全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。
今回は「豊饒の海、福島沖で常磐ものを釣って味わう!」と題して、9月初旬に福島県相馬市で行なわれた復興庁主催の企画、『「常磐もの」で福島の今を体感 2020~釣れたヒラメでリモートクッキング!~』のレポートをお届けします。
前回のレポートでは、今回の企画と同じ福島・相馬の海を漁場にする漁師の4代目である菊地基文(きくちもとふみ)さんに、福島の漁業の現状についてお話をお伺いしました。
前回のレポートはこちらからご覧ください
Hand in Handレポート『悲願の本格操業再開へ~福島・相馬の漁師の思いを聞く』
******
復興へ向けて着実に歩みを進める福島の“豊饒の海”。そんな“豊饒の海”の現状を、釣って、食べて、楽しんで、多くの人に知ってもらおうという企画が「『常磐もの』で福島の今を体感 2020~釣れたヒラメでリモートクッキング!~」です。
もともとは福島の海と海産物の魅力を知ってもらう事を目的に、100人規模で一般の方に参加してもらい、釣り大会と料理教室を開こうと準備を進めていましたが、新型コロナの影響で延期。最終的には一般参加の募集を断念し、メディア関係者やインフルエンサーが少人数で参加しての釣り体験と、一般参加者を対象としたオンラインでの料理ワークショップという、二つのプログラムで開催されました。オンライン料理ワークショップでは、地元食材を駆使した料理で知られるイタリアンレストラン、「アル・ケッチァーノ」オーナーシェフ、奥田政行さんが講師を務めました。
******
朝5時。相馬漁港から第二豊漁丸と甲子丸2隻の釣り船が出港。関係者のみの少人数でソーシャルディスタンスを保った形での釣り企画が開始しました。“釣りガールみっぴ”としてTV・雑誌等で活躍されているインフルエンサー・秋丸美帆さん、「アル・ケッチァーノ」オーナーシェフの奥田政行さん、テレビ番組でもご活躍の海洋環境専門家の木村尚さん、日本釣り団体協議会の千葉康則さん、立命館大学衣笠総合研究機構准教授の開沼博さん、復興庁からは横山復興副大臣が参加し、福島沖でヒラメ狙いの釣りを行いました(秋丸美帆さん等が参加した福島沖でのヒラメ釣行の模様は、雑誌「つり人」12月号でご覧いただけます)。

甲子丸で黙々とヒラメを釣り上げていたのは、アル・ケッチァーノのオーナーシェフ奥田政行さん。アルケッチァーノは全国展開しているレストランですが、本店は山形県鶴岡市にあって、地域の素材を徹底的に生かした料理を出すことで全国的に知られています。遠方からも客が訪れ、予約を取るのも難しいことで有名な店です。奥田シェフは、福島の風評払拭をテーマにした期間限定のお店「福ケッチァーノ」を開くなど、震災当初から福島の応援を続けてきている方です。

約4時間の釣りでは、参加者全員が特大サイズいわゆる「座布団サイズ」と呼ばれる常磐もののヒラメを何枚も釣りあげました。
釣りを終えて、奥田シェフら関係者は陸に上がり、料理会場となる相馬市東部公民館へ向かい、いよいよ一般参加者とオンラインでの料理ワークショップが行われました。
******
オンライン料理ワークショップは奥田シェフが講師を務め、全国の食と料理の愛好家が集うコミュニティサイト「キッチハイク」と連携して開催。オンライン会議システムを活用して全国各地から20名ほどが参加した他、ファッションモデルで女優のママインフルエンサー高橋ユウさんや日本味育協会代表の宮川順子さん、日本ガストロノミー協会を立ち上げ、食べログフォロワー数が5万人を超える柏原光太郎さんらグルメ業界でも著名な方が参加しました。

