岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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の入社なので、ミスマッチが少なく、非常に良い形だと思います。うちは規模が小さく、知名度も高くない会社なので、一般的な採用とは違う形で勝負せざるを得ないという側面もありますが」。社員の紹介で入社した人も少なくない。2018年7月から勤務する気仙沼オフィスのプログラマー・デザイナーの藤田空美氏は、同社に在籍する幼なじみから話を聞き、Uターンした。高校卒業後は東京で就職し、入社前はウェブデザインの仕事をしていた。「話を聞いたのは、ちょうど地元に戻りたいと思っていたころで、すぐにUターンを決めました。以前は、地元でデザインの仕事をできるなんて考えられませんでした。タイムカプセルは東日本大震災がきっかけで進出した面もあります。この縁を大事にしたいです」。2018年から、宮城県気仙沼向洋高等学校での出前授業も始まった。東日本大震災による津波で校舎が被害を受け、同年8月に現在の校舎に移転した学校だ。出前授業は情報海洋科情報電子類型3年生の選択授業で、「ウェブデザイン」を選んだ4人が学科のパンフレットを作成している。メイン講師は、藤田氏が務める。生徒たちは原稿の作成、写真の選定、レイアウトなどを行っている。藤田氏や相澤氏は、パソコンの操作方法やレイアウトのコツ、どのような素材が読者の目を引くか、などを丁寧に説明。生徒たちは「プロのセンスや考え方はとても参考になります」と口をそろえる。藤田氏は「地元で活躍する友人の姿を見てUターンしたいと思ったので、高校で教えることができ、うれしいです」と笑顔を見せる。生徒の一人、丸山裕也君は高校卒業後の同社への就職が内定している。「プログラミングの仕事をするのが楽しみです」と意欲的だ。気仙沼に進出し、2019年4月で1年になる。相澤氏は「現時点では事業も採用もうまくいっています。今後、漁業や水産業へのIT活用など、気仙沼ならではの事業も手掛けたいです」と語る。将来的な会社の成長を見据えると、気仙沼は試金石だという。「『気仙沼モデル』を確立できれば、進出できる町は格段に増えます。気仙沼だけで20~30人の開発部隊にしたいです」。近い将来の夢は、全都道府県に拠点を設けて上場基準を満たす企業に成長させることと、セミナー卒業生たちが世界的に活躍することだ。04タイムカプセル株式会社被災地進出の決め手人との縁を生かして事業運営が可能だった1雇用と人材育成が地域課題としてあった2今後の可能性を試すことができるこれまでより少ない人口3被災地での再生・被災地への進出海外進出・観光誘致地域振興・スポーツ振興社員の働きがい新分野進出高校での出前授業デザインのコツを教える気仙沼モデルを確立し全都道府県に展開したい試行錯誤を重ねてアプリ開発を進めている41

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