人材を復興支援員として委嘱し、一定期間以上、被災地域に住み込んで住民の見守りやケア、集落での地域おこし活動などの復興に伴う地域協力活動に従事してもらいながら、当該地域のコミュティ再構築を図る取組について、被災地方自治体が必要に応じて取り組むことができるよう特別交付税により支援を行ったほか、先進事例や優良事例の調査、地方自治体への情報提供等を実施した。
復興に伴う地域協力活動の例は、総務省が平成24年1月6日に制定した「復興支援員推進要綱」により、住民の生活支援(生活・居住環境の向上、行政手続等に関する説明等)、住民の見守りやケア(仮設住宅等に居住する住民の巡回、話し相手等、巡回時における住民からの健康・生活支援等に関する一般的な相談対応、適切な相談窓口の案内等、複数の仮設住宅等に分かれて居住する被災コミュニティの連絡調整)、地域おこしの支援(地域行事、伝統芸能等コミュニティの活動再開及び活動の応援等、都市との交流事業実施の応援等、地場産品の販売その他地産地消の推進のための取組の応援等)、農林水産業への従事等と示された。
なお、地震・津波被災地域の「地域おこし活動の支援等」※については、令和7年度で特別交付税措置が終了することとなっている。
※ 復興支援員が従事する活動のうち、「心のケア等の被災者支援」以外のもの。

2) 実績
a. 支援員数
平成23年度8人・1団体、平成24年度78人・7団体、平成25年度181人・13団体、平成26年度452人・21団体、平成27年度492人・25団体、平成28年度444人・27団体、平成29年度364人・27団体、平成30年度355人・25団体、令和元年度291人・26団体、令和2年度262人・24団体
b. 取組状況
支援員数が最も多かった平成27年度の取組状況について、以下のとおりである。

(5) 復興と男女共同参画
1) 復興基本方針及び男女共同参画基本計画における位置付け
- ・ 東日本大震災復興基本法(平成23年法律第76号)において、「国と地方公共団体との適切な役割分担及び相互の連携協力並びに全国各地の地方公共団体の相互の連携協力が確保されるとともに、被災地域の住民の意向が尊重され、あわせて女性、子ども、障害者等を含めた多様な国民の意見が反映されるべきこと。この場合において、被災により本来果たすべき機能を十全に発揮することができない地方公共団体があることへの配慮がされるべきこと。」が、復興の基本理念として明記されており、「東日本大震災からの復興の基本方針」(平成23年7月29日東日本大震災復興対策本部決定、同年8月11日改定)では「男女共同参画の観点から、復興のあらゆる場・組織に、女性の参画を促進する。あわせて、子ども・障害者等あらゆる人々が住みやすい共生社会を実現する。」、「「東日本大震災復興対策本部」及び「現地対策本部」の事務局に、復興過程における男女共同参画を推進する体制を設けるものとする。」とされた。
- ・ 「「復興・創生期間」における東日本大震災からの復興の基本方針」(平成28年3月11日閣議決定)では、「被災者の支援やコミュニティの維持・形成、産業・生業の再生や「新しい東北」の創造等に関し、女性のリーダーとしての活躍やNPO等の多様な担い手の参画がより一層重要となる。復興のあらゆる場・組織への女性の参画拡大を通じて、復興過程における男女共同参画を一層推進するとともに、引き続き、官民連携に努める。」とされた。
- ・ 「「第2期復興・創生期間」以降における東日本大震災からの復興の基本方針」(令和3年3月9日閣議決定)においては、「男女共同参画などの多様な視点を最大限生かしつつ、地方創生の施策をはじめとする政府全体の施策を活用することにより、コミュニティを再生し、持続可能で活力ある地域社会を創り上げていく。」とされた。
- ・ また、第4次男女共同参画基本計画(平成27年12月25日閣議決定)においては、第3次にはなかった「復興」に関する項目が第11分野「男女共同参画の視点に立った防災・復興体制の確立」に新設された。さらに、第5次男女共同参画基本計画(令和2年12月25日閣議決定)においても、第4次計画に引き続き「復興」に関する項目が第8分野「防災・復興、環境問題における男女共同参画の推進」に設けられた。
2) 政府における体制整備
平成23年9月20日に、東日本大震災復興対策本部事務局に男女共同参画班が設置されるとともに、現地にも男女共同参画担当が配置された。復興庁設置の平成24年2月10日、現在の「男女共同参画班」、岩手・宮城・福島の復興局の「男女共同参画担当」となった。

3) 男女共同参画に関する取組
復興の現場において女性、子ども、障害者、高齢者など多様な視点を含む男女共同参画の観点が一層取り入れられるよう、東日本大震災からの復興に係る男女共同参画に関する取組事例を収集・公表するとともに、被災地における男女共同参画の視点の浸透活動等を行っている。
a. 事例集等の作成・公表
被災地における復興の取組に男女共同参画をはじめとした多様な視点を生かすため、女性が活躍している事例や被災地の女性を支援している事例等を収集し、自治体や各地で活躍する方々の参考となるよう、まちづくり、仕事づくり、健康づくり、居場所づくり、人材育成、情報発信、その他の分野に関し、「男女共同参画の視点からの復興~参考事例集~」(令和5年3月末時点で119事例。初版平成24年11月、令和5年3月までで26版)として公表した。
平成25年6月には、被災地において、女性が中心となって起業し、女性に就業の場を提供している4つのプロジェクトの立上げから軌道に乗るまでの経緯や工夫等について、「女性による起業と女性の就業の場の確保に関するケーススタディ」としてまとめ、公表した。
また、令和2年10月以降、参考事例集のほか阪神・淡路大震災、新潟県中越地震、熊本地震などの災害における取組に関する各種資料等から、課題解決に結びつく共通の活動のポイントを、女性、子ども、障害者、高齢者など多様な視点から抽出・分類し、「多様な視点からの復興への活動ポイント集」(令和4年3月末時点で35ポイント)としてまとめ、公表した。
これらも活用しながら、シンポジウムや研修等を通じて、被災地における男女共同参画の視点の普及・浸透を図った。

