2025年度

出前授業とは

復興庁の職員が中高生に
「福島の今」を伝える

出前授業の様子

東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所の事故から10年以上が経過した今、若い世代に震災の記憶と記録を受け継ぐことが急務となっています。
そこで復興庁では2022年度より、全国各地の中学校・高等学校へ復興庁の職員を派遣する「出前授業」を開始しました。授業では職員が講師として「震災の被害と復興」「福島第一原発について」「今も残されている課題」「なぜ震災を語り継ぐ必要があるのか」などを中高生に直接伝え、彼ら・彼女らの率直な反応に耳を傾けています。
4年目となる2025年度は、12県16校の中学校・高等学校で出前授業を実施しています。また、出前授業実施後には各校から数名の生徒を福島に招き、現地を巡る視察ツアーを行いました。

このページでは、神奈川県の横浜市立南高等学校附属中学校にて、中学2年生を対象に行われた出前授業の模様をダイジェストでお伝えします。

授業内容

01東日本大震災の概要

東日本大震災は、地震と津波による被害に加え、東京電力福島第一原子力発電所の事故による原子力災害といった経験したことのない未曾有の「複合災害」です。地震は日本国内観測史上最大規模で、世界でも1900年以降4番目に大きい規模でした。津波は、地震発生からわずか15分で到達し始めました。東日本の太平洋沿岸各地の広い範囲で津波による浸水がおこり、甚大な被害が発生しました。
陸に打ち上げられた船など、生徒たちは津波被害の写真に見入ります。「津波による浸水面積は合計で561㎢。これは皆さんの学校がある横浜市がまるごと入ってしまう面積です」という復興庁職員の言葉に、自然の力の大きさを感じずにはいられません。

出前授業の様子 東日本大震災の概要

東京電力福島第一原子力発電所の状況についても説明がありました。東京電力福島第一原子力発電所の事故による放射性物質の放出に伴い、周辺の多くの住民が退避を余儀なくされました。

02復興の現状

復興の現状について、説明がありました。震災直後の一番多い時で約47万人の方が避難していましたが、現在は約2.7万人まで減少しております。復興道路や災害公営住宅などの整備は、どちらも100%完了となっています。

出前授業の様子 復興の現状

続いて、放射線の基礎知識について説明がありました。「放射線は、風邪のように人から人にうつることはないこと」、「日常生活をしていると食べ物、土、宇宙などから年間2.1 m㏜(ミリシーベルト)の放射線を自然に受けていること」などと説明があったなかで、生徒たちが特に気になったのは福島市の現在の空間線量率です。2011年4月に1.91μ㏜(マイクロシーベルト)/hだった福島市の空間線量率は、除染作業や自然減衰によって、2025年4月には0.11μ㏜/hと大幅に減少。これは、日本国内のほかの都市や世界の都市と変わらない水準です。食品についても、基準値を超える放射性物質が食品から検出されることは殆どなく、基準値超過が確認された食品は、市場に流通しないように措置がされています。

(参考):1mSv(ミリシーベルト)=1000μSv(マイクロシーベルト)

03残された課題

復興が進む福島県ですが、残された帰還困難区域が約309k㎡あり、現在も避難を余儀なくされている方が24,110名います(令和7年5月現在)。また、東京電力福島第一原子力発電所の「廃炉」への取り組みが行われています。使用済み燃料プールの燃料取り出しは3,4号機で完了し、現在、1,2号機で取り出し開始に向けた作業が実施されています。構造物と燃料が混ざった「燃料デブリ」は非常に放射線量が高く、ロボットなどを活用して2号機において試験的取り出しを行っています。
福島県内の除染によって発生した除去土壌等は、中間貯蔵施設に保管されていますが、中間貯蔵開始後30年以内、2045年3月までに福島県外で最終処分を完了するために必要な措置を講ずることとされています。保管されている土壌は、東京ドーム約11杯に及びますが、そのうち約4分の3は「復興再生土」として有効活用が可能です。2025年7月、総理大臣官邸での復興再生利用が施工され、施工後の放射線量も人体への影響を無視できるレベルとなっています。

