岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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藤氏は胸を張る。2019年1月、松森農場は2年目のシーズンを迎えた。今年も連日、家族連れやカップルらでにぎわっている。販売リーダーの大野明氏は「『オープンを楽しみにしていたよ』と言ってくれるリピーターさんもいれば、『昨年は混んでいて入れなかったので、待っていたよ』と言ってくれる人もいます。昨年以上に栽培管理を工夫して、お客さまにシーズンいっぱい楽しんでもらえるようにしたいです」と話す。現在、同社は山元町内2カ所の農場と松森農場でイチゴを栽培し、計19人が働いている。20~70代と年齢層は幅広いが、過半数は20、30代の若者。女性や農業未経験者も多い。農業は一般的に休みを取りづらいといわれるが、ワークライフバランスを実現するため、労務管理にも気を配っている。佐藤氏は「シフト制を取り入れて『休日を取れる農家』を掲げ、法人のメリットを生かして労務管理しています。おかげで、若い人や女性も来てくれるのでしょう」と語る。松森農場の常勤社員は6人。大野氏、栽培マネージャーの千葉聡美氏は共に30代の女性で、子育て中だ。2人は「イチゴ狩りのシーズン中はなかなか休めませんが、それ以外の時は皆で協力して仕事を回しています。休みは比較的取りやすい職場だと思います」と口をそろえる。イチゴを生かした6次産業化にも取り組んでいる。佐藤氏は「日持ちしないイチゴをうまく利用することができますし、農閑期の業務や売り上げ確保にもなります」と狙いを話す。これまでに、酢や麺を開発し、2019年はイチゴジャムを発売する。今後も商品開発を進める方針だ。さらなる事業展開も見据えている。「栽培ノウハウを蓄積してシステムの精度をさらに高め、より合理化を図り高品質のイチゴを作りたいです。そうして、従業員の待遇も向上させたい。また、栽培システムをさらに高度化し、担い手が不足している別の産地にも展開したいと考えています。現在はイチゴ農家がいない地域でも挑戦したいですね」。6次産業化に挑戦他地域進出も目指す労務管理に配慮し休みやすい職場に27株式会社一苺一笑モチベーションアップのためにICT活用で栽培ノウハウを蓄積し子育て中の女性、未経験者も雇用1シフト制を取り入れて労務管理“休める農家”を実現2観光農園開業や6次産業化に取り組み農閑期にも実施できる事業を展開3家族連れなどでにぎわう松森農場被災地での再生・被災地への進出海外進出・観光誘致地域振興・スポーツ振興社員の働きがい新分野進出131

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