岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
36/155

仮設店舗でオープンした。薬局のオープンは当初予定していなかった出来事だったが、オープンしたからには、地域に根差し、10年、20年と長く続くものにする必要がある。「経営環境が厳しいのは明らか、理念なき起業は失敗につながるので、経営理念を策定することにしました。その一方で、医療・介護の問題は全国共通ですから、モデルになるような事業、横展開できるような事業をしたいとも考えていました」。経営理念は、「被災地復興に貢献する」に始まり、「患者中心の医療・介護を実行する」「社会保障費の負担軽減のために尽力する」「三方良しならぬ四方良しを満たす」「固定概念を取っ払う」の5項目を掲げ、「結果として、あの震災があったから新しい仕組みが陸前高田で生まれた、という事業を我々は展開していく」と結んでいる。固定概念にとらわれない具体的な取り組みとして、2012年5月に単独型の「あらや訪問リハビリステーション(現 訪問リハビリステーションさんぽ)」を開設した。これは復興特区制度を活用して、従来は許されなかった理学療法士や作業療法士などの療法士だけでリハビリを行えるようにした、日本で初めての試みだった。利用者の家庭を訪問して的確なリハビリを施すことはもちろん、外出の足がままならない被災地で、利用者に大きな利便性を提供している。また、家庭を訪問することで、利用者の生活そのものに目を配ることもできる事業だ。2016年6月には陸前高田市の指定管理を受け、同市の山あいにある温浴施設の「玉乃湯」の運営を始めた。静かな環境にある「玉乃湯」では宿泊、食事、日帰り入浴ができる。そして、2017年4月には、デイサービスとフィットネスとを一体化した「リハビリ特化型デイサービス&フィットネスRリボーンeBorn」をスタートさせた。日中は要支援の高齢者などがリハビリのために通い、夜は仕事帰りの一般会員が体を鍛えている。リハビリもフィットネスも、同じ最新のフィットネスマシンを使い、同じスタッフが対応するので、非常に効率的な運営が可能となっている。デイサービスは厚生労働省、フィットネスは経済産業省と管轄が分かれていて、同じ場所で両方の事業を行う前例は無かったのだが、新しいビジネスモデルになると両省に働きかけて実現にこぎ着けた。「事業としてのデイサービスは厳しい環境にありますから、ヒントを提供できたのではないでしょうか」と、富山氏は振り返る。新しい事業を展開することについて富山氏は、医療や介護には高いニーズがあるので、そのニーズに応える形なら事業として成り立つとの読みがあると話す。その一方で、以前からの事業者と競合することは避けている。そもそも既存のマーケットにこだわるのは、将来を考えると疑問だという。「人口の減少によって全国各地で将来を考えると必要な海外も含めた外への展開1236

元のページ  ../index.html#36

このブックを見る