出前授業の様子 残された課題

04震災を語り継ぐために

出前授業の様子 震災を語り継ぐために

関東大震災が起きたのは、今からほぼ100年前。今後もいつどこで震災が自分事になるか分かりません。
「例えば津波は、どんな速さで襲ってくるか分かりますか?」と、復興庁職員が問いかけます。答えは「50mを5秒」です。「今、‟自分は50mを何秒で走れるかな?“と考えましたね。それが‟自分事で考える”ということです」の言葉に、うなずく生徒たち。さらに復興庁職員は、「津波が見えてから逃げ出したのでは、逃げ切れません。津波注意報や警報が出たらできるだけ早く高いところへ逃げてください。ふだんから、震災が起きたときどうなるか、どういう行動をとるかを自分事で考えてみてくださいね」と伝えました。

そして、「機会があれば、ぜひ東日本大震災の被災地を訪ねてみてください」と呼びかけました。被災地には、津波の到達地点などの津波被災が書かれた石碑、地震と津波の爪痕をそのまま残した震災伝承施設など、被害の実情や教訓を後世に伝えるための施設が数多くあります。「実際に見ると、津波の高さや被害の状況などを実感していただけると思います」とも。東日本大震災の教訓を生かすために、震災の記憶を継承することはとても大切なことなのです。

グループワーク

2時間目のグループワークでは自分たちに今できること、災害時にどう行動すべきかをグループに分かれて考えました。テーマは、➀東日本大震災などのような大災害に対し、自分たちはどう行動すべきか、➁福島を応援・関心を持ってもらうには、どのような取り組みが必要か、➂放射線の基礎知識や健康影響などを正しく知ってもらうには、どのような取り組みが必要か、の3つ。この中から1つを選んで話し合います。
「ふだん地震が来ても、津波は想定してなかったよね」「防災の知識がない人には、知りたいと思わせる仕掛けがいるよね」「いざとなったら助け合いが大事。避難訓練を地域の人も入れてやるのは?」「福島のものは厳しい基準をクリアしていて安心して食べられることをアピールしたい!」などなど、気づきやアイデアが次々飛び出します。

出前授業の様子 グループワーク

活発に手が挙がった発表の時間。①については、「ハザードマップや自分の家の備蓄品の確認を継続する」「発生時に慌てないように、すべきことを優先順位でまとめておく」「災害時、通信環境を圧迫させないように、正しい情報を集めて電波を適切に使う」などの意見が出ました。
②については、「食を中心に観光地としての福島の魅力を知ってもらうために、農産物をブランド化しておいしさや安全性を知ってもらう」「アニメやエンタメで震災を取り上げ、若者への知名度を上げる」などのアイデアが。③については、「地域で中学生が放射線について発表する場を作る」「公共の場でCMを流して放射線の安全性をアピール」「街に現在の線量の掲示板を作って、放射線への関心を持つ機会を増やす」「ユーモアのある動画を作ってSNSで発信」など。

出前授業の様子 グループワーク

中学生である自分たちが発信すれば社会への影響力があると感じたグループが多く、正確な知識を知ってもらうために、今日のような講義をできるだけ多くの人に受けてもらいたいという意見は共通していました。SNSやインターネットを使うだけでなく、家族や友達に話すことの大切さを感じ、「160人から、少しずつでも広げていきたい」という力強い言葉もありました。
発表後復興庁職員は、「自由な発想で、楽しいアイデアをたくさん考えてくれました。きちんとした裏付けもあって感心しました。大災害の経験がない若い世代を惹き付ける工夫を、もっとしていきたいと思います」と感想を述べました。

出前授業では、若い世代に震災を“自分ごと”として考えてもらえるように、生徒自らが考えるグループワークを実施しています。若い世代の発想は自由で柔軟で、どちらの学校に伺っても、私たちの新しい学びとなっています。
本日の授業を通じ、東日本大震災の経験と教訓を学んでいただき、再び同じような被害や犠牲を出さないためには、どのようにしたらよいか、“自分ごと”として考えていただきました。
何度もお伝えしましたが、“自分ごと”として考え、そして備えることが重要です。本日は福島県の「あんぽ柿」をお土産に用意しました。ぜひ、柿を食べながら、今日皆さんが考えたことをご家族に話をしてください。

復興庁職員:岡野企画官

復興庁職員:岡野企画官

生徒&先生にインタビュー

生徒代表「自分事として考えることの
大切さが分かりました」

生徒代表

グループワークで話し合うことで、自分なら何ができる?と考え、興味が深まる素敵な授業でした。命を守るという、とても大事な話だったので、それが強く伝わるように、知ったことだけでなく、それについて自分が何を感じたかということも合わせて家族に話したいです。
今後は、日本人として福島で起きたことをきちんと知って、海外の人に正しく伝えられるようにしていきたいと思います。

