Hand in Handreport.78

風評の払拭にむけて実際に現地に訪れて見たこと聞いたことを、分かりやすく伝えるレポートです。

インタビュー2024.08.30

縁が生んだ希望の色 新天地で大堀相馬焼の歴史をつなぐ小野田利治さん

避難先での新たな挑戦について語る小野田利治さん

江戸時代から続く大堀相馬焼の窯元・春山窯の13代目小野田利治さん(62歳)。原発事故による避難で工房や住む場所を奪われてもなお、伝統を守り続けようと奔走してきました。そして、“陶芸の里”として親しまれた浪江町大堀地区の避難指示が2023年に解除され、窯元たちの作品を一堂に集めて展示販売する「大せとまつり」も復活しました。一方、長期間の避難生活の中で、伝統を守り続けてきた小野田さんは避難先で新たな挑戦を始めています。ふるさとの復興を願いながらも新天地で奮闘する姿を女性アイドルグループ「=LOVE(イコールラブ)」のメンバーで福島県いわき市出身の諸橋沙夏さんが取材しました。

取材の様子は動画でも公開中!

大堀地区を離れて13年…本宮市で再出発

福島県中通りにある本宮市。その街の一角に大堀相馬焼の特徴を表す「走り駒」が描かれた建物があります。震災前、浪江町大堀地区にあった春山窯です。13代目の窯元である小野田利治さんが避難先で開いた店舗です。

「浪江町とはどうしても環境が違っていて、乾燥にしても湿気がそんなに無い場所なので、陶器が焼き上がるまではずっと見張ってないといけないんです。浪江町で作っているときより一仕事増えたなっていう感じですよね」

店内には小野田さんの作品が所狭しと並べられています。もちろん伝統の大堀相馬焼もありますが、それ以外の作品もあります。浪江町大堀地区は去年、ようやく避難指示が解除され自由に行き来することも居住することも可能となりましたが、小野田さんは浪江町には戻らず、ここ本宮市で作品作りを続けています。

大堀相馬焼の特徴を表す「走り駒」が描かれた春山窯の外観写真
本宮市で再開した春山窯

東日本大震災があったあの日、いつも通り陶器の製作を行っていた小野田さん。午後から窯に火を入れようとしていたときに大きな揺れが襲い、屋根もろとも窯や工房の設備が崩れ落ちました。さらに原発事故が追い打ちをかけ、避難生活を余儀なくされました。そうした中で小野田さんは、震災から8カ月後となる2011年11月に避難先のいわき市に仮設店舗を開き、大堀相馬焼の生産再開を果たします。

「震災前にやっていた陶芸教室の生徒がいわき市で土地を提供してくれたんです。大堀相馬焼を絶やしてはいけないと思い無我夢中だった時期…。人の縁のありがたみを感じました」

とはいっても、場所を借りての仮設店舗をいつまでも続けることはできません。いずれ避難指示が解除され元の場所に戻れるのではとの期待もあり、およそ6年間、いわき市で作陶を続けていました。しかし、仮設店舗の契約期限までに浪江町大堀地区の避難指示が解除されることはありませんでした。

小野田さんは県内各地へと足を運び、場所探しに走りました。そこで出会ったのが現在の春山窯がある本宮市です。

「人の縁に本当に恵まれました。一歩一歩、歩いていけば何かの縁には当たる。立ち止まるってことは考えていませんでした」

ろくろを回す小野田利治さんの様子
小野田利治さん

2018年11月に新たに本宮市に住居と店舗を構えると、隣近所の住民たちが温かく小野田さんを迎え入れてくれたといいます。その温かさは故郷の浪江町に似ていたのかもしれません。

「子どもたちが陶芸体験にたくさんやってくるんです。子どもたちが夢中になって陶芸をしているのを見ると嬉しい。何気に忙しいんですよ…」

ろくろを回しながら嬉しそうな表情を浮かべ、そう話してくれました。本宮市は浪江町大堀地区からは離れた場所です。けれど、「伝統を絶やすことに比べれば、大したことではない」と小野田さんは話します。その工房には、子どもたちが手ごねして作った、窯に入れる前の可愛らしい作品の数々が並んでいました。