今回の企画の特徴は、オンラインながら実際に常磐ものの50センチサイズのヒラメの他、福島産品が事前に自宅に届くことです。
料理に使用したオイルは南相馬で作られたなたね油「油菜ちゃん」、アサリは相馬松川浦産、野菜は南相馬でオリジナルの製法での野菜づくりを行う「カヤノキファーム」に提供いただき、全て地元のものが使用されました。さらに、ヒラメの料理に合う日本酒として浪江町・鈴木酒造の「磐城壽(いわきことぶき)」が用意されました。
オンライン料理ワークショップで使われた食材の一部はこちら。
そして、講師となる奥田シェフが、オンラインで参加者からの質問にその場で答えながら、その日に自分で釣りあげた魚を実際に捌いて調理を進めました。奥田シェフの指導のもと、ヒラメを5枚おろしにしたあとに、薄切りにして生のまま塩・セロリ・レモンとあえた「セビーチェ」、切り身をアサリやトマトと煮た「アクアパッツア」などの料理を調理しました。

和やかな雰囲気で2時間半を超えるオンライン料理ワークショップは終了。参加者にとって普段は馴染みのない丸々一匹のヒラメを調理したことで、その美味しさと魅力が十分伝わったようです。
参加者が投稿した感想や料理写真などはキッチハイクのサイトでご覧いただけます。
オンライン料理ワークショップを終えた奥田シェフにお話を伺いました。
奥田政行シェフのお話
- Q
今日の釣果と福島のヒラメの味はいかがでしたか?
- A
もう、あんなに釣れてびっくりしました(笑)。まず釣って、その美味しさにびっくりして。お世辞でもなんでもなく、僕、日本全国のヒラメを食べていますけど1番美味しかったです。さっき釣ったばかりのものをおろして食べたら、なんか昆布締めしたみたい。僕の予測では、そこの海藻に根付いているアジを食べているからじゃないかと。僕は、魚の身からその魚が住んでいる場所が分かるんです。人の体臭を嗅いでも6時間前に何を食べたか当てる人ですから(笑)。生き物というのは、食べているものが、その身の中に、味が入るんです。今日このヒラメを食べてみて、美味いと思って真面目にビックリしました。

- Q
奥田シェフは福島に寄り添ったお店も出店されていましたが、どうやって福島の魅力を食で伝えていきますか?
- A
福島って日照時間もすごいし、実は東北の中で一番恵まれている。農産物とかお魚とか。そういう恵まれた場所にあるので、放射能のこととかもありますが、そこをちゃんと取り返せるくらいの美味しさがあるので。科学的にとか、予測を立てながら、一つひとつ解明していく。そして、それをちゃんとわかりやすい形で伝えて頂いて。そういうところから地道に共感の輪を広げていく。そうすると奇跡は起きます。実は食材というのは全部生き物で、生き物を使って食べられる形にするのが料理人という仕事なので…。料理人としては、そういう豊かな食材を使って人々を、皆の気持ちを豊かにしていく。豊かさってお金だけじゃないんだよという、そういうところを教えて。教えてと言うとおこがましいですけど、福島の皆さんと一緒にやっていけたらいいなと思います。
さて、奥田シェフの調理場の隣で腕をふるっていたのが、横山信一復興副大臣です。 横山副大臣は北海道大学水産学部出身。水産学の博士号をお持ちで、北海道庁で農林水産に係わる仕事を続けた後、政界に出て、農林水産大臣政務官も歴任している方で水産のエキスパートです。この福島での釣り企画は、横山副大臣が就任当初から温めていたプロジェクトだったそうで、ようやく念願かなって、今回の企画が実現しました。第二豊漁丸に乗船した横山副大臣は釣りでもかなりの釣果をあげたそうです。
横山信一復興副大臣のお話
- Q
釣果と今回のイベントの感想について。
- A
釣り上げられなかったらどうしようかなと心配していましたが、たくさん釣ることもできました。海から帰ってきて、奥田シェフのお料理ワークショップも素晴らしくてですね、福島の菜種油といい、トマトといい、オクラといい、ピーマンといいですね、ヒラメ以外にも、この食材を提供していただいた農家の方、また浪江町の日本酒「磐城壽(いわきことぶき)」の鈴木社長をはじめ、本当に皆さん方の協力のもとで、素晴らしい福島のアピールができたんじゃないかなという風に思っています。

