株式会社マルセイ

株式会社マルセイ

【福島県福島市】

時代への適応力と安心感がカギ!
福島から生産者の熱意と安全な青果物を届ける

企業情報

  • 企業名 株式会社マルセイ
  • ヨミガナ カブシキガイシャマルセイ
  • 業種 飲食料品卸売業
  • 代表者 赤井清晴氏[代表取締役社長]
  • 所在地 福島県福島市北矢野目字樋越1
  • TEL 024-553-3171
  • WEB http://www.marusei-f.co.jp
    https://www.big-advance.site/s/191/1236
  • 創業年 1965年
  • 資本金 5,000万円
  • 従業員数 40人
  • 売上高 60億円

企業概要

「常に環境変化に対応し、地域社会への貢献を目指す」を経営理念に、青果物およびその加工品の卸売業を営む。1972年から福島市公設地方卸売市場に青果仲卸として入場。メイン業務として福島県内の野菜や果物を福島市をはじめ全国のスーパーや小売店へと届けている。また、公益社団法人福島相双復興推進機構と連携し福島県葛尾村の農産物を県北地区のスーパーに卸すなど、農産物等を通じて葛尾村および福島の復興に尽力している。

取扱商品の総数は1,000アイテム超。各種要望に応える国内外ネットワーク

福島県福島市にある福島市公設地方卸売市場では、東京ドームおよそ2.5個分の広い敷地に、全国各地、さらには海外から青果、水産、花卉(かき)が集まり、ここで取引された商品は主に福島市内および周辺地域のスーパーや小売店に並び、地元住民の日々の暮らしを支えている。

株式会社マルセイは1972年の市場開設から青果仲卸として入場。福島県内の野菜や果物を中心に取り扱い、スーパーや小売店を通じて福島県内のみならず全国の消費者の元に届けている。この老舗を取り仕切るのが代表取締役社長の赤井清晴氏。毎日入荷してくる商品を入念にチェックしながら、生産者の愛情がこもった青果物を卸すのが信条だ。

代表取締役社長の赤井清晴氏 代表取締役社長の赤井清晴氏

「当社は1965年の創業から県内外の青果物を取り扱っています。例えば、当地特産の桃は20種類以上の品種がありますし、当社取扱商品の総数は細かく分類すれば1,000アイテムを超えると思います。福島はおいしい野菜や果物の宝庫で、四季折々、さまざまな商品が出回ります」。

一方、取引先から要望があれば、季節外れの野菜や果物を全国各地、品物によっては海外から仕入れることも。「例えば焼き肉屋さんのメニューにある冷麺に添える梨ですが、冬場には無いので産地で貯蔵していただき12月~5月下旬まで出荷できる体制を整えてもらったり、ケーキに欠かせないイチゴは夏場には無いので、やはり海外や、北海道から仕入れたりしています。季節によって仕入れる産地を変えながら、お客さまのご要望にお応えできるよう努力しています」。

フルーツ
フルーツ
フルーツ
フルーツ

スーパーや小売店の陳列棚には年中、青々としたキュウリや真っ赤なトマト、緑の葉物野菜等が並ぶ。消費者が季節を問わずさまざまな野菜や果物を購入できるのは、マルセイのように全国各地、世界中から品物を仕入れてくる業者があってこそ。

「野菜や果物にはそれぞれ旬がありますが、地域によって収穫の時期は違います。トウモロコシは福島では8月くらいが収穫の時期ですが、宮崎県では6月ごろ。この間2カ月も違う。私たちは消費者に旬の物や新鮮な物を届けるために、全国各地の同業者と品物のやりとりをしているわけです」。

業務中のお写真
業務中のお写真
業務中のお写真

青果がつないだ支援の輪。信頼の積み重ねでおいしさと安全をPR

東日本大震災から10年以上経過したものの、福島県の農産物、水産加工物、酪農すべてにおいて「風評被害」が払拭されたとはいえない。マルセイも、この問題にいまだ悩まされている。

「福島第一原子力発電所の事故で、当時福島県産品の流通がぴたっと止まってしまいました。生産者や物流業者、私たち卸売業者にとっては死活問題。当社では直後から放射性物質の数値を測る機械を導入して、仕入れた青果を独自に測定していました。どれほどの品数を計測したか数え切れません。とにかく、安全な物だと証明することに必死でした」。

マルセイでは安全性を数値化し、商品に証明書を添付するなど、あらゆる手段で風評払拭に取り組んだが、なかなか拭い去ることができなかった。しかし、地道な取り組みが奏功し、現在ではだいぶ薄れてきていると、赤井氏は感じている。

「取引相手は、検査された物だから安全だということは分かってくれていたと思います。でも消費者のことを考えると…という気持ちが伝わってきました。逆の立場だったら私たちも同じように考えたと思います。当社としては一つ一つ検査して安全を証明していくことを継続するしかありませんでした」。

すると、取引のある静岡県のスーパーが6年ほど前から福島県産農産物の販売イベントを開催してくれるようになった。「当社から安全の基準をクリアした農産物はもちろん、特産の桃をいっぱい持っていって、実食してもらいながらおいしさと安全性をお客さまにPRしました」。

