岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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のある美しいあめ色になる。光沢を持つ、鏡のような表面のなめらかさは、まさに熟練の腕がなせる技だ。2012年、新しいたんすの形として製品化したコンソールには、鉄製の脚を取り付けた現代的なデザインにこの技能を組み合わせた。同時に、ケヤキの美しい木目を強調する「拭き漆」の技法で仕上げた明るい色味の製品も発表した。翌年には、柿渋で塗装し価格を抑えた「Upright」シリーズの製品も展開。唐草模様のブラックアイアンをあしらった壁掛け棚は、軽やかなデザインが現代の部屋にも調和する。 「伝統工芸が衰退していく一つの背景には、生活様式に合わなくなっているのに、昔の形にこだわっていることがあります。しかし、本質は技能を残し、受け継ぐことにあるはず。時代に合わせて形は柔軟に変えていっていいと思うんです」。柔らかい女性的なデザインを取り入れたことで、「野郎箪笥」ともいわれるそれまでの力強く重厚な物とは異なるイメージを打ち出すことに成功。「monmaya+」の製品は、2013年度、2016年度にそれぞれグッドデザイン賞を受賞している。ここ数年最も力を入れているのが海外展開だ。2014年に米国・ロサンゼルスに期間限定出店したのをきっかけに、海外にもファンを増やすべく、販路開拓を本格化。これまでに香港、上海、台湾、シンガポールでポップアップショップを展開してきた。アジア圏の人々は生活様式や体型が日本に近い。加えて、「クールジャパンという言葉があるように、アジアの人々は日本人のセンスやものづくりに対する信頼感があって、ぜいたくな手仕事である仙台箪笥は受け入れられやすい」と一泰氏は実感を語る。また、欧米に比べ輸送コストを抑えられる上、時差が小さいため、営業管理の面でもアジアへの販路拡大が独自製品開発にもつながる1仙台箪笥は木工、塗り、金具が三位一体となった、重厚で豪華な作りの高級品。30の工程がある「木地呂塗り」によって生み出される、深みのある色合いが美しい2「拭き漆」の塗装による明るい色味のたんすは、海外で好評だったことから定番製品となった34「monmaya+」のローテーブルと壁掛け棚。伝統の唐草紋様を用いた現代的で軽やかなデザインが特徴だ567現在在籍する6人の職人には、未経験から始めた人や、自衛隊出身者など、多様な人材がいる1234134

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