岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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Discussionこの企業に注目!若い人たちが主導してアイデアを出し合い、観光イチゴ農園やお酢や麺など6次産業化にも取り組むなど、被災前以上のことに挑戦。地域に対する深い愛情を感じます。一期一会ならぬ、一苺一笑というネーミングにも思わず笑みがこぼれてしまいます。(福嶋氏)株式会社一苺一笑 (宮城県仙台市)➡128ページ入れるかを検討しなければなりません。柳井 確かにUターンやIターンが多いですね。東日本大震災を機に戻ってきた人や、他地域から入ってきた若者は意外にぶれないという印象があります。被災地で頑張ることが、いろいろな意味で充実感につながっていると考えられます。被災地も新しいライフスタイルを提案できればいいですね。例えば、宮城県の鳴子温泉では、新しい湯治スタイルを提案しています。一定期間、温泉地にオフィスを移し、働きながら温泉に漬かるというもので、仙台の企業が実験的に利用しています。被災地の沿岸部に温泉地はあまりありませんが、きれいな海を見ながら仕事をするといったことがあってもいいと思います。IoTはそういうことを実現するツールといえます。被災地から東京発ではない新しい価値観やライフスタイルが生まれることに期待したいですね。藤野 これからの社会の在り方として、「多世代共生社会」と「多拠点生活」を提案したいですね。「多世代共生社会」は、常に若い人がシニアを支える社会では若い人がつらいので、シニアがシニアを支える、シニアが若い人を支えるといったように、世代関係なく、支援できる人が支援の必要な人を支えるという社会です。「多拠点生活」は、柳井先生がおっしゃった鳴子温泉の例につながるところがあります。1人の人間が複数の生活拠点を持つという考えです。複数の生活拠点があることで、交流が広がりますし、空き家対策にもなるのではないでしょうか。柳井 現在、被災地の企業は、支援を受ける側に立つことが多いのですが、もし、復興から学ぶことがあるとすれば、「持続性とは何か?」という大目標から、「人口減少下でも活力ある経営をいかに維持していくか?」「困難なときに活躍できる人材(地頭力)育成の在り方」「海外も含む遠隔地とのネットワークの形成」「地元のファンづくり(交流会)」などの小目標がいくつか導き出されます。それと企業は高齢化に対処するため、直接・SDGsを踏まえた企業の将来目標とは富山県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、国内・外資大手投資運用会社で日本株ファンドマネージャーを歴任。2003年レオス・キャピタルワークス創業。主に日本の成長企業に投資する「ひふみ投信」の運用で好成績を残す。一般社団法人投資信託協会理事。レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役社長藤野 英人氏 (ふじの・ひでと)業経営において、必ず成功する方法は存在しませんし、絶対に失敗しない方法もありません。大なり小なり失敗は生じるもので、大切なのは失敗を減らすことや、失敗したときにどうするかを考えることなのです。失敗を減らす上で重要なポイントになるのは、経営者はミエを張らない、つまり低コスト体質の経営を心掛けることです。また、相談したり、助けを求めたりできる仲間、あるいは金融機関や公的な組織などと信頼関係を持つことも失敗の減少につながります。ただし、仲間には状況をきちんと説明し、状況に変化があれば、すぐに報告することが求められます。プライドが邪魔するのか、失敗する経営者に限って、情報の開示が遅れたり、不正確だったりしがちです。事業を成功させることはもちろん大切ですが、失敗やトラブルに遭っても、負けずに再び立ち上がる力を持っていることも重要です。特に被災地の経営者は、そのことを忘れないでほしいと思います。企20

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