Hand in Handreport.12

風評の払拭にむけて実際に現地に訪れて見たこと聞いたことを、分かりやすく伝えるレポートです。

インタビュー2020.09.19

『カブトムシの森の再生物語~虫の楽園「ムシムシランド」をたずねて』

全国各地の災害被災地の「今」と、その土地に暮らす人たちの取り組みや、地域の魅力をお伝えしていくプログラム、「Hand in Hand」。

今回からは「あれから10年、復興が進む福島を行く」と題して、来年3月に東日本大震災から10年目を迎える福島県の「今」をお伝えします。

初回となる今回は、福島県田村市にある虫の楽園「ムシムシランド」をレポートします。

田村市(旧常葉町)は、もともと国内有数の葉タバコ生産地でした。この葉タバコの肥料となる腐葉土に、沢山のカブトムシの幼虫が育っているのを発見したのがきっかけで、“日本で唯一の虫の楽園”と呼ばれる「ムシムシランド」は誕生しました。

そして1989年には、自然の中でカブトムシの生態をつぶさに観察できる、カブトムシドーム『カブトムシ自然観察園』をオープン。この施設のコンセプトは「触れ合い」で、スタッフが昆虫の飼い方から生態まで丁寧に説明するだけではなく、生きているカブトムシ等の昆虫と直接触れ合える場所を提供しています。

田村市の地図の画像
カブトムシ自然王国ムシムシランドの看板と入り口外観の写真
カブトムシ自然王国 ムシムシランド

夏休み期間中で、福島県内外からたくさんの家族連れで賑わう「ムシムシランド」を訪ね、施設長の吉田吉徳(よしだよしのり)さんに、お話を伺いました。

吉田吉徳施設長のお話

Q
ムシムシランドの広さはどれくらいですか?
A
まず入り口のところにあるのがカブト屋敷。そこには世界のカブトムシ、クワガタの標本などが150種類くらい展示してあります。そこから100mくらい山道を歩いていただいた奥に「カブトムシ自然観察園」があります。通称カブトムシドームと呼んでいますが、一番高いところで20m、幅が20m、奥行が40m、約800平方メートルの広さがあります。高さ20mと申し上げましたが、元々あったコナラの木をそのまますっぽり覆っているという形になっています。
来場者らがコナラの木がたくさん生えているドーム型のカブトムシ自然観察園内を歩く様子の写真
コナラの木が生い茂るカブトムシ自然観察園の入り口の様子の写真
Q
ムシムシランドのコンセプト「自然をありのまま楽しんでもらう」について教えてください。
A
普段なかなか味わえない昆虫採集気分みたいなものを、この自然観察園のなかで存分に体験してもらおうというコンセプトです。アンケートを取っているのですが、「虫に触れなかった子どもが、ここに来て触れるようになりました」とか「子どもが虫とすごい楽しそうに遊んでるのを見て、私も虫について勉強します」といった感想をいただき、虫を好きになるきっかけになっているようで、とても嬉しいですね。

「ムシムシランド」内のカブトムシドームは、1989年のオープン以来、昆虫ファンの間では“聖地”として愛されてきました。しかし、2011年の東日本大震災による東京電力福島第一原子力発電所の事故の影響で、田村市の一部地域も緊急時避難準備区域に指定され、原発から30km圏内にある「ムシムシランド」も休園を余儀なくされました。その影響と再開までの経緯を伺いました。

