富岡町にあるJR常磐線・夜ノ森駅は、かつて約6,000株のつつじが咲き誇る「つつじの駅」として知られていました。原発事故後の除染作業のため一度は伐採されましたが、株の再生の取り組みにより、再び花が咲き始めています。渡邉優翔さんは、つつじの咲き誇る景色を取り戻し“花のチカラ”で町を元気にしようと会社を立ち上げ新しい事業に挑戦しています。
福島県いわき市出身で、アイドルグループ「=LOVE(イコールラブ)」のメンバーとして活動する諸橋沙夏さんが富岡町を訪れ、Ichido株式会社 代表取締役 渡邉優翔さんにお話しを伺いました。
須賀川市にある「大桑原(おおかんばら)つつじ園」という、江戸時代から続く庭園の26代目の次期当主でもある渡邉優翔さん。幼少期と家業のつつじ園についてお聞きしました。
- 諸橋
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渡邉さんは、子どもの頃からつつじに触れてきたんですよね。
- 渡邉
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須賀川市でつつじを専門とした家業をやっています。
- 諸橋
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“大桑原(おおかんばら)つつじ園”ということで、春には約5万株のつつじが一面に咲き誇る名所として知られていますよね。
- 渡邉
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県内では、歴史のある観光地になっています。
- 諸橋
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子どもの頃は、どんな幼少期を過ごされたんですか?
- 渡邉
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山で走り回っていて、結構わんぱくな子どもだったと思います。友達はよくつつじの蜜を吸ったりしていましたが(笑)、僕は家の手伝いをしていることが多かったですね。
- 諸橋
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幼い頃からお手伝いをされていたんですね!
- 渡邉
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ずっと父の仕事を後ろで見ていて、いつか自分もやれたらいいなと思いながら、走り回っていた感じでした。
- 諸橋
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小さい頃から家業を継ぎたいと思っていたんですか?
- 渡邉
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そうですね。物心つく前から先代(祖父)に「跡を継ぎなさい」と言われていたので、その意識はずっとありました。周りからも継ぐ前提で話をされていたので、自分の進路は決められていたような感じでした。
夜ノ森駅のつつじ再生に関わるきっかけ
- 諸橋
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ご出身の須賀川ではなく、ちょっと離れた富岡町の夜ノ森駅のつつじ再生に関わるようになったきっかけを教えてもらえますか?
- 渡邉
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高校生の時、2017年に夜ノ森駅のつつじを伐採するというニュースをテレビで見たんです。町の方が「この町の誇りであったつつじを伐採するのは心苦しい」「復興が進む中で、このつつじを再生させることが富岡でやらなければいけないことだ」と話していて。その時、僕はまだ夜ノ森駅のつつじを見たことがなかったのですが・・・。
大学生の時は東京にいましたが、コロナ禍で授業がオンラインだったので、自分がやれることに時間を使おうと思いました。うちのつつじ園は、江戸時代に参勤交代の会津藩からつつじの苗をいただいたことが始まりで、今のような観光地になっています。次は自分が恩返しをしたいと思い、富岡に行っていろんな方と話をしながら、徐々に関わるようになっていきました。
「富岡町つつじ再生プロジェクト」の立ち上げ
当時まだ大学生だった渡邊さんは、父である「大桑原つつじ園」当主の協力を得ながら、つつじの再生と植樹を行う「富岡町つつじ再生プロジェクト」を立ち上げました。つつじ園に引き継がれてきた知識を活かし、企画から実施まで携わり、“つつじの里親”といった住民が主体となって進める活動に尽力しています。
- 諸橋
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つつじを再生する取り組みを始めたのが数年前ですよね?
- 渡邉
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最初は2021年です。富岡町役場や地域の方に話を伺った時、「やりたいけれど、やれない」っていう声を聞きました。大桑原つつじ園には何百年とツツジを育ててきたノウハウがあるので、この地域に恩返しをしながら、何年か経って地域の皆さんが自走できるようなつつじの憩いの場所を作ることができれば、この地域はきっと面白く移り変わるんじゃないかなと思って始めました。
- 諸橋
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具体的にはどんな取り組みですか?
