33)
災害廃棄物の処理
応急期復旧期復興前期
② 災害廃棄物の広域的な処理や再生利用をどのように進めるのか
東日本大震災における状況と課題
東日本大震災では津波による土砂等の津波堆積物が約1千百万トンのほか、家屋、家財など災害廃棄物は約2千万トンと膨大な量の廃棄物が発生した(1)。岩手県では1年に排出される一般廃棄物の9年分、宮城県では14年分に及ぶ(2)。大量の災害廃棄物は道路や私有地にもあふれ、救助活動や復旧・復興に向けて、速やかな撤去や仮置場の確保が課題となった。また、災害廃棄物をいかに短期間で処理するか、仮設処理施設の整備や他の地方公共団体との協力による広域的な連携、廃棄物の再生利用など効率的な災害廃棄物処理が課題となった。
東日本大震災における取組
環境省「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針(マスタープラン)」の策定(課題①②)
環境省は災害廃棄物の早期の処理を行うため、震災直後に損壊家屋等の撤去指針を示し、5月には「災害廃棄物の処理指針(マスタープラン)」を策定し、2014年3月までに処理を終える目標を示し、災害廃棄物の処理方法、国・県・市町村の役割分担、地方公共団体への財政措置、広域処理の必要性を示した。被災地方公共団体はこの指針に基づき、災害廃棄物処理実行計画を策定した(3)。
一次・二次仮置場の確保・設置(課題①)
災害廃棄物は現場で可能な限り粗分別したうえで、一次仮置場へ搬入された。被災3県の沿岸市町村に300を超える仮置場が設置された。これと並行して県を中心に災害廃棄物の破砕・選別、焼却の中間処理計画が具体化し、仮設焼却炉等の設置と災害廃棄物の集積場所である二次仮置場の確保が進められた(4)。こうした仮置場の確保については仮設住宅等の建設用地との調整や民有地の交渉が必要となるなど難航した(4)(5)。また、仮設処理施設の整備については、用地の確保に加えて発注手続き、要員の確保が必要であるため、最短で稼働させた仙台市で10月頃、宮城県の場合では2012年4月から順次稼働し、2013年2月に全施設が稼働した(4)。
地方公共団体の協力による広域処理(課題②)
被災した地方公共団体では処理施設が不足したため、阪神・淡路大震災と同様、廃棄物処理に余力のある地方公共団体と協力して広域処理が行われた。2011年8月に環境省が広域処理のガイドラインを策定すると、山形県がいち早く広域処理を進め、そこから数十か所の地方公共団体に広域処理の動きが広まった。福島第一原子力発電所の事故に伴う放射性物質による汚染チェックで安全性が確認されたもののみが対象とされた。全体での広域処理割合は2割で、先述の火災が問題となった可燃物の処理や、不燃物・漁具・漁網の埋立てに大きく貢献した(2)(6)。
公共事業での再生利用(課題①②)
環境省は発災直後の3月18日に、国土交通省・農林水産省と連絡会を立ち上げ、復旧工事等で必要となる資材のリストの作成協力を要請し、廃棄物処理担当部局に提供するマッチングを行った。2014年3月末で1339万トンの災害廃棄物が公園整備、堤防復旧、海岸防災林などの事業に活用された。また、コンクリートくずや津波堆積物は港湾復旧事業の埋立等に活用された。全体として災害廃棄物で81%、津波堆積物で99%が再生利用された(7)。
災害廃棄物等の再資源化(課題①②)
災害廃棄物の再生利用には民間のセメント工場が貢献した。太平洋セメント株式会社の大船渡工場では、津波堆積物がセメントの原材料である石灰石、鉄と組成が似通っており、廃棄物の可燃物は燃料として使用できるため、災害廃棄物からセメントの資源化処理を行った。このため、新たに海水の塩分を除去する設備投資を行い品質を確保した。同工場は関東圏からの廃棄物受入処理や、熊本地震での廃棄物の受入れ、処理も行った(事例33-1)。
また、株式会社相双スマートエコカンパニーは特定復興再生拠点区域において排出される不燃性廃棄物の再資源化を行っている(8)。
災害廃棄物を撤去・処理するための仮置場の用地確保を準備しておく。
災害廃棄物の処理の進め方を関係行政機関や企業等と協議しておく。
広域的な災害廃棄物の処理体制を構築するために、地方環境事務所が中心となって設置する地域ブロック協議会で、関係者間の具体的な行動計画を策定しておく。
平時から地域ブロック単位で共同訓練を実施し、災害時に適切に対応できるようにしておく。
なお、環境省では災害廃棄物処理に係る専門家等からなる「災害廃棄物処理支援ネットワーク(D.Waste-Net)」を運用して、災害廃棄物に関するそれぞれの災害での対応を記録・検証し、知見を伝承するとともに、災害時に迅速に支援をできるよう、関係者間での情報交換をするなど、事業者・専門家・研究機関等との連携を図っている(9)。
(1) 環境省災害廃棄物対策情報サイト「東日本大震災による被害の状況」
http://kouikishori.env.go.jp/archive/h23_shinsai/damage_situation/
(2) 環境省災害廃棄物対策情報サイト「災害廃棄物の広域処理について」
http://kouikishori.env.go.jp/archive/h23_shinsai/implementation/wide_area_processing/
(3) 環境省災害廃棄物対策情報サイト「処理の基本方針」
http://kouikishori.env.go.jp/archive/h23_shinsai/after_initiatives/basic_policy/
(4) 環境省災害廃棄物対策情報サイト「災害廃棄物処理の内容」
http://kouikishori.env.go.jp/archive/h23_shinsai/implementation/contents/
(5) 環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部 巨大災害発生時における災害廃棄物対策検討委員会アーカイブ検討ワーキンググループ「東日本大震災における災害廃棄物処理概要報告書」2016年3月 p3-12
http://kouikishori.env.go.jp/document_video/pdf/wg_report_01.pdf
(6) 環境省「災害廃棄物の広域処理の推進について(東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドライン)」(2011年8月策定,2012年1月一部改定)
http://kouikishori.env.go.jp/archive/h23_shinsai/implementation/recycling/
(7) 環境省災害廃棄物対策情報サイト「災害廃棄物処理の再生利用について」
http://kouikishori.env.go.jp/archive/h23_shinsai/implementation/recycling/
(8) DOWAエコシステム株式会社「相双スマートエコカンパニーが不燃性廃棄物の再資源化施設の建設に着手します」2018年11月13日
https://www.dowa-eco.co.jp/release/20181113_1484.html
(9) 環境省災害廃棄物対策情報サイト「D.Waste-Net」
http://kouikishori.env.go.jp/action/d_waste_net/