Hand in Handreport.91

風評の払拭にむけて実際に現地に訪れて見たこと聞いたことを、分かりやすく伝えるレポートです。

インタビュー2025.03.21

バナナを広野町の特産に。濃厚な味わいと型破りなネーミングで町に元気!

広野町産バナナのポスターを紹介する幸森さんと諸橋さん

福島県浜通りに位置する広野町。日本初のサッカーナショナルトレーニングセンター「Jヴィレッジ」がある町として知られ、全国から多くのサッカー選手たちが訪れる場所です。また、冬でも雪の降らない温暖な気候で「東北に春を告げるまち」とも呼ばれ、東北では珍しいミカン栽培が行われてきました。そんな広野町では、東日本大震災後、ある南国フルーツの栽培が進められています。それは復興の象徴ともなったバナナ。どうして広野町でバナナの栽培が始まったのか、女性アイドルグループ「=LOVE(イコールラブ)」のメンバーで、福島県いわき市出身の諸橋沙夏さんがリポートします。

取材の様子は動画でも公開中!

「心の復興」を目指して始まったバナナ栽培

広野町にある「二ツ沼総合公園」。パークゴルフ場やサイクリングロード、バーベキュー施設が整備され、町民の憩いの場として親しまれてきました。しかし、2011年に発生した東日本大震災と東京電力福島第一原発事故の影響で、一時全ての町民が避難を余儀なくされ、公園は原発事故の収束作業のための拠点となりました。そのため、広い公園の敷地内には2階建てのプレハブや大型の重機に加え、大量の資材が置かれていました。その後、広野町を始め被災市町村の避難指示が徐々に解除され、公園は少しずつ元の姿を取り戻しました。

そんな公園内に、震災前にはなかった「トロピカルフルーツミュージアム」と書かれた大きな看板が設置されてあります。その看板の先にあるのは大きなビニールハウス。中に入ると、そこには南国フルーツのバナナが育てられていました。

トロピカルフルーツミュージアムの看板と建物

「広野町は、原発事故だけでなく地震や津波の被害も大きかったんです。時間の経過とともに橋や道路などのインフラは整備されましたが、心の復興はなかなか進みませんでした。そこで広野町振興公社が、2018年にバナナの栽培を始めたんです」

そう語るのは、広野町振興公社の幸森千尋さん(55)。広野町でのバナナ栽培に一から携わってきた一人です。それにしても、なぜ復興を目指す広野町でバナナだったのでしょうか?

「このバナナは、マイナス60℃の氷河期を疑似体験させ、生き残った苗を培養して育てたものです。我々も復興に向けて厳しい状況に直面していました。このバナナのように、困難を乗り越えようという思いを込めました」

広野町振興公社の幸森千尋さん
広野町振興公社の幸森千尋さん

東北地方初の試みとなったバナナ栽培は、「凍結解凍覚醒法」という新技術を応用し、寒さに強い苗を使っています。2018年にわずか150株ほどから始まった栽培は、現在では約400株にまで拡大。熱帯地域で育つバナナを東北で栽培し収穫する挑戦は、県内外から多くの観光客を呼び込むだけでなく、町民たちに希望をもたらす存在になっています。

二度驚く!「ネーミング」と「味」

広野町のバナナは、農薬を使わずに育てられていて、皮ごと食べられるのが特徴です。手に持っているだけで周囲に甘い香りが広がり、小ぶりながらも濃厚でクリーミーな味わいが魅力。さらに、そのバナナのネーミングも個性的です。

諸橋

「すごく特徴的なネーミングだと聞いたのですが…?」

幸森

「名前は『朝陽に輝く水平線がとても綺麗なみかんの丘のある町のバナナ』と言います。略して『綺麗』です」

袋入りのバナナとパッケージ箱の写真

この長い名前は、北海道から鹿児島まで全国から寄せられた公募で決定しました。「日本一美しい日の出の町」を宣言するほど綺麗な町の景色を表し、栄養豊富な皮を食べることで「体の内側から綺麗になってほしい」という思いが込められているといいます。ところで、こんなエピソードも…。

幸森

「実は私も応募したんです…」

諸橋

「どんなネーミングだったんですか?」

幸森

「『不屈』という二文字で応募しましたが、一次審査の前の予備審査で落ちました」

諸橋

「……」

さて、ユニークな名前の由来を伺ったところで、諸橋さんはその味を確かめてみることにしました。この日、幸森さんが用意してくれたのは生クリームをトッピングしたバナナシェイクです。

諸橋

「私、バナナが好きでよく食べるんですけど、このシェイクはちょうど良い甘さでスッキリ飲めます!今まで飲んだ中で、ぶっちぎりの1位です!」

バナナシェイクを楽しむ諸橋さん

バナナの甘味をさらに引き立てるために生クリームや塩が入れられていて、「トロピカルフルーツミュージアム」でも人気の一品です。さらに、広野町の復興のシンボル的存在となったこのバナナの魅力を広めようと、町内にある県立ふたば未来学園高校とコラボレーションしたクッキーやドーナツなどのお菓子も開発されています。今後も、高校生たちのアイディアを活かした様々な商品開発を進めたいといいます。

「子どもたちが広野町で成長し、そのまま生活してくれたら嬉しいですが、ここにこだわらず、世界に羽ばたいてほしいとも思っています。その時に、『広野町ってどんなところ?』と聞かれたら、『バナナを育てている町』と自信を持って答えてもらえるようになりたいですね」

過酷な状況を乗り越えて育つ姿を復興に重ね合わせて、広野町を代表するフルーツとなったバナナ。町の魅力を発信し、新しい産業として成長していくことが期待されています。

ドーナッツを笑顔で紹介する諸橋さんと幸森さん

【動画はこちら】イコラブ諸橋沙夏さんが双葉・広野・富岡へ!復興へ取り組む福島の魅力をリポート

ラジオ放送情報

「Hand in Hand」は、平日朝6時から生放送でお届けするラジオ番組「ONE MORNING」内で毎週金曜の朝8時11分に放送。TOKYO FM/JFN36局ネットにてお聴きいただけます。番組を聴き逃した方は、ラジオ番組を無料で聴くことができるアプリ「radiko」のタイムフリーでお楽しみください。
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