岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
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店主たちの熱意が通じ、独立行政法人中小企業基盤整備機構から建物が提供され、2011年12月に仮設商店街がオープンした。名前は「伊里前福幸商店街」。商店街の復興を通じて、地元住民の幸福に貢献したいという思いが込められていた。「オープン時から7店舗が入居していたほか、観光協会や商工会の事務所もあったので、地域交流だけでなく観光情報やボランティア情報を交換する場所にもなりました。被災者の方々に対して、無料の食事提供などもしていました。被災地の様子を知るために県外から東北を訪れる人も多く、商店街全体で予想以上の売り上げや来客数がありました」。地元住民や観光客に楽しんでもらうためのイベントも頻繁に開催した。「2012年から毎年開いている『伊里前しろうお4444まつり』は商店街の顔になりました。シロウオ料理の屋台や土産品が並ぶほか、踊り食いやシロウオすくいも楽しめます。南三陸の特産品を生かした『春つげわかめまつり』や『歌津あわび祭り』も人気があり、詰め放題や特売会は毎年盛況です。また、8月の夏祭りには沖縄県出身のバンドBEGINが、2013年から毎年来てくださっているんです。歌津から沖縄県の西表島まで津波で流された郵便ポストを、商店街に届けてくださったことがご縁です。夏祭りに5,000人以上が来場した年もあったほどの人気で、地域の復興に貢献していただき本当に感謝しています」。多彩なイベントを開催するなど運営を安定させつつあった商店街はいよいよ、本設商店街の計画を本格化させる。南三陸商工会のアドバイスも受け2015年6月、本設商店街の運営主体として株式会社南三陸まちづくり未来が設立された。南三陸町や南三陸商工会、入居予定の商店主たちが出資したという。「勉強会や他地域の商店街視察を通して、『もう一度伊里前に常設の商店街をつくりたい』という目標を当事者たちで共有していたので、意見をまとめる上では大きな障害もなく、皆さんが進んで協力してくれました」(千葉氏)。2016年には津波・原子力災害被災地域雇用創出企業立地補助金に申請し、2017年4月23日、ハマーレ歌津はオープンした。「仮設商店街からは6店舗が引き続き入居したほか、若い世代の経営する食事所とカフェが新たに入りました。カフェのオーナーの方は、東日本大震災の後に南三陸にUターンしてこられたそうです。ハマーレの未来を考える上で、若い方がいるのは大変頼もしいことです」。オープン直後の5月には約8万5,000人もの客が訪れ、商店街はにぎわいを見せた。さらに同年12月には、車で約5分の場所に三陸ハマーレ歌津がオープン若い世代も新規に入居歌津の顔となるイベントが仮設商店街で誕生123108

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