岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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3,000万円、2年目には7,500万円という売り上げを出すことに成功しました。参加事業者数も3年目には13に増え、漁業者が加わったことで、生産者と加工業者のつながりが確立されて出荷量を確保しやすくなりました」。一見すると順風満帆のようだが、最初からスムーズに取引が行われたわけではない。輸出に当たっての最初の難関は「言葉」だったという。「現地での交渉はもちろん、メールのやりとりや輸出に関わる書類を作ることも必要。国ごとのルールを理解することも求められました。最初はジェトロの担当者に同伴してもらい、支援を受けながら対処し、徐々に販路を広げていくことができました」と話す古藤野氏は、各国のあいさつなどを書き込んだ自作メモを、試食販売の機会などで活用している。「現地の言葉で話し掛けると喜んでもらえますし、立ち寄ってくれる人も増えます。そうやってきっかけをつくり、直接『おいしい』とリアクションをしてもらえたらうれしいですね」。一方、風評が海外においても販売の妨げとなった。「輸出を始めて3年目ごろから、香港などで放射線に関する風評が流れ出し、取引が難航することが少なくありませんでした。それだけでなく、国・地域による輸入の規制、輸出商品の確保や、漁獲量に伴う相場の変動など、乗り越えなくてはいけない問題は現在もあります」。それでも現地のお客さまとの対話を通して、それぞれの要望を丁寧に拾い、それに応えるよう、日々試行錯誤を繰り返している。輸出を始めたことでできた縁もあった。「ジェトロから殻付きカキを探しているところがあると聞き、これまで作ったことがなかった冷凍の殻付きカキを作ることにしました。漁業者に相談したところ、カキのむき場が被災したので、殻付きでカキを売ろうとしているものの販路がなくて困っていた。偶然にも目的が一致し、タッグを組んで輸出を始めました」。思わぬ巡り合わせから、殻付きカキは毎月5万個ずつ輸出するに至った。「商社でなくても海外に販路をつくれる、輸出もできるという先例になったことで、追随する企業が増え、地域の経済復興に貢献できたと思う」。古藤野氏は、自分たちがモデルケースとなったこともうれしいと話す。他にも、被災地の復興に一役買っていることがある。「自分たちが雇用をしっかりとして、地元の水産物を使って加工品を作って売り上げを伸ばしたり、輸出をしたりすることが、社会貢献、復興の一助になります。お客さまはあくまで各社の商品を気に入って買ってくれるので、それぞれの企業が頑張って売り上げをつくっていく、その積み重ねが大切。そうすることで地域が持続的に発展していけると思います」。新しい挑戦を続け水産業から石巻に元気を顧客の「おいしい」のため言葉の壁を超えて08日高見の国6海外市場で成功するために現地の食文化、貿易、市場のルールを把握し各国に適した方法で商品を提供2複数社が協力することで三陸の海産物の多様性をアピール1HACCPの取得など、商品の信頼性向上に努める3被災地での再生・被災地への進出海外進出・観光誘致地域振興・スポーツ振興社員の働きがい新分野進出59

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