震災からの復興を進め、力強く前進する福島県。
実際に福島を訪れることで、福島の今の姿を自分の目で見て、耳で聞いて、心で感じることができます。
福島の今を知り、未来を感じる――
復興の歩みと新たな魅力を体験する二日間のツアー。
10月25日(土)〜26日(日)、TOKYO FM「ONE MORNING/Hand in Hand」主催で開催された「ユージと行く『Hand in Hand』福島スタディツアー」には、約20名のリスナーの皆さんにご参加いただきました。
被災からどのように再生し、どんな新しい可能性を育んでいるのか…
廃炉へ向けた取り組みが続く東京電力福島第一原子力発電所の現状を知り、地元の方々との交流を通じて、復興の先にある福島の「今」と「未来」を体験。
地元の食材を使った絶品グルメや人々の温かさも満喫。
ユージさんと一緒に“福島の魅力”に出会い、忘れられない旅になりました。
ツアーの様子をレポートします。
01環境再生プラザ
今回のスタディツアーには、関東圏を中心に、石川県、三重県、宮崎県など全国各地から、年齢も20代から50代までと幅広い層の方が参加してくださいました。ツアーでは、ユージさんや参加者の皆さんも初めて訪ねる町、場所が多く、「いま福島はどうなっているんだろう?」と考えながら、まず向かったのは、福島駅東口から歩いてすぐの場所にある「環境再生プラザ」です。
「環境再生プラザ」では、展示を見ながら青木仁アドバイザーから、福島の環境再生や中間貯蔵、課題となっている県外最終処分に向けた取組に関する説明をお聞きしました。2011年の震災当時には連日報道されていた東京電力福島第一原子力発電所事故関連のニュースは、現在では触れる機会が少なくなっており、特に若い世代の参加者からは「初めて知った」という声が聞かれました。東京電力福島第一原子力発電所事故の経緯、放射線の基礎知識、そして廃炉に向けた現在の状況などについて、正しく理解する貴重な機会となったようです。

- 施設情報
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環境再生プラザ
福島の環境回復の歩みや放射線、中間貯蔵などの環境再生に関する情報発信拠点。学校などへ専門家を派遣したり、様々な地域やイベントで移動展示や専門スタッフによる解説や相談を行っている。
02 浜の駅松川浦(相馬復興市民市場)
「環境再生プラザ」のある福島市から2021年に開通した東北中央道を通り、一行が次に向かったのは、相馬市のランドマークのひとつ「浜の駅松川浦」(相馬復興市民市場)。2020年にオープンしたこの施設は、相馬市民の“台所”的な場所でもあります。
バスが「浜の駅松川浦」に到着すると、乗り込んできたのは、施設のプロデュースにも関わった現役漁師であり、『Hand in Hand』でもおなじみの菊地基文さん。相馬市民の「台所」を訪れる前に、菊地さんにお話を伺いました。
――改めて自己紹介をお願いします
こんにちは。福島県相馬市の松川浦漁港で漁師をしています菊地基文です。所属は、相馬双葉漁協相馬原釜支所で、沖合底引き網漁という漁法で漁をしています。よろしくお願いします。
――漁業以外にも地域活動をされているそうですね?
本業の漁業はもちろんですが、水産加工品の開発にも取り組んでいます。地元の味を広めるために、自分で商品を作ったり、プロモーション活動もしています。
――漁師自身が発信することの意味とは?
自分たちが毎日魚を食べているからこそ、「この魚はこう食べるといい」「この佃煮は美味しい」って言うのが一番説得力があると思うんです。だから自分で発信しています。そういう人がいないと、いいものが広がらないまま終わってしまうこともあるので、地元の魅力を広めたいと思っています。
――松川浦でおすすめの特産品を教えてください。
松川浦は、アサリや青のり(あおさ)が名産です。「青のりの佃煮」は香りが良くておすすめで、特に「おびすや」の『ピリカラ青のり佃煮』は絶品!アサリ入りの佃煮もあります。ご飯が進むので、ぜひ食べてみてください!ちなみに、青のりと黒のりの違いがわかる人いますか?いちばんの違いは香りで、青のりの方が香りが強いんです。黒のりは香りが控えめでパリッとした食感になる。のり巻きに使うのは、黒のりなんですけど、香りや風味を出すために青のりを混ぜているんです。板のりや焼きのりの業者さんに、ここ松川浦の青のりを出しているので、香りの良い松川浦の焼きのりもぜひ食べてみてください!
