復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

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学校の復旧

応急期復旧期

課題
① 被災した教育施設・機能をどのように早期復旧させるか
② 学校再開に向けて教職員をどのように確保するか

東日本大震災における状況と課題

 東日本大震災における学校関係の被害状況は、人的被害(幼児・児童・生徒・学生・教職員など)は死者659名、行方不明者79名、負傷者262名となっており、学校施設や社会教育施設、文化財などの物的被害は全国で1万2,000件以上発生した(2012年9月14日現在)(1)
 発災直後から応急期においては、ライフラインの復旧、学級数に応じた教室の確保、通学手段及びその安全の確保、給食や子どもたちの学用品の確保等、教育施設・機能を早期に復旧させ、できる限り速やかに教育活動を再開させることが大きな課題となった。
 また、被災した児童生徒に対するきめ細かな学習支援や心のケアなどの配慮が必要となり、公立学校における教職員の確保が課題となった。

東日本大震災における取組

他校の活用・仮設校舎による早期再開(課題①)

 福島県では、一定の希望があれば、その地区に他校や公共施設を間借りして高等学校の授業を行う「サテライト校」を開設する対応をとった。生徒の分散、実験・実習等の授業の制約、サテライト校を日替わりで往来する教職員の負担等の課題はあったが、災害時に同一県内で広域避難を余儀なくされた際の高校教育の継続の一方式となった(2)
 岩手県では、校舎等が使えなくなった学校の多くが、他校・他施設の間借りや廃校施設の利用等により学習の場を確保したが、間借り等が長期にわたると児童生徒の心身への影響等様々な支障が顕在化し、「仮設校舎」等を整備することに方針転換する事例もあった(3)。これに対し、大槌町では県内でいち早く仮設校舎が建設され、2011年9月末に大槌中学校は間借りしていた中学校から移転し、校舎の共用が終了した(4)。一方、陸前高田市の高田高等学校は、大船渡市の校舎を仮校舎とし、新校舎が完成した2015年3月まで陸前高田市から仮校舎に通学するためのバスを運行した(3)

震災・学校支援チームの派遣による学校再開支援(課題①)

 宮城県には、阪神・淡路大震災を契機として兵庫県教育委員会が設立した教職員の組織である震災・学校支援チーム(EARTH)が、構成員を派遣し、子どもたちの安否確認などの学校再開に向けた取組のほか、避難所運営、児童生徒の心のケアについての助言、教職員を対象とした心のケア研修の実施等、様々な支援を行った(事例15-1)。これを機に、宮城県教育委員会でも、2019年12月に、震災当時学校再開支援業務に携わった教職員が大規模災害に遭った学校をサポートする「災害時学校支援チームみやぎ」を発足させ、震災の経験・教訓を子どもや他の教職員などに伝えることが期待されている(5)
 文部科学省では、2011年4月に、被災児童生徒等のニーズと提供可能な支援を相互に一覧できるポータルサイト「東日本大震災 子どもの学び支援ポータルサイト」を開設し、教職員・専門スタッフ等の人的支援や備品・学用品等の物的支援等の情報を掲載し、被災地からの支援要請と全国からの支援提供をマッチングするシステムとして活用された(6)

公立学校での教職員体制の整備(課題②)

 東日本大震災により被害を受けた学校及び震災後に被災した児童生徒を受け入れた学校に対して、被災児童生徒に対する学習支援や心のケアのための特別な指導を行うため、教職員の定数に関する特別な加配措置を行っており、文部科学省は、2011年度以降、毎年度、被災地からの要望に応じ、必要な加配措置を実施してきた(1)

教訓・ノウハウ
① 他の学校・施設の活用や仮設校舎の整備により学校機能の早期復旧を行う

サテライト校の開設により広域避難を余儀なくされた生徒の学習機会の確保・継続を図る。

他校・他施設の間借りや仮設校舎の整備、通学バスの運行などにより、学校の早期再開を進める。

② 学校復旧支援チームを受け入れ、学校の再開を進める

学校再開等の専門知識をもった教員支援チームからの支援を学校再開に生かす。

③ 被災児童生徒のために必要な教職員を確保する

被災した児童生徒等の学習支援や心のケア等のため、教育委員会は現場の要望に応じて必要な教職員確保に努める。

<出典>
(1) 文部科学省「令和元年度 文部科学白書」第2部 第2章 東日本大震災からの復興・創生の進展
https://www.mext.go.jp/b_menu/hakusho/html/hpab202001/1420041.htm

(2) 公益財団法人ひょうご震災記念21世紀研究機構「事例に学ぶ生活復興(復興庁2017年度委託事業)」2018年,p57
https://www.reconstruction.go.jp/topics/m18/04/20180410_seikatsufukko.pdf

(3) 岩手県「東日本大震災津波からの復興-岩手からの提言-」2020年3月,p92-95
https://www.pref.iwate.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/027/741/fukkou_teigen_i_all.pdf

(4) 岩手県教育委員会「岩手県教育委員会東日本大震災津波記録誌」p138-139
https://www.pref.iwate.jp/kyouikubunka/kyouiku/ippan/koho/1006268.html

(5) 宮城県教育委員会「災害時学校支援チームみやぎ養成研修会の開催について」
(6) 文部科学省「東日本大震災 子どもの学び支援ポータルサイト」
https://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/giji/__icsFiles/afieldfile/2011/04/28/1305429_3.pdf

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