グループワークで自然と自分事に考えることができました。学ばなければ自分事にはできないことが分かったので、震災の現実、福島の今をもっと知りたいと思います。
これからは、偏見や風評被害で苦しむ人が二度と出ないように、放射線の正しい知識を知って伝えていきたいです。

担当教諭 山口先生「自分が発信者になって
地域にも広げてほしい」

私は幼少期に神戸で阪神淡路大震災に遭い、2か月間、避難所生活を体験しました。避難生活は、寝泊りはできてもプライベートがなく、寒かったです。極限状態に置かれると人はどうしてもエゴが出てしまうということも、幼いながら感じました。教師になってからは、道徳の授業や避難訓練時に自分の経験を話し、「みんなが過ごしやすくなるように行動するには、思いやりの気持ちが何より大事なことなんだよ」と話しています。
今回の出前授業で生徒たちから、‟発信”という言葉がたびたび出ました。家族だけでなく、近所にも知識を広げてほしいし、その意識が続くように、声をかけながらサポートしていきたいと思います。

生徒代表

授業を受けた生徒たちに感想を聞きました実施学校

  • 2025年9月19日(金)

    宮崎県国立大学法人 宮崎大学教育学部附属中学校

    参加生徒:3年生(140名)

    国立大学法人 宮崎大学教育学部附属中学校

    災害が起こったとき、どう行動すればいいのかという視点でしかみてこなかったけれど、今回は災害が起こった後の「復興」という視点で見ることができた。ただでさえ災害で辛い思いをしているのに、偏見や思い込みで風評被害を受けてしまうのは本当におかしいと思った。

  • 2025年9月30日(火)

    埼玉県埼玉県立浦和第一女子高等学校

    参加生徒:1・2年生(35名)

    埼玉県立浦和第一女子高等学校

    福島にはマイナスなイメージが少しだけあったのですが、それが払拭されました。放射線は悪いものという印象だけでしたが、私たちの生活に身近なものでもあるとわかりました。

  • 2025年10月2日(木)

    青森県弘前市立南中学校

    参加生徒:3年生(99名)

    弘前市立南中学校

    今回の授業で、福島の原発のことなどについて学んで、災害を経験していなくても、自分事として考えて日々の生活を送ることが大切だと思いました。

  • 2025年10月7日(火)

    岐阜県大垣市立江並中学校

    参加生徒:2年生(84名)

    大垣市立江並中学校

    今回の復興庁出前授業では、今現在自分が知っている以上のことを知れてよかったし、東日本大震災は津波や地震だけの被害を受けたとしか思ってなかったけど、放射線やその他いろいろの被害を受けたということがわかりました。また、今回の出前授業を受けて、私は今後大きな災害が起きたときには、中学生として一歩大人になりボランティアとして動いていきたいです。そして、高齢者の方、妊婦さん、小さい子ども連れの方には気を配り今回学んだことを活かして生活していきたいと思います。

  • 2025年10月8日(水)・9日(木)

    岐阜県岐阜県立大垣北高等学校

    参加生徒:1年生(194名)

    岐阜県立大垣北高等学校

    震災が起こった当時私たちはまだ2歳だったから、正直よくわかっていないところもあったけど、実際の映像や現状の課題を聞いてまだまだ全てが解決したわけではないのだなと実感しました。今も風評で苦しんでいる人のためにも、正しい知識を身につけることが重要だなと感じました。

  • 2025年10月14日(火)

    鳥取県学校法人 米子永島学園 
    米子松蔵高等学校

    参加生徒:1・2年生(61名)

    学校法人 米子永島学園 米子松蔭高等学校

    今回の授業は、自分にとってとても学びのある授業だと思いました。教科書で学んで完結するのではなく実際に直接お話を聞くことでより理解が深まったからです。例えば、今まで私は勝手に、福島第一原子力発電所で事故が起こったのは、発電所の一部が津波で流されたり、倒壊したからだと思っていました。ですが、実際は地震と津波による停電で原子力発電がうまく機能しなくなったからだと知ることができました。おそらく、風評被害も以前の私のように勝手な思い込みによって起こってしまったのだと思います。正しいお話を知ることができて安心しました。
    この体験を通じて、自分にできることについて考えてみました。例えば、私はポスターなどで表現するのが得意なので避難者の方々の現状について紙でまとめて多くの方々に知ってもらい、社会全体に呼びかけることができないかと考えました。

  • 2025年10月15日(火)

    奈良県学校法人 西大和学園 西大和学園中学校・高等学校

    参加生徒:中学3年生・高校1・2年生(37名)

