岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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を探しましたが適した用地は見つかりませんでした。そんなとき、県の企業立地情報で多賀城市に新しい工業団地が計画されていることを知ったのです」。さっそく社内協議を開き、新工場を多賀城市に建設することが決まった。理由は大きく3点あるという。「一つは、多賀城市が2013年に策定した『減災都市戦略』に共感したこと。次に松島や仙台駅、仙台空港といった店舗のあるエリアから近いこと。三つ目が、災害時の食料品提供といった立地協定を市と結び、土地の賃借代など魅力的な条件を提案いただいたことでした」。2016年6月、市が造成した多賀城市津波復興拠点『さんみらい多賀城・復興団地』で、新工場が稼働を開始した(塩竈工場は閉鎖)。現在、多賀城工場のかまぼこの生産数は一日に約2万個、売り上げの増加に伴って生産数も年々増えている。「多賀城工場では製造部門と包装下旬の段階で生産設備を発注していたので、工場の整備は6月に間に合った。「施設復旧費用の4分の3が補助されるグループ補助金を活用できたことは、財政的に大きな助けになりました」。6月10日、当初の目標通りに塩竈工場で生産を再開し、五大堂店の売店も営業再開。松島総本店と門前店は、カフェを併設したり県内で作られた工芸作品を取り扱い始めるなど、新しいコンセプトも取り入れた形で2012年に復旧が完了した。復旧を一段落させた松島蒲鉾本舗が次に検討したのは工場の新設だった。塩竈工場の土地が地震で地盤沈下していたこともあり、安全面や衛生面、生産効率の改善を目指して新しい土地を見つける必要があったのだ。「最初の1年間は松島町で候補地部門で約40人、事務職を含めると約50人が働いています。新設に当たっては『津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金』も活用したため、その申請要件もあり地元から11人を新規採用しました」。新しい工場で目指しているのは、地域との触れ合いだ。「直売所を併設しただけでなく、笹かまぼこの手焼き体験スペースや簡単な工場見学コースを設置しました。直売所には、地元の方や近隣の高校の生徒さんがよく来てくださいます。直売所の売り上げは1年目に比べて2年目は約50%も増加しましたし、地域の皆さまにも親しんでいただけていると感じています」。地域交流の活性化のためにイベントも積極的に開催している。笹かまぼこの屋台や手軽な体験コーナーを設ける『松かま工場まつり』新工場で地域住民との交流に積極的に取り組む多賀城市に工場を新設し地元雇用にも貢献12衛生管理された室内で包装作業に取り組む従業員たち3工場併設の直売所。週末は地元住民や団体客でにぎわう4かまぼこの手焼き体験コーナー5子どもにとっての分かりやすさを重視した見学コーナー。内装はほとんどを従業員が手掛けた6「地域の人に親しまれる会社でありたい」と話す朱氏12362

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