Hand in Handreport.81

風評の払拭にむけて実際に現地に訪れて見たこと聞いたことを、分かりやすく伝えるレポートです。

インタビュー2024.10.18

幻の特産品を、飯舘村の希望へ…もち米復活を託された青田豊実さん

「=LOVE」のメンバーで福島県いわき市出身の諸橋沙夏さんと農家の青田豊実さんの写真

福島県飯舘村に広がる黄金色の田んぼ。風に揺れる稲穂は、まるで美しい自然のリズムに合わせて踊っているかのようです。ここで育っているのは、1993年から約15年かけて福島県が開発したもち米「あぶくまもち」。かつて村の新たな特産品として期待されていたこのもち米は、今、再びその輝きを取り戻そうとしています。

この「あぶくまもち」は、作物の生育に厳しい阿武隈山系の山間部でも力強く育つよう開発されました。15年の研究と努力を経て、2011年1月、飯舘村の「新春村民の集い」で初めてお披露目され、餅つきが行われました。しかし、その2ヶ月後、東日本大震災が発生し、特産品づくりは中断を余儀なくされました。

今回、その途絶えた特産品に込められた思いを、女性アイドルグループ「=LOVE(イコールラブ)」のメンバーで福島県いわき市出身の諸橋沙夏さんがリポートします。

取材の様子は動画でも公開中!

震災で途絶えた夢の再起

「飯舘村は中山間地で昔から冷害に悩まされ、作物を作るには厳しい環境でした。そんな土地でも育つ米として『あぶくまもち』が開発されました」

そう語るのは農家の青田豊実さん(53)。東京での会社員生活を経て、30代で飯舘村に戻り、代々農業を営んできた家業を継ぎました。稲作には厳しい環境にありながらも、自然豊かな土地柄を活かし、青田さん始め農家たちの創意工夫で村の産業を盛り上げてきました。

避難していた時もいつか村に戻り再び米を作ることだけを考えていたと語る青田豊実さん

しかし、青田さんが働き盛りの40代に差し掛かった2011年、福島第一原発事故が発生します。飯舘村は全域が避難区域に指定され、青田さんも避難を余儀なくされました。

「避難していた時も、いつか村に戻り、再び米を作ることだけを考えていました。戻ってみると、田畑は荒れ果て、草木が2〜3メートルも伸びていました。それらを全て手作業で刈り取りました」

避難指示が解除されたのは2017年。村での稲作から離れて6年が経過していました。当時は放射性物質を除去する除染が行われ、耕作ができない農地には除染土を詰めた黒いフレコンバッグが所狭しと並んでいたといいます。原発事故で荒れたふるさとの姿を見るたびに、青田さんは悲観的な思いよりも「自分の手で村の農業を復活させたい」との思いが募っていったと話します。

諸橋沙夏さんがあぶくまもちの稲穂を背にしている様子

青田さんは2017年の避難指示解除とともに村に戻り、翌年には農業を再開しました。長期間作付けができなかった田んぼを復活させるのには大きな苦労が伴いましたが、この地で育つ農作物を誰よりも誇りにしてきた青田さん。農業を再開して4年ほどが経った2021年、あるプロジェクトが舞い込んできました。

「震災前に村の特産品として開発を進めていた『あぶくまもち』の生産を再開させたいと村長から話があったのです」

「あぶくまもち」はその名の通り“もち米”です。主食用米のうるち米に比べて流通量は少なく、需要が見通せない不安があります。一方で、うるち米よりも育てやすく「あぶくまもち」は冷害に強いという特徴があります。

あぶくまもちの稲穂の写真

「自分がやるしかないなと思い、その取り組みに手を挙げさせていただきました」

青田さんは避難生活中、村の臨時職員をしていたこともあり、村長とは旧知の仲でした。2011年1月に「新春村民の集い」で初めてお披露目され、東日本大震災と原発事故で中断を余儀なくされていた村の特産品復活プロジェクトが、青田さんに託されたのです。

再開された新たな村の特産品づくり

震災から10年が過ぎた2021年、幻の村の特産品とも言える「あぶくまもち」の作付けが再開されました。最初の年は試験的な栽培となりましたが、2022年には少量ながら初めて市場に出荷され、「あぶくまもち」を使った“おこわおにぎり”などが村内の道の駅やコンビニエンスストアで販売されることになりました。

「あぶくまもち」を使ったおこわおにぎりの写真

この“おこわ”が思わぬ好評を博します。商品を棚に並べるとすぐに売り切れてしまうほどの人気となったのです。「どこに売ってるの?と知り合いから聞かれて場所を伝えると、買いに行ったけど売り切れてたと多くの人に言われました」と照れながら話す青田さん。村の特産品の復活はさらなる評判を呼び、有名料理家とのコラボ商品も生まれました。

その「あぶくまもち」で作った“おこわ”は一体、どんな味なのでしょうか?次回は、諸橋さんの試食リポートをお伝えします。

【動画はこちら】イコラブ諸橋沙夏さんが南相馬と飯館村で新たな特産品をリポート!

ラジオ放送情報

「Hand in Hand」は、平日朝6時から生放送でお届けするラジオ番組「ONE MORNING」内で毎週金曜の朝8時11分に放送。TOKYO FM/JFN36局ネットにてお聴きいただけます。番組を聴き逃した方は、ラジオ番組を無料で聴くことができるアプリ「radiko」のタイムフリーでお楽しみください。
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