岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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Discussionレオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役社長藤野英人氏株式会社エスト・コミュニケーションズ代表取締役弓削徹氏その前には熊本地震もありましたね。では東北の復興はどうかというと、道路が開通したり、住宅地が整備されたりと表面的には進んできたといえますが、目を凝らして見るとまだまだ復興途上です。弓削 東日本大震災から時間が経過する中で、企業は改めて企業理念やミッションを、単なるお題目ではなく、みんなが共感できる旗印、ステートメントとして掲げることが大切だと思います。それが人を巻き込む求心力になるはずです。柳井 人口減少が深刻な被災地がある一方で、宮城県女川町や福島県楢葉町では、若い人たちが集まって、新しい「ことおこし」をしています。楢葉町では古民家を民泊に活用し、地域とのつながりもイノベーションも生まれています。また、同町の木戸川漁業協同組合ではサケのふ化事業が本格化しています。この組合も支えているのは若い人たちです。藤野 人口が流出している地域もありますが、復興を手伝うためなどで、新たに人が入ってきたというケースもかなりありますね。福嶋 東日本大震災によって人生観が変わったという女性や若者も多く、そういう人などが始めたソーシャルビジネスが、宮城県の南三陸町や石巻市などでは増えています。こうした人たちはそれなりに哲学を持ち、真面目にビジネスに向き合っているので、もっとサポートが受けられてもいいのではと感じています。柳井 楢葉町や女川町では大人が口出しをしないので、若い人が新しいビジネスモデルの実験ができるわけです。特区とは本来、こうした新しいビジネスモデルを展開する場であるべきだと思います。楢葉町や女川町の可能性に賭けたいと思いますが、反対に何もできていない町や地域もあり、10年後や20年後が気掛かりです。復興の違いが、いよいよ鮮明になってきたという印象があります。藤野 東北はいい意味でいろいろなことにチャレンジできる実験の場といえるでしょう。しかし、現状維持バイアスとでもいうのでしょ若い人が流入するなど見受けられる新しい動き17

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