「浜の駅松川浦」では、残念ながら食堂で人気の地魚丼を味わう時間はありませんでしたが、参加者の皆さんは、あおさ海苔や菊地さんおすすめの「おびすや」の『ピリカラ青のり佃煮』などを購入。「常磐もの」の海産物が豊富に並ぶ魅力的な売り場でしたが、初日ということもあり、ここはぐっと我慢…。
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- 施設情報
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浜の駅松川浦(相馬復興市民市場)
相馬で水揚げされた新鮮な魚介類をはじめ、地元農産物や加工品、お土産などを販売。海鮮食堂「浜の台所くぁせっと」では、旬の地元海産物を使ったメニューが味わえる。
03 LANDBUILD FARM(サムライガーリック)「和坐」
「「浜の駅松川浦」で美味しそうな海産物を目にして、空腹感が最高潮に達した一行。次に訪れたのは、8月の『Hand in Hand』でもご紹介した「サムライガーリック」の吉田さやかさんの生家。築150年の古民家をリノベーションした「和坐(わざ)」は、展示や体験、レンタルスペースとしても活用されていて、地域の伝統や文化を感じることができる場所です。
浪江町で生まれ育った吉田さんは、震災と東京電力福島第一原子力発電所の事故による避難生活を経て、2020年に故郷に戻りました。それまで農業経験はなかったものの、試行錯誤を重ねながら「サムライガーリック」というブランドでニンニク作りに挑戦。地域の伝統文化や家、農地を守りたいという想いが、この取り組みへとつながっています。
この日は、浪江町の「おむすび専門店えん」のサムライガーリックの「ニンニク味噌おむすび」が入ったお弁当を参加者全員でいただきました。おむすびを味わいながら、吉田さんにお話を伺いました。
- ユージ
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「まず、この場所について教えてください」
- 吉田
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「ここは、明治4年に建てられた築150年以上の古民家です。震災の時も、瓦一枚落ちなかったほど丈夫で、私たち兄弟で守っていこうと決めてリノベーションしました。今は、『LANDBUILD FARM』という農業法人と、『和座』という屋号で飲食業もやっています」
- ユージ
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「屋根裏から出てきたという古い写真、すごかったですね~」
- 吉田
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「あれは祖父が写っている90年前の写真です。刀を置いて鍬(くわ)を持ち、農業を始めた姿が写っていて、私たちのルーツを感じます」
- ユージ
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「相馬の野馬追についても教えてください」
- 吉田
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「野馬追は、千年以上続く伝統のお祭りで、甲冑を着た騎馬武者が約400頭集まります。私たち家族も代々参加していて、このお祭りのために自分のマイホース、マイ馬(笑)を持っている方がこの地域がすごく多くて…。それがこの地域の原風景になっていたんですけれど、震災後はなかなか難しくて。馬の頭数は減っていますが、やはりこの伝統文化を継承して守っていきたいと思っているので、今でも馬を6頭飼って馬と一緒に生活しています。引退した競走馬をリトレーニングして祭りに参加させるなど、文化の継承にも力を入れています」
- ユージ
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「震災後、農業を選ばれた理由は?」
- 吉田
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「震災後、生まれ育った浪江町に貢献したいと思っていて…。貢献できるならどの分野の仕事でもいいなと思っていたんですけど、当時、農業という分野では人材不足で、特に若手のプレイヤーがすごく少なくて…。せっかくこの家もあるし、先祖が代々残してくれた農地もあるし、できることならチャレンジしてみようということで農業という道を選択したんです」
- ユージ