Q
東日本大震災の翌年から再開されていますよね。
A
はい。この地域は原発から30kmくらいの距離ですけれども、事故当時の風向きの関係で、震災直後でも放射線量が比較的低くて、高い時でも1μSv/hくらい、この林の中で、だいたい0.6μSv/hくらいでした。事故当時は皆さん不安でしたから、来場者はだいぶ減りました。私たちは、ムシムシランドに来てもらうために、この放射線量を下げなければいけないということで、いろんな方と一緒に除染などをしたり、様々な取組をしてきました。除染をした結果0.2μSv/hくらいまで下がりました。施設にモニタリングポストがありますが、今日だと0.09μSv/h、0.1μSv/hは下回っているというような状況で、今はもう放射線に対する心配は無くなっています。
Q
カブトムシへの影響や自然への影響はありましたか?
A
そうですね、ドーム内の土は、表面を全部剥ぎ取りました。というのは、表面に放射性物質が付着しているという関係で剥ぎ取った訳ですが、その部分がカブトムシの寝床であったり、産卵場だったりします。そこを取ってしまったので、カブトムシが繁殖できる環境ではなくなってしまったというのは事実です。今ではたくさんのお客さんに来ていただいて、その場所は根っこ部分も踏み荒れている状態なので、ここは自然に返す形で、別の場所でまた新たにドームを建設する方向で考えているんです。そのきっかけは、震災以降たくさんの方に知恵を出していただいたり、協力をしていただいたりして、落ち込んでいた入場者数が3年前からV字回復したことです。

空間線量率が下がった後も、風評被害の影響などでムシムシランドの来場者数は戻りませんでした。そんな時、放送作家で「福島WAKU-WAKUプロジェクト」総合プロデューサーの鈴木おさむさんが「世界三大奇蟲展」を企画して大ヒットしました。

特定非営利活動法人あぶくま地域づくり推進機構 - 世界三大奇蟲
http://www.npo-abukuma.org/20180720/

この企画展をYouTubeで発信して、来場者数のV字回復につなげたのが、生き物系YouTuberとして日本トップクラスのチャンネル登録者数を誇る「ちゃんねる鰐」の鰐さんでした。

Q
鰐さんがムシムシランドを紹介してくださったきっかけを教えてください。
A
はい。ムシムシランドをもっと広く、出来れば日本中の人に存在を知って欲しいと思っていた時ですが、YouTuberの鰐さんに、ムシムシランドで昆虫採取してもらって、動画をあげてもらえないかという話になったんです。お声をかけさせていただいたところ、実際に来て頂けて、ムシムシランドの動画を何本も撮ってYouTubeに上げてくださったんです。あと、一緒に田村市内で昆虫採取もやっていただき、その時はミヤマクワガタやノコギリクワガタがバンバン採れたんです。その動画はなんと年間で250万回再生。もちろん今でも再生されていますけれど、本当にびっくりしました。

「ちゃんねる鰐」は、生き物系インフルエンサーとして日本トップクラスのフォロワーやチャンネル登録を誇る鰐さんが運営するYouTubeチャンネルで、生き物や自然の魅力、正しい知識を伝え続けています。鰐さんは、2016年5月ごろから本格的にYouTube活動を開始して、現在までに700本以上の動画を投稿。チャンネル登録者数は48.5万人と総視聴回数は2億5592万回(2020年9月2日現在)を記録しています。

