岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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ことで、葛尾村をより深く知ってほしい。金泉ニットの採用活動を通して、葛尾村自体もPRしていくのが目標の一つです」。また、これからの時代を担っていく若い世代の雇用も視野に入れ、周辺の大学や専門学校、高校を回って求人活動も行っている。「若い世代を含め、村民の方が戻ってくるためには、安心して生活できる場所を作る必要があります。その役割を私たちが担うために、地元雇用に力を入れるなど、できることはまだまだたくさんあるはずです。私たちが、葛尾村を活気づける原動力になりたいですね」(清野氏)。製造工程の一本化や復興支援などを目標に、福島工場を新設した金岡氏だが、葛尾村を深く知っていく中で新たな構想が生まれている。「これまでの葛尾村には、名物となるような目立った産業がありませんでした。だから、金泉ニットで製造したニットウエアを葛尾村の名産品にしたいのです。東日本大震災から立ち直った葛尾村で、村民の方々と共に作ったニットウエアが、国内の有名百貨店や世界各国のブティックで販売されるなんて、夢がありますよね。その夢を現実にすれば、葛尾村はもっと活気あふれる村になるはず。葛尾村を『ニットの村』と呼ばれる場所にすることが、私たちが新たに抱いている目標です」(金岡氏)。そのほかにも、オリジナルブランドの構築やウェブサイトでの販売、異業種と連携した新商品の開発など、金岡氏の描く金泉ニットの未来には多くの夢が詰まっている。「葛尾村との出会いは偶然だったかもしれませんが、これも何かの縁。村民の皆さんに快く受け入れてもらった恩と、自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金に選んでもらった恩を、しっかりと返していかなければなりません。葛尾村のためになるような夢を実現させていくことが、金泉ニット福島工場の務めでもありますから」(金岡氏)。豊かな自然環境で生まれた壮大な夢が現実になるその日を目指して。金泉ニットの挑戦はまだ始まったばかりである。たくさんの恩返しのために夢に挑戦し続ける07金泉ニット株式会社1ヨーロッパにも輸出されている高品質なニット製品23ほつれの修正や仕上げ作業はすべて手作業で行われている4ニットウエア製造の核となる編立機52018年11月より参加している「福島イノベーション・コースト構想」6「葛尾村から世界に向けてニットウエアを届けたい」と話す清野氏7東京事務所にて「夢を実現して葛尾村に恩返ししたい」と語る金岡氏5647被災地進出の決め手製造から出荷まで一貫してできる拠点となる工場を必要としていた1葛尾村の豊かな大自然が高品質なニット製品の生産に最適だった2新たな産業をもたらし地域の復興に貢献したかった3被災地での再生・被災地への進出海外進出・観光誘致地域振興・スポーツ振興社員の働きがい新分野進出53

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