岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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Discussionこの企業に注目!基礎条件として福島県はトマト、キュウリの生産に適しています。さらに市場の近接性もよく理解しての進出です。農協関連団体との連携も十分で、地元採用を進めて「現地化」を図っていることにも企業経営の本気度と周到さを感じます。(柳井氏)ベルグ福島株式会社 (福島県川俣町)➡42ページ間接に福祉・介護系のNPO法人へも企業連合で共同投資を行う必要もあるかもしれません。若者の育成については起業家精神の養成を常日頃から行っておく必要があり、そのために国内のメンターとの連携が欠かせません。福嶋 地球の一員としての意識を持った企業が、今後は顧客に支持され、生き残るのだと思います。SDGsという考え方は今後世界の共通ルールになる可能性が高く、これからの企業経営には不可欠な考え方となり、企業目標に含まれざるを得ないと思います。弓削 一時期、企業のスローガンとして「世界を変える」というキーワードが流行しました。これは世界の悲惨さを前に、技術で優れる日本には何ができるかという自らへの問いです。先を行く企業は、その先に世界の状況があることを考えてほしいですね。藤野 SDGsとは持続可能な開発目標の意味で、大切なのは社会にとって良いことをきちんと伸ばすことであり、成長することです。それを忘れるべきではないと思います。福嶋 この産業復興事例集が自己満足で終わっては意味がありません。他地域へのメッセージでもあるべきです。また、経営者には災害だけでなく、危機やトラブルからの回復や、逆境をどう乗り切るかといったことを学び取ってほしいと思います。弓削 事例集を、一般の企業が手に取る機会は少ないと思うので、メンターやアドバイザーなどをハブとして広げることを考える必要があります。藤野 事例集には、東日本大震災というピンチをチャンスに変えた企業が登場します。東日本大震災は確かに大きなピンチですが、ピンチはビジネスにつきものであり、挑戦する気持ちが大切であることを事例集は教えてくれます。柳井 事例集は全国の企業や団体が応用できるものですから、横展開できる仕組みづくりをぜひ考えるべきだと思います。そのためには、新書サイズの簡易版を作成するなど、柔軟なアイデアが求められます。事例集の幅広い活用を全国規模で実現するには東京・浅草生まれ。法政大学法学部卒業。クリエイターとして商品開発、広告・販促キャンペーンを成功させる。1994年、株式会社エスト・コミュニケーションズ設立後は「ものづくりマーケティング」を標榜し、日本の土台である中小製造業を、その下から支えるコンサルタントとして活動。株式会社エスト・コミュニケーションズ代表取締役弓削 徹氏 (ゆげ・とおる)れだけ情報の平準化や人々の往来が列島を覆っても、やはり地域性、県民性は健在である──。そう思い知らせてくれたのが、3県の復興でした。ものづくり企業を支援する立場から言わせてもらうと、「ものづくり立国」であるはずの日本にも、最近は易やすきに流れる風潮を感じます。例えば、リスクを取らず、アイデアも出さず、他者の作ったものをネットで売る、など。しかし、東北3県のねばり強さ、ひたむきさこそ、ものづくりに必要なセンスだったのだと気付かされました。今回、候補となった企業たちは、言うまでもなく被災の負荷というマイナスから再出発しています。ところが、そうしたハンディがありながら、日本を代表し、けん引する企業のような輝きを見せている。まさに、“疾しっ風ぷうに勁けい草そうを知る”。これからは復興ではなく、進化する企業群として注目していくべきなのかもしれないと、頼もしく感じたのです。こ21

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