岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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重ねたいわき菌床椎茸組合だが、問題はまだ残っていると渡部氏は言う。「東日本大震災から7年が経過したといっても、風評は収まったとは言えません。価格も回復傾向にありますが、まだ他地域の物に比べて80%くらいの単価です。生産者にとって厳しい状況は続きますが、今後も安全と品質にこだわることで風評と戦い続けます」。品質へのこだわりに加え、渡部氏は地域における雇用確保へも強い意欲を見せる。「設立当初は先行きが不透明で、採用も少数に絞っていました。しかし高校の新規卒業者面接に予想を超える志望者が集まる状況を見て、いわき市に仕事をつくる必要性を強く感じたんです。地域に残る選択肢を用意し、子どもたちと一緒に夢を持てる事業づくりをしようと決心しました」。東日本大震災後も渡部氏の姿勢は変わらなかった。2010年以降に採用した地元の新規高校卒業生は64人を数える。苦しい状況でも変わらず雇用を確保し、若者たちと夢を共有してきた。「当組合が先駆けとなって、地域の人たちに『諦めなければ分野のトップ企業になれる』と伝えたいんです。未来への展望を示すことで、いわきに元気を与えたい。そのためには地域の若者が育ち、全員が主役として組合を引っ張っていかなければいけません。それができる企業づくりを、少しずつ進めています」。いわき菌床椎茸組合では全員を正規雇用の職員として採用し、業務に内容によって各個人が明確な目標を持つマイスター制を採り入れることで、おのおのが自分の仕事にプロ意識を持てるようにしている。職員が力を発揮できる機会をつくり、事業を継承する人材を育てるためだ。若い世代が組合と地域に新しい輝きをもたらす未来を、渡部氏は見据えている。全員が主役の企業づくりでいわきに元気を与えていく30農事組合法人いわき菌床椎茸組合モチベーションアップのために全員を正規職員として雇用1地元高校の新規卒業者を積極的に採用し地域と未来を共有2各個人が明確な目標を持つマイスター制によりプロ意識を植え付ける31234菌床の製造からシイタケの収穫、パック詰めまでを組合内で行うことで高い品質と安全性を確保。地元高校を卒業した若い女性が中心となって働く52015年には第56回福島県農業賞を受賞67看板商品のいわきゴールド椎茸焼酎のほか、うどんやそうめん、塩、ピラフの素など6次化商品のラインアップも豊富8「いわきゴールドしいたけ」を手にする代表理事の渡部氏687被災地での再生・被災地への進出海外進出・観光誘致地域振興・スポーツ振興社員の働きがい新分野進出143

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