岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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マーケットが縮小しています。被災地ではそれがよりあらわになっているわけですから、東日本大震災以前の水準をイメージしたビジネスは危険ではないでしょうか。新たな事業やマーケットの開拓が必要であり、それができれば、他の地域が参考にできるモデルにもなるはずです」。縮小するマーケットの中で富山氏は、従来の地域内での消費を念頭に置いた事業を80%、残る20%は地域外の消費や新たなマーケットを充てるべきではないかと語る。「地元の人が少なくなっているわけですから、外の人を相手にするか、あるいは外から人を招き入れるか、どちらかに取り組まなければなりません」。外から招き入れる人については、海外も含まれている。すでに「玉乃湯」では、インターネットなどで情報を得たアジア、欧米など海外からの宿泊客が少しずつ増えていて、富山氏は今後の展開に期待を寄せている。また、企業理念では、海外市場参入を目指すことも挙げていて、より広い視野を持って事業に当たることが、生き残りには欠かせないという考えだ。ロッツの企業理念で、もう一つ目を引くのは、三方ではなく、四方良しを目指すとしていることだ。三方とは一般に売り手、買い手、世間(社会)を指すが、ここに従業員を加えて四方としている。「自分たちが自慢できる会社づくりをしなければ、スタッフは定着しませんし、そもそも誰も来てくれないでしょう。スタッフが充実感を覚えることができれば、それは経営者の支えにもなります。現在の東北では医療や介護、リハビリなどのニーズは高いので、この分野のスタッフはどこでも引く手あまたの状況です。利用者などから頼りにされる存在ですから、やりがいを感じて働けることは間違いありません」。多分に偶然が作用したロッツのスタートだったが、富山氏は今では天命だったと感じているそうだ。「東北でがんばれということだと思います。もっとも、漫才のコンビも解散したので、もう戻る場所はありませんから」。事業を左右するスタッフ「四方良し」を目指す03ロッツ株式会社1ReBornのフィットネスジム。インストラクターを招いたヨガやピラティスのレッスンのほか、会員の誕生日会などのイベントも開催される2ReBornのデイサービス。ReBornでは、理学療法士、作業療法士、看護師、介護福祉士、介護士などの専門スタッフが所属し、それぞれの業務に当たる345温浴施設「玉乃湯」。中尊寺金色堂に採掘された金が使用されたと伝わる玉山金山に位置しているため、観光需要も高い。季節によってはバーべキューなどのサービスも行っている345被災地進出の決め手医療・ヘルスケア領域において地元で高い需要があった1東日本大震災後の陸前高田において新しい仕組みが生まれる土壌があった2先駆的なビジネスを支える復興特区制度の対象となっていた3被災地での再生・被災地への進出海外進出・観光誘致地域振興・スポーツ振興社員の働きがい新分野進出37

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