    学校法人 西大和学園 西大和学園中学校・高等学校

    まだまだ知らないことが多いということに少し驚きました。丁度私が生まれた後のことで、小学生時代にもよく聞いた東日本大震災というものの実態について、ここまで知らずに生きてきていた事実が奇妙にも思えました。災害のその後を考え、行動しているすべての人に頭が上がらない気持ちです。

  • 2025年10月21日(火)

    山口県山口県立厚狭明進高等学校

    参加生徒:1年生(106名)

    山口県立厚狭明進高等学校

    放射能の危険性や、震災についてとても深く知れたのでいつ災害が起こってもいいようにきちんと家族で話し合おうと思いました。また、グループでの活動も震災についてあまり友達と意見を交換することがなかったので周りの意見も知れていい機会だなと思いました。

  • 2025年10月27日(月)

    佐賀県佐賀県立致遠館中学校

    参加生徒:3年生(116名)

    佐賀県立致遠館中学校

    授業前までは、東日本大震災は遠くの地域で、昔あった事だと思っていました。多分、自分事として考えてはいなかったと思います。しかし、今回貴重なご講演をいただいたことで、風化させず、日本全国の一人ひとりが防災意識を高めていくことが大切だと学ぶことが出来ました。私たちが住む九州近くでは、近い将来、南海トラフ巨大地震が起こるのではないかと言われています。県内の唐津市玄海町には現役で動いている原子炉もあります。今回の講演を決して忘れず、日々の生活に役立てていきたいと思います。

  • 2025年10月28日(火)

    長崎県長崎市立西泊中学校

    参加生徒:1年生(97名)

    長崎市立西泊中学校

    授業の中で見た震災時のビデオでは津波がおしよせてくるのがわかった。自分自身が震災を経験したことないから震災が起きたらどのような状況になるのかがわかった。震災時に自分が素早く避難やいろいろな行動ができるようによく学習しようと思った。

  • 2025年11月6日(木)

    愛知県愛知県立安城東高等学校

    参加生徒:1年生(343名)

    愛知県立安城東高等学校

    授業全体を通して、東日本大震災の教訓や福島第一原子力発電所の事故の風評被害などの事実や知識を当時は小さい頃だった、もしくは生まれていなかった子達にも教訓を受け継いで行かなければいけないと感じました。私自身も、今回の講座で始めて知ったことは多かったので、こういう機会をもっと年齢の小さい子達にもつくって、正しい知識や被害をもっと身近に自分事に考えてもらうことが大切だと思いました。

  • 2025年11月13日(木)

    和歌山県和歌山県立向陽中学校

    参加生徒:3年生(68名)

    和歌山県立向陽中学校

    今回の講義で東日本大震災のことを知って、南海トラフ地震のこともあったので他人事ではないと考えたので、震災が起きる前の対策などを考えていきたいです。

  • 2025年11月18日(火)

    埼玉県さいたま市立大宮北高等学校+さいたま市立大宮国際中等教育学校

    参加生徒:1年生・4年生(44名)

    さいたま市立大宮北高等学校+さいたま市立大宮国際中等教育学校

    他校の生徒と交流しながら考えることができ、とても貴重な機会になりました。福島県で起きている課題ではありますが、埼玉県民としてなにか協力したいと思いました。

  • 2025年11月18日(火)

    山口県山口県立萩高等学校

    参加生徒:1年生(112名)

    山口県立萩高等学校

    心のケアも復興の中の一つに入ることを初めて知って、復興というのは幅広いんだなと感じた。まだ知らないこともあると思うから復興について調べていきたい。

  • 2025年11月20日(木)

    埼玉県春日部市立武里中学校

    参加生徒:2年生(126名)

    春日部市立武里中学校

    約14年前にあった東日本大震災は、僕達と同い年で確かに多く関係してくるものもあって、ある程度は知っているつもりだったが、今回の出前授業を通して、まだ復興していない地域があることを知ったし、その現在の課題や、改善点が分かりました。
    本日出前授業を開いてくださりありがとうございました。

  • 2025年12月13日(土)

    神奈川県横浜市立南高等学校附属中学校

    参加生徒:2年生(144名)

    横浜市立南高等学校附属中学校

    調べれば簡単に出てくるような内容ではなく、復興庁さんだからこそわかることがこの1時間に凝縮されていてすごく貴重なお話でした。私は、まだ避難を余儀なくされている人が何万人もいるということに驚きました。早く帰れるようになるといいなと思います。