岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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を2016年から毎年開いているほか、地元の祭りでの屋台出店や、すり身を使った子ども向け料理教室など、取り組みは多様だ。「料理教室に来たお子さんが『かまぼこがおいしかったからまた参加したい』と言って、ご家族で工場に来てくださるケースも多いです。いずれは大人を対象にした料理教室も開きたいですね」。多賀城工場が稼働を始める2カ月前の2016年4月、松島蒲鉾本舗は『松かまビジョン2020』を発表した。中心拠点、松島の重要性を再認識した上で『松かま』ブランドの確立をうたっている。経営システムなどの共同研究に長年取り組んできた棟近雅彦教授(早稲田大学理工学術院)やそのゼミ生も協力して作り上げたビジョンだ。「営業戦略や商品開発で判断に迷ったときも、このビジョンを基準に決断できるようになりました」と朱氏はビジョンの意義について話す。ビジョンの中で同社が広めたいとするのは、魚食文化の習慣だ。「当社はかまぼこメーカーですから多くの人にもっと魚介類を食べてほしい。特に子どもへのメッセージは重要と捉えていて、工場見学コースは子ども目線で説明文や内装を考えたり、かまぼこがモチーフのキャラクターを作るなど、かまぼこに親しみを持ってもらえる工夫をしています。そのかいもあってか、多賀城市内外から多くの小学校が見学に来てくださいました」。商品開発でも工夫を続けている。「お土産色の強い商品だけでなく、日常食にも力を入れています。2018年はマグロカツの冷凍食品を商品化し、生協の個人宅配や自衛隊基地の食堂メニューに採用していただきました」。一度は生産設備が壊滅しながらも、迅速な意思決定と従業員の地道な努力でいち早く復旧を遂げ、工場の新設も果たした松島蒲鉾本舗。松島と多賀城という二つの地域に密着した企業として、かまぼこを通じてこれからも魚食文化の発展に貢献を続けていく。松島と多賀城から魚食文化を広く発信したい09株式会社松島蒲鉾本舗456地域性アピールのためにイベントを積極的に開催し、かまぼこを含めた魚食文化の普及を図る2新しい工場に直売所や見学コーナーを併設し、地元の人に親しまれる工場を目指す1「松かまビジョン2020」を作成し、地域を礎にした企業ブランドを打ち出す3被災地での再生・被災地への進出海外進出・観光誘致地域振興・スポーツ振興社員の働きがい新分野進出63

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