岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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たもの、目に触れてこなかったものまでが商品や観光資源となり、世の中の役に立っていく。まさに循環型社会にマッチした理想的な企業モデルではないでしょうか。今後とも意欲的な挑戦を続け、ぜひ大きく成長させてください。渡辺 次は、宮城県気仙沼市でのり店を営む長谷川さんです。先代から続く個人商店を営まれていたそうですが、津波で店舗が全壊。それでも6年かけて本設店舗を再建された。私自身も気仙沼市の避難所に足を運ばせていただきましたが、被害は甚大で、その後のご苦労は並大抵のものではなかったと推察します。長谷川 50日間ほど避難所で過ごした後、被災を免れた近隣の親類の家に移り住み、品ぞろえもままならない状況下でお店を再開しました。その1カ月後には、気仙沼市役所商工課から、代替地を確保すれば仮設商店街を無償で建てるとを経て当社が事業を引き継ぎましたが、すべてを化粧品にするのは難しい。そこで地元の畜産農家と協力し、鶏や牛の飼料としての再利用にも着目。家畜のふんは堆肥として次の米作りに生かされるので、結果としてWin-Winの資源循環型ビジネスモデルを構築することができました。最近はJR東日本と協業し、りんごの搾りかすを原料としたエタノールの製造も行っています。渡辺 農業を核とした新しいビジネスモデルゆえ、最近は国内外からの視察も多いそうですね。酒井 ありがたいことにお客さまが増えてきたため、現地の農家と共同で、ラボや水田の見学や郷土料理も楽しめる奥州体験ツアーの形にしました。有名な観光地がないとお客さまを地元に呼び込むことは難しい中、農業やサステナビリティ(持続可能性)に興味のある方に向けて私たちのメッセージを発信できたのではないかと思っています。渡辺 これまで不要と思われてい二重ローン問題解決で店舗を6年ぶりに再建「資源循環システムが定着していくことで、地域活性化の新たな可能性も見えてくるのではないでしょうか」(酒井氏)いう連絡をいただき、8人の店主たちと協力して市内の東新城地区に土地を見つけ、2012年2月、仮設商店街(かもめ通り商店街)に店を移しました。さらに、グループ補助金を活用することで、2017年4月、鹿しし折おりに念願の本設店舗を開店することができました。その原動力となったのは、生活のためという側面もありますが、お客さまや取引先からの励まし、そして、被災したまま商売を終わらせたくないという、私自身の意地が大きかったような気がします。渡辺 再建に向けては株式会社東日本大震災事業者再生支援機構(震災支援機構)の二重ローン対策制度も活用されたそうですが、どのような形で再建を進められましたか。長谷川 売り上げが激減する中、業者などへのこまごまとした支払い、事業資金や住宅ローンの返済なども重なって、小規模の個人商店としては切羽詰まった状態でした。そんなとき、地元の信用金庫から二重ローン対策を担う震災支4

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