「ちゃんねる鰐」
https://www.youtube.com/c/WANIVSPBAO/about

今回特別に、鰐さんにムシムシランドをご案内いただき、お話を伺いました。

鰐さんのお話

Q
ズバリ、このムシムシランドの魅力を教えていただけますか?
A
そうですね、やはりこの規模のカブトムシドームがある場所ってなかなか無いです。ここには常時カブトムシが1000匹放たれているということで、いつ行っても大量のカブトムシを見ることができるんですよね。そこがやっぱり一番の魅力だと思いますね。
園内を歩きながらインタビューを行う女性インタビュアーと、その質問に答える鰐さんの様子の写真
Q
虫好きの鰐さんから見て、このカブトムシドームというのは、カブトムシたちにとっては住みやすく居心地が良い場所だと思われますか?
A
カブトムシを飼うのにこれ以上いい場所はないんじゃないかというくらい最高の場所だと思います。山の雑木林をそのまま囲っているだけなので、ほぼ自然じゃないですか。普通の虫カゴで飼われていたら、人間で言うところのワンルームに住んでいる感じなんですけど、ここは町ごとなので、一番住みやすい場所だと思いますね。
Q
虫が怖いという方に、虫の魅力やどうしたら虫を好きになれるか教えてください。
A
昆虫について、みんなよく知らないから怖いんだと思うんです。よく観察して、生態とか調べてみると、結構どの虫にも面白い生態とかかっこいいところがあったりして。そういうのを知ると、魅力的に見えてくるんで、ぜひたくさん知って欲しいですね。
Q
確かに「知らない」ということは「怖い」に繋がりますね!飛んでいるのはカブトムシですか?
A
カブトムシの雄です。基本的に、雄は夜しか飛ばないんですけど、たまに夜以外も飛ぶこともあるんです。なかなか見れないですね!こんな感じで、カブトムシドームではカブトムシの珍しい生態も見ることができるんです。
Q
丸太の上にたくさんカブトムシが集まっています!この状況を自然の中で見つけたらカブトムシを取りまくる感じですね。
A
取りまくっちゃいますよね。このドーム内のカブトムシですが、柵を超えて中に入るのはダメですけど、エサ台の丸太についているカブトムシは捕まえて実際に触る体験もできるので、僕が子どもの頃に来ていたら狂喜乱舞でしたね。
鰐さんが丸太の上に集まっている7匹のカブトムシに指をさしている様子の写真
Q
本当にそうですね。小さい子ども達もカブトムシを触っていますし、これは大人も夢中になりますね。
A
大人も子どもも本当に童心に帰って夢中になっちゃうんですよ。
リュックを背負った男性のメガネや袖にたくさんのカブトムシがとまっている様子の写真と、園内の木の幹に立派なオスのカブトムシがとまっている様子の写真

鰐さんは、「虫を怖がる人もいますが、それは虫のことをよく知らないから。知れば怖くない。」とおっしゃいました。福島県の「今」、そして放射線についても「知ること」で正しく理解することが出来ます。田村市をはじめ福島県主要都市の放射線の空間線量率は、現在では日本各地や世界の主要都市と変わらないレベルに落ち着いていることなど、福島県の現状を伝えるために、福島県をはじめ様々な団体が情報発信を続けています。

復興庁では、ホームページで福島県の食べ物の検査状況や、福島県を訪れる方の状況など、福島の復興の現状を「数字」で公開しています。

今回訪れた「ムシムシランド」では、地域にもっと昆虫が暮らしやすい森をつくるため、カブトムシやクワガタが大好きなクヌギやイタヤカエデを植樹するクラウドファンディングを実施しました。クラウドファンディングでは、多くの方の賛同を得て、目標額を大きく上回って215本もの木を植えられたということです。
これから、より豊かになっていく田村市の自然環境。虫たちや子どもたちで賑わう森に成長することが期待されます。
自然環境に恵まれた田村市には、ムシムシランドの他にも、およそ八千万年という年月をかけて創られた大鍾乳洞「あぶくま洞」や、宇宙の雄大さを感じることができる「星の村天文台」などの魅力ある施設もあります。

ムシムシランドは、8月23日で今季の営業を終えていますが、カブトムシやクワガタの「秋の幼虫掘り出し体験」など、臨時の体験イベントも行っていますので、他の観光施設と合わせて是非チェックしてみてください。

職員の男性と鰐さん、女性インタビュアーが入場口で笑顔でピースのポーズをとっている集合写真

この取材を収録した「Hand in Hand」は9月19日の朝8時からTOKYO FMでオンエアされました。またオンエア後の放送内容は(http://www.tfm.co.jp/hand)でご覧になれます。

ラジオ放送情報

「Hand in Hand」は8地区(FM北海道/FM仙台/ふくしまFM/TOKYO FM/FM愛知/FM大阪/広島FM/FM福岡)で放送中。
番組を聴き逃した方は、ラジオ番組を無料で聴くことができるアプリ「radiko」のタイムフリーでお楽しみください。
※タイムフリーは、過去1週間以内に放送された番組を後から聴くことのできる機能です。
※8地区(FM北海道/FM仙台/ふくしまFM/TOKYO FM/FM愛知/FM大阪/広島FM/FM福岡)の放送エリア外からは、radiko.jpプレミアム(有料)でお聴きいただけます。

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