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「サムライガーリック、めちゃくちゃ美味しかったです!」
- 吉田
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「ありがとうございます!戦国時代、侍たちはニンニクとカツオの刺身を食べていたそうです。スタミナ源でもあるニンニクを、この地域の歴史と結びつけて「サムライガーリック」と名付けて栽培しています」
- ユージ
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「サムライジンジャー(ショウガ)にも挑戦されたとか?」
- 吉田
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「今年、ショウガの試験栽培をしましたが、水分管理が難しくて失敗してしまいました。来年は、土づくりから見直して再挑戦する予定です。ジンジャー派の侍も、きっといたはずですから(笑)」
- ユージ
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「サムライガーリックのおすすめの食べ方があれば教えてください」
- 吉田
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「皆さん、焼きニンニクとか想像しがちですけど、うちのニンニクは蒸したり揚げたりするとすごいトロトロになるんです!それを味わっていただきたいので、アヒージョがおすすめです。ニンニクの皮をむかずに、ばらしてそのまま入れると崩れず香りもいいので、ぜひブロッコリーと砂肝を加えて食べてみてください!ブロッコリーがクタクタになって、それをニンニクと一緒につぶしてバゲットで食べる…。最高においしいです!」
- ユージ
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「洒落てますね~。おいしそう!!あと、2階で見せていただいた嫁入り道具も印象的でしたが…」
- 吉田
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「皆さんにぜひ見ていただきたいなと思って、うちに嫁いできた代々のお嫁さんが持ってきた会津塗りのお椀などの嫁入り道具などを展示しています。いつか、ここで民泊もやってみたいですね!」
- ユージ
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「民泊、絶対泊まりたいと思っちゃいますね!」
お話を伺いながら、吉田さんのお母さん手作りのバスクチーズケーキをいただきました。黒ニンニク入りとエゴマ入りという少し意外な組み合わせでしたが、どちらも香ばしいコクがまろやかなチーズと絶妙に調和し、とても美味しくいただきました。エゴマは震災前から浪江町内で栽培されていた作物で、現在、浪江町は全国トップクラスの生産量を誇るエゴマの産地となっています。
最後に、サムライガーリックやコーラシロップなどをお土産に購入される方も多く、吉田さんの想いと味がしっかりと心に残る昼食となりました。


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- 施設情報
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「和坐」(サムライガーリック)
福島県双葉郡浪江町の築150年以上の古民家をリノベーションし、時代をつなぐプラットフォームとして再生。野馬追の伝統が息づく浪江町で、サムライの気持ちを味わえる本格的な甲冑の着付け体験ができるほか、各種のイベントやワークショップなどを開催している。
04道の駅なみえ
2020年プレオープン、2021年にグランドオープンした浪江町のランドマーク「道の駅なみえ」へ。B級グルメとして人気の「なみえ焼そば」や、請戸漁港から直送されたシラスを使った丼ぶりが味わえるフードコートのほか、地元の野菜や海産物を扱うショップがあります。隣接する「なみえの技・なりわい館」には、「鈴木酒造店」の浪江蔵とショップ、そして現在は県内各地で窯を再開している大堀相馬焼の窯元が一堂に出品する大堀相馬焼コーナーもあり、浪江の魅力が詰まった場所です。
残念ながらこの日は、大堀相馬焼コーナーの営業が終了していましたが、参加者の皆さんは鈴木酒造店日本酒や「飲める本みりん」として話題の『黄金蜜酒(こがねみつざけ)』を購入したり、甘酒ソフトクリームを味わったりと、「道の駅なみえ」の魅力を存分に楽しんでいました。
