福島の今を伝える『Hand in Hand』公開収録 (後編)

12月6日（土）復興庁主催「知って、学んで、行ってみよう！ふくしま＠イオンモール幕張新都心」が開催されました。当日は福島県の復興の今を学べるパネル展示や、福島県の魅力的な商品を販売する物販ブースの出展のほか、福島県いわき市出身の武田玲奈さんと福島で頑張る若手実業家によるトークショー、ふくしま応援ポケモン「ラッキー」のグリーティング、大型ビジョンをフル活用した楽しいワークショップなど、魅力溢れるイベントが盛りだくさんで、多くの方にご来場いただきました。ステージプログラムでは、『Hand in Hand』の公開収録も行われ、タレントのユージさん、熊木杏里さん（シンガーソングライター）、白石長利さん（ファーム白石代表）の3人が、福島県の風土が育む野菜の魅力や人とのつながりについて語りました。

熊木杏里さん———歌で励ますふるさとへの思い

シンガーソングライターの熊木杏里さんは、東日本大震災直後から福島と深い縁を持ち、人々を励ます歌を届け続けています。震災の年には、耕作できなくなった畑にひまわりの種をまくプロジェクトに参加し、それをきっかけに楽曲『太陽の種』を制作。2011年にはチャリティーソング『ホームグラウンド～ふるさとへ～』をリリースしました。

ユージ

「熊木さんは、福島県の大地にひまわりの種を植える活動をされたと聞いてるんですけど…」

熊木

「東日本大震災や原発事故の影響で使えなくなってしまった畑にひまわりの種をまいて、花を咲かせよう、というプロジェクトに参加しました。震災の年に、種をまきに行って、そこで歌も作りました。『太陽の種』という、ひまわりの種をまいてそれが育つことで皆さんの希望になるんだろうな、ということを改めて感じたので、その思いを曲にしました」

ユージ

「そして同じ年の2011年ですが、クリエイティブディレクター箭内道彦さんが開催したライブ『LIVE福島 風とロックSUPER野馬追』　にも参加されたそうですね？」

熊木

「そうですね。箭内さんとはその時から、箭内さんが作った曲を歌わせてもらっています。私の旦那さんが福島出身で、いわき市にも親戚がいるので…。なんだかずっと福島との縁を感じて生きてきた感じです」

ユージ

「2011年4月には、配信シングル『ホームグラウンド～ふるさとへ～』を東日本大震災チャリティーソングとしてリリースされたそうですね？どういうメッセージを込めて書き下ろしたんでしょうか？」

熊木

「実は、東北のゴールデンイーグルスの聖澤 諒（ひじりさわ りょう）選手――今は引退されているんですが、登場曲にも使ってくれたりして、『ふるさと。いろいろ回ってもホームに帰ってくるよ…。ふるさとは大事な場所だよ』っていう…。もう一度、自分でもふるさとの意味を考えたりして作った曲です」

ユージ

「当時のステージに上がった時の気持ちとか…。思い出しますか？」

熊木

「思い出しますね。どういう風に歌を届けるべきなのか？どういう歌を届けるべきなのかな？そういうことをすごく考えた年ではありました」

ユージ

「わかります。日本中がいろんな悲しみに包まれている中で…。僕も同じエンターテイメント業界にいて、果たしてここで楽しいことをやっていいのかとか、周りにも悩んでる人たちがたくさんいて…」

熊木

「そうなんですよね、本当に人それぞれだったと思うんですけど…。先ほど白石さんも人との繋がりっておっしゃっていましたけど、それを信じるしかないなっていうのを思いましたね」

ユージ

「その後もね、関わりを持ち続けて、先日も北塩原村で『風とロックの芋煮会』に出演ということで、その時の様子とか、お客さんの反応はいかがでした？」

熊木

「『風とロック芋煮会』は、初参加だったんですけれど、出演者みんな仲が良くて、出演者とお客さんとの距離がとても近くて、福島っていいなっていうのを感じました」

ユージ

「それこそ、熊木さんのファンの方にとっても、特別なステージになったんじゃないですか？」

熊木

「そうですね…。私にとってもまさにそうでした。参加させていただけたことがとても良かったです！」

人とのつながりが生む温もり

公開収録では、人間だからこそ生まれる温もりについて語られました。

ユージ

「熊木さんご自身は長野県更埴市（現・千曲市）のご出身で、千曲市も令和元年の豪雨被害っていうのがあったんですよね？ふるさとに対する想いもあったかと思いますが、熊木さんご自身の中で、みんなを笑顔にさせたいとか、楽しませたいとか、いろんなスタイルがあると思うんですけど。ご自身の曲を振り返って、どういう曲作りが多いと思いますか？」

熊木

「やっぱり、励ましたいんだと思います。誰かの支えになりたい…。悲しんでいる人がいたら本当は声をかけたいんですけど、それがうまくできないんですよね。言葉では『どうしたの？』とかも言えない。でも、歌だったらそれを言ってもいいんじゃないかって思って…。そういう気持ちで作っています」

ユージ

「それ、すごく分かります！僕は、歌は作っていないんですけど、身近で落ち込んでしまったとか、 辛い経験をしたっていう友人がいた時に、どういう言葉をかけるのがいいのか？って分からない時ありますよね？」

熊木

「本当に！今AIとかがあるから…」

ユージ

「AIに聞けば、色々と答えてきますよね？」

熊木

「そうなんですよ。でも、最近思うんですけど、答えはないって思うんですよ、人は…。ライブもそうですけど、例えば歌詞を間違えたりとか、誰かが演奏をちょっと間違ったとしても、それがいいんだと…！AIのように完璧ではない、それが人間の良さだと思っています」

ユージ

「確かに、人の温もりを感じる部分とか、その人の表情から伝わるものとか、その辺はまだちょっとAIでは難しいジャンルなんじゃないかな…」

熊木

「本当ですよね。目を見て通じ合うなんてAIではできませんからね」

ユージ

「野菜の注文がダイレクトメールで入って、もしAIだったら絶対発送忘れませんもん(笑)。忘れますもん、ね？」

白石

「忘れます！(笑)」

ユージ

「お客さんが、『頼んだはずなのに来ないな？あれ、白石さんどうなってるんですか？』っていうようなやり取りが思い出じゃないですか？温もり、白石さんという人柄も、お忙しかったのかな、とか…」

熊木

「そうですね。で、食べるときに思い出しますよね」

ユージ

「思い出す！その人の背景が見えるじゃないですか。でも、AIだったらそんなにストーリー生まれないと思うんですよね」

熊木

「生まれないですよ！白石さん、一言も喋ってないですけど大丈夫ですか? 大丈夫ですか？」

白石

「AIの気持ちになってました(笑)」

熊木

「AIにならないでくださいよ～」

ユージ

「今、人間っていいなって話をしてるのに(笑)」

熊木

「こんなニコニコしているAI見たことないですよ(笑)」

熊木さんは人との縁を大切に、そして音楽を通して福島に寄り添って活動されてきました。音楽でも農業でも、人との関係性が復興を後押しする力につながると感じることができるトークセッションでした。ぜひ今後のお二人の活動、発信にも注目してみてください。