岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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「できるところから、できるやり方でSDGsの取り組みを始めてみましょう」SDGsを自社の経営に取り込んでいくには、まず、『10年後、20年後、どういう会社でありたいか。どういう地域社会であってほしいか』という夢や目標を持つことが大事です。そして、目指そうとする将来の地点から現在を見据え、『今の自社には何が足りていないのか』を考えてください。足りていないこと、できていないことを『どのように補っていくか』が経営戦略となり、その実行が持続可能な成長の第一歩となるのです。SDGsには17のゴールがあります。往々にして『17の目標すべてを達成しなければいけない』と考えがちですが、そう堅苦しく身構える必要はありません。17のゴールの中で、できそうなところを選んで始めれば良いのです。また、ゴールに到達するまでの方法は、取り組む人の自由です。理念を踏み外さない限り、SDGsに書かれている文章は、自社の状況に合わせて読み替えても構わないでしょう。つまり、SDGsの取り組みは、自社にできそうなことから、自社にできるやり方でやれば良いのです。今回の産業復興事例は、『SDGsを意識して始めたわけではないけれども、SDGsの理念が体現されている持続可能性の高い事業』の好例といえます。例えば、事業における共同方式の採用は『17 パートナーシップで目標を達成しよう』に、中小企業が生産性を上げようとする取り組みは『8 働きがいも経済成長も』に合致しています。まさに、“できるところから、できるやり方で”SDGsの取り組みが始まっています。こうした各企業の取り組みの一つひとつが積み重なり、あるいは、波及し広がっていくことで、それぞれの企業、それぞれの地域の魅力が高まり、持続可能性を高めていくでしょう。最後に、SDGsの取り組みを前に進めていくために大事な点を、お話しておきたいと思います。一つは、スタートは“できるところから”で良いのですが、取り組みの途中で、その他のゴールの視点に立って考えてほしいということです。17の視点に立ち、複眼的に思考することで、より多くの課題解決のアイデアが生まれてくるのではないでしょうか。もう一つは、いろいろな人の意見を取り入れるということです。課題の解決にはたくさんの人の意見やアイデアが必要で、異なる意見を尊重し合う多様性や柔軟性も求められます。フォロワーにはアイデアが、リーダーには寛容さが必要です。東北地方はイノベーション創出の風土も育ちつつある。株式会社ササキプラスチックのように最先端分野にチャレンジする企業も増えてきた(74ページ参照)住み続けられる街づくりは、復興の大テーマ。南三陸ハマーレ歌津は定期的にイベントを開催し、「地元に愛される商店街」を目指している(106ページ参照)復興を機に大きな転機を迎えた東北の漁業。宮城県漁業協同組合 志津川支所 戸倉カキ部会は環境に配慮した手法で日本初のASC 認証を取得した(124ページ参照)SDGs策定3つのポイント「こうありたい」という夢、目標から考え始める1まず一つを決めてみる。 さらに全17の目標に視野を広げる2社員を含めいろいろな人の意見を聞き、多様性を認める324

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