- Q
福島の海についてどう思われますか?
- A
まさに豊饒の海ですね。常磐ものが美味しいというのはもう昔から評判で有名で、私は元々水産業界にいたものですから。全国の水産物というのは、その多くが加工に回るんですよね。ところが、常磐ものは鮮魚でもあるのがすごく多くて。それぐらい魚が美味しいので、また鮮魚流通が震災前はかなり盛んだったということで、本当に美味しい豊饒の海ですよね。

- Q
福島の海を釣りで体感、そして料理も作られてみて、福島の復興の手応えは感じられましたか?
- A
福島の復興はね、本当はこれからなんです。復興庁も10年これから延長することになり、もちろん宮城、岩手の復興の総仕上げもありますし、また被災された方々の心の復興というのももちろん大事ですけれども、福島の場合はハード面がこれからなので、新たに帰還されてくる人たちの復興公営住宅の建設もやっていますし、産業団地の中でも新たな工場とか進出してくる企業の皆さん方の社屋の建設も始まりつつありますから、本当にこれからなんですね。そういう意味で、これからという時に、こうして福島を応援してくれる皆さんがいてくれるというのは本当に嬉しいことですし、その手応えを感じます。
- Q
オンラインで料理ワークショップを実施してみていかがでしたか?
- A
本当に皆さんに工夫をしていただいて、本当は一般参加でたくさんの人たちが集まってもらってと思っていたんですけど。これがコロナで、逆に皆さんに知恵を絞ってもらって。このリモートでやったこともとても上手くいきましたし、これからの展開が楽しみですね。

- Q
常磐ものの魚について。
- A
何度も言いますが、常磐ものは美味しいんです。魚が好きだという人はいっぱいいると思うんです。また、自分の住んでいる地域の魚が一番だと思っている人たちもたくさんいらっしゃると思うんですが、ぜひ常磐ものを食べて比べていただきたい。本当に美味しいですから。
絶品の常磐もののヒラメ。ヒラメの旬は11月から2月にかけての冬場です。脂がのって身が引き締まってさらに美味しくなります。現在39都道府県に流通しているイオンの「福島鮮魚便」など、常磐ものをお買い求めいただいたり、福島県の浜通り各地から出ている釣り船で、釣りに出かけてみたりしてはいかがでしょうか。豊かな福島の海を知って、食べて、楽しむことで福島の海を応援しましょう!
ふくしまプライド。-ふくしまプライド。 ストーリー Vol.15沖の「潮目の海」で獲れる漁師と家族の思いが詰まったヒラメ –
福島のうまいものが食べられる東京の店 ふくしまプライド。まじうまふくしま
『「常磐もの」で福島の今を体感 2020~釣れたヒラメでリモートクッキング!~』は、福島県の地元新聞やテレビだけでなく、釣り専門誌「月刊つり人」や海に特化したメディア”「Gyoppy」でも紹介されています。また、オンライン料理ワークショップにゲストとして参加いただいた高橋ユウさんのオフィシャルブログやSNSもぜひご覧ください。
[テレビユー福島 TUFチャンネル]県産ヒラメをオンラインでPR
[高橋ユウさんの投稿]
高橋ユウオフィシャルブログ - 福島県の食材を使って。
tahahashiyu.official instagram
この取材を収録した「Hand in Hand」は10月31日の朝8時からTOKYO FMでオンエアされました。またオンエア後の放送内容は(http://www.tfm.co.jp/hand)でご覧になれます。
ラジオ放送情報
「Hand in Hand」は8地区(FM北海道/FM仙台/ふくしまFM/TOKYO FM/FM愛知/FM大阪/広島FM/FM福岡)で放送中。
番組を聴き逃した方は、ラジオ番組を無料で聴くことができるアプリ「radiko」のタイムフリーでお楽しみください。
※タイムフリーは、過去1週間以内に放送された番組を後から聴くことのできる機能です。
※8地区(FM北海道/FM仙台/ふくしまFM/TOKYO FM/FM愛知/FM大阪/広島FM/FM福岡)の放送エリア外からは、radiko.jpプレミアム(有料)でお聴きいただけます。