- 施設情報
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道の駅なみえ
浪江町の復興のシンボルとして、2020年8月にオープン。地元・請戸漁港で水揚げされた魚を使った料理やご当地グルメの「なみえ焼そば」が味わえるフードコート、地元産の野菜や福島産のくだもの、海産物などを販売する直売所がある。併設の「なみえの技・なりわい館」では、「大堀相馬焼」の展示販売や陶芸体験、地元の銘酒「磐城壽」の酒蔵で酒造り見学もできる。
05東日本大震災・原子力災害伝承館
東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故についての記録や教訓、復興の歩みを伝える、双葉町の「東日本大震災・原子力災害伝承館」を訪れました。
出迎えてくださったのは、伝承館職員の横山和佳奈さん。浪江町出身の横山さんは、小学6年生の時に東日本大震災を経験し、東京電力福島第一原子力発電所の事故に伴って郡山市へ避難。その後、大学を卒業し、現在は伝承館のスタッフとして語り部の活動をされています。館内では、西田敏行さんのナレーションによる映像を鑑賞した後、数多くの展示物を見学。横山さんとの質疑応答の時間も設けられ、参加者の皆さんは真剣な表情で耳を傾けていました。
今、皆さんがいらっしゃるこの場所では、事故前の暮らしを展示しています。たとえば、この地域に住んでいた子どもたちは、社会科見学の一環として東京電力福島原子力発電所を訪れ作文を書いたり、夏休みの宿題で習字にしたり、ポスターを描いたり、それくらい原発は日常に馴染んでいました。当時、原発が危ないと考えていた子どもは、ほとんどいなかったんじゃないかと思います。私自身、ここ双葉町の隣町・浪江町の出身ですが、原発が危ないと思ったことはありませんでした。
――地元出身の横山さんに、なぜ伝承館で働くことを選んだのか伺いました
私は、伝承館が建っているここ双葉町の隣、浪江町請戸地区の出身で、地震、津波、そして東京電力福島第一原子力発電所の事故を経験しました。津波で祖父と祖母が流され、命を落としました。その家族の死を通して、なぜ二人は亡くなってしまったのか、なぜ助からなかったのか、どうすれば助かったのか、それを皆さんに伝えたいなという風に思っていて…。というのも、やはり私のように悲しい思いをする人が一人でも減って欲しいと思いますし、皆さん自身にも、命を守って欲しいという風に思っているので…。津波が来ると分かったら迷わず逃げなきゃいけないんだよ、とか——当たり前のことですけれど、大人になればなるほど意外と難しいもので。「どうせ大丈夫」っていう気持ちが先に働いてしまうので、「そうならないで欲しい」っていうことを強く伝えたくて、今ここ伝承館で働いています。
震災から14年が経過して、「風化」とよく言われるんですけれど、皆さんの世代であればリアルタイムでニュースを見ていたり、少なからず震災や原発事故のことは知っていると思うんですが、今の中学生以下になると、震災後に生まれた世代が多くなっていて、見学後のアンケートにも「自分が生まれる前のことで知らなかったけど、分かってよかった」みたいなことが書いてあるんですね…。そうした世代に、どう伝えていくか、どうやったら関心を持ってもらえるかということは課題だと感じています。
今回こうして来ていただいた皆さんには、ぜひ「自分の目で見て、何を感じたのか」というのを、周りの方にもぜひ伝えて欲しいと思っております。
――津波や地震を経験して、フラッシュバックなど辛い思いはありませんか?
私は津波そのものを見ていないんです。当時、請戸小学校にいて、先生たちと一緒に約1.5キロ離れた大平山という山まで走って避難をしました。その山は整備されたきれいな場所ではなかったので、一度入ると後ろを振り返っても雑木林で津波は一切見えませんでした。その後、山を反対側に下りたところで、たまたま通りかかったトラックに乗せてもらって、全員で浪江町役場まで避難することができました。
現在、請戸小学校は震災遺構として公開されていて一般の方も校舎内を見学することができます。1階部分が壊滅的な被害を受けているので見た目のインパクトはかなり強いんですが、私にとって「壊れて辛い」という思いよりも、「懐かしい、自分の知っている場所だ」という感覚になるので、意外かと思われるかもしれないですけれど、悲しいというよりどちらかというと明るい気持ちになります。
――当時小学生だったとのことですが、同級生の皆さんは今どうされていますか?
