岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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会社からは肥料提供などで連携し、少ない施肥量でも効率良く農地に栄養を与える「高付加価値肥料」の開発に着手。目標としていたのは5件だったが、結果としてはそれを大きく上回る9件の新銘柄の開発に成功した。特に2013年6月から販売を始めた「シリカ未来」は、施肥が少なくても稲に吸収されやすいという特徴があり、農家からの評判も良い。ミネックスの現在の主力商品となっており、今後もさらに生産を増やす予定だ。「今後、農業人口はさらに減り、高齢農家や省力化を望む農家が増えいくでしょう。高付加価値肥料である『シリカ未来』をはじめ、そうした方々に対応できる肥料を開発、供給していきたいですね」(吉田氏)。被災地の企業として、ミネックスも何かしらの形で復興支援できないか――。吉田氏は営業再開後からずっとそう考えていた。しかし釜石市は漁業が盛んな町で、農業肥料を扱うミネックスの需要地ではない。そこで目を付けたのが海から出る資源だった。「産業廃棄物として捨てられていた、ウニの殻やワカメの茎を使うことで、クリーンな海岸をつくれないかと考え、それらを有機質肥料として加工し、鋼鉄スラグと混合した肥料を開発しました。現在はまだコストの面で問題はありますが、原料供給元である漁業組合との連携を強め、今後商品化を目指しています」(葛西氏)。また、今後は従業員をもっと増やしていきたいという。これによって会社だけでなく、釜石市の復興にもつなげたいという思いがある。吉田氏は最後にこう語ってくれた。「東日本大震災で住む場所を変えてしまった人が戻ることができず、人口がどんどん減っているのが現状です。人口が増え、早く元の活気ある街に戻ってもらうため、働く場所の一つとして地元の復興に貢献していきたいですね」。地域資源の再利用と働く場所で復興に貢献14ミネックス株式会社1現在の主力製品である「シリカ未来」 2倉庫内には出荷用の肥料が並ぶ3補助金を活用し、2012年1月にほぼすべての設備がそろった 45導入、整備された造粒機と粉砕機 6従業員の手で修理したベルトコンベヤー7本社の会議室には津波が襲ってきた時刻のまま止まっている時計が飾られている82013年に新たに建てられた事務所678新たな挑戦に必要なこと高付加価値商品開発のため業界の動向を見極める1関連企業との共同体制による各分野のノウハウ集約2地元企業との連携による地域資源の発掘・検討3被災地での再生・被災地への進出海外進出・観光誘致地域振興・スポーツ振興社員の働きがい新分野進出81

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