岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
85/155

を意識している企業とは、お互いのビジョンを共有しながら、良い協力関係を築いていきたいですね」。ファーメンステーションでは、現地の農家と共同で、ラボや水田の見学や郷土食を楽しめる「奥州体験ツアー」を不定期に開催している。1泊2日のツアーやイベントには年間約200人が参加している。「民泊を利用して、休日に農業の手伝いをして帰るリピーターの方もいます。訪れた方々と語り合いながら、私たちが世の中のことを学ぶ機会も少なくありません」。同ツアーには、アメリカやイスラエルなど国外から視察に訪れる人もいる。地元農家にとって、他国の関係者との交流は希少で、大きな刺激になっているという。「ツアーを通して、さまざまな考え方を持つ人が交流することで、地域にも多様性が生まれていくんです。奥州での人の交流がもっと活発になり、地域自体がより盛り上がれば良いなと思っています」。2018年末にはグローバル・ブレイン株式会社などから資金調達を行い、事業拡大に向けて、大きく舵を切った。現在手掛けているエタノール、化粧品に関する事業はもちろん、実証実験時からの目標である「エタノールのエネルギー」としての活用や、他地域へのノウハウの展開など、これまで築き上げてきた「循環の輪」をさらに広げ、加速させていく計画だ。「今後も地域との協力関係を大事にしながら、プロジェクトの成果を通して奥州市の産業の活性化に貢献していきたいです。そして、この資源循環モデルは国内だけでなく、先進国・発展途上国問わず広く応用可能なもの。今後は世界各地で、エネルギーから食料まで、すべての供給を地域内で賄えるような、大きな循環の輪をつくれるように事業を拡大していきたいです」。国内外の人も循環させる奥州体験ツアーを展開「循環の輪」をさらに大きく国外へとつなげていく15株式会社ファーメンステーション1奥州市に広がる田園風景  2提携している「松本養鶏場」3エタノ-ルの製造は、一つひとつ丁寧に手作業で行っている45発酵中のもろみと蒸留器  6オリジナル商品は全国各地で販売中7発酵(fermentation)と駅(station)が社名の由来8スタッフが手作りした「杉玉」が奥州ラボの目印678新たな挑戦に必要なこと資源の可能性を感じた被災時の経験1自社技術と地域課題を結びつけるアイデア2資源循環を可能にした地元事業者との協力3被災地での再生・被災地への進出海外進出・観光誘致地域振興・スポーツ振興社員の働きがい新分野進出85

元のページ  ../index.html#85

このブックを見る