- 渡邉
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江戸時代からやっている挿し木という方法で、花の先端を切って土に挿すと、3年ぐらいで30センチ伸びるんです。まずは皆さんに苗木を自宅で育てる“つつじの里親”になっていただき、3年後に持ち寄って植えましょうというやり方で進めました。苗を買って植えれば終わりではなく、地域のDNAや愛情を育む方法でやっていこうということで、年数がかかってもみんなで育てて植えるやり方でつつじの再生に取り組んでいます。
- 諸橋
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苦労はありましたか?
- 渡邉
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そもそも富岡町に知っている人もいなければ、たくさん資金があるわけでもないので、まず地道にコツコツやっていくところがすごく大変だったなと思います。福島の方は外から来る人を慎重に見てしまう文化があるので、自分はこういうことをしたいと表現しながらも、一つひとつ信頼を獲得していくところは時間はかかったなと思います。
- 諸橋
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そして今年、そのつつじはどうなりましたか?
- 渡邉
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各株に数輪ですが咲いていました。自分たちで育てたつつじが咲き始めて、町の方々も「やっと咲いたね」みたいな話にはなりましたね。
花が咲くことを復興と呼んでいいのかわかりませんが、数輪でも人々の笑顔を増やすことができたんじゃないかなと思っています。管理とか一年を通してやっていて地味な作業の繰り返しですが、こういう光景を見るとやって良かったと感じるので、来年はもっと地道に、泥臭くやっていきたいと思っています。里親さんたちがまだつつじを育てているので、それをいろんな場所に植えていくことも今始まっているところです。 - 諸橋
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楽しみですね!
- 渡邉
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ここまで5年ぐらいかかったので、地域の方たちとやっと植えられる、次はどこに植えよう、という話をしている時に着実に物事は進んでいるんだなと感じます。
- 諸橋
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一緒につつじを育てている方から掛けられて嬉しかった言葉や印象に残っていることはありますか?
- 渡邉
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原発事故後の除染のため、やむなく伐採の許可をされた元町長が、すごく責任を感じながらも積極的に参加してくださって…。「自分は伐採の許可をしなければならなかったけれど、5年後にまたこうしてつつじの苗を植えられる、この取り組みに関われてすごく良かった」という話をいただいたり。あとは、今までつつじに触れていた町の方々から、「こうして管理とかも含めて一緒にできることが嬉しい」といったお言葉をいただきました。
また最近、避難した方を郡山からお呼びして一緒に植樹をしたんです。平均年齢70歳ぐらいの方がたくさん来たんですけれど、結構わんぱくな(笑)。子どもが土遊びするようにすごく純粋に、昔の話をしながら一緒に苗を植えられたことはすごく感慨深かったです。 - 諸橋
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素敵な光景ですね。
渡邉さんは、東京農業大学造園科学科に通っていた2022年6月、富岡町でIchido株式会社を立ち上げました。そして花から採取した酵母を使った酒造りなど、新しい事業に挑戦しています。
- 渡邉
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ichido株式会社では、お酒造りと造園の二つの事業を展開しています。造園事業では、町の公共施設のメンテナンスや個人邸の作庭から管理までを手がけていて、環境づくりや作庭に関するコンサルティングも行っています。
花酵母による酒造りに着目したきっかけ
- 渡邉
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もともと家業を継ぐために大学に通っていました。もちろん卒業後にそのまま家業に入ってもいいと思いながらも、花業界は冠婚葬祭などの需要や、天候によっても影響を受けやすく、最近では花を買う人が徐々に減ってきているので、「花でもっと違う価値を作りたい」とも思っていました。つつじの町だという富岡町に入って、何かできないかいろいろ考えていた時に、私が通っていた東京農業大学の醸造科学科の先輩から「うちの教授が、花からいわゆる酵母をとってお酒を造る研究をしている」という話を聞いて、そのやり方でお酒を作ったら花業界の新しいビジネスモデルができるんじゃないかなと思って、教授に話を聞きに行ったんです。
