岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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[SDGs]2030年に向けてなニーズにも対応できる同社への需要は高まるばかりだ。2016年には、前回取材時に課題としていた自社ブランドをスタート。アウトドア用の機能的なバッグを作る「CWF(シーダブリューエフ)」ブランドを立ち上げた。「厚い生地を縫える設備に着目したデザイナーの提案で、丈夫な生地に堅牢な縫製を施して、長く愛用できるような製品作りをコンセプトにしています」と半谷氏。2018年2月に販売を開始するとバイヤーから発注が相次ぐなど、取扱店が増加。手応えを感じている。他にも、山岳ガイドの協力を得て、冬山や沢登りなどさまざまな条件でテストを繰り返したという、プロ仕様の登山バッグ「kitakama」や、24歳の女性社員が企画を担当し、若い世代に向けて色や素材にこだわった「macole」など、新たな挑戦を進めている。自社ブランドを次々と立ち上げたキャニオンワークス。半谷氏は挑戦の意義を次のように語る。「自社製品の高付加価値化はもちろんですが、それだけではありません。OEM生産では伝えきれない技術の継承にも役立っているんです。今まで手掛けたことのないデザインを型紙に起こすためには試行錯誤が必要で、技術力の向上につながります。また若い社員のモチベーションも上がり、縫製業界全体のテーマである技術継承を進められると考えています」。認知度アップも狙いの一つだ。いわき市に生産拠点を移してから数年ということもあり、会社見学に来た高校生に「いわきにこんなバッグを作っている会社があったんだ」と驚かれることもあるという。「自社ブランドによって発信力を強化していき、後継者の獲得につなげていきたいですね」と半谷氏。スタートしたばかりのため、自社ブランドの売り上げは1割程度にとどまるが、「ブランドの立ち上げは実現したので、次はこの事業を売り上げの4割まで育てていきたい」と半谷氏は目標を語る。2018年4月には創業の地、浪江町の本社機能を再開した。「将来的には浪江に自社ブランドの販売店を作り、地域雇用を生み出したい」と半谷氏。現在も「帰還困難地域」が町内の大半を占める浪江町で、復興への貢献を目指している。オリジナルバッグを販売反響に手応え技術の継承と認知度アップ自社ブランド挑戦の意義18有限会社キャニオンワークス若い女性が活躍 さまざまな自社ブランドを展開2030年復興への歩み[売上高(万円)]2012年●3月 福島第一原子力発電所の 事故により浪江町外へ避難●7月 群馬県の仮工場で操業再開2011年10,2282013年12,854●4月 いわき市にいわき工場新設2014年72,107●自社ブランド「CWF」スタート2016年●2月 CWF販売開始●4月 浪江町の本社を再開2018年61,479●5月 東京オフィス開設2017年40,00060,00080,000020,000自社ブランドを構築し企画を若手、女性社員に任せることで、技術継承に力を入れていく。また発信力を強化することで、後継者の獲得と地域雇用の創出による復興貢献を目標とする。女性の活躍できる職場づくり地域での雇用創出を目指す31,5942015年前回の取材【目指していくゴール】被災地での再生・被災地への進出海外進出・観光誘致地域振興・スポーツ振興社員の働きがい新分野進出※1月~12月まで※2012年以前は紛失91

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