やはり、戻ってきていない人の方が多いです。私の同級生は19人いたのですが、今、福島県の海沿い、浜通りに戻ってきて働いているのは、知っている範囲で私を含めて4人です。これでも、かなり多い方だと思います。他の人たちは、避難先の方で新しく居を構えてそこで就職したり、あるいは避難先からさらに進学して別の県に行って、そのまま就職したという人も多いです。
展示スペースを出ると、廊下には福島、岩手、宮城の被災住民の写真が並び、荒れ果てた故郷の風景や再会を喜ぶ笑顔、地域の再生への希望が写し出されていました。参加者の皆さんは、自分の故郷と重ね合わせるように、写真に見入っていました。双葉郡の歩みを心に刻む、そんな深い時間になりました。

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- 施設情報
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東日本大震災・原子力災害伝承館
福島県双葉町にある震災伝承施設。福島で起きた地震、津波、東京電力福島第一原子力発電所事故という未曽有の複合災害の実態や、復興に向けた歩みを展示するとともに、被災した住民による語り部講話などを実施。展示見学に加え、研修プログラムや調査・研究を通じ、防災・減災に向けた教訓を国内外へ発信している。
06東京大学×8bitNews
「東日本大震災・原子力災害伝承館」に隣接する「双葉町産業交流センター」にある東京大学の拠点には、今年開局した「F8スタジオ」があります。東京大学大学院情報学環・学際情報学府准教授の開沼博さんが福島国際研究教育機構とともに設置したこのスタジオでは、ジャーナリストの堀潤さんが代表を務める「8bitNews」が協力して新メディア『F-BIKEチャンネル』を立ち上げ、定期的に収録、発信しています。
今回のスタディツアーでは、その番組収録を観覧させていただきました。出演者は、開沼博さん(社会学者)、堀潤さん(ジャーナリスト)、川端瞭英さん(スタートアップ企業経営者)、和田彩花さん(インフルエンサー)の4名です。
トークでは、各出演者が福島との関わりや活動背景などを紹介。2024年に大熊町に移住し、地域の食事課題を改善する「食トレAI」の開発を行っている川端さんは、大熊町にエネルギー系企業が集まってきている現状を紹介し、「大熊は再エネ100%を目指している。他の地域と違う点が大熊にはある。ゼロからコミュニティを作っている」と語り、前向きな人々が集まる場として大熊町の可能性を示しました。和田さんは、「震災以降の福島の情報がアップデートされていなかった」と語り、今回のスタディツアーを通じて「福島のイメージが変わった」と実感を述べられました。堀さんは、浪江町のトルコギキョウの生産者の事例を紹介。「福祉系のNPOが始め、高く売れるようになり、東京オリンピックでも使われた。関わってみると、イメージが変わる。このギャップはなぜ発生してしまうのか、どう埋めるべきなのか?」と問いかけました。そして、「東京の電力が福島でつくられていたという認識があれば、自分ごと化されるのでは?」と語り、除去土壌の復興再生利用を福島県外で行う意義にも触れられました。開沼博さんは、震災後の福島をめぐるメディアや教育のあり方について、「わからないことにどう向き合うか」が重要だとし、すでにわかっていること、過去の経験や共通の体験を“使う”ことが、未来を考えるうえでの手がかりになると話しました。
福島・浜通りの現状や個人の体験、それぞれの視点などを交えながら、地域との関わり方や未来像についてトークが繰り広げられました。開沼博さん、堀潤さんらによるお話を聞く、貴重な体験となりました。
- 施設情報
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東京大学×8bitNews
東京大学の開沼博准教授と福島国際研究教育機構が共同で立ち上げた映像発信拠点「F8スタジオ」と市民メディア「8bitNews」(代表:堀潤)が協力し、地域の声を届ける新メディア『F-BIKEチャンネル』を運営。地元の人々や文化、課題をテーマにした番組を定期的に収録・配信し、福島から全国・世界へ情報を発信している。
07交流会
今回のツアーでは、双葉町の「ビジネスホテルARM双葉」に宿泊し、館内の食事処で交流会を兼ねた夕食を楽しみました。テーブルには、常磐もののお刺身やメヒカリのから揚げなど、地元ならではの味覚も!参加者同士で親睦を深めながら、和やかな雰囲気の中で楽しい時間を過ごしました。

- 施設情報
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ビジネスホテルARM双葉
双葉町中野地区復興産業拠点に2021年5月1日オープン。「双葉町産業交流センター」、「東日本大震災・原子力災害伝承館」に隣接。食事処では、本社所在地の北海道から直送した食材と、地元福島県の食材を豊富に使った手作りのメニューが楽しめる。
08早朝ウォーキング
ツアー2日目はあいにくの雨模様でしたが、東京大学大学院情報学環・学際情報学府准教授の開沼博さんが案内する早朝ウォーキングには、多くの参加者が集まりました。