お酒は、日本酒のように早く消費するものもあれば、蒸留酒のように時間とともに価値が高まるものがあります。蒸留ものが徐々に価値が高まっていくという点は、盆栽や花の世界と意外と共通点があると思って、この会社を始めました。
商品化までの道のり
- 渡邉
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花酵母はあるものの、酒造りには免許が必要です。まずは県内の酒蔵にコンタクトを取って、お酒を造ってほしいという相談から始めたんです。10社ぐらいにお問い合わせメールを送りましたがすべて断られてしまい、最後に会津で米焼酎を造る「合同会社ねっか」という会社にメールを送ったところ、すぐに電話がかかってきて「うちと親戚なの知らないか?」って言われて(笑)。「まずは、来い!」と言っていただいたのですぐに行きました。
花酵母というのは、酒業界の中でもある程度は知られている情報で、ねっかとしても花酵母に興味があったということで、一緒にやっていこうという話になり、“Enju”というお酒が誕生しました。最初は米焼酎を造ってもらい、そこからリキュールに展開していったんですけれど、商品化までに約2年かかりました。
花酵母は野生(自然由来)の酵母なので、安定的に発酵するかどうか、アルコール度数が上がるかどうかなど、造ってみないと分からない部分が多く、どっちに転ぶかは正直分からなかったので挑戦でした。無事造れたっていうのが結果なんですけれど。
“Enju”というブランドに込めた思い
“Enju”の特徴や今後どんな商品開発やチャレンジを考えているのか伺いました。
- 渡邉
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“Enju”は、富岡町夜の森のヤエザクラを使った“SAKURA”、私の実家「大桑原つつじ園」の"太陽つつじ"を使った“TSUTSUJI”の2種類を販売しています。
ブランド名の“Enju”は、“親睦”とか“友情”といった花言葉を持つ槐(エンジュ)という木から、あとは“&you(アンドユー)”とちょっとシャレをかけて“Enju”という名前にしました。
炭酸水などで割らなくてもそのまま飲めるボトルドカクテル(カクテルをそのままボトルに詰めた商品)になっているんですけれど、花の香りがしてかなり飲みやすいので、特に女性に好評をいただいています。花の数だけ可能性は膨らむので、カーネーションの花から母の日向けの商品やバラなどの展開も進めています。
リキュールではないジャンルで、米焼酎としての販売も今年中にはスタートさせていきたいと思っています。また、胡蝶蘭からスパークリングワインが造れないかという研究も進めていきたいと思っています。お祝い事―いわゆる“ハレの日”の商材としてアプローチできたら面白いなと思っているところです。あとはもう掛け算でいろんな展開がしやすいのかなと思っています。
富岡町を拠点に選んだ理由
- 渡邉
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富岡は本当に自然豊かな町だと思っています。桜やつつじが有名な地域って他にもありますが、ここ富岡の人たちは名所への思い入れがとても強いっていうところが自分がここでやっていきたい!と思った一番の理由です。
つつじであれば「私たちが管理してきた」「手入れしてきた」「植えたことがある」といった部分で誇りを持っていて、そういう思いを口々に発信できる地域なんです。
今うちの会社では荒れた場所を開墾して花壇を作り、植物を植える活動をしていますが、どの地域よりも皆さん熱心で、次はこの植物を植えたいとか、何年かかっても全然いいっていう風に言ってくれる。花への思いが強い方が多く、僕としては仲間がいっぱいいるという風に思って、この地域に住んでいます。
春になると夜の森の桜並木の桜が咲いて、人がたくさん観光で来るんですけれど、夜静かになった時にふと見るその景観が、僕はとても好きですね。
PRESENT
渡邊さんが取材の感想として書いている言葉が応募キーワードです。動画をご覧いただき、ラジオ番組のホームページのメールフォームからご応募ください。
Enjuは、アルコール度数5%、米焼酎ベースのリキュールで、果汁やハーブを加えて香料無添加で製造。ボトルやパッケージ(外箱)は、飲み終えた後も花瓶や小物入れとして利用できるデザインになっています。
https://enju-cocktail.com/
本商品は、TOKYO FMで放送中の「Hand in Hand」内で応募プレゼントとして紹介されているものです。
本サイトからの応募はできませんので、希望される方はこちらよりご応募ください。
なお、応募締切は2026年10月6日(火)となります。
【Hand in Hand】=LOVE諸橋沙夏が福島の復興・再生に取り組む人たちをリポート
ラジオ放送情報
「Hand in Hand」は、TOKYO FMで月曜から水曜の11:30〜13:00に放送されている音楽番組「ALL-TIME BEST〜LUNCH TIME POWER MUSIC〜」の火曜の12時30分頃からお聴きいただけます。番組を聴き逃した方は、ラジオ番組を無料で聴くことができるアプリ「radiko」のタイムフリーや「Podcast」でお楽しみいただけます!
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