故郷を離れたからこそ完成した新たな作品

小野田さんの新天地となった本宮市の春山窯。のれんや店内に飾られた看板は故郷の浪江町から運び込んだものです。さらに、江戸時代から代々受け継がれてきた大堀相馬焼の歴史を物語る作品群も並びます。その中にひと際鮮やかな青色の作品がありました。この地で生まれた小野田さんの新作です。

「本宮市に来てから色々と配合をしてようやく出せた色なんです。元々、調合などを考えるのが好きで、やっと満足できる色が出せました」

鮮やかな青色の小野田利治さんの作品の写真
小野田さんの作品

これも“縁”なのかもしれません。大堀相馬焼協同組合の理事長として駆け抜けた震災後の混乱期。小野田さんは避難によってばらばらになった窯元をつなぎとめ、避難先での陶器づくりが継続できるよう尽力してきました。理事長の職を後任に譲った今、様々なプレッシャーから解放され自由な作品作りに没頭する毎日です。肩の力が抜けた小野田さんにこんな質問を投げかけてみました。

「どんな13年間でしたか?」

すると小野田さんはしばらく時間をおいて、静かに答えてくれました。

「辛さと楽しさが半々の13年間でした」

「これから先ももっともっと歩いて、色々な人に会って、その中でまた支えたり支えられたりして、頑張る力をもらえるのかなと思っています」

13年という時の流れ。小野田さんは立ち止まらずに挑戦を続けてきました。その一方で、浪江町大堀地区にある春山窯はいまどうなっているのか。気になって足を運んでみました。そこには足を踏み入れるのにも躊躇してしまうほど、草が生い茂り工房の中にまで入りこんでいました。まさに時が止まった場所でした。もし、小野田さんが途中であきらめてしまっていたら江戸時代から技法を受け継ぐ春山窯の伝統は途絶えていたかもしれません。たとえ“避難先”という場所であっても、小野田さんが作陶を続ける限り、大堀相馬焼の伝統は未来へ受け継がれていきます。

「人の恵み」と書かれたホワイトボードを掲げる女性アイドルグループ「=LOVE」のメンバー諸橋沙夏さんの写真

PRESENT

※写真はイメージです。
2024年8月30日(金)放送分のプレゼントは、今回お話を伺った大堀相馬焼「春山窯」十三代目窯主、小野田利治さんが丹精こめて手掛けたぐい呑みと、浪江町の地酒「磐城壽」の純米大吟醸のセットです。3名様にプレゼントします。
今回プレゼントするぐい呑みは、レポーターの諸橋沙夏さんがチョイス。どんなぐい吞みかはお届けまでのお楽しみになります。
「磐城壽」の純米大吟醸は浪江町のコシヒカリ・浪江町の水で仕込んだ地元づくしのシャープな味わい。ぜひ、セットのぐい呑みでお楽しみください。

このページの中で、レポーターの諸橋沙夏さんが取材の感想として書いた言葉が応募キーワードです。ページをお読みいただき、番組ホームページのメールフォームからご応募ください。

本商品は、TOKYO FMで放送中の「Hand in Hand」内で応募プレゼントとして紹介されているものです。
本サイトからの応募はできませんので、希望される方はこちらよりご応募ください。
なお、応募締切は2024年9月6日(金)となります。

【動画はこちら】イコラブ諸橋沙夏さんが取材!相馬・大熊・浪江の復興ストーリー

ラジオ放送情報

「Hand in Hand」は、平日朝6時から生放送でお届けするラジオ番組「ONE MORNING」内で毎週金曜の朝8時11分に放送。TOKYO FM/JFN36局ネットにてお聴きいただけます。番組を聴き逃した方は、ラジオ番組を無料で聴くことができるアプリ「radiko」のタイムフリーでお楽しみください。
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