宿泊先を出て海へと向かう道すがら、一行が目にしたのは、震災から10年以上が経過した今もなお、手つかずのまま残る風景でした。海沿いの道からは、ツアー1日目に訪問した「東日本大震災・原子力災害伝承館」の建物を見ることができました。開沼さんから、伝承館周辺のエリアは「福島県復興祈念公園」として整備が進められているところだと説明がありました。整備している区域内外に広がる震災遺構や、再生・復興していく双葉町と浪江町を一望できる丘を中心とした国営の追悼・祈念施設で、来春2026年には完成を目指して工事が進められているそうです。

09浅野撚糸株式会社 双葉事業所 フタバスーパーゼロミル
2日目の最初に訪れたのは、2023年に開業した浅野撚糸㈱の新しい複合施設「フタバスーパーゼロミル」。撚糸工場、オフィス、タオルショップ、カフェがひとつになった、一般の方にも開かれた場所です。ご案内いただいた広報担当の子安結愛華さんによると、我々のようなツアーや個人での見学者はもちろん、ふらっとお茶を飲みに立ち寄る方もいらっしゃるそうです。
- ユージ
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「2023年の春に開業されて、浅野社長は『ただの工場じゃなくて、イベントスペースやカフェなど人々が集える場所、にぎわう場所にしたい!』と語っていたとのことですが、まさにそういう形になってますね!カフェもあるし広場としてのスペースもあって、来た人たちが工場をしっかり見られる環境にもなっていて。見学に来られる方もいらっしゃると思うんですけど、カフェもあるんで、ふらっとお茶だけ飲みに来る人もいるんですか?」
- 子安
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「はい、特にこの周辺にお住いの方。カフェのようなところがまだこの辺にないので、昼ごろにいらっしゃって、閉店までお茶会をしているお客さんも最近増えてきました」
- ユージ
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「そうなんですか!昼に来て閉店までずっといるんですか(笑)」
- 子安
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「はい。ママ友のような雰囲気で、ちょっとした会議をされているようです(笑)」
- ユージ
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「集いの場になってるんですね~」
- 子安
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「はい。理想の形になってきています!」
- ユージ
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「ショップも併設されてるんで、もちろんタオルを購入される方もいらっしゃるかと思いますが…。
ひとつ気になったのは、入口入ってすぐにピアノがあったんですけど、あのピアノはどういうピアノなんですか?」 - 子安
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「双葉中学校で、震災後ずっと音楽室に置いてあったピアノなんですけれど…。そちらを寄贈いただきまして、メンテナンスもしっかりして、今ここに置かせていただいています。ピアノコンサートを行ったり、今はフリーピアノとしてエントランスに置かせていただいてます」
- ユージ
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「誰が弾いてもいいんですね?(子安さんは)ピアノは弾くんですか?」
- 子安
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「私は、猫踏んじゃったしか…」
- ユージ
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「猫踏んじゃったか…俺と一緒だ(笑)。イベントで言うと、アーティストの方に来ていただくこともあるし、今日もタオルを安く販売しているとのことで…。年に何回やってるんですか?」
- 子安
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「2回です!」
- ユージ
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「年に2回の1回が今日だったんですね!」
- 子安
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「はい、そうなんです!もう、すごく運がいいなと思って(笑)」
- ユージ
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「すごいなー!だって普段だったら2万円くらいするタオルが、いくらになってるんでしたっけ?」
- 子安
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「9,500円です」
