岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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与えることを明示した「資格取得援助規定」を設けた。すると、フォークリフトの資格を取得する女性も誕生し、業務の効率がさらに向上したという。このような先進的な取り組みで2015年に経済産業省の「ダイバーシティ経営企業100選」、2017年には「地域未来牽引企業」に選ばれた。このような取り組みが注目を集める同社だが、佐藤氏は「必要なことをしているだけ」と話す。「そもそもダイバーシティのために制度を整える、というのではうまくいきません。制度を整えたら、それに応えてくれる女性たちがいたというだけのこと。子育てなどお母さんたちが優先したいこと、その時間を損なわない程度で、会社に力を貸してほしいとお願いしました。お母さんたちが子どもの成長を見守ることは社会にとっても必要なことだと思います。いずれうちに入ってくれる子どもかもしれない、地域のために働く子どもかもしれないですよね。そう考えて、子育てと仕事、どちらも妥協せずに実現できる制度にしたところ、結果的にダイバーシティとして評価されたにすぎません」。佐藤金属は、給与体系についても、社員のモチベーションを高める仕組みづくりを行っている。基本給に加えて、職能給を細かく設定して支給額を決定しているのだ。能力が評価されることが明確に示されているので、従業員の意識も高まる。また、それぞれの役職の定義も併せて従業員に示しているという。「当社は経営理念において、売り上げや社会貢献という内容は掲げず『どういった気持ちで働いてほしいか』『どういう人であってほしいか』ということを謳うたっています。それぞれの役職についても同様に、役割に応じて求める姿を伝えています」。採用時にも、企業理念に共感して、将来のビジョンを描ける人を受け入れている。人材の確保は重要だが、長く働いてもらうためにはビジョンを共有することが不可欠だと再認識したからだという。「高度な技術を必要とする仕事もあり、優秀な人材を採用したい。しかし、業種としては人が集まりにくいというのが現状で、イメージを変えることも大事だと考えています。まず『廃棄物の処理』ではなくて、『原料の製造』であると。金属のリサイクルを通して、地球環境の保全に役立っていることを広く伝えたいですね」。業界のイメージの刷新、フレキシブルな勤務体系の導入により、業界における従来の常識を打ち壊し、働く人が誇れる職場へと変革を続けている。働きやすい仕組みがやりがいを生み出す29株式会社佐藤金属モチベーションアップのために週3日、1日3時間以上のフレキシブルな勤務体系を導入1職能給を細かく設定一人ひとりに給与の明細を開示2資格取得の費用を負担し、資格に応じて給与に反映3被災地での再生・被災地への進出海外進出・観光誘致地域振興・スポーツ振興社員の働きがい新分野進出フォークリフトを操縦する女性社員139

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