復興の教訓・ノウハウ集

復興の教訓・ノウハウ集

災害からの復旧・復興過程で生じる課題に対し、東日本大震災における状況とこれに応じた官民の取組事例、専門的知見も踏まえた教訓・ノウハウを記載しています。(令和3年3月公表)

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学校の復旧

事例名 兵庫県による震災・学校支援チーム(EARTH)を活用した被災校支援
場所 宮城県
取組時期 応急期復旧期復興前期復興後期
取組主体 兵庫県教育委員会、宮城県教育委員会 ほか

取組概要

 兵庫県教育委員会が組織する震災・学校支援チーム(EARTH)は、阪神・淡路大震災を契機として2000年4月に発足し、被災地の学校教育再開を支援するため、専門知識と実践的対応能力を備えた教職員で構成するチームである。東日本大震災では、2011年3月から2015年8月にかけて8次にわたりEARTH員を中心として延べ197人が宮城県教育庁、県内の市町村に派遣された。

具体的内容

震災・学校支援チーム(EARTH)の発足

 阪神・淡路大震災の避難所で活躍した教職員は、避難所運営や学校再開等に様々なノウハウを持っていたため、このような熟達した教職員による災害時の学校支援組織の設置が提案された。1999年のトルコや台湾での大地震への教職員の派遣により機運が高まり、阪神・淡路大震災5年に当たって、震災時に受けた全国からの支援に報い、国内外で発生した大地震に対応するため、防災教育推進指導員(防災に関する講座を受講し、指導員としての資格を得た教職員)や震災時に被災地の学校で避難所運営に携わった教職員等が中心となって学校再開を支援する教職員組織として、兵庫県教育委員会は「震災・学校支援チーム(EARTH)」を2000年4月に発足させた。
 チームは、アドバイザー役としてのカウンセラーも加わり95人でスタートし、避難所運営班、心のケア班、学校教育班、学校給食班の4班を編制した。2006年には研究・企画班を設置し、5班編制となっている。(2020年度243人)

東日本大震災へのチーム派遣、被災直後の学校への支援

 東日本大震災では、兵庫県教育委員会は2011年3月から2015年8月にかけて8次にわたりEARTH員を中心として延べ197人を宮城県教育庁、県内の市町村に派遣した。
 被災直後の学校では、子どもたちの安否確認などの学校再開に向けた取組の他に、避難所運営、児童生徒の心のケアについての助言、教職員を対象とした心のケア研修の実施、教職員研修での防災教育等についての意見交換等様々な支援を行った。

東日本大震災へのチーム派遣、被災直後の学校への支援
東日本大震災へのチーム派遣、被災直後の学校への支援

※東日本大震災における派遣状況
 兵庫県教育委員会資料(https://www.hyogo-c.ed.jp/~kikaku-bo/EARTHHP/company.html

震災・学校支援チーム(EARTH)の活動の定着

 EARTHは、災害時には国内外の被災地で避難所運営や心のケアなど学校の復興支援活動に当たり、これまで東日本大震災をはじめ、平成28年熊本地震、大阪北部地震、平成30年7月豪雨、北海道胆振東部地震等の被災地支援を実施した。平常時には県内外の防災教育の研修会に講師として派遣されたり、総合防災訓練や研修会への参加で学校と地域、関係機関との連携を図るなど、学校の防災教育・防災体制の中核を担っている。
 また、EARTH員のスキルアップを図り、組織としての機動性の維持・向上を図るため、年に2回の訓練・研修会を実施するとともに、災害時の県内での応援体制を整備している。
 兵庫県の取組を受けて、大規模災害発生時における学校の再開を支援する目的で、学校の早期復旧や児童生徒の心のケア等、災害時の学校運営に関する専門的な知識や実践的な対応能力を備えた教職員による学校支援チームが2018年度に熊本県(熊本県学校支援チーム)、2019年度に宮城県(災害時学校支援チームみやぎ)、2020年度に三重県(三重県災害時学校支援チーム)で立ち上がっている。熊本県学校支援チームは、熊本地震の際に支援に駆けつけたEARTHの活動をモデルに、全国2番目のチームとして発足した。大阪北部地震、平成30年度7月豪雨、北海道胆振東部地震、令和元年8月豪雨では、被災した市町村支援に入った。令和2年7月豪雨では、発災当初の7月から8月末にかけて計4回、八代市や球磨村等の9市町村に49人を派遣し地元の支援にあたった。東日本大震災で被災した宮城県では、震災時に学校再開支援業務に携わった経験のある教職員を中心に大規模災害に遭った学校をサポートする「災害時学校支援チームみやぎ」を発足させ、震災の経験・教訓を子どもや他の教職員などに伝えることが期待されている。東日本大震災で被災した宮城県では、被災経験を伝えるとともに、今後起き得る災害で被災地を手助けするために、教職員28人のチームが始動している。三重県教育委員会でも、南海トラフ地震などの大規模災害に備え三重県災害時学校支援チームが設置され、災害時に学校の再開を支援する教職員組織が広がっている。
 また、兵庫県教育委員会は熊本県及び三重県における支援チーム隊員養成研修に、EARTH員を講師として派遣している。2019年8月にはEARTH員20人を宮城県に派遣し、災害時学校支援チームみやぎ養成研修において受講者と情報交換を行うなど、各支援チームとの連携・協力を図っている。

<出典>(他の事例集等への掲載)
・兵庫県「伝える(改訂版)」(2016年)第2章 第3節 55 震災・学校支援チーム(EARTH)p128
・兵庫県教育委員会「震災・学校支援チームEARTHハンドブック(平成28年度改訂版)」(2017年)
http://www.hyogo-c.ed.jp/~kikaku-bo/EARTHhandbook/28052syou.pdf

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