- ユージ
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「9,500円!信じられない!このチャンスお見逃しなく!と、まるで通販番組のようになってしまいましたが (笑)。ここは双葉町にいらっしゃった際には、ぜひ訪れてほしい場所ですね!」
- 子安
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「双葉の震災の爪痕を見ることができるところもたくさんあると思うんですけれど、ここに来ていただけたら、『光』というか今後の双葉の明るいところもしっかり見届けていただけると思います!」
- ユージ
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「浅野社長のここに至るまでのヒストリーも学べるし!いや、でもお話が上手ですよね~」
- 子安
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「ありがとうございます!」
- ユージ
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「ありがとうございました(拍手)」
「フタバスーパーゼロミル」の建物は、上空から見ると「0(ゼロ)」の形をしたユニークな形をしていて、まるで美術館のような洗練された外観です。見学コースでは、子安さんのアテンドで、吸水性・速乾性に優れ「魔法のタオル」と呼ばれる製品の誕生秘話や、双葉町への進出の背景などを伺いながら、施設の魅力をじっくり体感することができました。その後は、皆さんカフェで桃のスムージーなどを味わいながら一息ついていらっしゃいました。

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- 施設情報
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浅野撚糸株式会社 双葉事業所
フタバスーパーゼロミル「フタバスーパーゼロミル」は、浅野撚糸が5年の歳月を費やして完成させた世界に誇る特許技術撚糸「SUPER ZERO®」の大規模生産拠点。この工場で生産された双葉町を代表する糸やタオル製品を日本だけでなく世界に発信している。
10東京電力廃炉資料館
東京電力が運営する「廃炉資料館」は、福島第一原子力発電所事故の記憶と教訓を伝えるための施設です。エントランスには、「私たちは、事故の反省と教訓を決して忘れることなく後世に残し、廃炉と復興をやり通す覚悟をもって『東京電力廃炉資料館』を運営してまいります」という言葉が刻まれていて、その先には、地震と津波が福島第一原子力発電所事故を引き起こすまでの経過や現場での対応や廃炉作業の進捗状況などが詳細に展示、紹介されています。
展示を前にすると、当時の現場の緊迫した様子はもちろん、固唾をのんで見守っていたあの日の記憶や感情がよみがえってきます。当時を知らない、あるいは記憶にない若い参加者も、真剣な表情で展示に見入っていました。

- 施設情報
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東京電力廃炉資料館
福島第一原子力発電所事故の記憶と記録・反省と教訓、廃炉現場の最新状況等を発信するために東京電力が運営する資料館。豊富な展示等から、事故当時の状況、事故の教訓や廃炉進捗状況等について学ぶことができる。
11ワンダーファーム
2014年に開業したいわき市四倉の「ワンダーファーム」。開業当時は、福島県全体の農産物が風評被害に直面していました。「ワンダーファーム」は、最先端の設備で安全・安心、そして何より品質を重視した美味しいトマトを栽培し、実際に食べて、見て、触れて、農業や食を体験することで、福島県の復興と風評払拭につなげたいという想いでオープンしたトマトのテーマパークです。
今回はランチを兼ねて訪れました。地元食材をふんだんに使ったランチは、サラダやスープ、スイーツがビュッフェスタイルで楽しむことができます。中でもトマトのマリネは人気で、何度もおかわりしたくなる美味しさでした。
食後はトマト収穫体験へ。スーパーに並ぶ赤いトマトは、青いうちに収穫されてから熟したものがほとんどですが、ここでは茎についたまま赤く熟したトマトを摘み取ることができます。袋いっぱいに収穫したトマトを手に、参加者の皆さんからは笑顔がこぼれていました。
- 施設情報
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ワンダーファーム
福島県いわき市にある国内でも珍しい一年中トマト狩り体験ができるトマトハウスと、採れたてトマトや地域食材を使用したフレンチ&イタリアンレストラン、地域の特産品を集めた直売所、手ぶらでバーベキューや貸切キャンプ、食のイベントなどが楽しめる施設。
12道の駅いわき·ら·ら·ミュウ
旅の締めくくりは、いわき市のランドマーク「いわき・ら・ら・ミュウ」へ。今年、道の駅として登録されたこの施設では、海産物のお土産を買い求める方や、浜焼きの牡蠣、凍み餅(しみもち)を頬張る人も!
