岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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[SDGs]2030年に向けて高品質のニットウエアの製造で、国内のみならずヨーロッパなどの海外にもシェアを拡大している金泉ニット株式会社。2018年6月に設立されたばかりの福島工場にて生産統括を任されている清野光一氏は、福島工場の新設の相談を金泉ニット代表取締役の金岡秀一氏から受けたことがきっかけで、金泉ニットに入社することになったという。「元々、福島市の出身だったので、まったくゆかりがない土地でのスタートではなかったのですが、正直迷いや不安はありました。東日本大震災後の葛尾村の状況を知っていましたから」。葛尾村への工場新設が決まった2016年6月は、福島第一原子力発電所の事故の影響で出されていた避難指示が解除されたばかり。そんな状況の葛尾村に移り、福島工場を率いていこうと決断する決め手になったのは、故郷、福島への思いだった。「福島に少しでも貢献したかった。東日本大震災以降、心のどこかにずっとその思いがありました。福島工場の立ち上げは、自分にとって大きなチャンスになると思えるようになり、福島工場の生産統括を引き受けることを決心しました」。そんな清野氏を福島工場の生産統括に招請したのが、金岡氏だ。元々、金岡氏は「製造から出荷までを一貫してできる、金泉ニットの拠点となる新たな工場が欲しい」と考えていた。そんなとき、復興支援を目的に福島県へ進出する企業を支援する自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金の存在を知り、すぐに応募を決めたという。「私自身、少しでも被災地の力になりたいと思っていましたから、東日本大震災からの復興を目的としたこの制度に、非常に共感しました。金泉ニットが被災地に参入し、ものづくりを通して街に活気をもたらす未来を想像したら、迷いなんてありませんでした」(金岡氏)。その後、2016年に自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金の採択が決まったことで資金面でのめどが立ったが、問題は工場の立地だった。金岡氏は福島県内の市町村の情報を自ら集めて、候補となる場所を4カ所選定。自らの足で4カ所すべての市町村を訪問した上で、葛尾村への工場設立を決意したという。「葛尾村の自然豊かな土地柄にとにかく引かれました。空気も澄んでいて、水も一切濁りがない。騒音がなく静かなので、従業員も落ち着いて仕事ができる。この環境なら、さらに高いクオリティーの製品が生み出せると確信しました。故郷に貢献したいその思いが入社の決め手自然豊かな環境に引かれ工場設立を決意07金泉ニット株式会社2030年復興への歩み●10月 福島工場建設開始2017年●5月 編み立ての充実2019年●5月 縫製の充実2020年●5月 福島工場からの製品出荷2021年●1月 地元雇用公募開始●6月 福島工場本格稼働●11月 「福島イノベーション・コースト構想」 へ参加2018年11葛尾村の人口増加に貢献しながら、地域雇用人数を40人ほどまで増加させ、福島工場の事業拡大を図る。また、福島工場を拠点に、高品質の製品を国内外へ出荷することを目指す。地域雇用人数を増やし福島工場の事業拡大を図る●6月 福島県進出を 決意●12月 企業立地に関する基本協定書に調印2016年自立・帰還支援雇用創出企業立地補助金地域復興マッチング「結の場」[地域雇用人数(人)]30405002010●12月 福島工場の規模拡大2021~2022年35~40(予定)被災地での再生・被災地への進出海外進出・観光誘致地域振興・スポーツ振興社員の働きがい新分野進出【目指していくゴール】福島工場外観51

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