このイベントにはJAふくしま未来と福島の果物をPRするミスピーチキャンペーンクルーも参加し、回を重ねている。

当初は福島県産というだけで見向きもされなかったが、証明書で安全性を訴えることで、まばらだった客足も回を重ねるごとに増えていった。中には「昔、福島に住んでいたことがあって、そのときの桃の味が忘れられない」と、懐かしむように箱ごと買っていく人も。

一つ一つ検査し安全性を訴えたこと、さらに他県の取引先の理解と協力があって、福島の農産物は息を吹き返した。

「福島は一度、見放されたといっても過言ではありません。だから消費者とじかに触れ合える機会は本当にありがたかったです。青果がつなぐご縁、福島の青果は安全・安心なものだと理解して仕入れてくださる全国の同業者や、取引先の皆さんとのつながりで助けられていることを強く実感します。これからも完全払拭に向けて、福島県産の青果は安全なんだよとPRしていきます」。

日々変化する市場と消費者のニーズをいち早くつかみ、活路を見いだす

近年は青果店やスーパーだけでなく、コンビニやドラッグストア、ホームセンターでも野菜や果物を購入できるようになった。消費者のニーズに敏感に反応しているともいえる。

「長いこと青果物を取り扱っていますが、近年の変化のスピードには驚かされます。直近ではパチンコ店さんで高級メロンや産直野菜を販売するようになったりしていますし」。このような状況下でも、赤井氏は時代の流れを柔軟に受け入れ、変化を見据えながら、お互いがいい関係を築くための策も考えているという。

「あるホームセンターさんから、『地元の青果を販売するためにどんな売り場にすればいいか協力してほしい』と依頼があって、一緒に売り場作りを行ったこともありました。思いがけない相談でしたが『できません』と断るのではなく、こういうことも大切だなと感じました」。

少子高齢化や核家族化が進み、青果物を購入する消費者のニーズも変化した。

「昔は大家族が中心でしたが、今は2人暮らしや高齢者の1人暮らしも増えています。そういった人たち向けに白菜1玉、キャベツ1玉を半分や4分の1に切って売るのが当たり前の時代」。

また、生産者との関係について、「青果を取り扱えるのは農家さんが愛情込めて栽培してくれるおかげです。傷物や形が少しいびつな物など、規格外の物も仕入れて販売しています。少しくらい見てくれが悪くても味は変わりないし、農家さんの収入にもつながります」とも。

こうした取り組みは、青果を扱う者として生産者をリスペクトする姿勢の表れといってもいい。

業務以外でも、交通安全や寄付などで地域貢献。事務所内には福島県などから贈られた表彰状や感謝状が隙間無く飾られている 業務以外でも、交通安全や寄付などで地域貢献。事務所内には福島県などから贈られた表彰状や感謝状が隙間無く飾られている

再スタートを切る村で生産者を支援し、農業の復興を後押し

2021年10月からは公益社団法人福島相双復興推進機構の相談に応える形で、葛尾村の農産物を県北地区のスーパーに卸し始めた。

葛尾村は福島第一原子力発電所の事故により全村避難を余儀なくされた。2016年6月に村内の帰還困難区域以外の避難指示は解除され、徐々に住民は帰村しているものの、まだまだ日常を取り戻すまでには至っていない。そのような状況にあっても、農産物の生産に汗する農家がいる。

「葛尾村の農産物を県北地区のスーパーに卸すきっかけとなったのが、元々取引のあった凍みもちの生産者から『せっかく作ったのに出しどころがない。どこかに卸せないものか』という相談からでした。加工品や野菜をがんばって生産しても出荷先が無いという課題の解決に向け、当社も協力させていただきました。週に1度、金曜日に『葛尾村復興交流館あぜりあ』に集められた農産物を集荷して、販売店に配送します」。

この取り組みは販路開拓はもちろん、被災した生産者や新規就農者のサポートにもつながる。赤井氏もこれからの動きに期待を寄せる。

「まだ少ないとはいえ生産者がいて、今後は外部からの新規就農者も見込まれます。数が増えることで、より多くの農産物を生産することも可能となります。例えば葛尾村で生産された農産物を県内外に出荷できれば、葛尾村の復興につながっていくと確信しています」。

今後は農産物の仕入れだけでなく、新たな農産物の提案など、生産者の手助けをしていく予定だ。

生産者、取引先、消費者のハブを目指すマルセイ。福島の青果物のおいしさと安全性のPRなど、果たすべき役割は多いが、風評に立ち向かう姿勢を貫き通す。

課題

・福島第一原子力発電所の事故による風評被害の払拭のため、安心・安全性をPRする必要があった。

・消費者の少子高齢化や核家族化など時代の潮流に合わせ販売方法の変化が求められた。

・避難指示が解除された葛尾村で収穫された農作物を市場に流通させたい。

解決策

・自社に放射能測定器を導入し一品目ずつ測定。その結果を証明書として品物に添付し出荷。

・一つの品物を2等分・4等分するなど、少子高齢化の家族構成に合わせて調整し販売。

・マルセイの取引先網を活用して葛尾村の農作物を週に1度集荷し、福島県北地区のスーパーで販売。

効果

・安全性を数値化したことにより、取引先の信頼と売り上げが回復。

・ロスの削減につながり、廃棄物が減少した。

・葛尾村の農業復興の足掛かりとなり、生産者の収入にもつながった。

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