そして、いわき駅までの車中は最後の交流タイム!ユージさんへの質問が次々と飛び交い、ラジオ放送では語れない裏話まで飛び出し、到着ギリギリまでバスの中は盛り上がりました。

- 施設情報
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道の駅いわき·ら·ら·ミュウ
いわきの物産・観光情報を発信する道の駅。新鮮な海の幸を販売する海鮮市場通り、購入した魚介類をその場で焼いて食べることができるバーベキューゾーンのほか、海鮮グルメ通り、海鮮ふるさとお土産通りなど、見て・食べて・楽しめるいわきの人気の観光スポット。
スタディツアーを終えて~参加者の感想
- ●静岡県から参加の男性(住職)
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発災以降、福島を訪れるのは初めてだったのでいろんな意味で勉強になりました。ここで生活していた人たちの暮らしが、様変わりしてしまったんだろうな…というのを感じて。そんな中でも、いろんな人が集まって協力して、また人を集めよう!という風に努力しているのが分かったので、インプット、体験をして見たもの聞いたものを今度はアウトプットして。私は檀家さんとかに、いろんな人の思いとか感じたものを伝えられればいいなと思っています。
- ●千葉県から参加の女性
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震災後の福島については知識ゼロに近く、正直、他人事と思っていた部分もあって、でもなおさら参加して学びたいなと思って…。やっぱり食べて応援というか、いろいろ自分でできる限り、どんどんやりたいなと思っています。サムライガーリックのおむすびとサムライガーリックを使ったチーズケーキが本当に美味しいと思いました。
- ●神奈川県から参加の女性
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番組の企画だったので、普段観光客が行けないところにも行けるんだろうなと思って参加しました。私は震災の話をすると、まだちょっと苦しくなるんですけれど…。福島の人たちは乗り越えて、14年という月日が流れていて、前に向かっている姿を見られてすごくよかったです。
- ●三重県から参加の男性
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2011年の震災当時は大学生で、気仙沼にボランティアに行ったりとか、被災地と関われたんですけれど、福島にはあまり行くことがなくネガティブなイメージを持っていました。復興までは、まだまだ道半ばっていうのは分かったんですけれど、それと合わせて、この土地で新たな産業を起こしてみよう!っていう人たちがいることと、学生さんたちがこの地域に関心を持っていっぱい集まっているところに触れて、なんだか明るい未来を感じることができました。この地域に何度も訪れて、このバスツアーで巡れなかったところにも行ってみたいと思いました。いろんな人と話してみたいです。
スタディツアーを終えて~ユージさんの感想
この度はたくさんの方と一緒に福島の「今」を学ぶツアーに参加できたことを嬉しく思っています。知っているようで知らなかった事もたくさんあった福島の当時の様子から、今日現在まで復興に力を入れる地元の方々の想い。色んな視点で見て、触れて、学ぶ事ができました。たくさんの方に訪れて頂きたい、場所や美味しいものたくさん体験できました。皆さんとは2日間ではありましたが、今度家族と訪れたいなと強く思いました。ありがとうございました。
- ユージさん|タレント、モデル、MC
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アメリカ(フロリダ州)出身
元大工という経歴があり、手先の器用さとデザインセンスを活かし、DIYやイラストなど才能ぶりを発揮。4児の父でもあり、2016年に史上最年少でベストファーザー賞、イクメンオブザイヤーをW受賞。2021年4月からTOKYO FM「ONE MORNING」のパーソナリティを務めている。
ラジオ放送情報
「Hand in Hand」は、平日朝6時から生放送でお届けするラジオ番組「ONE MORNING」内で毎週金曜の朝8時11分に放送。TOKYO FM/JFN36局ネットにてお聴きいただけます。番組を聴き逃した方は、ラジオ番組を無料で聴くことができるアプリ「radiko」のタイムフリーや「Podcast」でお楽しみいただけます!
※タイムフリーは、過去1週間以内に放送された番組を後から聴くことのできる機能です。




