岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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[SDGs]2030年に向けて全国各地にメガソーラーが建設される中、大きな注目を集めた。ところが、その後の太陽光発電を取り巻く急激な環境の変化によりビジネスとしての魅力を失い、現在は生産を停止している。しかし、「製品開発➡技術力の向上・人脈の広がり➡次なる製品開発・新たなビジネスチャンスの獲得」という事業発展のサイクルがしっかりと根付き、アサヒ電子は、新製品の開発、新領域への進出を果たしていった(右図参照)。こうした事業拡大を支えたのは技術力だけではない。製品開発中心の経営に転換したことで士気が上がっただけでなく、社員がより深くものを考えるようになり、仕事の質が向上したという。「『諦めないで一歩一歩進んでいこう』という企業文化が、当社の最大の強みです。技術も市場環境も変化し続ける中、立ち止まることなく半歩でも前進しようとする社員たちがいてくれたからこそ、会社も人も成長し続けることができたのです」。そして、現在、最も力を入れているのが、ロボットだという。福島県の助成金を受け、WEBカメラに映った顔から心拍数や脈拍などのバイタルデータを測定し健康状態を把握するロボットを、数社と連携し、開発している。以前、非接触型睡眠モニタリングシステムを開発した際に培った人脈や技術的蓄積を生かし、また新たな領域に挑戦しているのだ。さらに、現在は生産を休止しているドローン用フライトコントローラーについても、「海外製がほぼ独占している状況を変える」という目標は諦めておらず、次の大きな仕掛けを準備中だという。 看板の技術力・開発力、高い意識を持った社員の力、他の機関・企業との多様な連携という3つの要素が、アサヒ電子を、自社開発中心の成長軌道に乗せつつある。その中で大きな課題となっているのが、売る力をいかに向上させていくかだ。そのために、クラウドファンディングを活用したマーケティングや、製品ごとに販売面でアライアンスを組めるパートナーを探すなど、中小企業ならではの手法を模索している。目指すは、「誇り高き真のプロフェッショナルとして輝き続ける地元、福島のリーディングカンパニー」(菅野氏)だ。その目標に向け、アサヒ電子は、歩みを進めている。開発中心の経営への転換が社員の意識を大きく変えた16アサヒ電子株式会社2030年復興への歩み●純国産ドローン用フライトコントローラー 「Ridge Hawk」製品化●非拘束型睡眠モニタリングシステム 「すいみんDr.」発表●総務省「IoTサービス創出支援事業」で、 睡眠時の心拍数・呼吸数・体動などを 可視化して健康管理を支援する 「睡眠モニタリングシステム」の提供で参画2016年最も効率化が図れる工程でAIやロボットを活用し、中小企業の設備規模においてもそのメリットを最大限に生かす。同時に「人の手」による技術継承と新技術の積極的な採用を続ける。AI・ロボット技術の活用で生産性と働きやすさを向上●ドローン用国産フライトコントローラーの 開発に着手2015年前回の取材【目指していくゴール】被災地での再生・被災地への進出海外進出・観光誘致地域振興・スポーツ振興社員の働きがい新分野進出生産ラインのロボット活用 ドローンを掲げる菅野氏(中央)●脈波・血管年齢を算出するアルゴリズムと そのデータを収集・活用するIoTプラット フォーム「APIゲートウェイ」を共同開発2018年●純国産ドローン用フライトコントローラー 「Ridge Hawk2」製品化2017年87

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