岩手・宮城・福島の産業復興事例30 2018-2019 想いを受け継ぐ 次代の萌芽~東日本大震災から8年~
100/155

都圏のクラフトビールの店や飲食店などを回り取扱店を増やしたり、関連イベントへ出展したりしながら、少しずつ販路を拡大していった。地道な営業努力で知名度も上がっていったが、それでもまだ、ビール事業が安定しているとは言えない状況だった。ビール事業が好転するようになったのは、 “ある出会い”がきっかけだった。2018年に遠野市で農業法人BEER EXPERIENCEを設立した吉田敦史氏と浅井隆平氏との出会いだ。吉田氏は遠野市に移住してトウガラシ品種の一つである、ビールに合うおつまみ野菜「遠野パドロン」栽培を始め、後にホップ生産も行う新規参入農家で、浅井氏はキリン株式会社の社員。二人は、2015年に遠野市とキリンがタッグを組みホップを通じて地域活性化を目指す「TK(遠野×キリン)プロジェクト」に途中参加し、現在は中核メンバーとして活躍する、遠野ビール界の“キーパーソン”と言える存在だ。「キリングループは遠野市と50年以上、ホップ栽培で契約関係を持っていますが、ホップの生産量が年々減少している中で、キリンだけで遠野産ホップを維持したり、市を盛り上げていったりするのは難しいと感じていました。理想を実現するためには、企業の垣根を飛び越えた連携が必要。そこで遠野市唯一のクラフトブルワリーである上閉伊酒造さんと一緒に遠野市を盛り上げていけないかと思い、TK遠野市のキーパーソンとの連携でビール事業が安定12456312清酒とビールは別棟で製造されており、杜氏を中心とした5人で清酒が造られている3上閉伊酒造のビール造りを担う醸造士の坪井大亮氏4遠野産ホップ。国産ホップの約96%が東北で栽培されており、遠野市は日本一の栽培面積を誇る5「ビールの里をつくるエンジンになることがBEER EXPERIENCEの役割」と語る吉田氏(左)と浅井氏6BEER EXPERIENCEでは、遠野パドロンを使用した加工品開発も行っている。写真は亀田製菓株式会社、株式会社ハブとコラボした「亀田の柿の種 パドロン風味」100

元のページ  ../index.html#100

このブックを見る