https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat1/sub-cat1-16/20130626164021.html (令和5年7月25日閲覧)
b. 被災地における男女共同参画の視点の浸透活動
平成23年度以降、政府や被災地自治体が主催する会議や復興シンポジウム等を後援する等し、復興における男女共同参画の視点の重要性について随時情報発信を行った。
また、シンポジウム、パネルディスカッション、ワークショップ等のイベントの開催、研修会等での講演や他団体等主催のイベント等への講師派遣、ポスター・パネル展示を数多く行ってきた。
【イベント開催等の例】
- ・ 平成24年7月13日 被災地における女性の起業支援セミナーin仙台「あなたの“気づき”を仕事にするチャンス!~復興・まちづくりに向けて~」(主催:内閣府・復興庁・公益財団法人せんだい男女共同参画財団)
- ・ 平成26年12月13日 パネルディスカッション「女性の活躍が復興を加速する!」(主催:復興庁・福島県男女共生センター)
- ・ 平成27年3月18日 アジア太平洋経済協力・国連防災世界会議パブリックフォーラム「災害復興時の女性の活躍~地域経済再生の視点から~」(主催:外務省・内閣府・復興庁)
- ・ 平成27年9月5日 ワークショップ「明日からできる!男女共同参画の視点からの復興支援」(主催:復興庁)
- ・ 平成29年1月21日 シンポジウム「熊本地震からの復興を考える~これからのコミュニティ再生を中心に~」(主催:復興庁・内閣府)
- ・ いわて男女共同参画フェスティバルにおける講演
- ・ 平成28年度~令和4年度 いわて男女共同参画サポーター養成講座における企画
- ・ 令和元年度「新しい東北」交流会における「男女共同参画の視点を生かして、東北の未来を考える」及び令和2年度同交流会における「アンコンシャス・バイアスを知る」
【講師派遣、ポスター・パネル展示等の例】

https://www.reconstruction.go.jp/topics/main-cat10/sub-cat10-2/20140523_danjokatsudo.pdf (令和5年7月25日閲覧)

c. 自治体への働きかけ等
平成23年12月15日、地方公共団体の復興に向けた取組における女性、子ども・若者、高齢者、障害者等の多様な視点の反映について、内閣府・東日本大震災復興対策本部の連名で、被災3県に対し働きかけるとともに、市区町村への周知も要請した。
また、平成24年6月19日、被災地自治体における復興計画の策定における男女共同参画の状況について取りまとめ、結果を公表した。さらに、内閣府「東日本大震災からの復興に関する男女共同参画の取組状況調査」(平成25年5月)に協力した。
平成25年5月には、内閣府男女共同参画局は、地方公共団体が平常時から防災・復興体制に取り組む際の指針となる「男女共同参画の視点からの防災・復興の取組指針」を作成・公表した。
d. 復興と男女共同参画等に関する調査
平成28年度及び令和2年度、復興庁において、被災3県の自治体を対象に、復興計画の策定に当たって設置された委員会等における女性割合や復興計画に男女共同参画の視点を取り入れている例を調査し、結果を公表した。
令和2年度は、岩手県、宮城県、福島県及び同3県内全127市町村のうち、92自治体(70.8%)から回答を得た。
復興計画を策定している25自治体のうち、復興計画において男女共同参画の視点に配慮した記載があると回答したのは7自治体(28.0%)、復興計画の策定・推進において男女共同参画部署との連携があると回答したのは17自治体(68.0%)であった。復興計画の策定・推進委員会の委員数は798人であり、そのうち女性は132人(16.5%)であった。復興計画の策定等にあたって、多様な視点を反映した取組の例としては、女性団体や高校生との意見交換会の実施や、大学・町内NPOとの連携が報告された。
また、男女共同参画計画を策定している(又は策定予定の)78自治体のうち、復興に関する記載があると回答した自治体は33自治体(42.3%)であった。具体的には、「東日本大震災の経験を踏まえて防災における意思決定過程の場への女性の参画も含めて、自主防災組織等の地域活動への女性の参画を促進する。」、「復興と地方創生の過程で多様な意見を反映した取組を進めるとともに、その担い手として女性が活躍でき、地域活動等に男女がバランス良く参画できる環境づくりを目指す。」、「地域住民自治への総参画」といった記載があった。
さらに、男女共同参画の視点を取り入れた取組として、以下の事例が報告された。
- ・ 自治会・消防団・PTA等から選出された住民代表が取りまとめて、市に提言した地区計画案や住民全員を対象とする意見交換会等の結果を踏まえて復興まちづくり計画を策定。
- ・ 男女共同参画計画の策定時から大学・企業・NPOが審議会に参加し、事業評価・検証を実施。
- ・ 学識経験者、弁護士、建築士、社会福祉協議会職員、民生委員など、女性を含む多様な方に災害公営住宅整備検討委員会の委員を委嘱。
- ・ 防災会議における女性委員を増やすべく、男女センターが大学と連携して研修会を開催。