東日本大震災から10年が経ちました。震災により尊い命を失われた方々に、謹んで哀悼の意を表しますとともに、未だ応急仮設住宅等で不自由な生活を送られている方々をはじめ、被災者の皆様に心からお見舞いを申し上げます。
また、この10年間、1日も早く元の生活を、活気溢れる東北の街を取り戻そうと懸命に取り組んでこられた多くの方々のご尽力に深い敬意を表します。
未だ残る震災の深い爪痕が、当時の被害の凄まじさを物語っています。2011年3月11日のあの日、東北地方を襲った地震と津波による未曽有の大災害に対して、自衛隊は、災害対応では初となる統合任務部隊を編成するとともに、即応予備自衛官及び予備自衛官に対して初の災害招集を行うなど、最大時で約10万7千人、航空機543機、艦艇4隻を派遣し、まさに自衛隊の総力を挙げて取り組みました。
この苦難の渦中にあったわが国に、国内のみならず、米国・豪州をはじめ、国外からも多くの温かい支援の手が差し伸べられたことは、被災者の皆様はもとより、自衛隊にとっても大きな希望の光となりました。中でも、米軍は「トモダチ作戦」に最大時約2万人を超える人員、空母等艦艇約20隻、航空機約160機を派遣し、捜索救助、物資輸送、空港の復旧、学校の清掃、瓦礫除去作業などの大規模な支援活動にあたってくれました。自衛隊及び米軍は、それまでの日米共同訓練において積み重ねてきた成果を活かし、「トモダチ作戦」では、共同で大規模な作戦を行うことができました。これは、半世紀にわたり培ってきた日米同盟の強い絆の証であり、また、その後の日米同盟の更なる深化に繋がる礎となりました。
また、豪軍は、持てる戦力を惜しみなく投入し、C-17を活用した物資輸送を実施するなど、多くの支援で復興を支えてくれました。
我々がこのような苦難に直面した時に手を差し伸べてくれた、米・豪軍をはじめとする各国軍の皆様に、改めてお礼申し上げます。
自衛隊は、この震災を通じて得られた多くの教訓や課題を踏まえ、各種災害対処計画の見直しや、統合防災演習を通じた検証を継続的に行いつつ、統合防災演習等において関係機関・在日米軍等との連携強化に努めてきました。2013年に開始された日米共同統合防災訓練も、そのような取組の一つです。本年も、2月12日から13日にかけて、新型コロナウイルス感染症の感染防止に万全を期しつつ、在日米軍、DMAT(災害派遣医療チーム)等の関係機関の参加を得て訓練を実施し、南海トラフ地震発生時における在日米軍・防災関係機関との連携を強化したところです。
また、各地方自治体等が行う防災訓練へ積極的に参加するほか、平素から関係機関、地方公共団体、民間部門と適切に連携・協力し得る体制をとり、大規模災害などの発生に際しては、被災された方々のニーズに適切に対応し、所要の部隊を迅速に派遣して救助活動等を実施できる態勢を維持するなど、災害対応に万全を期しています。
自衛隊は、今後も災害の発生時には速やかに行動するとともに、被災された方々の想いに寄り添った活動を行って参ります。また、我々の友人である米国とは、「トモダチ作戦」によって証明され、その後も深化し続けてきた日米の強い絆を、未来へと繋いでいきたいと思います。
最後に、震災から10年を迎えた今、被災地復興の一層の進展を祈念しつつ、震災の記憶・教訓と、国民の安全・安心を守り抜く自衛隊の使命を改めて心に刻むとともに、自衛隊が引き続き各種災害派遣を含むあらゆる事態に万全の態勢で臨むことを重ねてお誓い申し上げます。