岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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の挑戦、地域での連携にはトライしたい」と語っている。岩手国体の炬火トーチ作りから商品の自主開発が始まり、岩手大学や公益財団法人のいわて産業振興センターの紹介で、岩手医科大学から心臓のモデルの発注があった。こうした経験から佐々木氏は、官や学との連携をはじめ、ネットワークづくりは重要で、これからもできる範囲で行いたいという。そのため、インターネットを通じた情報発信に力を入れたいとしている。「何しろ営業担当がいませんから、ホームページだけが営業窓口なんです」。現に、ネットでの注文から関係が生まれた取引先も少なくなく、中にはネットだけのやりとりで、いまだに担当者に会ったこともない取引先もあるそうだ。佐々木氏は「私としては、会わなくていいのか?と思いますが、先方が特に希望されないので」とめには、精巧な臓器のモデルが必要とされる。実際にモデルを切ったりすることがあるので、モデルを軟らかい素材で作ることが課題だった。当時の光造形システムは、硬い樹脂しか使えなかったために、樹脂で作ったものを型にして、さらにシリコンゴムなどで覆ってモデルを作る必要があり、時間とコストがかかっていた。残念ながら商品化はなかなか進まなかった。こうした経緯がある中で、2017年、シリコンゴムに直接加工できる機械が開発され、佐々木氏はさっそく導入を決める。そして岩手医科大学との術前心臓モデルの共同研究が始まった。先天的な病気を抱える子どもの心臓のモデルで、手術を前に、モデルを実際に切ったりして手順を検討するのに使いたいというものだ。「子どもの心臓は小さい上に、難しい手術が多いので、リスクを回避するには入念な準備が求められるわけです」と佐々木氏は語る。次に、商品の自主開発も開始した。具体的には、精密な部品作りの技術を生かして、釜石市のシンボルである釜石大観音のミニチュアなどを製作している。この取り組みは沿岸部の観光開発、観光資源の掘り起こしを行っている岩手県の呼び掛けに応える形で始めたものだ。「2016年の岩手国体の炬きょ火かトーチ製作で依頼があった縁で、岩手県の沿岸広域振興局から声が掛かりました。受注生産は私たちの基本ですが、商品の自社開発を考えていたので、参加しました」。佐々木氏は、「既存の事業は大切にしつつ、新しい分野や商品へ語り、ネットワークづくりの重要性は変わらないものの、そのあり方や取引のスタイルは変わってきたと実感しているそうだ。それは同時に、確かな技術力とインターネットがあれば、企業としての知名度の低さや、地域のハンディを乗り越えられることを意味する。佐々木氏は「被災地の企業にもチャンスは大いにあるはずです」と力を込める。13株式会社ササキプラスチック新たな挑戦に必要なこと不況や災害に負けない安定した経営基盤1最新技術導入のための積極的な設備投資2既存顧客にとらわれない自主開発と販路拡大378被災地での再生・被災地への進出海外進出・観光誘致地域振興・スポーツ振興社員の働きがい新分野進出77

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